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入国手続きの時間を短縮できる「ファストトラック」、5つの国際空港で利用可能に

検疫手続の事前登録が行なえる「ファストトラック」が2月からスタートし、現在5つの国際空港で利用可能

 現在海外からの日本入国時に、ボトルネックとなっているのが検疫手続き。新型コロナウィルス感染拡大防止と水際対策の一環として、搭乗72時間前までの検査証明書や宣誓書の確認と提出、さらに自宅待機のためのアプリインストールやスマートフォンの動作チェックといった作業が必要になる。

 この検疫手続きが、煩雑でかなり時間がかかる。筆者は2021年8月にアメリカ(ハワイ)からと、10月にフランスから。そして2022年の3月7日にスペインからの計3回、入国時の検疫手続きを行なっている。8月の帰国時には降機し検疫手続きと入国審査、税関審査を終えるまで約3時間半かかった。

水際対策で必要な手続きや書類など、日々更新されている

 現在は徐々にシステムの効率化と簡素化が進められており、3月の帰国時点では1時間40分ほどで終えられた。とはいえ、これは飛行機の到着遅れにより逆に運良くほかの便と重ならなかったため、検疫手続きの人数が少なかったことや、筆者も3回目で手慣れており係員も必要アプリの使い方説明などは割愛する部分もあり、素早く行動できたためだ。

ちなみに機内で配られた誓約書に記入して事前に準備していたが、それは古いバージョンのため使用できず、降機後に書き直しが必要だった

 3月の帰国は成田空港第2ターミナルを利用したが、係員の話では現在でも通常は2時間から3時間くらいを想定しているとのこと。また、昨年末から年頭のオミクロン株感染拡大時期には、ホテルなどの指定された待機所への手配もあり、トータルで6時間以上かかったケースもあったようだ。

 この煩雑で時間のかかる検疫手続きをアプリから事前に行なうことで、係員のチェックをスムーズに行なえるよう始ったのが「ファストトラック」だ。2月7日に関西国際空港からスタートし、その後、東京空港(羽田)、中部空港(セントレア)、福岡空港が追加。3月9日からは成田空港も加わり、現在は合計5つの空港が対応している。

 ファストトラックへは、健康居所確認アプリ(MySOS)から登録を行なう。MySOSは帰国後に自宅待機期間などがある場合に、所在地の申請やビデオ通話での待機確認などをするため、日本入国時にインストール必須となるアプリだ。

 検疫手続きでは、このMySOSをインストールしているかどうかや、名前やパスポート番号を登録しているか確認も行なわれる。そのため事前にMySOSをインストールして手続きを進めておくことが、検疫手続きでの作業を減らすことにもなっている。

まずはMySOSをインストールして、必要情報を入力する
MySOSの検疫手続事前登録をタップしてスタート

 MySOSで行う作業は次の4つ。従来の手順では、いずれも紙の書類として用意し、検疫手続きで確認や回収される作業だ。

・質問票の記入
・誓約書の記入
・ワクチン接種証明書の有効性の確認
・出国前72時間以内の検査証明書の有効性の確認

 MySOSをインストールして起動すると、パスポート番号や名前、生年月日を入力し登録を行なう。それが完了すると、「検疫手続事前登録」ボタンが表示されるので、ここから作業を進める。

 注意点は日本到着の16時間前までに、アプリからの事前申請を完了させること。検査証明書は渡航先で用意する必要があり、紙の書類のため発行に時間がかかるケースもある。そのためあらかじめ検疫手続事前登録の締め切り時刻を考慮して(日本到着時刻なので時差も計算しないと勘違いしやすい)、検査証明書を準備する必要がある。

 ちなみにこの記事のため、当初iPhoneのApp StoreからMySOSをダウンロードしたが、「検疫手続事前登録」は表示されなかった。厚生労働省が用意したサイト「ファストトラック」にあるリンクからダウンロードすると、上記の挙動となったので、もし「検疫手続事前登録」が表示されない場合は、ダウンロードしなおそう。

アプリストアからではなく、公式サイトのリンクからダウンロードしたほう無難だ

「検疫手続事前登録」をタップするとWebブラウザーにアプリが切り替わり登録スタート。登録事項として、「質問票WEB」と「誓約書」、「ワクチン接種証明書」、「出国前72時間以内の検査証明書」の4つのリンクがあるので、それぞれタップして入力していく。

 質問票と誓約書の登録は、フォームに必要事項を入力していくだけなので、難しさはない。ワクチン接種証明書と出国前72時間以内の検査証明書もフォームに入力していくのは同じだが、それぞれの証明書を撮影してアップロードする手順がある。

4つの項目を上から順番にタップして、登録を進めていく
必要項目を入力していくだけ(※MySOSの「事前登録の説明」からの画像)
ワクチン接種証明書と検査証明書は、撮影して取り込む *MySOSの「事前登録の説明」からの画像

 4つの登録が完了し申請内容に問題がなければ、しばらくするとMySOSの画面が緑色になり、検疫手続きで使用するQRコードが表示できるようになる。ちなみに申請内容に不備がある場合は赤色のまま。検査証明書の登録が16時間前までに間に合わなかった場合は、黄色となる。

背景が緑色になれば登録完了(※MySOSの「事前登録の説明」からの画像)
背景が緑の状態で「検疫手続事前登録」をタップするとQRコードを表示する(※MySOSの「事前登録の説明」からの画像)
黄色の状態でも一部のチェックはQRコードで行える(※MySOSの「事前登録の説明」からの画像)

 黄色の状態でもQRコードは表示でき、検疫手続き時に検査証明書の確認のみ紙の書類で行なわれ、それ以外はQRコードで対応可能。そのため検査証明書が16時間前までに間に合わなくても、ほかの3つを登録しておくメリットはある。

 ここまでの手続きをMySOSで行なっていれば、日本到着時の検疫手続きでファストトラックが利用できる。ただし、実際に羽田空港での利用者に話を聞いたところ、ファストトラックといっても、専用レーンが用意され、QRコードを1回見せれば通過できるわけではない。

 基本的に「検疫手続事前登録」を完了してQRコードを表示できる人も、従来どおり書類で確認する人も同じ待機列に並ぶ。そして、順番は各空港によって変わってくるが、「質問票」「誓約書」「ワクチン接種証明書」「検査証明書」を数か所で順に確認していく。

 その際に、「検疫手続事前登録」を完了したQRコードが表示できる場合は、リーダーに読み込ませるだけで手続きは完了するので、次のチェックポイントへと素早く移動できる。各ポイントでのこの時間短縮が、ファストレーンのメリットと言える。ただし、一部紙の書類に記入を求められたとSNS上での報告もあり、すべてがQRコードだけで通過できるわけでもないようだ。

 さらに現状では到着時に抗原検査があり、その結果が出るまで待機する必要がある。この待機時間が30分以上はかかるので、ファストレーンが使えてもコロナ禍以前のように降機したらすぐ入国審査と税関を通過して、到着ロビーに出られるというわけでもない。

 各国でもこういった事前に検疫手続きで必要な情報を入力して、QRコード表示でチェックするシステムを導入している。2月に訪問したスペインもそうで、搭乗前に「スペイン旅行前健康状態申告システム」で名前やパスポート番号、滞在場所、そして日本発行のワクチン接種証明書のアップロードをして登録済ませておいた。

 ただし、アメリカやEU諸国では、入国時に空港での陰性検査を行なっていないので、確認作業は飛行機のチェックインや搭乗時か、降機後の動線上でQRコードを1回読み込むだけ。あとはコロナ禍以前と同じような降機後のフローだった。

スペインの「スペイン旅行前健康状態申告システム」
スペイン旅行前健康状態申告システムでは、QRコードが記載されたPDFがメールで届き、それを表示する

 日本も今後制限を緩和して入国者数を増やしていく場合、アメリカや西欧諸国のようにワクチン接種や搭乗前の陰性検査を条件に、空港での陰性検査を免除する可能性もある。そうなった場合に、「ファストトラック」を効果的に使った降機後のフローが構築できそうだ。