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Go To トラベルは「シンプル&継続が重要」と星野佳路代表。星野リゾート、2021年秋発表会
2021年10月14日 18:31
- 2021年10月13日 開催
星野リゾートは10月13日、オンライン発表会「星野リゾート LIVE 2021秋」を実施した。北海道や京都など日本国内の新規開業情報から、今後の新しい旅のスタイル、そして星野リゾート 代表の星野佳路(よしはる)氏による同社の2022年の観光予測、新たな取り組みについてなどを説明した。
星野代表は再開が期待されるGo To トラベル(Go To 2.0)について「シンプル&継続」が重要とし、消費者には分かりやすく、事業者側の作業も煩雑化を避けるべきと言及。また、一時的な観光の盛り上げではなく、インバウンドが戻るまで継続的な需要の下支えが必要と話した。
小樽・京都に都市観光型ホテル「OMO」を新オープン。地域密着で都市観光を盛り上げる
発表会の前半は、新規開業情報を中心にプレゼン。2021年から2022年にかけて年内に2施設、2022年に6施設の合計8施設のオープンが予定されている。
注目したいのは都市観光ホテルブランド「OMO by 星野リゾート」。現在北海道・旭川や東京・大塚など5施設を運営中だが、2022年4月までに倍の10施設となる予定。特に注目したいのが京都・祇園に11月5日にオープンする「OMO5 京都祇園 by 星野リゾート」。京都観光で必ず訪れる八坂神社の目の前の祇園エリアの中心地で“今日は祇園ぐらし”をコンセプトに運営を行なう。「OMO3 京都東寺」「OMO5 京都三条」に続く3軒目となるが、京都のパン文化を反映して「おへやベーカリーセット」の提供など、それぞれのテーマ性を色濃く打ち出していくとのこと。
また北海道・小樽に2022年1月7日開業の「OMO5 小樽 by 星野リゾート」も注目株の1つ。「北のウォール街」と呼ばれるエリアの、小樽市指定歴史的建造物「旧小樽商工会議所」をリノベーション。建物自体をホテルの魅力ととらえ、ストーリーとともに発信源として活用、建物の維持と保護も行なっていく。また、“ソーラン、目覚めの港町”をコンセプトにする同館は小樽エリアで盛んなニシン漁もフィーチャー。骨まで美味しく味わえるソフトスチーム加工を施し、「ニシンのミックスパエリア」としてディナーで提供予定だ。
なお、11月1日に「OMO5 沖縄那覇 by 星野リゾート」、2022年1月7日に「OMO3 札幌すすきの by 星野リゾート」「OMO3 東京赤坂 by 星野リゾート」が開業する。4月22日には「OMO7 大阪 by 星野リゾート」もオープン。都市観光の魅力を多くの利用者に体験してもらうべく、OMOレンジャーとの企画を開発中とのこと。
また、スタートから10年目を迎えた温泉旅館ブランド「界」は2022年に2施設開業予定。1月14日に「界 ポロト」を北海道ポロト湖(アイヌ語で大きな湖の意味)の湖畔に開業。“ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿”をコンセプトに▲◯■を模した2つの「モール温泉」での体験やご当地客室を提供する。なお、「界 湯布院」は夏開業予定とアナウンスされた。
新たな旅のスタイルは3世代旅での再開と贅沢三昧のおひとりさまがカギ
ワクチン接種の拡大や新型コロナウイルス感染症の新規感染者の減少を踏まえ、コロナ後や自粛生活明けの新たな旅のスタイルも本発表会では積極的に提案。1泊2日の短期滞在型「リゾナーレの3世代旅」として祖父母との久しぶりの再会や旅行を充実した時間に押し上げるプランを紹介。
那須やトマムなど周囲の豊かな自然を活用し、家族全員で屋外で参加できるアクティビティをはじめ、キッズスタジオでのお菓子作りなども揃えている。
さらにおひとりさま向けにはリベンジ旅として「明けの贅沢 ~おひとりさま美食~」が楽しめるプランを用意。こちらは通常2名以上で注文となる食材を使ったメニューを1人から味わえるというもの。1人だからこそ気兼ねなくキャビア料理を頬張ったり、「星のや 竹富島」では貴重なセミエビ料理を独り占めするなど、ここぞとばかりに食の贅沢を提案している。
18か月サバイバルプランの現状と「Go To 2.0」への提言
発表会後半は、星野リゾート代表星野佳路氏が同社の2022年の観光予測やインバウンド、ならびに新たな取り組みについて紹介。
コロナ禍の業績報告とこれからの観光については、冒頭で2020年に発表した「18か月サバイバルプラン」を挙げ、現金重視・人材維持・ブランド戦略と優先順位の変更を行なうことで観光需要の復活に備え取り組んできたことを説明。コロナ前の人材をほぼ保持したまま、現在に至っているとした。失った利益は戻らないが、コロナ後の需要獲得のために人材維持は不可欠で大事なリソースとのことだ。
発表当初話題になった「倒産確率」も紹介。12月の「Go To トラベル」の休止を受け「マイクロツーリズム」の重要性を確信し、本格的な取り組みに着手。その結果、ほぼ1年にわたり出ていた緊急事態宣言を乗り越え、なんとか不時着まで至ったとした。さらに、18か月の予約率とキャンセル率の推移をグラフで提示。第3波以降の4波、5波はキャンセル率が下がり、コロナ禍での旅のマナーや同社での対策の世間的な浸透を含めた結果ではと語った。
なお、星野リゾートとして「Go To 2.0への提言」を発表。その軸として「シンプル&継続」を提案。消費者の利便性を重要視し、業界全体の煩雑な作業は避けるべきとした。さらに、Go To事業では大都市圏のビジネスホテル系、そしてエージェント率が高い大型施設は恩恵は得られなかった事実も紹介。新たなGo To トラベルでは1回目を踏まえ、タイプ別や一部需要の落ちた地域での施策、ならびにワクチン・検査パッケージの導入で、大規模な行動制限が再度発令された場合の業界の混乱防止策と作業のシンプル化を訴えた。
また、一時的に観光業を盛り上げるのではなく、継続的な需要の下支えすることが重要とし、Go To延長を含め、インバウンド需要が戻るまで継続的な支援が必要と見解を示した。さらに、現在Go To トラベル再開へ向けての買い控えが起きている現状を踏まえ、再開スケジュールの早期発表を希望した。
コロナ禍で気づいたのは「マイクロツーリズム」の重要性
続いてコロナ禍での産物である「マイクロツーリズム」の重要性と成果について言及。
星野リゾートでは、県単位・県境に関係なく日本を11の区画に独自で分け「マイクロツーリズム商圏」を設定。ブロックごとにPR展開をしていたことを紹介。2020年~2021年の最大の進化と称し、これにより北海道や九州などで成果を出せたとした。特に「星のや 東京」に関しては「マイクロツーリズム」市場の獲得により利益を確保。今年度は2019年比300%ほどの成長予測であるとした。
スタッフのワクチン接種率に関しては、11月の時点で正社員・パート・アルバイトを含め全体の92.5%が接種完了となる予定。また、従業員用の勤怠管理画面での接種報告のお願いや相談窓口や検査体制も含め、顧客とスタッフの安全を守るための対策も紹介した。インバウンドに関しては、一気にではなく少しずつ戻ると予想し、星野リゾートとしては2025年の「大阪・関西万博」を目指し、体制を100%に整えていくとした。
エリアごとの重要性と今後の動きについても説明。北海道は「マイクロツーリズム」人口が多く、星野グループとしても2000室を超える客室を保有しているため、道内旅行時の星野リゾートの利用価値を高めていくと話した。
関西圏ならびにコロナによる観光産業への打撃が非常に大きかった沖縄エリアは、前述のとおり2025年を目指し努力していくとのこと。1200万人の人口が住む九州エリアはコロナ禍で非常に「マイクロツーリズム」の可能性が高い場所であると発見したため、今後はコロナ後も同需要に対し注力していくという。
北米進出についても紹介、温泉旅館として開業を目指しており、近くよい報告ができるのではとした。
最後に、「コロナ禍における観光の危機にこそ運営会社の力が試されているとき」とし、青森やトマムの再生を例に、現在のプロジェクトに関し、しっかりと再生させていくことを誓った。