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SPRING JAPAN 米澤社長、「JAL子会社化でいいとこどり」。就任1か月を語る
2021年7月29日 07:00
- 2021年7月26日 実施
SPRING JAPAN(春秋航空日本)は、代表取締役社長の米澤章氏が会見を行ない、社長就任1か月の感触や今後について、報道陣からの質問に回答した。
同社は2012年9月設立、2014年8月に成田を拠点に就航しており、この8月で就航7周年を迎えるLCC。国内線は3路線(新千歳、広島、佐賀)、国際線は7路線(ハルビン、寧波、上海、南京、重慶、武漢、天津)のネットワークを展開(ただし寧波、上海、重慶、武漢は運休中)。機材は189席のボーイング 737-800型機を6機保有している。
米澤氏は6月29日の株主総会で新社長に選任され、就任からおよそひと月が経過したところ。氏は1984年にJAL(日本航空)に入社。2008年から上海支店長、2010年から路線統括本部 路線計画部長、2011年から執行役員 路線統括本部 国際路線事業本部長を歴任しており、2018年からはJAL中国地区総代表を務めるなど、豊富な中国赴任経験を持つ。
またSPRING JAPANは、米澤氏の社長就任と同じタイミングで、JALが出資比率を66.7%まで引き上げて連結子会社化しており、100%子会社のZIPAIR Tokyo、50%出資のジェットスター・ジャパンとならび、JALグループのLCC戦略の一翼を担う存在になっている。
LCCとして勝っているところはそのまま、JALのよいところは利用する
この会見に先がけて、JAL 取締役専務執行役員 路線事業本部長の豊島滝三氏がグループのLCC戦略を説明しており、新しい中期経営計画では2025年度にEBIT(利払前税引前利益)の目標を1850億円、そのうち120億円をLCC事業とすることを掲げている(関連記事「JAL、LCC事業の戦略を説明。2025年度に120億円の利益目指す」)。
こういった現況を踏まえ、米澤氏はJALの連結子会社になったメリットを「一言で言えば『いいとこどり』」だと説明する。LCCとして勝っているところはそのままに、JALのよいところは利用する。例えば、燃料などは共同調達でコストを抑えることができ、グランドハンドリングを委託できればJALの品質になる。すでに2018年からJALおよびJALEC(JALエンジニアリング)に整備の委託、効率化を図ってきたという事実があり、国内空港と中国の空港でJALEC基準の機材整備を実施してきている。
一方で、グループ内のZIPAIR、ジェットスターとのシナジーについては、システムの違いなどで連携は容易ではないという。世界的に見ても既存LCCはほぼ独立しており、LCC同士の連携はなかなか前例がない状態。そんななかでもあえて共通項を挙げるなら「成田をハブにしていること」だと米澤氏は指摘する。各社との意見交換などを通じて「よいアイディアが出れば」と期待を寄せた。
防疫措置緩和の難しさは中国ならではの事情も
ところで、本誌でも既報のとおり、SPRING JAPANは国内線が片道777円~になる就航7周年記念セールを8月1日12時~7日23時59分に実施するなど、大々的なキャンペーンを展開する。
他方、国際線については、直近は中国への帰国需要でほぼ満席の状態が続いているというが、成田~ハルビン線が毎週日曜、成田~天津線が隔週月曜、成田~南京線が隔週金曜という具合に、以前より大きく便数を削減している(7月下旬時点)。
この背景には日本への入国制限が1週間で200名(1便100名)という同社への割り当てがあり、さらにいえば入国後に14日間の防疫措置(自主隔離など)があることで、往来の障壁が高く需要が高まりにくいという点も挙げられるだろう。
日本人の受け入れを始めている海外では、ワクチン接種証明書やPCR検査の陰性証明を提示することで防疫措置を緩和する例も見られるが、同社も日本国内の現状を打破するため、定期航空協会を通じて政府・外務省への要請は行なっているそうで、「航空会社としてできることはやっていきたい」という。
ただ、実際に隔離期間の短縮が可能かとなると、米澤氏は「本当に分からない」と続ける。特に中国側では、輸入症例が発生すると急にレベルが上がって、14日間隔離だったものがさらにプラス7日間、プラス14日間という具合に強化されるケースもあり、都市レベルで国の指定より重い措置をとる場合も見られるという。これは北京などで顕著とのこと。主として中国路線を展開する同社ならではの事情もあるようだ。