ニュース

「熱中症ゼロ、コロナ感染ゼロで夏を乗り越えたい」。ANA、飛行機のそばで働くグラハンスタッフに新素材の半袖制服を導入

2020年7月2日 取材

ANAがグラハンスタッフの熱中症対策として新素材の半袖制服を導入

 ANA(全日本空輸)は、空港の飛行機近くで作業を行なう地上支援業務(グラハン:グランドハンドリング)スタッフの熱中症対策として、2020年度から新素材の半袖制服を導入した。

 グラハンスタッフの制服は、長袖の厚手/薄手、半袖の3種類が貸与されていた。従来の長袖薄手制服と半袖(旧)制服は同じ素材を用いているが、今年度、新たに新素材の半袖制服を用意。羽田空港のスタッフには全員に貸与を終え、他空港のスタッフにも順次展開を進めている。

 新素材として採用されているのは、東レの「シャミラン」。通気性と速乾性、やわらかな風合いに優れる素材とされている。通気度は、半袖(旧)制服の素材が10cc/cm 2 /sec程度であるのに対し、シャミランは80cc/cm 2 /secの通気度を持つという。一方、2層構造の綿高混率の素材を用いることで、安全性にも配慮した。

 新素材の導入にあたっては、前年度から複数の素材を用いたトライアルを実施。実際に試着したスタッフの意見などをもとにして、この東レ「シャミラン」が選定された。インタビューに応じたANAエアポートサービス ランプサービス部 業務課 マネージャー 松井晋吾氏は、新素材制服について「ジメジメ感が少ない。従業員からは、肌に密着することがなくサラッとしているという声がある」との感想を述べた。

新素材の半袖制服(右)と、旧来の半袖制服(左)。デザインは同じで素材のみ変更
ANAエアポートサービス株式会社 ランプサービス部 業務課 マネージャー 松井晋吾氏

 グラハンの作業は、貨物の積み下ろしなど飛行機のそばで行なうものも多く、短くても30分ほど、長いと2時間ほど屋外での作業が続くことがあるという。

 松井氏は「夏はこれから本番。7月の後半から8月のピーク時には35℃近い気温となる。それに加えて、飛行機が駐機するランプエリアはコンクリートに覆われており、照り返しによる体感温度はそれ以上になると言われている」とし、「今年は新型コロナウイルス感染拡大防止が言われているが、加えて熱中症対策もしっかり行なわなければならない」と、導入の背景を説明。

 熱中症対策として、水分補給のためにペットボトルの飲料が入ったクーラーボックス、塩飴なども用意。昨年はオフィスにかき氷器も設置したそうだが、新型コロナ感染防止の観点で共有品の利用を控え、凍らせた一口ゼリーを用意しているという。

熱中症対策としてペットボトル飲料や凍らせた一口ゼリーの入ったクーラーボックス、塩飴を用意

 また、新型コロナ感染拡大防止の観点から緊急事態宣言が出る以前の3月からマスクを着用している。しかし気温が上がりはじめた6月からは、熱中症対策を考慮し、屋外で、ソーシャルディスタンス(おおむね2m以上)の距離をとれる場合は、マスクを外すよう推奨している。近づいたり離れたりと、常時広い間隔を取れないことも多いが、「まずは距離をとるようにすることだが、距離が近い場合には、できるだけ話をしないようにと指導している」という。

 一方で、現場スタッフからは、むしろマスクを着けていないことへの違和感や不安の声もあるそうで、「外すことを強制するのは難しいが、新型コロナ同様、熱中症への意識も持って取り組んでいただきたいと思っている」と話し、「新型コロナ感染ゼロ、熱中症ゼロで夏を乗り越えたい」と目標を語った。

到着前にチームで集まってミーティング。日焼け防止のために長袖制服を着用するスタッフも多い
取材日はいわゆる「梅雨の晴れ間」となり、気温が高いなかでの作業となった
那覇からの飛行機が到着。この駐機場ではマーシャラーによる誘導が行なわれた
到着後すぐにそれぞれの作業へ
貨物を下ろす作業が進められる。ソーシャルディスタンスが確保できる屋外作業では、熱中症対策のためにマスクを外すことを推奨している