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科博、国産旅客機「YS-11」量産初号機の解体作業公開。胴体と左主翼を分離。今後は茨城県筑西市で一般公開予定
2020年1月15日 14:47
- 2020年1月15日 公開
科博(国立科学博物館)は1月15日、同館が保有するYS-11型機の量産初号機の解体作業を報道公開した。
日本唯一の純国産民間旅客機として開発されたYS-11型機の、製造番号「2003」、登録記号「JA8610」の機体で、当時の運輸省(現・国土交通省)航空局に納入されて「ちよだII」として運航されたもの。日本機械学会の「機械遺産」、日本航空協会の「重要航空遺産」に認定されている。
運輸省航空局で1998年12月まで運航後、1999年から運輸省、文部省、科博、JAL(日本航空)が羽田空港内の格納庫で保管することに関する覚書を締結。2016年からは空港施設株式会社の大型格納庫で保管している。
同機の今後について検討が進められた結果、民間施設での一般展示が決まり、解体のうえ茨城県筑西市のザ・ヒロサワ・シティへ移転。3月には解体したすべてのパーツを搬入する予定。ザ・ヒロサワ・シティでは、2020年3月に解体されたパーツ類を受領したのち、組み立てを実施する。
運輸省航空局での運航終了後、空の日のイベントなどで公開されることはあったものの、普段は一般の人の目に触れることがなくなっていた同機。ザ・ヒロサワ・シティでは、すでに展示用施設の建設にも着工しており、準備が整い次第、一般公開を予定している。
移転に向けては2019年8月29日に最後のモータリング(エンジン稼働)を実施後、同9月30日に解体を開始。解体に必要な器具などは、国内で唯一運用している航空自衛隊から借用しているという。
すでにエンジンやプロペラ、水平尾翼、垂直尾翼、ドーサル・フィンと呼ばれる垂直尾翼の前縁部、主翼後縁部、胴体上部のアンテナなどを解体し、ザ・ヒロサワ・シティへ搬入済み。胴体と主翼を残すのみとなっている。
1月15日に報道公開されたのは、胴体から左主翼を取り外す作業。設計図などはなく、整備マニュアルなどを元に解体を進めている。作業には、YS-11型機を運航していた旧JAS(日本エアシステム)の元整備士などが参加しているという。
とはいえ、これまでに行なわれた垂直/水平尾翼や主翼の取り外しなどは、通常の整備では作業しないものとなる。同機の脇には主翼後縁のパネルやエンジンカウルの一部などが置かれているが、これらはリベットを一つずつ外すという根気のいる作業を要したそうだ。
主翼の取り外しに際しては、付け根のボルトは数本を残して取り外し、クレーンに天秤をはさんで主翼を吊り上げられるようにする作業が進められた。主翼の重量は約2.5トン。天秤などの吊り具と合わせて3トンを超える重量を持ち上げることになるという。
クレーンの設置が終わったあとは、残ったボルトを取り外し、主翼を胴体から分離する作業が進められた。いずれも、なかなかスムーズには進まず、解体作業の難しさを感じさせる。
主翼を外す際には、クレーンに吊った状態にして角度を変えることで、根元の噛んでいる部分を少しずつ外していく地道な作業が行なわれた。そうして取り外された左主翼がパレットで作られた台に置かれ、作業完了となる。
右主翼は後日取り外され、胴体、左右の主翼の3パーツは、いずれもこれ以上は小さくせずに陸送する予定となっている。
【記事訂正:1月20日】初出時、主翼ならびに吊り上げ重量に誤りがありましたので当該部分の記述を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。