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東京メトロの中野工場見学&東大キャンパスで電車モーターを学ぶ。中高生向けワークショップレポート
2019年8月5日 12:33
- 2019年8月2日 開催
東京メトロ(東京地下鉄)と東京大学生産技術研究所(東大生産研)は共同で、2013年から毎年1回テーマを設けて、中学・高校生向けの「鉄道ワークショップ」を開催している。2019年は、電車の動力であるモーターをテーマに、エコやSDGs(持続可能な開発目標)を意識したプログラムを8月2日に実施した。
場所は東京メトロの中野工場と、東京大学駒場キャンパス内にある東大生産研の施設。中学生向けと高校生向けのワークショップは同日に開催し、それぞれ午前と午後に場所を入れ替える形で行なわれた。本稿は中学生クラスのワークショップの様子を紹介する。
鉄道模型を使い、深く実験することの大切さを学ぶ
未来の理工系人材の育成、あるいは理数系の学問への関心をもってもらうことを目的として、2013年から開催している「鉄道ワークショップ」は、2019年で7回目を数える。中学生クラスのワークショップの参加者は、応募のあった約40名から提出された課題作文などを参考に25名が選ばれた。
課題作文のテーマは「気候変動に鉄道会社としてどう取り組むべきか」というもので、当日午前中はそのテーマについてのアイデアを参加者各自が披露した。電車の二酸化炭素排出量の少なさをアピールしつつ鉄道利用を促進する取り組みや、地下鉄路線の地上部にある空いている敷地の緑化、といった提案があった。
午前のワークショップが終わったあとは、実際に車両の整備が行なわれている中野工場の内部を見学。この中野工場は、東京メトロ銀座線と丸ノ内線で使われている車両の検査、整備などを担っており、車両の大部分を分解して検査・整備する「全般検査」と、車両の一部を検査・整備する「重要部検査」の2種類を4年ごとに交互に実施している。見学当日は、全般検査のために台車が外され、車内の隅々まで整備している車両を観察できた。
ワークショップのテーマがモーターということもあって、台車に搭載された比較的新しいタイプのモーターであるPMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor:永久磁石同期電動機)や、カットモデルを使ったモーターの内部構造についても、工場の担当者らが詳しく解説。そのほか電車にとって重要な各種部品や、台車と車輪を整備する様子も見ることができた。参加している中学生らは比較的自由に写真を撮影しながら、担当者に疑問・質問を次々にぶつけていた。
電車の動力であるモーターの原理を学ぶ
午後は場所を東大生産研に移し、電車の動力であるモーターの原理を学ぶワークショップが開始。なぜモーターが動くのか、電流の大きさと速度の関係がどうなっているのか、といったモーターの基礎的な知識について、目の前に置かれたブラシ式DCモーターや鉄道模型に触れながら学習した。
1チーム6人前後で構成された参加者が全員協力しながら、鉄道模型の速度を変えつつ電流と速度を計測する場面では、要領がつかめず四苦八苦している人も少なくなかったものの、KATOのパワーパックを操作して模型を操っている姿は生き生きとしたもの。
ワークショップの終わりでは、計測結果をグラフにしてチームごとに意見を発表。「電流の大きさと速度に相関はあるものの、直線的に変わるのか、二次曲線的に変わるのかについてはサンプルが足りない」ことを知識として得たうえで、「数値がばらついたからといって、失敗したと思ってはいけない」「繰り返し深く実験することでわかることがある」という講師からのメッセージを胸に刻んでいた。