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東京メトロの中野工場見学&東大キャンパスで電車モーターを学ぶ。中高生向けワークショップレポート

2019年8月2日 開催

東京メトロと東京大学生産技術研究所は中学・高校生向けの「鉄道ワークショップ」を開催した

 東京メトロ(東京地下鉄)と東京大学生産技術研究所(東大生産研)は共同で、2013年から毎年1回テーマを設けて、中学・高校生向けの「鉄道ワークショップ」を開催している。2019年は、電車の動力であるモーターをテーマに、エコやSDGs(持続可能な開発目標)を意識したプログラムを8月2日に実施した。

 場所は東京メトロの中野工場と、東京大学駒場キャンパス内にある東大生産研の施設。中学生向けと高校生向けのワークショップは同日に開催し、それぞれ午前と午後に場所を入れ替える形で行なわれた。本稿は中学生クラスのワークショップの様子を紹介する。

鉄道模型を使い、深く実験することの大切さを学ぶ

中野工場の建物からは、車両の検査や清掃を行なう中野検車区を一望できる

 未来の理工系人材の育成、あるいは理数系の学問への関心をもってもらうことを目的として、2013年から開催している「鉄道ワークショップ」は、2019年で7回目を数える。中学生クラスのワークショップの参加者は、応募のあった約40名から提出された課題作文などを参考に25名が選ばれた。

 課題作文のテーマは「気候変動に鉄道会社としてどう取り組むべきか」というもので、当日午前中はそのテーマについてのアイデアを参加者各自が披露した。電車の二酸化炭素排出量の少なさをアピールしつつ鉄道利用を促進する取り組みや、地下鉄路線の地上部にある空いている敷地の緑化、といった提案があった。

午前中のワークショップがスタート
アイデアを付箋に書き込んで貼り付けていく
中野工場とその関連施設の概要
銀座線と丸ノ内線の車両の種類

 午前のワークショップが終わったあとは、実際に車両の整備が行なわれている中野工場の内部を見学。この中野工場は、東京メトロ銀座線と丸ノ内線で使われている車両の検査、整備などを担っており、車両の大部分を分解して検査・整備する「全般検査」と、車両の一部を検査・整備する「重要部検査」の2種類を4年ごとに交互に実施している。見学当日は、全般検査のために台車が外され、車内の隅々まで整備している車両を観察できた。

中野工場の内部
全般検査を実施中の車両
車内も細部まで整備している

 ワークショップのテーマがモーターということもあって、台車に搭載された比較的新しいタイプのモーターであるPMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor:永久磁石同期電動機)や、カットモデルを使ったモーターの内部構造についても、工場の担当者らが詳しく解説。そのほか電車にとって重要な各種部品や、台車と車輪を整備する様子も見ることができた。参加している中学生らは比較的自由に写真を撮影しながら、担当者に疑問・質問を次々にぶつけていた。

台車を洗浄するエリア。1台あたり30分かけてじっくりきれいにする
分解された台車のフレーム。破損がないかなど、細部をチェックする
台車から外された車輪。摩耗度合いなどをチェック
ブレーキディスクにも摩耗の様子が見える
必要があればこの新しいブレーキディスクに交換することになる
新品と中古のブレーキパッド
ピニオンギアも分解・清掃
破損したピニオンギアを展示している
ピニオンギア破損により車輪が動かなくなり、引きずって偏摩耗した車輪
点検・整備が完了し、再度組み上げられた台車
台車自体はさほど新しくないが、モーターは比較的新しいPMSM(永久磁石同期電動機)に載せ換えているという
摩耗した車輪は切削して形が整えられ、再塗装して組み付けられる
モーターについて説明を受ける中学生
こちらはやや古いタイプのモーターとなる

電車の動力であるモーターの原理を学ぶ

東大生産研のプレゼンテーションルームで午後のワークショップがスタート

 午後は場所を東大生産研に移し、電車の動力であるモーターの原理を学ぶワークショップが開始。なぜモーターが動くのか、電流の大きさと速度の関係がどうなっているのか、といったモーターの基礎的な知識について、目の前に置かれたブラシ式DCモーターや鉄道模型に触れながら学習した。

東大生産研のなかでも、「次世代育成オフィス」と呼ばれる部門が今回のようなワークショップを開いている

 1チーム6人前後で構成された参加者が全員協力しながら、鉄道模型の速度を変えつつ電流と速度を計測する場面では、要領がつかめず四苦八苦している人も少なくなかったものの、KATOのパワーパックを操作して模型を操っている姿は生き生きとしたもの。

 ワークショップの終わりでは、計測結果をグラフにしてチームごとに意見を発表。「電流の大きさと速度に相関はあるものの、直線的に変わるのか、二次曲線的に変わるのかについてはサンプルが足りない」ことを知識として得たうえで、「数値がばらついたからといって、失敗したと思ってはいけない」「繰り返し深く実験することでわかることがある」という講師からのメッセージを胸に刻んでいた。

モーターの仕組みについての講義を受ける
目の前に置かれたDCモーターを動かしてみる
Nゲージも各チームごとのテーブルに1セットずつ設置
鉄道模型の速度を変えながら電流計測し、1周のタイムを記録していく
男子生徒が目立ったが、なかには女子生徒の姿も
最後は計測結果をグラフにして意見を発表した