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JALと東大、中高生向けに飛行機の飛ぶしくみを学ぶワークショップ(その1)

JAL羽田機体整備工場で、整備士と一緒に機体に迫る

2016年9月24日~25日 開催

 日本航空(JAL)と東京大学生産技術研究所(東大生研)は9月24日~25日に中学生を対象としたワークショップ「飛行機ワークショップ2016~飛行機の飛ぶしくみを学ぼう~」を開催した。

 このワークショップはONG(東京大学生産技術研究所 次世代育成オフィス)とJALが共同で実施。先端技術に触れ、航空の分野に興味を持ってもらうことを目的としたもの。10月29日~30日には高校生を対象としたクラスも実施予定。

 今回のワークショップは2日間の連続実施。中学生クラスも後日行なわれる高校生クラスも基本的な流れは同じ。1日目は飛行機の概要を学び、JALの機体整備工場を見学。2日目に東京大学生産技術研究所 駒場リサーチキャンパスにて講義と実験を行なう。今回は、9月24日~25日に行なわれた中学生クラスの内容をレポートする。

グループに分かれて飛行機の重さや整備体制を学ぶ

「JALメインテナンスセンター1」で実施
館内はJAL工場見学~SKY MUEUM~として予約制で公開されている

 参加した中学生は、Webサイトや各中学校に貼られたポスターなどを見て応募。1都3県を中心に全国から集まった中学1年生~3年生まで、女子7名、男子21名の合計28名。JALの格納庫で行なわれた1日目は、グループワーク、講義、見学を実施した。

 会場となった羽田空港に隣接する「JALメインテナンスセンター1」の会議室内に作られた各グループの座席には、中学生7名ずつに整備士と、東京大学生産技術所に属する学生が1人ずつ参加。中学生は学年のバランスを見てA~Dまであらかじめ4班に振り分けられていた。13時すぎにワークショップが開始。

 JALの担当者からの挨拶のあと、早速グループ別にアイスブレイクを開始。ペアになった相手に名前や、なぜこのワークショップに応募したか聞き、あとから紹介する「他己紹介」を行なった。

 この他己紹介のあと、JALグループの概要やJALグループの使用機材をスライドで紹介。ボーイング 777-300ER型機を例に、長さは74mで「新幹線7両分」、重さは「大人の象85頭分」といった分かりやすい解説から、機体全体の重さ340トンのうち、50%が機体、40%が燃料、乗客や貨物は10%程度しかないこと、整備の分類には機体整備と工場整備があること、整備のタイミングや運航整備で何が行なわれているかなど具体的な説明が行なわれた。

会議室で4グループに分かれて講義とグループワークを実施
日本航空株式会社 総務本部 広報部担当部長(兼)安全推進本部付 阿部和利氏から、今回の「飛行機ワークショップ」全体の流れを解説
アイスブレイクで他己紹介を開始。各グループには整備士と東大生産技術所の学生も参加
中学生たちは講義を熱心に聞き、質問にも答えていた

「未来の飛行機」についてグループでディスカッション

株式会社JALエンジニアリング 人材開発部 部長 海老名巖氏から「未来の飛行機」についてのディスカッションについて解説

 続いて、このワークショップの応募時に課題として提出された「あなたが理想とする未来の飛行機について」の内容についてグループでディスカッション。どのような内容を考えたかを話し合い、グループごとに代表的なアイデアを発表した。

 Cグループからは「飛ぶときの風を使って発電する飛行機」、Aグループからは「機内がうるさくない飛行機」、Dグループからは「どんなところにでも着陸できる飛行機」、Bグループからは「外の景色が透けて見える機体」などさまざまな意見が出ていた。

 それを受ける形で、JALエンジニアリングの海老名氏から、その未来の飛行機はなぜ今ないのか、将来実現可能なのかなどについていくつかの例を交えて解説された。例えば、機内で耳が痛くなるのは気圧によるもので、機内がうるさく感じるのもその気圧を調整するために1秒間に約5m3の大量の新鮮な空気を吹き出し口から吹き出しているためであることや、座席を広くするには席数を減らすことになるが、収益に直結するため現状では「SKY WIDER」などシートに工夫をして広く使えるようにしていること、外の景色が見える機体のアイデアを出している会社もあること、などを説明。

 最後に、次に向かう整備場の見学で見るべきポイントを確認しながら解説。90分間ほどのグループワークと講義を終了した。

初対面ということでアイスブレイク時はやや遠慮気味だったが、グループワークではディスカッションもスムーズだった
アイデアの実現可能性、なぜ今できないかを技術解説を交えながら説明
各グループから代表的なアイデアを発表

JAL格納庫「M1」「M2」を整備士と一緒にまわり、飛行機について知る

会議室のすぐそばのドアが開くとそこもう格納庫

 講義のあとは整備場へ。まずは「M1」と呼ばれるメインテナンスセンター1を見学、170m×105mの格納庫を上階から見下ろした。中学生たちはドアの向こうに突然広がるスペースに驚きながらも、各グループを担当した整備士に質問しながら熱心に見学していた。

JAL格納庫「M1」。天井からの幕は塗装時に使われる
中学生は迫力にくぎ付け。各グループの整備士に質問していた
この整備場の役割などを全体解説

 次に環状8号をまたぐ連絡橋へ移動し、滑走路やレーダーについて解説を受けた。

連絡橋からの景色を利用して滑走路やレーダーについて解説

 そしてさらに先に進んで、「M2」と呼ばれるメインテナンスセンター2へ移動。こちらはさらに広い195m×105mの格納庫で、地上まで降りて間近で飛行機を見ながらグループごとに整備士から直接解説を受けた。整備士が同行していることで、普段の見学では見られない間近まで迫り、飛行機のしくみを実物で体験。約80分間、じっくり時間を取って丁寧に見学してまわり、非常に貴重な体験となった。

JAL格納庫「M2」には、ボーイング 767-300ER型機、777-300ER型機、737-800型機とタイプの違う3機が揃い、整備を受けていた
ヘルメットをかぶり地上から見学
整備士から直接説明を受けながら格納庫内を移動
全体の解説は、目前の滑走路に着陸する飛行機を見ながら解説などが実施された
各グループについた整備士が質問に丁寧に回答
エンジンを見学
主翼も間近で見学
各グループに整備士が同行することで、普段は見られない距離まで飛行機に迫って解説された

 会議室に戻り、東京大学 生産技術研究所、次世代育成オフィス(ONG)室長の大島まり教授から翌日の概要について説明を受け、1日目の日程は終了した。

ONG室長の大島まり教授が翌日の概要を解説
クリアファイルにもなるバッグに入れられJALの記念品が配られた