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トリップアドバイザー、「インバウンドレポート2019」無償公開。「訪日客をひとくくりにしてはいけない」

レポートはPDF形式で誰でも参照可能

2019年7月12日 無償公開

トリップアドバイザー株式会社 代表取締役 牧野友衛氏

 トリップアドバイザーは7月11日、都内で会見を開き、同社初のインバウンドレポートを発表した。

 これまで利用者の傾向やランキングなどを単発で発表してきたが、アクセス状況や検索内容、その後の行動、口コミ投稿といったデータをまとまった形で公開するのは初めてのことだという。

「インバウンドレポート2019」は、世界各国でのトリップアドバイザーの利用傾向と分析(第2章)、口コミデータから集計した訪日外国人旅行者の人気ランキング(第3章)、2万人以上の会員アンケートで見た観光地としての日本(第4章)、近年注目されている「体験型コンテンツ(アクティビティ)」について(第5章)、施設管理者のトリップアドバイザー活用法(第6章)などの内容からなる。

 文書はPDF形式で無償公開されており、同社のWebサイトから誰でも自由にダウンロードできる。

 レポートの詳細説明に先立ち、代表取締役の牧野友衛氏はトリップアドバイザーの基本情報を紹介。アメリカ発祥のサービスであり、ホテル・観光スポットなどの口コミ投稿で構成されているが、最近は体験アクティビティ、エアライン、クルーズなどの口コミにも範囲を広げているという。

 また、オンラインで情報収集する人の6割がトリップアドバイザーを見ているという外部の調査結果を挙げ、業界に与える影響の大きさをアピールした。特にユーザーの多い欧米豪では旅マエ・旅ナカの情報収集に口コミサイトを利用する傾向が強く、一方でアジア近隣の韓国・台湾・香港などでは個人ブログの影響力が強いという分析も出ている。

 最近の取り組みとして、観光施設やアクティビティの電子チケット販売を強化していることを紹介し、全世界で20万件以上、28言語、14の通貨に対応、「世界のトレンドを知ることで日本での商品作りに役立つ」として、日本でも注目されつつある「旅ナカのアクティビティ」の商品開発に役立ててほしいとした。

牧野氏が示したスライド
トリップアドバイザー株式会社 シニアリサーチマネージャー 櫻井泰斗氏

 シニアリサーチマネージャーの櫻井泰斗氏は、トリップアドバイザーにおける「日本の情報」へのアクセスは増加傾向にあり、2013年から2018年までの年平均増加率は24%、対前年の増加率ではインド・イタリア・ニュージーランドが上位に入り、「アジア近隣国以外でも日本への関心が高まっている」という分析を紹介。

 そして、アクセス状況や口コミ投稿、会員へのアンケートから出た答えの一つは「訪日客をひとくくりにしてはいけない」というもの。

トリップアドバイザーへのアクセス状況

 日本から近いアジアの旅行者と日本から遠い欧米豪の旅行者では、日本に求めているものが互いに異なり、例えば目的地では東京・大阪・京都が人気トップ3であることは共通しているが、アジアからは北海道、欧米豪は広島がそれぞれの第4位になっている。この傾向は、「旅のテーマ」の設問において、歴史探訪と都市観光がともに人気である半面、アジアからは日本の山や海が支持されているのに対し、欧米豪からはポイントを下げているという点にも表われている。つまり、比較的距離の近いアジアでは雪やビーチといった観光素材が人気を集めるが、距離の遠い欧米からは魅力的に映らない(日本ではなくもっと自国に近いリゾートを訪問している)ことが読み取れる。

 このほかにも、欧米豪の旅行者は伝統文化(侍、着物、日本美術など)を旅の決め手にしているのに対して、アジアの旅行者は季節のイベント(花見、紅葉など)を重視していたり、ほとんどの国から興味を持たれてないポップカルチャー(アニメ、Jポップなど)が中国の旅行者から高いポイントを示していたりなど、地域や国、日本との距離によって明確な差異が認められる結果が出ている。

 また、櫻井氏は、訪日外国人旅行者の消費額構成比において「買い物代」が減少傾向にあることを指摘。金額ベースではまだまだ大きいとはいえ、継続的に消費額を上げていくためには「コト消費(=体験型コンテンツ)」の発展拡大がカギを握るとして、同社も力を入れている旅ナカのアクティビティの商品開発が重要であるとまとめた。

櫻井氏が示したスライド