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トリップアドバイザー、「インバウンドレポート2020」。欧米豪の取り込みは接遇などソフト面が課題

2020年4月28日 実施

トリップアドバイザーがメディア向けのオンラインセミナーを実施した。写真は説明を行なうトリップアドバイザー株式会社 代表取締役の牧野友衛氏

 トリップアドバイザーは4月28日、メディア向けのオンラインセミナーを実施し、新型コロナウイルスへの対策を説明したほか、外国人旅行者の動向などを分析した「インバウンドレポート2020」を発表した。セミナーには本誌もリモートで参加している。

 同社では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、施設の最新情報をよりタイムリーに提供すべく3月からサイトの改良を進めてきたという。

 例えばレストランなどでは緊急事態宣言の発令中は営業時間を短縮したり、店内での飲食を取りやめていたりといったケースが見られるが、こうした「平時とは異なる情報」が一目で分かるよう、テイクアウトやデリバリー対応、食事券のようなギフトカードの販売について、施設管理者側で無料で設定できるようにオプションを用意している。ちなみに、現在トリップアドバイザーに掲載されている日本国内のレストランのうち、3万軒以上でテイクアウト・デリバリーに対応しており、検索フィルタを使うことで容易に絞り込めるとしている。

レストラン施設ページの機能を改良
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて口コミガイドラインを変更

 トリップアドバイザー全体としては、世界中でどのような対応を行なっているかまとめたページを用意しており、代表取締役の牧野友衛氏は一連の対応について「利用者に早めに情報を提供する必要がある」と背景を話す。

 また、こうした状況を受けて口コミのガイドラインを変更している。通常は機械的に処理しているところを、新型コロナウイルスに言及している投稿を検出した場合は、マニュアルでの対応に切り替える。具体的には削除対象となる口コミの判別を行なっており、「政府のガイドラインを無視するような呼びかけ」「休業している施設への批判」などの記述があると手動で削除を行なうという。

 今後の取り組みとしては、事態の収束後に行きたい場所や施設をリスト化して、タイトルの冒頭に「きっと行く」を付けて公開すると、毎月抽選で将来使えるチケットやグッズをプレゼントする「きっと行く旅リストキャンペーン」を展開する。期間は5月1日から6月30日まで(状況により延長)で、詳細は4月30日に発表する予定。

 さらに、同社としては初の取り組みという「事業者向けのオンラインセミナー」を開催する。対象はレストラン、観光施設、ホテルなどの従事者で、5月中旬から下旬の実施を見込んでいる。日本のトリップアドバイザーのトラフィックの8割は国内を対象にしており、牧野氏も旅行需要は「国内旅行から回復するとみている」と述べ、セミナーを通じてトリップアドバイザーの効果的な使い方を紹介する予定だという。

日本人に聞いた「次に国内・海外旅行に行くタイミング」

 また、日本と海外のコロナ禍における市場動向にも言及し、日本人に対して4月に行なった調査では、61%が1年以内、34%が半年以内に国内旅行を検討しており、海外旅行は1年以上様子見という回答が87%を占めた。その旅行も、自宅から90分以内の近場が31%、90分以上の移動が34%となっており、飛行機(国内線)を使った旅行は23%、海外旅行は12%と比較的バラツキがあると分かる。

 一方、外国での結果では、シンガポール、オーストラリア、イギリスなどで5時間以上の長距離のニーズも高く、半数程度は収束後に今まで同様、それ以上の頻度で旅行をしたいという結果が出ており、牧野氏は「インバウンドは確実に戻ってくると考えて準備をするとよいのでは」と考えを示した。

欧米豪の訪日客の不満は「スタッフ」「サービス」などソフト面に集中

日本の施設に寄せられた口コミの分析結果を照会したのはトリップアドバイザー株式会社 シニアリサーチマネジャーの櫻井泰斗氏

 インバウンドレポート2020については、シニアリサーチマネジャーの櫻井泰斗氏が説明を担当した。前回(2019年版)は7月に公開しているが、より早く動向をつかんで対応を始めてもらうためにもこのタイミングでの公開を決めたという。なお、本レポートはPDF形式で誰でも無償でダウンロードできる。

 2019年に日本の施設に対して外国語で投稿された口コミは、東京・京都・大阪・北海道・沖縄の上位5都道府県が全体の約66%を占め、前回とほぼ同じ傾向を示している。

 宿泊施設の人気ランキングでは、クラブメッドやMIMARUなどに代表される長期滞在型に根強い人気が集まる一方、京都を中心に小規模・ユニークなホテルの人気も高まっており、「訪日客の選択肢が多様化している」傾向が見られる。レストランの人気ランキングではステーキ・すき焼き・しゃぶしゃぶといった肉料理店が多数ランクインしており、前回に続いて上位に付けている店舗の特徴としては、「英語が通じる」「英文メニューがある」「フレンドリー」といった要素が挙がったという。観光スポットランキングでは、6年連続1位の伏見稲荷大社(京都市)を退け、広島平和記念資料館(広島市)が1位を獲得している。検索数自体は伏見稲荷が多かったものの、資料館は星5つの評価が多かったことが要因になっている。

外国人旅行者の人気ランキング

 続いて櫻井氏は、口コミから見えてきた「日本市場の課題」について解説した。観光庁の統計によると、欧米豪の訪日客の消費額は、中国を除くすべてのアジア地域を上回っている。国土の狭い日本ではオーバーツーリズムが起こりがちで、訪日旅行者数を闇雲に増やすのではなく1人あたりの消費額を底上げしていく必要がある。その意味で、「消費額の大きい欧米豪からの旅行者をいかに取り込むかが大事」だという。

 櫻井氏は、そのための課題の1つに「口コミ不足」を挙げた。例えば、欧米豪のトリップアドバイザーの利用状況で(中国本土を除く)アジアについて絞り込むと、情報収集段階(検索数)では日本はタイに次ぐ2位に付けているが、実際の口コミ投稿数はタイ、インドネシア、ベトナム、インドに続く5位と順位を下げてしまっており、効率的に口コミを獲得できていないことが分かる。これは宿泊・飲食・観光のどの施設カテゴリーでも同じ傾向で、口コミを集められていない。

欧米豪の訪日客は消費額が大きい
欧米豪の日本への関心の高さに対して、口コミ数が十分ではないという結果に

 また、宿泊施設の平均点を見ると、(中国本土を除く)アジア15か国中で日本は12~14位とかなり低い評価になっている。この結果にショックを受けたという櫻井氏が口コミ内容を分析したところ、日本は「部屋」「ベッド」「トイレ」「シャワー」など施設のハード面が満足点として語られる傾向にある一方、「朝食」「スタッフ」「サービス」「食事」などソフト面で好意的な話題がでにくい現状があるという。また、ネガティブな話題になると、「ロケーション」「駅」「電車」「バス」など、空港からホテルまでのアクセスのわるさや公共交通機関の使いにくさで、アジアに比べて突出して低い評価を得てしまっている。

宿泊施設に対する評価

 飲食施設の口コミ評価でも日本はアジアの下位グループであり、例えば飲食店の不満点が語られるときに「食べ物」の次に出てくる話題は「サービス」「ウェイター」「スタッフ」と接遇についてが中心になっている。観光施設とアクティビティの評価では、「サイズ違いの服を一度開封したら返品交換を受け付けてもらえない」といった海外との商習慣の違いからくるトラブルや、「混雑しすぎていて行列にうんざりする」といった不満点が挙がっているという。欧米豪の訪日客のさらなる取り込みには、こうしたギャップの解消が求められていると言えるだろう。

飲食施設に対する評価
観光施設・アクティビティに対する評価