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キュナード、2021年までに日本人乗船客を4倍に。クイーン・エリザベスの日本周遊クルーズ拡充など日本戦略を語る

2022年には新造船導入

2019年4月17日 実施

記者会見で日本戦略などを語ったキュナード・ライン 国際開発企画担当 副社長 マット・グリーヴス氏

 キュナード・ラインは4月17日、同社のサービスや、今後の日本市場に対する戦略などを紹介する記者会見を都内で実施した。

 年々、日本発着クルーズを拡充しているキュナードは1月、日本オフィスのコマーシャル・ディレクターに浅井信一路氏を任命するなど、日本人顧客の獲得に注力している。記者会見であいさつした浅井氏は、「まわりを海に囲まれた日本で、クルーズがより身近な存在になったとの声を多く聞かれる。船内に一歩入ると英国を感じられる。そういった体験を提供できるのはキュナードならでは」と同社の強みを語った。

キュナード・ライン ジャパンオフィスのコマーシャル・ディレクター 浅井信一路氏

 キュナード・ライン本社から来日した国際開発企画担当 副社長 マット・グリーヴス氏は、「今後はこれまで以上に日本人のお客さまに乗船いただくことを楽しみにしている。そうなるとキュナードにとって横浜や東京は第2の故郷のような場所になるだろう」と、日本市場への意気込みを語る。

 日本人に対しては、「多くの日本人にキュナードが愛され、特にクイーン・エリザベスに愛を寄せられている。将来に向けてどんどん関係を強化したいし、予約状況が非常によいのはさらなる良好な関係の前兆だと思う」と話す。また、日本とキュナードは、1922年に史上初の世界一周クルーズを行なったラコニアが横浜港に寄港して以来の関係で、皇太子時代の今上天皇陛下がクイーン・エリザベス2に乗船したことや、クイーン・エリザベス2世の戴冠式のためにキュナードの船に乗船したこと、また、1989年と1990年に横浜港130周年を祝福するためにクイーン・エリザベス2が長期停泊した際には18万人の日本人が船を見に訪れたなど、日本との関係を示す数々のエピソードを紹介した。

 最近のエピソードでは、「3月2日にクイーン・メリー2が北九州港に寄港した際には1万1000人の方が集まり歓迎してもらった」「クイーン・エリザベスの秋田寄港に際しては、JR東日本がクイーン・エリザベスを見に行くための臨時列車を運行する」と話し、こうした対応に感謝を示すとともに、「日本人の皆さまが3隻のクイーンに会いに行くのは慣習になりつつあるようだ」と、日本人にキュナードの船が愛されていることを示した。

クイーン・エリザベス

 グリーヴス氏は、日本人顧客獲得に「世界戦略の一環として世界中のお客さまに乗船してほしいと思っており、日本市場も重視している。日本はコア市場になりつつあり、今後数年間、さらに成長できることを願っている」とコメント。日本人のクルーズ宿泊数は2017年で6.9日で、前年から0.2日増加。アジア市場全体で、より長い旅を楽しむ乗船客が増えていることや、クルーズ市場全体で年間100万人の新規顧客増加が見られる現状で、「2021年までに2018年の乗船者数の4倍の顧客獲得を目指す」とした。

日本人乗船客の目標。2020年までに2018年から4倍の顧客獲得を目指す

 キュナードは、クイーン・エリザベスを使用し、2018年には計7泊の日本周遊クルーズを実施。2019年は新たにオープンする横浜港の大黒ふ頭ターミナルへの4月19日入港を皮切りに日本周遊クルーズを2回、計16泊分を実施する。また、2020年は東京港にオープンする東京国際クルーズターミナルへの入港が決まっており、7回、計61泊分の日本周遊クルーズを実施する計画となっている。

 新たな寄港地も増えており、2021年には沖縄諸島エリアに寄港することも明言。「日本は刺激的で異国情緒あふれる国のイメージから欧米豪のお客さまに需要があり、日本人にとっても日本周遊クルーズをしたいとのキュナードへの信頼がある」と、外国人、日本人を問わず人気のスポットであるという。

クイーン・エリザベスによる2019年の日本周遊クルーズ

 寄航地観光(ショアエクスカーション)については、浅井氏が「外国人、日本人の双方に気に入っていただけるプログラムであることを強調している。ただ(キュナードは)地元の専門家ではないので、オペレータのアドバイスをいただいている。ほかのクルーズラインとは違うところ、少人数で行けるなど、キュナードの寄航地観光だからこそ行ける観光を開拓していきたい」との方向性を示した。

 日本発着クルーズの増加により、船上での日本人向けサービスも強化。「あらゆる部門で日本語を話せるスタッフの採用を増やし、主なコミュニケーションの日本語化を徹底する」という言語面での対応のほか、日本人向けにコシヒカリを使った料理や、ソムリエの田崎真也氏が選んだワインなどを提供。日本人に合った食事やエンタテイメントの選択肢拡充なども図る。

 一方でグリーヴス氏は「このような(日本人向けサービスの)強化を図っても、お客さまから重要との声をいただくブリティッシュ・ラグジュアリーの体験は変わらない」と、キュナードらしさは堅持することも強調。レストランなどのサービスは日本人乗船客からも好評だという。

2022年に完成、導入を予定する新造船のイメージ

 このほかグリーヴス氏は、キュナードが建造中の新たな客船について紹介。これは、2022年の完成、導入を目指しているもので、同社にとってクイーン・エリザベス以来12年ぶりの新造船で、累計249隻目、クイーン・メリー2を皮切りとするラグジュアリー客船として4隻目の船となる。また、1980年代以降では初めて4隻の船を運用することになる。

 グリーヴス氏は「どこの国に行っても、必ず名前を聞かれる」と笑うが、船名はまだ明らかにされていない。イタリアで建造中で、世界で著名なデザイナーを起用したインテリア設計など、完成に向けて計画が進行中であると述べた。