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初の日本発着クルーズに出発した「クイーン・エリザベス」の船内

木材を多用したぬくもりのある船内。キュナードの歴史を伝える品々も

2017年3月13日 神戸港到着

2017年3月13日~20日 区間クルーズ実施

クイーン・エリザベスの船内見学会に参加。エントランスにあるこの絵は初代のクイーン・エリザベスを描いた寄木細工

 3月13日~20日に初の日本発着クルーズを実施する豪華客船「クイーン・エリザベス」。3月13日に発着港となる神戸港に到着した。そのことは別記事「豪華客船『クイーン・エリザベス』が、初の日本発着クルーズに向け神戸港に到着」でお伝えしているが、同日にメディア向けの船内見学会が実施されたので、その内容をお伝えする。

 キュナードのクイーン・エリザベスは、1940年に就航した「クイーン・エリザベス(初代)」、1969年に就航した「クイーン・エリザベス2」の名を継ぐ船としては3代目にある客船で、現在の英国女王であるエリザベス2世によって命名された。特にクイーン・エリザベス2は広く知られており、1970年代の横浜港寄港の際には見学のために55万人が詰めかけたという記録があるというほど。

 2010年10月12日に就航した3代目となるクイーン・エリザベスの日本での人気は高く、アジア圏の利用者の70%が日本人であるという。到着時の記事でもお伝えしたとおり、2017年の神戸発着、2018年の大阪発着という日本発着クルーズは即日完売したということも、その人気を示している。

 総トン数が9万トンを超える大型客船で、乗客が利用する範囲だけでも12デッキと非常に広い。見学会では、時間の制約もあり、主に“クイーン・エリザベスらしい”施設を中心に披露された。

船内に掲示されている船内マップと各デッキの施設。デッキ1~12が乗客が利用できるデッキとなる
ラウンジやホールで行なわれるイベントなどは、毎日発行される船内新聞で告知される

 まず、ボーディングブリッジ(客船ではギャングウェイということも多い)を通り、手荷物検査やパスのチェックを受けて船内に入ると目に飛び込んでくるのが、初代クイーン・エリザベスを描いた寄木細工だ。ここはグランドロビーと呼ばれる3層吹き抜けのエントランスで、これはエリザベス2世の甥で、寄木細工の彫刻家でもあるリンリー子爵によるもの。グランドロビーではハープやヴァイオリンなどを使った演奏会も開かれる。

 また、船内に入ってすぐのところにはエリザベス2世の肖像画が飾られている。ちなみに、キュナードが現在運航している船のうち、クイーン・メリー2も同様にエリザベス2世が命名。そちらには写真が飾られているという。

乗船後に乗客を迎えるグランドロビー
ハープやヴァイオリンなど楽器の演奏が行なわれる
エリザベス2世の甥にあたるリンリー子爵が手がけた初代クイーン・エリザベスの寄木細工
同船の命名者であるエリザベス2世の肖像画
グランドロビーを最上部から見たところ

 キュナードは世界で2番目に歴史のあるクルーズ会社ということで、そうした歴史を感じさせる展示も多い。クイーン・エリザベスやエリザベス2世にちなんだ展示物や、過去の客船の油絵などをいたるところで見ることができる。

 また、タイタニックを運航していたことで知られるホワイトスター・ラインはキュナードに吸収合併されたが、その定評あるサービス引き継ぐことを意味して、スタッフは「ホワイトスター・サービス」のピンバッジを着けている。ちなみに、全行程に日本人スタッフが同行している。

クイーンエリザベスにまつわる写真や縁の品の展示コーナー
エリザベス2世とクイーン・エリザベスにまつわる写真など
ショップではキュナードやクイーン・エリザベスに関するグッズが販売されている
ロビーなどにキュナードの過去の客船の油絵などが飾られている
タイタニックを運航していたことで知られるホワイトスター・ラインのおもてなしを引き継ぐことを表わす「ホワイトスター・サービス」のピンバッジ
クイーン・エリザベス2から移管された3点の装飾品

 ちなみに、先代のクイーン・エリザベス2が売却される際に、船内の美術品のほとんども一緒に売却されたそうだが、3点だけキュナードが保有し、この3代目となるクイーン・エリザベスに展示されている。「クイーンズ・ルーム」近くに置かれているエリザベス女王の金の胸像、「ザ・ヨット・クラブ」に置かれている銀のクイーン・エリザベス2、そしてコモドアー・クラブの近くにあるクイーン・エリザベス2の鐘だ。乗る機会があったら、必ず目にしておきたい品々だ。

エリザベス女王の金の胸像
銀のクイーン・エリザベス2
クイーン・エリザベス2の鐘
ロイヤル・アーケード

 デッキ3にあるショッピングアーケードで、見どころはデッキ2からロイヤル・アーケードへ上るところにある時計。ロンドンの時計塔「ビッグ・ベン」の時計を作ったデントによるクイーン・エリザベス向けの特注品。「DENT」のロゴとともに、「CUNARD」のロゴ、そしてクイーン・エリザベスの就航年である「2010」の文字が盤面に描かれている。

 余談ながら、ビッグ・ベンの正式名称は現在「エリザベス・タワー」と変わったことも縁を感じるところだ。

デッキ2からデッキ3のロイヤル・アーケードへ向かう階段には、ビッグ・ベンの時計メーカーとして知られるデント製の特注品が飾られている。このカーブを描く階段は、女性がドレス姿で下りてくるときに最も美しく見える角度で、船内のさまざまな場所の階段がこのような作りになっている
デッキ3にあるロイヤル・アーケード
クイーンズ・ルーム

 デッキ2にある2層吹き抜けのボールルームで、昼間はアフタヌーンティーを楽しむ場所として、夜はダンスホールとして使われる。こうした本格的なダンスホールはキュナードが所有する3隻の客船すべてに備えており、日ごとに異なるテーマに沿った社交ダンスの場になる。専属のダンスホストも乗船しており、ダンスレッスンなども行なわれるという。

本格的なダンスホールを備えるクイーンズ・ルーム
ゴールデン・ライオン・パブ

 デッキ2にある英国風パブ。10種類の英国ビールなどを用意しており、昼はフィッシュ&チップスなどのパブ・ランチ、夜はピアノやジャズの演奏が行なわれる英国風パブの雰囲気に包まれる。

 ちなみに、このゴールデン・ライオン・パブの目の前にはカジノも設置している。カジュアルな大型客船では広大なカジノを設けることが多いが、ラグジュアリー層の乗客が多いクイーン・エリザベスの顧客層に合わせ、2014年に行なわれた改修で面積を縮小した。

英国パブの雰囲気をそのまま感じられる「ゴールデン・ライオン・パブ」
2014年の改修で面積を縮小したカジノ
ロイヤル・コート・シアター

 デッキ1~3におよぶ3層吹き抜けのシアター。特徴は16のプライベート・ボックスを持っていること。プライベート・ボックスは乗客すべてが利用可能で、事前に予約をする(有料)。

 ちなみに、このうちの15番のプライベート・ボックスは、クイーン・エリザベスの命名式の際に、エリザベス2世が着座したそうだ。

ロイヤル・コート・シアター
両ウィングに16のプライベート・ボックスを備える。このうち15番(写真右)は、命名式の際にエリザベス2世が座った席
ザ・ヨット・クラブ

 デッキ10にあるラウンジで、プールに向かって視界が開けている。先述した銀のクイーン・エリザベス2が置かれている場所で、この「ザ・ヨット・クラブ」という名前をクイーン・エリザベス2から名前を受け継いでいるという。

銀のクイーン・エリザベス2が置かれるラウンジ「ザ・ヨット・クラブ」
コモドアークラブ

 デッキ10の船内最前方にある見晴らしのよいラウンジ。海洋をテーマにしており、クイーン・メリー2やクイーン・ヴィクトリアのモデルシップなどが置かれている。

 また、エレベータホールからコモドアークラブに通じる通路には、初入港した港から贈られる入港記念盾が飾られている。

デッキ10の船前方にあるラウンジ「コモドアークラブ」
海洋をイメージしたコモドアークラブには、「クイーン・メリー2」(写真中央)、「クイーン・ヴィクトリア」(写真右)のモデルシップも飾られている
エレベータホールからコモドアークラブへ向かう右舷側(スターボードサイド)の通路
2014年3月の初入港時に神戸港から贈られた盾
ザ・ガーデン・ラウンジ

 デッキ9にあるラウンジで、天井がガラス張りになっているのが特徴。このような上部から外光が差し込む明るいラウンジは客船では珍しいといい、昼は太陽、夜は星空の下でお酒などを楽しめる。

 デザインは英国の王立植物園「キューガーデン」にあるグラスハウスをイメージしており、初代クイーン・エリザベスも同名のラウンジを備えていた。

ザ・ガーデン・ラウンジ
ミッドシップス・バー

 デッキ3にあるバーで、ここも初代クイーン・エリザベスにあった同名のバーを引き継いでいる。バーエリアにはクイーン・エリザベスのモデルシップなど縁の品が置かれている。

 また、このバーには「ヴーヴクリコ」のシャンパンが飾られている。ヴーヴクリコはキュナードのオフィシャルシャンパンとして採用されており、船内のほかのバーでも楽しめる。

デッキ3にある「ミッドシップス・バー」
パビリオン・プール

 デッキ9の屋外エリアに設けられたプールで、温水のジェットバスも2槽備えている。クイーン・エリザベスのデッキ9にはプールは2カ所あり、パビリオン・プールは船中央付近にある。

 このほか、この見学会では訪問していないが、船体最後方部にリド・プールがあり、そちらはプールサイドのスペースが広いのが特徴となっている。

デッキ9の船内中央部にあるパビリオン・プール
プールサイドの休憩スペース
デッキ10の通路にもデッキチェアが用意されている
Queen Elizabethの刻印入りベンチや、CUNARDロゴ入りのゴミ箱も
リド・レストラン

 デッキ9にあるビュッフェスタイルのカジュアルレストランで、朝食、ランチ、アフタヌーンティー、ディナー、バーと24時間オープン。朝食にはご飯(米)などの日本料理も提供する。

 また、予約ならびにカバーチャージ(追加料金)が必要となるが、ディナーにはウェイターサービス付きのエリアも設けられ、南米料理の「アサド」、アジア料理の「ジャスミン」、メキシコ料理の「アズテック(アステカ)」という3種類のテーマレストランが日替わりで登場する。

リド・レストラン。夜は一部エリアがテーマレストランとなり、3種類のテーマに沿った食事を日替わりで提供する
ビュッフェ台
見学時にはランチ時間帯の料理やスイーツが並んでいた
メインダイニング

 クルーズ代金に含まれるメインダイニングでの食事は、部屋のクラスごとに異なるレストランを利用できる。クラスは4つに分かれており、上級から順に「クイーンズ・グリル」「プリンセス・グリル」「ブリタニア・クラブ」「ブリタニア・レストラン」を利用する。

4クラスの上から3番目のクラスの乗客が利用するメインダイニング「ブリタニア・クラブ」
4番目のクラスの乗客が使用する「ブリタニア・レストラン」。朝食、昼食などもこちらで食べられる。ディナーのみテーブルが決められており、入れ替え制で2回に分けて提供する
ブリタニア・レストラン