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JALと福岡県福智町、「シュガーロード号」運行。平成筑豊鉄道車内でフレンチなどファーストクラス体験

連携協定企画の第1弾

2018年9月22日 実施

JALと福智町の包括連携協定によるフレンチ&スイーツ列車「シュガーロード号」

 JAL(日本航空)は9月22日、平成筑豊鉄道の列車を利用した特別列車「シュガーロード号」を運行した。

 JALと福岡県田川郡福智町は7月26日に包括連携協定を締結しており(関連記事「JAL、福岡県福智町と包括連携協定を締結。第1弾は9月22日のフレンチ&スイーツ列車」)、その調印式で予告したコラボ企画第1弾として実施したもの。列車内をレストランに改装し、田川郡出身のフレンチシェフ「アニオン(福岡市中央区)」の本田フトシ氏による料理やデザートを楽しめるという内容になっていた。

 地元福智町をはじめとした福岡県内産の食材によるフレンチ料理を、国指定伝統工芸品に指定されている上野焼の器で、まさに目と舌で福智町を感じることができる。さらに各料理とペアリングされるワインには、JAL国際線で提供されている銘柄のなかから、本田シェフがセレクト。

 これら料理などのサービスは、過去に東京・恵比寿の「ガストロノミー ジョエル・ロブション」でメートル・ドテル(給仕長)として勤務、さらにフランスで開催されるレストランサービスの世界大会「メートル・ド・セルヴィス杯」で世界一に輝いた経験を持つ宮崎辰氏が務めた。

「へいちく浪漫号」をベースにJALのヘッドマークが掲げられた「シュガーロード号」

出発地点となった直方駅。平成筑豊鉄道伊田線とJR筑豊本線が乗り入れている
出発時刻前の11時過ぎには参加者が集まってきた
シュガーロード号は2両編成。客車とキッチンカーが完全に区切られていた

 このシュガーロード号の工程は、直方駅を出発し南に向かい、金田駅を通過し田川伊田駅を折り返し直方駅に戻るというルートを2往復するプラン。その間に筑豊エリアの風景や、フレンチ料理とワインを堪能し、2往復目にはアルゼンチン出身のギタリストであるレオナルド・ブラーボ氏の演奏に聴き入りながら、直方駅に戻ってきて終了となる。

 出発時刻は11時56分と設定されており、その前にはホームで開会セレモニーが行なわれた。その際、高級シャンパンである「ルイ・ロデレール クリスタル」が提供された。こちらもJAL国際線のファーストクラスで提供されている。

 セレモニーでは、福智町長の嶋野勝氏より「JALと福智町、6年にわたりまちづくりに取り組んでまいりました。そして、7月に包括連携協定を結び、その第1弾が今日です。普段とは違う空間を楽しんでいただければと思います」とあいさつがあった。

 続いて、JAL 山口・九州地区支配人 溝之上正充氏から「航空会社と鉄道会社と自治体が共同で企画を作り上げるというのは、全国的にめずらしいと思っていますが、今回で3回目を迎えます。内容からすると今回が一番、豪華なしつらえになっていると思います。そして、車両のヘッドマークは福智町の職員の方に作っていただきました。

 シュガーロード号の名前の由来ですが、江戸時代に長崎の出島から陸揚げされた砂糖が、長崎から佐賀そしてこの筑豊を通って小倉から大阪、江戸へと、長崎街道を通っていました。それがシュガーロードと呼ばれています」と紹介があったあと、参加者は車内の席についた。11時56分、予定どおりシュガーロード号は直方駅を出発。

2両目はシェフが使用する専用スペースとなっていた
2人1組が向かい合って座れるようにボックス席が設定されていた
出発前に「ルイ・ロデレール クリスタル」がウェルカムシャンパンとして振る舞われた
福智町の職員が手作りしたJALのヘッドマーク
福智町長 嶋野勝氏
日本航空株式会社 山口・九州地区支配人 溝之上正充氏

筑豊の風景を眺めながら、地元食材を使ったフレンチを堪能

 出発したシュガーロード号の車内では、さっそく料理の提供がはじまった。1皿目は「南蛮カステラとフォアグラのコンフィ」と「ハーブのブラマンジェと塩アイス」に、「デュモル シャルドネ ロシアン リヴァー ヴァレー」というカリフォルニアワインの組み合わせ。

 宮崎氏が1組ずつワインについて説明をしてまわり、本田シェフが料理の内容について説明し、すぐさま次の料理の準備のために隣の車両に戻るというスタイル。料理とワインがペアリングされることで、使用するワイングラスの量も、参加者数×提供される料理の数と膨大になり、食器やカトラリーの準備と後片付けを担当する福智町の職員もフル回転。

 またメニューの選定も、車両内では調理範囲や器具が限定されているということもあり、「火を使わない」「地元食材」という条件から、本田シェフが電車内ならではのフレンチコースを決定した。

出発前から1皿目の準備が進む
宮崎氏がテーブルをまわりワインをサーブ
市場駅付近で停車し、福智山(900.6m)と田園風景をしばしの間楽しむ
車両後部の一角ではワインなどドリンククーラーがスタンバイ

 シュガーロード号はさらに進み、金田駅方面に。平成筑豊鉄道の代表取締役社長 河合賢一氏が登場し、「またとないコラボに平成筑豊鉄道の車内をお使いいただくことに大変感謝申し上げます。社名にも使用している平成ですが、残り少なくなっております。来月にはスイーツ大茶会もありますので、また皆さまにお会いできることを楽しみにしております」とコメントし終えるタイミングで金田駅に到着し、10分ほど停車。参加者はホームで待っていた同社キャラクター「ちくまる」と記念撮影に興じていた。

平成筑豊鉄道株式会社 代表取締役社長 河合賢一氏
金田駅でお迎えするちくまる
司会を務めたCA(客室乗務員)の中尾涼子氏とちくまる
ちくまると記念撮影
「南蛮カステラとフォアグラのコンフィ」と「ハーブのブラマンジェと塩アイス」
「博多和牛ホホ肉とレンズ豆 八女茶の香りオイル」
カトラリーは新潟県燕市にある燕ブランドのものを使用

 シュガーロード号は、金田駅を出発し田川伊田駅へ。車窓からは大きな2本の煙突が見えてきたところで停車。駅の前には石炭記念公園があり、敷地内には「田川市石炭・歴史博物館」が併設されている。ここから折り返して再び出発地点の直方駅に向かって出発。その間、料理は3皿目が提供された。

 簡易キッチンとして使用されている2両目では、常に料理の盛り付けや食器の片付けが行なわれており、1往復目の終わり、直方駅では使用済みの食器やワイングラスが福智町職員によって補充・交換されていた。

石炭記念公園に立つ2本の煙突を車内から見学
2両目では常に料理の準備が行なわれていた
バリエーションも豊富な上野焼によって、向かい合って食べる楽しみも用意されていた
今回用意されたワイン。左からイエルマン ピノ・グリージョ、デュモル シャルドネロシアン リヴァー ヴァレー、ポマール・クロ・デ・ユルスリーヌ・モノポール、ココ・ファーム・ワイナリー 甲州 F.O.S。このほかにボランジェ・ロゼ・リミテッド・エディションの計5種が用意されていた

 13時08分、直方駅に戻ってきたシュガーロード号はしばしの休憩タイム。ここで福智町のマスコットキャラクター「福天」が登場し、参加者と交流。アルゼンチン出身のギタリスト、レオナルド・ブラーボ氏も乗り込み、車内でギター演奏を披露した。ブラーボ氏は「揺れる電車内での演奏は難しいです」とコメントしつつも世界中のクラシックナンバーを演奏した。この日二度目の金田駅には、13時47分に到着。休憩を挟み、終点の直方駅に向かって出発。

 料理は最後の5皿目が提供され、ブラーボ氏の演奏はアンコールまでたっぷりと楽しむことができた。JALと福智町は2012年よりさまざまな取り組みを行なってきたが、今回のフレンチ&スイーツ列車は、連携協定締結後の第1弾企画として、福岡の食材を使用したフレンチ&スイーツ、福智町を走る列車、そして御用窯である上野焼の器といったコラボレーションが、世界一のメートル・ドテルからサービスを受けられるといったJALのファーストクラスに座っているかのような体験が用意されていた。

 ちなみに、今回の参加料は2人1組で3万円。5種のフレンチ料理に、それぞれペアリングされたJALファーストクラスセレクトのワインが世界一に輝いた宮崎氏から提供され、ギター演奏、そして上野焼のお土産付きとすると破格の内容。福智町の公式サイトにて申し込みを受け付けたが、約40組の応募があり、抽選で10組が選ばれた倍率の高さからも、内容の濃さが注目を集めていた模様。

 次なる企画は、10月13日~14日に金田ドームにて行なわれる「福智スイーツ大茶会」。JALもブース出展を決めており、50以上のスイーツ店が出展する。

福智町のキャラクター「福天」が登場
食後のコーヒーのサービス
レオナルド・ブラーボ氏が登場し、最後の1往復中は食事と演奏の両方を楽しめた
この日のサービスを務めた宮崎氏から締めのあいさつ
左から、今回の企画をまとめた日本航空株式会社 経営企画本部 地域活性化プロデューサー 九州・山口地区担当の武知真一氏、「アニオン(福岡市中央区)」のシェフの本田フトシ氏、CAの中尾涼子氏、サービスを担当した宮崎辰氏
参加者にはお土産として上野焼の葡萄酒杯が用意されていた(写真提供:福智町)