ニュース
JAL、羽田空港で始まった「LinkRay」「おもてなしガイド」「ミライスピーカー」を使った実証実験の体験会を実施
2018年8月3日 15:54
- 2018年8月1日 実施
JAL(日本航空)は8月1日、羽田空港 第1ターミナルで行なわれている「LinkRay」「おもてなしガイド」「ミライスピーカー」による実証実験の体験会を実施した。この実証実験は光と音の新技術を活用して、アナウンスの内容を文字化するだけではなく、手荷物受託方法や保安検査場の待ち時間など、そのほかの付加情報を利用客に提供し、サービスの向上を図るものだ。
今回の実証実験は7月19日より開始されているもの(関連記事「JAL、光ID技『LinkRay』と音のICT化技術『SoundUD』を活用した世界初の実証実験開始」)。使われている技術は、ヤマハの音声認識による画面表示システム「おもてなしガイド」、サウンドファンの「ミライスピーカー」、そして今回より新たに加わったパナソニックの光ID技術「LinkRay」だ。
おもてなしガイドは、音声に混じった信号(音声トリガー)を認識し、スマートフォンのアプリで文字情報として表示するもので、搭乗口などを案内する音声が流れているときにあらかじめインストールしておいたアプリを起動して音を拾うと案内もスマートフォンの画面に表示される。このサービスを使うことで、「あれっ? 今なんて言ったっけ?」と聞き取りづらかった場合に画面で再度確認することができる。
また、多言語に対応しているので、外国からの旅行客が母国語で確認できるというメリットもある。仕組みとしては、その場で音声認識して表示するわけではなく、人間の耳では聞き取れない高帯域の周波数を使ってアナウンスの合間に信号を送出し、それをスマートフォンで検知して紐づいている情報を表示するというものだ。自動アナウンスと信号を組み合わせたプリセットが地上旅客スタッフの使うタブレットに用意されており、案内するフライトに合わせて使っている。
ミライスピーカーは、特殊な振動板を持つ「曲面サウンド」を搭載しており、音の減衰が少なく、遠くまでエネルギーのある音を届けることができる。そのため、大きな音を出さなくても遠くまで響き渡り、言葉や音楽をはっきりと聞き取れる。また、聴覚に障害を持つ方でも聞き取りやすい特徴がある。利用客で混み合う出発ロビーにおいてはこの特徴が存分に活かされ、離れた場所においてもクリアに音声アナウンスが聞き取れた。
LinkRayは、光の信号をスマートフォンのカメラで検知し、その情報をもとにWebのリンク先などを表示させるものだ。もう少し詳細に説明すると、液晶ディスプレイやデジタルサイネージが表示されている際に、人間の目では判別できないパターン化された点滅「光ID」も一緒に表示。そして、アプリが読み取った光IDをWeb上にあるサーバに問い合わせてアクションを起こす仕組みになっている。QRコードのように、それほど近寄らなくてもよく、複数人に一斉に情報を提供できるメリットがある。
今回の実証実験は次のような流れになる。
1. 地上旅客スタッフがタブレットを操作する。
2. ミライスピーカーから自動でアナウンスと音声信号が送出される。この際、スマートフォンでおもてなしガイドを使うと文字情報が表示される。
3. デジタルサイネージに取り付けたマイクが音声信号を検出し、画面に案内を表示する。光IDも含まれているのでスマートフォンでLinkRayを使うと、保安検査場の待ち時間情報や荷物預け入れ方法、機内Wi-Fiによるビデオプログラムの視聴方法などを案内する特設ページへ誘導する。
JALの担当者によると、このシステムはターミナルに流れる音声情報(アナウンス)をトリガーにすることで、複数のデジタルサイネージを一斉に情報更新できることから、地上旅客スタッフの業務効率化が図れるとのこと。実際に現場スタッフからも好評を得ており、より完成度を高めることで今後の正式導入につながる可能性もあるとのことだ。2020年に開催される東京オリンピック/パラリンピックが一つの契機となるが、今後ますます増えていくと思われるインバウンド需要に対応するためにも案内業務の効率化は重要事項であると語っていた。
今回、筆者も体験してみたが、音声アナウンスを文字情報として確認できるのは便利であり、ミライスピーカーによる出力も聞き取りやすくて好感が持てた。離れていて聞き取りづらい場合や聴覚が不自由な方でも情報を得る一つの手段になる。今回から始まったLinkRayについても、画面に向けるだけで情報が取得できるのでスタッフに問い合わせする手間も省ける。ただし、どちらもアプリを個別に用意して起動させる手間があるので、オールインワンパッケージにするなど利便性の向上も今後の課題として挙げられる。