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NEXCO東日本、移動式防護柵で車線数を変える「ロードジッパーシステム」を道央道リニューアル工事に導入

北広島IC~恵庭IC 島松川橋床版取替工事、現場公開

2018年6月8日 現場公開

連結した移動式防護柵と専用車両を用いた「ロードジッパーシステム」

 NEXCO東日本(東日本高速道路) 北海道支社は6月8日、道央自動車道 北広島IC(インターチェンジ)~恵庭IC間にある島松川橋の床版取替工事と、ロードジッパーシステムを報道公開した。

 床版取替工事は、NEXCO各社が実施する高速道路の大規模更新・修繕事業「高速道路リニューアルプロジェクト」の一環で、1971年に開通してから約47年が経過した島松川橋における、車両大型化・交通量増加など荷重の増加で生じた微細なひび割れやはく離、凍結防止剤などが原因で劣化した床版(しょうばん)を、より耐久性の高い床版に取り換える工事。

恵庭IC~北広島IC間にある島松沢に架かる道央道 島松川橋(NEXCO東日本 北海道支社の配付資料)
奥が札幌方面、手前が千歳方面
奥が札幌方面、手前が千歳方面
短期間で工事をするため、あらかじめ工場で製作しておいた新しい床版。大型クレーンで吊上げて設置していく

 島松橋(上り)の工事に伴い、5月29日から恵庭IC~北広島IC間が終日対面通行、50km/hの速度規制となっている。通行止めはせず、工事の行なわれていない島松橋(下り)通常2車線に加え、除雪のために広く設定されている路肩を利用して3車線分を確保し、交通渋滞が予想される時間帯に合わせて交通量の多い車線を2車線へ、交通量の少ない車線を1車線へと切り替える。

 月曜から土曜は7時に上り(北広島IC→恵庭IC)が平均交通量のピークを迎え、夕方17時ごろに下り(恵庭IC→北広島IC)で平均交通量のピークを迎えることから、午前中は「上りを2車線、下りを1車線」運用、昼の12時~13時の間に中央分離帯を切り替えて、午後から「上りを1車線、下りを2車線」運用とし、深夜0時~1時にまた中央分離帯を切り替え、上りを2車線に戻す。

 また日曜・祝日は平均交通量が平日より少なく、ピークが上り・下りともに15時~16時であるため、どちらを2車線運用しても渋滞が予想されることから、切り替えは行なわず、新千歳空港発へ向かう通行客が飛行機に遅れないよう、終日上りを2車線にしている。

平日と土曜は7時ごろに上りが、17時ごろに下りが平均時間交通量のピークを迎える
日曜の平均時間交通量のピークは上り・下りともに15~16時に集中する
平均時間交通量のピークに合わせて月曜から土曜は午前中を上り2車線、下り1車線、午後は上り1車線、下り2車線で運用。日曜・祝日は上り2車線、下り1車線のまま、切り替えは行なわない

 NEXCO東日本では、この車線運用の切り替えに移動式防護柵「Road Zipper System(ロードジッパーシステム)」を導入し、スムーズな切り替えを行なうことで交通渋滞を緩和する狙いだ。

 ロードジッパーシステムとは、連結した移動式防護柵を、専用車両「Barrier Transfer Machine(BTM)」を用いて移動させ、道路の混雑状況に合わせて工事車線規制範囲を安全・自在に変更できるシステム。BTMについては以前行なわれた説明会とデモンストレーションを取材しているので(関連記事「NEXCO東日本、コンクリート防護柵をジッパーのように移動するマシンを公開」)、そちらもご参照いただきたい。

コンクリート製の移動式防護柵は高さ810mm、幅460mm、長さ1000mm、重量680kg
移動式防護柵には一定間隔(今回は16個)で±35cm伸縮可能な鉄製防護柵(エクステンション)を1個入れ、ピンで連結させて中央分離帯としている
防護柵切り替え用車両「Barrier Transfer Machine」

 この工事現場公開では、昼の12時~13時に行なわれた「上り2車線、下り1車線」を「上り1車線、下り2車線」に切り替える作業を見学した。

 BTMは約5km/hで車両の右側に連なる防護柵を次々に持ち上げて、車両の下を通して1車線分左側へと移動させながら進み、約1.7kmの規制区間の切り替え作業を約20分で終えた。

 このロードジッパーシステムによって、終日対面一車線通行の場合と比べて約9割交通渋滞を削減できる見込みで、運用を開始してからの10日間、平日の交通渋滞は起こっていないという。

 NEXCO東日本 北海道支社 構造技術課長の近藤光継氏は、「基本的に工事区間なので2車線運用している区間でも終日50km/hで速度制限させていただいてます。めずらしい機械が動いているため、見物したくなりブレーキをかけるクルマもいるようなので速度に十分注意されることと、車間距離を十分取っていただいて安全に走行していただきたい」と呼びかけた。

12時~13時の車線運用切り替え作業の概要
深夜0時~1時の車線運用切り替え作業の概要。BTMは昼の取材時とは逆方面に移動式防護柵を移動しながら千歳方面から札幌方面へと走る
「上り2車線、下り1車線」から「上り1車線、下り2車線」への切り替え作業。BTMは左側の札幌方面から防護柵の位置を切り替えながら、右の千歳方面へ移動
手前側の札幌方面から奥側の千歳方面へ向かい、BTMが待機場所へ到着して作業を終える。写真のように交通量の多いときでも、安全に車線運用を切り替えることができる