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JAL、「JALなでしこラボ」プロジェクト 第3期の進捗報告会を実施
ダイバーシティやグローバル化をテーマに大川副会長との車座も
2018年5月31日 15:26
- 2018年5月16日 実施
JAL(日本航空)は5月16日、「JALなでしこラボプロジェクト」第3期生による定例ミーティングを実施。各チームの研究内容を中間発表し、同社取締役副会長である大川順子氏との車座意見交換会も実施した。
この「JALなでしこラボプロジェクト」は、JALグループの全社員から有志が参加するグループ横断プロジェクト。当初、女性活躍推進への取り組みとして開始され、現在は働き方改革やダイバーシティを含めた広い範囲の課題をテーマとしている。
3期はメンバー7名とメンター1名ずつで3チームを結成。東京地区2チーム、大阪地区1チームに分かれて1年間定期的に活動を実施する。東京地区では、“考え方のクセや思い込みであるバイアスをどう受け止めるか”という課題を「Inclusion of BIAS」というテーマで研究。大阪地区では、“JALのなかで地域特性を含めた多様性をどう活用し受け入れるか”を「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」というテーマで取り組んでいる。
一般的に、Diversity(ダイバーシティ)とは“多様性”の意味で使われ、男女差、子育てや介護、働き方の選択などで注目された。一方のInclusion(インクルージョン)とは“受容”のことで、価値観が異なってもそれぞれの個性を尊重し、社会や組織で一体感を持つことを表わしている。2期で指摘されたJALのBIAS(バイアス=考え方のクセや思い込み)とともに3期の研究テーマとなっている。
3期は2018年7月18日に1年間の研究成果を発表するための発表会が予定されているが、今回はその中間発表として、3チームから進捗報告会が行なわれた。また、進捗報告会のあとには、大川氏とプロジェクトの参加メンバーによる車座の対話も行なわれた。
大阪地区「www.(スリー・ダブリュー・ドット)」チームの取り組む「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」
大阪チーム「www.(スリー・ダブリュー・ドット)」の発表者はジャルセールスの吉田美弥氏と、JALグランドサービス大阪の井原麻衣氏。2人はまず、チーム名の由来を「西日本の私たちがダイバーシティとインクルージョンを実現していくために、新しい風を巻き起こしたいという思いを込めてWest、Woman、Windの頭文字を取り、ドットには、インターネットアドレスの表記に使われるように、ドットの先に多様な価値観を持って広く全方位的に発信したいという思いを込めた」と説明。
研究テーマ「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」に取り組む活動の一つとして、1月には西日本地区支配人の中野氏と車座を実施。「まずは何事も自分からやってみる。失敗を恐れない。もし失敗をしても、最後に成功すれば、それは大切なプロセスになる」というアドバイスをもらったという。
そして西日本地区の社員に、もっとなでしこラボについて知ってもらうため「www.通信第1号」を発行し、ダイバーシティとインクルージョンについての問題を提起。同時に西日本地区社員の理解度を計るアンケートを行ない、その結果とチームで考えたダイバーシティとインクルージョンについて情報共有をするために「www.通信第2号」を発行。また、3月には伊丹空港と大阪の市内支店で「www.サロン」も開催し、大阪地区のJALグループのメンバーとダイバーシティとインクルージョンについて意見交換を実施したという。
チームはこれらの活動をとおして、「職場への浸透」「自らの意識改革」「チームビルディング」の3つに気付いたという。まず「職場への浸透」とは、「ある日、自分の職場に外国人や障がい者がやってきたらどうするか、という問いには肯定的な意見がほとんどだったが、そこには本音と建前がある。うわべだけでなく、本音で考えなければ理解できない」という気付き。
さらに「自らの意識改革」とは、「先入観や固定観念から、自分の考えだけで決めつけていた。少し視点を変えてみれば今まで自分には見えていなかったものが見えてくる」という気付き。
最後の「チームビルディング」とは、「チームメンバーの意見に対する気遣いや思いやりから、本音で語り合えなかった。職場も性格もバラバラのメンバーが集まって1つの物を作り上げるとき、自分の意見を人に伝えるのは難しい。しかし一方で、さまざまな意見を出し合うことでよりよいものを作り上げられる」という気付きだという。
「www.」の8人も11月に初めて出会って同じチームとなったものの、当初は遠慮や思い込みもあり、モヤモヤもあったという。そして「同じJAL内でも職場や働き方が違えば考え方も違う。私たちのチーム自体がダイバーシティそのものそのものだ」と気付き、一人一人が自分自身のモヤモヤを見つめ直し、お互いを認め合って、やっと一つのチームとして生まれ変わったのだという。
これによりダイバーシティとインクルージョンが持つ意味の重要性を確認し、「ダイバーシティとインクルージョンの両方が揃ってこそ新しい価値観を生み出すことができる」と理解できたという。
「つまり、ファーストステップとして自らを振り返り、自分の言動を客観的に見つめ直すことが重要。それにより物事に対して受け身である自分や、周囲の意見に左右されている自分を発見することができます。セカンドステップではその気付きをもとに本音でぶつかり合うこと。多様な人材が集まるなかで、さまざまな本音の意見が飛び交ってこそダイバーシティです。そしてその先にインクルージョンのステップがあります。
多様な視点や価値観に触れることで、自分自身はもちろん、一緒に働く職場の仲間をインクルージョンし、自分と異なる意見であってもその相手の意見、その相手の気持ちを大切にして、みんなが本気で議論を重ねることでチーム力の強化や新しいアイデアが生まれることを、今までの研究をとおして知ることができました。」と解説。
アンケートの結果などから予想以上に西日本のJALグループでもダイバーシティへの理解や肝心は高まっているが、うわべだけでないインクルージョンが必要だと感じたとのこと。「しかし一方でインクルージョンしながら仕事をするのは、時間もエネルギーも必要。多様な価値を一つの成果につなげることの難しさを実感している」とコメント。「真のインクルージョンとは何かをテーマに残り2カ月、チーム一丸となって研究を進めていきたい」とまとめた。
発表を受けた大川氏は、「ペーパーで発行されたwww.通信をそのままPDFにしてパワーポイントに使うのではなく、分かりやすい図解で、見る側に立たれていてよかった。内容では、“さまざまなモヤモヤ”の解決方法を“本音で考える”とか“視点を変える”とか“意見をちゃんと出す”と表現していたが、これはまさにJALのフィロソフィーの実践のようだと思う。一人一人の能力や個性を、いかに自分や会社の幸せにつなげられるかということ。
もう一つ、自分たち自身がダイバーシティだと気が付いた点も重要。メンバーが全員女性でも意見の違いはあるもので、実は女性活躍推進の問題ではなく個人の問題。研究はよいところまで来ているので、果たしてそれをインクルージョン(融和)してシナジー効果を出すにはどうしていったらよいか、本音でぶつかり合いながらまとめてほしい。いろんな意見が出てくると思うが、人のことを忖度せずにいろんな意見を出して、充実した日々にしていきましょう」とアドバイスした。
東京地区「カラフルJAL」チームが取り組む「グローバル化の推進-世界のJALに変わるために-」
続いて、東京地区の1チーム目、「カラフルJAL」が「グローバル化の推進-世界のJALに変わるために-」と題して発表。発表者はJALスカイエアポート沖縄 山川今日花氏、JALカーゴサービス 縄久枝氏、JALエンジニアリング 橋本美希氏の3名。
カラフルJALでは、「Inclusion of BIAS」を受けて、「どうすればダイバーシティや私たちが抱えるバイアスを受け入れて、いろいろな個性が輝くJALになっていけるかを考えた」という。ダイバーシティには国籍、人種、宗教などさまざまな要素があるが、なかでも人種や国籍の多様性をどうやって受け入れていくか、グローバル化について研究を行なったという。
中期経営計画でもJAL Visionのひとつに「世界のJALに変わります」と掲げられているが、「この目標は今のJALを続けていった先に達成できるものではない」という。「日本人だけでなく、世界のお客さまのニーズを感じ取り、異文化を理解し、世界で活躍する人材になることが必要。それは日本人が日本人のなかだけで考えるだけでは実現できない。多様な文化や価値観を理解し、取り入れ、それを武器として世界に挑んでいく必要がある」とした。
チームでは、まず現在JALのグローバル化がどの程度進んでいるのか調査。海外採用スタッフや日本就労、教育・研修の英語での実施など、会社としてはグローバル化を進める取り組みを積極的に行なっているが、「世界のJAL」に変われるようなレベルにまで達していないのではないか、と問いかけた。そのグローバル化が進まない現状にはどのような問題があるのか、JAL社員のベクトルはグローバル化へ向いているのか、チームは全社員に向けて「グローバル化についてのアンケート」を実施。
アンケートは現在回収中だが、現時点での数字では、アンケート回答者の95%はグローバル化に賛成だという。しかし自分の組織に海外採用スタッフが登用される場合は、海外採用スタッフに対して94%の人が日常会話以上の日本語力を求め、まったく日本語が話せなくてもよいと考える人はわずか6%。ミーティングに海外採用スタッフが参加していても、日本語のみでミーティングを実施するという割合が61%だったという。
また、「グローバル化を進めるうえで自分たちに必要なこと」の1位は「語学力」とも認識。つまり、グローバル化を進めたいが、海外採用スタッフには日本語を理解してほしい、日本の文化に合わせてほしいという矛盾。そしてグローバル化を進めるためには自分たちが英語を話せるようになることが必要だという考えだ。
チームは、「これらの潜在意識が、グローバル化を進めるうえでJAL社員のバイアスとなっています。日本では日本の文化に合わせてほしいと考えていながら、グローバル化自体には賛成している本人は、自分の考えがJALのグローバル化を阻んでいると感じていないのです」と指摘した。
「グローバル化に賛成だ、会社は日本語ができる外国人をたくさんにすればよい」という意見は、一見賛成の意見に見えるが、グローバル化に大きな足かせをする反対意見だと解説。
「異なる言語を母国語とする人同士が会話をする際には英語を使用することは多いですが、グローバル化とは多様な文化や宗教、価値観を理解し、よいところを取り入れていこうということ。海外採用スタッフとコミュニケーションを取り、深く理解し合うことが一番重要なことです。相手を理解するために使うのは、片言の言語でよいと思う。相手を知りたい、受け入れたいと考え、行動することで、それを受けた海外採用スタッフもその部署で自分の能力や多様性を存分に発揮できるのではないでしょうか」とまとめた。
カラフルJALでは、これらのJALのバイアスを受けて、今後一層グローバル化を進めていくためにはどうすればよいのか、引き続き研究を行なうという。
また、一番大切なのは受け入れる気持ち「マインドセット」であり、英語が話せないとコミュニケーションが取れないという内向きのマインドを持っている。これをインクルージョン(受け入れる)マインドにどうすれば変えていけるのかを現在探求しており、海外採用スタッフから個別のヒアリングを実施中とのこと。「日本語でいいから本当はもっと話しかけてほしい」「日本人は自分の考えを言わない、何を考えているのかわからない」「英語が完璧でなくてもいいから、もっと話したい」という意見が出たとのこと。
「日本人は英語が話せないとコミュニケーションが取れないと考えている一方で、海外採用スタッフは言葉にとらわれず、コミュニケーションを取れる・取りたいと考えていることが分かった」と説明。引き続き海外採用スタッフにアンケートを実施し、研究の材料とするとのこと。
さらにグローバル化について学ぶ機会も必要とし、グローバル化を進めなければどうなってしまうのか? 日本人の価値観では世界に通用しないということを肌で感じるような機会、異文化を理解するような機会、言語に頼らないノンバーバルコミュニケーションを学ぶ機会などを提供するワークショップの開催を検討しているとのこと。「こういった機会を提供することで、グローバル化に対する社員のマインドセットを変えていくことを目指しています」とまとめた。
発表を受けて、大川氏からは「語学は当然ですが、今回の発表で語るべきことは、パワーポイントの最後のページにある、海外採用スタッフとのコミュニケーションに本当は何が必要なのかという点。私も現場で長年英語は使ってはいたけれど、決して得意というわけではなかった。そんな私が各国の海外採用CA(客室乗務員)の教官をやっていたことがあります。ジェスチャーでも何でも使って、分かり合えるまで話し合い、最後は涙して別れていました。言葉も大事だけれど、それだけではない、ということが分かるように実例を入れて説明すると、“ここからでも始められる”とみんな思うんじゃないかと思う。たくさん事例を拾って、みんなの勇気を与えるようなプレゼンをしていただきたい」とコメントがあった。
東京地区「Hybrid×Navi」チームが取り組む、障がい者へのバイアスをプラスにするためのブレイクポイント
「Hybrid×Navi(ハイナビ)」の登壇者はJALスカイ札幌の小川ひとみ氏、JALナビアの井上真由美氏、JALスカイの右田智大氏。それぞれの名字を手話で伝えるという工夫したスタートだった。
まず、Hybrid×Naviはテーマを障がい者の方についてにした理由として「私たち自身、いつ障がい者になるか分からないですし、東京オリンピック・パラリンピック2020を控えて選手やお客さまを迎える準備ができていないのではないかと考えたため」と説明。乗客の目線で空港などに満足できているのか、障がいのある社員の方々が生き生きとして働けているのか? この2つを向上させることで企業の発展につながり、最終的には社会貢献につながると考えているという。
取り組みの第1段階では、「障がいのある方に対するバイアス」をゼロにしていくために、対話を通して障がいを知ること、興味を持つことが必要であると考えて、障がいのある方へのインタビューを計画。しかしインタビュー直前に行なった大川氏との車座のなかでの「障がいのある方だからこそ、できることや気付くことがある」というアドバイスで、そもそもプラスのイメージを持っていないということに気付いたという。
その後のインタビューでは本人が前向きに業務にあたっていることが分かり、マイナスからゼロではなく、ゼロからプラスのイメージなり、もっとプラスを見い出し、マイナスからゼロではなく、ゼロからプラスへするという発想の転換をすべきと考えたという。
そして第2段階では、体験・対話をすることでマイナスからゼロ、ゼロからプラスへ変えられると考えて、車いす体験ができるネットワーキングランチを成田で開催。実際に車椅子に乗り、障害物を乗り越えて席についてもらったあとにディスカッションを実施することで、障がいのある方に対するプラスのバイアスを引き出せると考えたという。しかしこの取り組みではマイナスからゼロにはなったが、プラスにまでは至らなかったとのこと。そのため、マイナスからゼロにしたあとプラスへ転換するためにはどうすればよいのかを、チーム内で模索することになったという。
そんななか、パラリンピックサポートセンターが主催し、JALも協賛している車椅子バスケットボールのイベント「あすチャレ!School」が高校を舞台に実施され、チームから2名が参加。その様子をビデオで紹介した。講師は日本財団の根木慎志氏だったとのこと。イベントで、高校生は皆車椅子バスケの体験は初めてだったが、生き生きと楽しそうにプレーをしていたという。
今回の車椅子バスケでは、最初は「障がいのある根木さん」として見ていた高校生も、一緒に時間を過ごすなかでいつのまにか障がいが障がいではなくなり、「根木慎志さん」という一個人として楽しく生き生きと接していたという。チームでは、このバイアスがプラスに転じるきっかけを「ブレイクポイント」と呼び、今回の高校生にとってのブレイクポイントは車椅子バスケを通じて根木さんと触れ合ったことだと感じたとのこと。
根木さんは「車椅子バスケと出合い、やりたいことや目標が見つかったことで、自分も周りも考え方や意識がマイナスからプラスへ変わった」と語り、出会った人と友達になることを推薦。「みんなもう友達だよな」という根木さんの一言に、一気に距離が近くなったという。この交流をとおして「障がいのある方と対話を持つこと、共感すること、応援すること、それこそがプラスのバイアスに気付き、意識を変えるきっかけづくりになると気付きました。そして“障がい者”ではなく一人の“友達”になることが、とても効果的だと実感しました」と気付きについて説明した。
ただ、「このブレイクポイント(=友達になること)は簡単なようで、とても勇気のいるステップ」であるとも認識しているため、より多くの社員に伝え、気付いてもらえるきっかけ作りのため、障がいのある方に対して“友達になりたい”という意思表示ができるような行動を起こすためのツール作りを考えているとのこと。「プラスのバイアスに気付いた人の一つ一つの選択、一人一人の行動は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた目標、SDGsに必ずつながる大きな一歩と考えています」とまとめた。
最後にお知らせとしてJALグランドサービスの野村織江氏から、行動を起こすためのツール作りについて航空機の廃材で何か作れないか考えていると説明。障がい者の方と健常者がそれぞれ持ち、合わせるとひとつになるようなものを検討中だと語った。
発表を受けて、大川氏からは「話の起承転結が分かりやすい発表だったと思う。社内に根木さんが出演する動画でもっとよいものがあるので活用してほしい。JALが『あすチャレ!』の活動を、時間をかけてサポートしているのは、発表にもあった“気持ちの問題”は、今日教えられてすぐできるようになる問題ではないからです。根木さんの話にもありましたが、要は“友達になる”ということ。『あすチャレ!』などの活動をとおして、自分達が感じたものをどうやってJALグループのなかに広めるかをまとめるとよいと思う。」とアドバイスした。
また、大川氏は発表のなかで触れられていた「SDGs(Sustainable Development Goals)」(=持続可能な開発目標、エス・ディー・ジーズ)についても、国連サミットで採択された2030年までに貧困や障がい、環境問題など社会的課題を解決していこうという取り組みであると説明。
「企業も、ただ利益をあげることだけを目的にするのではなく、CO2の抑制や調達行動に責任を持つなど目標を定められていて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックはその前の通過地点としてよい目標になる。この取り組みのすばらしい点は、目標に到達できたかよりも、到達するためにまず、“どうありたいか”を話し合おうとしているところ。障がい者の方への取り組みでは“友達になろうよ”としている部分がまさにそれ。JALのSDGs担当としてもうれしい」と語った。
車座で対話、大川副会長から3チームそれぞれに経験談を交えてアドバイス
3チームからの発表が終わったあと、メンバーたちが大川副会長に質問する形で車座が行なわれた。まずカラフルJALチームからは「グローバル化を進めるなかで、JALの日本らしさはどのように残していくべきか」と質問。
大川氏は「日本らしさやJALらしさを打ち出していくことは大切だし、それがグローバル化に反するとは思わない。教官として外国人クラスを持っていた時も、日本航空の乗務員である以上は日本流のサービスは覚えてほしいけれど、それがグローバルにすべて正しいとか、ほかが間違いだとは理解してほしくないと思って教えていました。逆に雰囲気作りが上手いとか、照れずに周りのお客さままで巻き込んでその場を明るくできるとか、海外採用スタッフだからこそできるよいところもたくさんあった。これからも各国のよさと合わせて、JALらしさを磨き上げていってほしい」と回答した。
次にHybrid×Naviチームからは「障がい者の方々に対する、大川さんにとってのブレイクポイントは何だったか」と質問。
大川氏は「JALサンライト(障がいのある方を社員に多数採用しているJAL関連企業)の企業理念を作り替える作業に参加した経験が大きい。30年間現場に関わってきて、ある程度マニュアルで分かっているつもりだったが、実際にサービス内容はどうなのかとJALサンライトの社員に聞くと、反論があった。クルーがよかれと思ってやっていることも、自分は実はそうされたくなかったこともあったという。機内でクルーとお客さまの立場では本音で話し合うのは難しいが、社内で企業理念を考える場だったからこそ意見を言ってくれたのだと思う。
相手も自分も本音で話すことでプレゼンにあった“友達になる”感覚があった。根本的にがらっと変われるこの機会をもっと早く欲しかったと思ったが、考えてみると自分が踏み込まなかったのだと思う。時間がなくて関われないというのは言い訳。マニュアルに頼らず本人とコミュニケーションを取って上手に引き出すことができたかもしれない。勇気は要ることだけれど、自分が能動的に動くことが大切。何人かで一緒にトライしてみるとよいと思う」とアドバイスした。
最後にwww.チームからの質問として「多様な意見をインクルージョンしたいが、仕事の上では期限もある。ベクトルを調整し、どのように集約すべきか」と質問。
大川氏は「表面的には意見が違っても、なぜその意見なのかをよく聞くと、重なる部分や落としどころが見えてくることもある。そのためには、やはりコミュニケーションを取ってその人の考えを受け止めること。両者が納得できるまとめ方も探れることに気付くこと。どういう考えで何を言っているのかしっかり聞き尽くすことが大事。自分が話すだけでなく、ちょっと我慢して相手の話を聞くと、なるほどと思うこともある」と語った。
逆に大川氏から大阪チームへ、東京チームと大阪チームでの違いを感じるか聞いたところ、www.のメンバーからは「意識はそれほど変わらないと思うが、ダイバーシティの活動に触れる機会が少ないため自分事として捉えられていないと感じる」と返答。大川副会長は「会社だけでなく、外で行なわれているダイバーシティの活動にも能動的に参加して、自身が成長して周りに広めてほしい。SDGsも含め、分からないことに気付いていないという状態に危機を感じてほしい」と語った。
まとめとして「最後の2カ月で追い込むチームも多いので、これから大変な時期だと思う。取り込み方次第で効果的なものができるし、どうまとめるかは非常に大切。見ている人にはっきり分かるようにプレゼンしてほしい。やり終えたときに絶対に充実感があるので、ぜひがんばってほしい。期待しています」とメンバーたちにエールを送った。
「後輩たちに同じ思いをさせたくない」という使命感でスタート。JALグループ全体を巻き込んで、会社に変化を与えるプロジェクトに成長
事務局によると、2期で提案され、3期で引き続き取り組まれている「なでしこチャーター」については、チームのメンバーが対象となる高齢者と介護施設で一緒にリハビリに取り組むなど、丁寧な関係作りから行なっているとのことで、実施日を含め調整中とのこと。7月18日の発表会までに方向性が発表されるそうだ。
またこの日、このJALなでしこラボプロジェクトの立ち上げに関わった、JALなでしこラボプロジェクト事務局の中丸亜珠香氏が事務局を退任することから、最後にメンバーにあいさつした。中丸氏は3年前に人事部で女性活躍推進の担当となったが、自分自身が子育てに悩むなかで、「後輩に同じ思いをさせたくない」という気持ちで作った仕組みがJALなでしこラボプロジェクトだったという。
「JALグループ全体で取り組むこのプロジェクトは、一人一人が課題を自分事として考え、メンバーが各社に戻ったときに周囲に考え方を根付かせてほしいという思いで作りました。メンバーには負荷が高く大変だったと思いますが、この経験はきっと今後の業務にも生きてくると思います。7月の発表に向けてがんばってください」と語り、大川氏も「中丸さんなしでは、なでしこラボはここまで来られなかった。本当にお疲れさま」とねぎらった。
中丸氏は発表会の終了後、JALなでしこラボプロジェクトについて「始めた当初は、正直言ってここまで継続でき、しっかりサイクルが回るかどうか不安だった」とコメント。仕組みができ上がるまでは「よく分からない活動にそんなに力を入れて大丈夫?」「これって本当に成功するの?」と周りに意見もされたそうだが、それを打ち返す強力なサポーターとして現・代表取締役会長の植木氏がダイバーシティ推進を買って出たり、大川氏が理解を示してくれたりしたという。特に大川氏はダイバーシティ推進を進める仕組み作りから関わってくれたといい「ゴールに向かって、どういう仕組みを作って行くかを逆算して考えられた」と語った。
また、この3年間で当初メインテーマとなっていた女性活躍推進からダイバーシティ推進へ活動が広がったことも大きかったという。3年前にJALなでしこラボプロジェクトが始まったころと比べると、テレワークも社内で年間100件ほどだったものが2017年は1万件になるなど柔軟な働き方が大幅に広まったほか、女性管理職も12%から16.3%に増えるなど歩みが進み、会社の雰囲気も変わってきたという。
子育て中の社員でも「子供が風邪をひいたので病院に寄ってから出社する」といったことは、以前は気兼ねしてなかなか言えなかったそうだが、今では上司が理解してくれて当然のように柔軟に対応してくれるとのこと。ただ、女性自身もキャリアアップしていくという意識や、子育て世代など少数派に対する周りの理解はまだまだ足りないと感じているそうで、「欲を言えばまだやらなければいけないことはたくさんあります。男性社員にも、もっと変わってほしい」と今後への期待を語った。
これからのJALなでしこラボプロジェクトメンバーたちへは、「JALなでしこラボプロジェクトもバイアス、ダイバーシティ、インクルージョンなど範囲を広げていますが、個性を生かして一人一人がきちんと認められ、生き生き働ける会社になることがこのプロジェクトのゴール。そのためには、会社はその仕組みを整え、社員もより責任を持って甘えを持たずに働かなくてはいけないと思う」とまとめた。
毎年どのチームも、一切手を抜かずに真摯に取り組む姿勢が印象的な、JALなでしこラボプロジェクト。今年も各チームが7月の発表会でどのような結論を出すのか期待したい。