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handy Japan、ホテル客室備え付けのスマートフォン事業を7月開始
LTE回線による国際/国内通話、データ通信が無料・無制限で利用可能
2017年6月1日 20:58
- 2017年7月 サービス開始
handy Japanは6月1日、ホテル客室備え付けのスマートフォンレンタルサービス「handy」を7月から国内で開始すると発表、同日都内で発表会を開始した。「handy」はホテル宿泊客に対して専用スマートフォンが貸し出され、無料・無制限のデータ通信と、国際および国内通話が提供される。発表会を開催したロイヤルパークホテル(東京都中央区)では、7月1日から宿泊客に対してサービスを提供する。
ホテル内の案内を担うスマートフォン
handyのサービスは、ホテルが契約して宿泊者向けに提供されるサービス。そのため、ホテルが契約すれば、宿泊客はホテルの宿泊料に含まれる形で利用できる。貸し出されるスマートフォンはhandy Japanに出資するシャープ製の専用機種となり、レンタル機種ならではの情報消去機能など、プライバシーにも十分配慮したものとなっている。
スマートフォンのOSはAndroidで、発表会で展示された試作機のバージョンはAndroid 7.0。通信はLTEを利用、ドコモのネットワークを使うため、使える場所を探す必要のあるWi-Fiと違ってドコモのLTEネットワークと同じ広範囲のエリアで利用できる。
オリジナルの観光ガイドの閲覧や、ホテルの内線通話機能、ホテルのコンシェルジュへ直接連絡がとれる設定になっているほか、自身のGoogleアカウントを登録すれば、Googleのアプリや設定をそのまま使うことも可能。
通話は国際および国内とも無料で無制限。ホテルの内線から国際電話をかける場合は料金が気になるところだったが、handyを使えば通話料を気にすることなく、海外の自宅へ通話することも可能となっている。
ホテルに連泊中、自分のスマートフォンのように使い、スマートフォンで撮影した画像をそのままクラウドサービスにアップロードしたり、SNS投稿をしたりすることもできる。データ通信量は無制限なので、アプリのダウンロードやクラウドへのデータの保存も容量を気にすることはない。ホテルのチェックインからチェックアウトまでという制限はあるが、外に持ち出すこともでき、自分で用意した携帯電話と違って、現地SIMカードの用意やローミング費用、通信通話料の心配、海外利用のための準備や設定変更も必要なくなる。
情報の自動消去も可能
レンタル品のため、スマートフォンに保存されるデータの扱いは気になるところだが、利用開始時にチェックアウト日を設定すれば、チェックアウト日に自動で情報を消去することが可能なほか、端末操作でいつでも情報を消去できる。このため、レンタル品にGoogleアカウントを登録しても問題がないという。
サービスの利用料はエンドユーザーは気にするものではないが、ホテルからhandy Japanに支払う金額は1台あたり月額980円。9月30日までの申込みなら1年間は無料で利用できる特典があり、1年経過後に契約が強制されることもないという。また、アプリに機能の追加などのカスタマイズも可能で、その場合は別途オプション料が発生するものもある。
スマートフォン端末も無料で提供され、外に持ち出すため、破損や紛失に備えて契約数のプラス10%までは追加料金なしで端末が供給される。すでに提供している国の実績では、10%を超えるようなことになっておらず、端末の破損や紛失についての費用負担はない見込みとしている。
レンタル収入よりも広告収入が上回る可能性
データ通信や通話料まで無料で、月々の料金が1台980円というサービスだが、handy Japan 代表取締役社長 勝頼博則氏によれば、レンタル収入のほかに広告収入も見込んでおり、すでにサービスを開始している香港では広告収入が上回っているという。
端末は利用者の通信状況や移動状況を把握しており、場所や時間に応じて利用者に最適なサービスを提案するプッシュ広告を表示することができる。発表会では、勝頼氏が旅の途中であるタビナカの市場がまだ未開の“ブルーオーシャン”と表現しており、handyが「タビナカの最強IoTデバイス」と評価するなど、旅の途中で食事をしたり、新たな観光地巡りを計画したりと、スマートフォンをとおして“タビナカ”の新たな消費行動が生まれる可能性を指摘した。
また、広告のほか、ホテルから外出中でもホテルのコンシェルジュにすぐ電話で相談できるため、ホテル、宿泊者にとって心強いサービスになるとしている。
なお、今回はホテル用としてサービスの提供開始を発表したが、ホテルでなく旅館の利用も歓迎とのこと。提供時期は多少遅くなる可能性があるとしながらも、勝頼氏は9月30日までの申し込みで1年間無料の特典も利用できるとしている。
世界17カ国、600のホテル11万室で利用
handyのサービスは2012年に香港で開始され、シンガポールなど世界17カ国、600のホテルですでに利用されている。発表会で紹介された具体的なメリットとしては、トリップアドバイザー連携で、導入したホテルの口コミ数は50%アップ、評価平均値も0.31ポイント向上したこと。これによって試算ではホテルの1室あたり毎日5.1ドルの収益を生み出すというデータもある。ホテルの売上が増えるだけでなくレストラン送客数、イベント誘導、メンバーシッププログラムの誘導も増えたという。
また、ホテルが宿泊客に直接情報を届けられる端末を持つため、先ごろトルコで発生した爆破事件があったが、トルコのホテル、リッツ・カールトンでは安否確認をして、9割の宿泊客がhandyを介して「大丈夫」と返答があったという。地震が多いとされる日本では、handyがあることで海外からの旅行者に安心して旅を楽しんでもらうことができる。
そのほか、「観光ビッグデータ解析」として、宿泊客の旅の目的、記事の閲覧、言語選択、転換率測定を検証することも可能で、ホテル自身でデータを検証することも可能としている。
発表会では、シャープ 取締役 兼 専務執行役員 スマートホームグループ長 兼 IoT通信事業本部長の長谷川祥典氏とロイヤルパークホテル 常務取締役総支配人 笹井高志氏も登壇した。
シャープの長谷川氏は「IoTを実現するには、機器、サービス、プラットフォームの3つが揃わないとよいソリューションにならない。3要素を揃えた、ホテル向けに展開するhandy事業に将来性を感じ、出資した」と経緯を説明、「シャープはスマートフォンの供給でしっかりと支えていきたい」と述べたほか、「ホテルにテレビや空気清浄機を納入しているが、連携をするなどビジネス的に広がるのではないか」と期待を寄せた。
ロイヤルパークホテル 常務取締役総支配人の笹井高志氏は「今回がホテリエ生活で2度めの衝撃。1度目がカードキーの誕生で、今回が2度め。無料で世界とつながる」とhandyのサービスを評価し、「採用しない手はないというのが、導入理由」と説明した。