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handy Japanとソフトバンクが業務提携。ホテル客室備え付けスマホ「handy」のシェア拡大を図る

handyは1年間で24万端末を契約。ソフトバンクの回線や技術、営業力活用で一気のシェア獲得図る

2018年7月2日 発表

handy Japanがソフトバンクへの第三者割当増資を実施。両社の資本・業務提携を発表

 handy Japanとソフトバンクは7月2日、handy Japanがソフトバンクに対する第三者割当増資を実施し、資本ならびに業務提携契約を締結したことを発表した。handy Japanの親会社にあたる持ち株会社のhandy Japan Holdingsへソフトバンクが出資する格好となる。

 handy Japanは、ホテル宿泊者向けに、客室に備え付けのスマートフォンを提供するサービス「handy」を2017年7月1日から展開。宿泊者は、自分のスマホのように利用でき、無料の無制限データ通信と通話が行なえる。

「handy」の端末
handy Japan株式会社 最高経営責任者 勝瀬博則氏

 handy Japan 最高経営責任者 勝瀬博則氏によると、この1年間で国内24万客室に導入する契約となっており、これは日本の宿泊施設の総客室数の3割に相当するという。「12カ月前にはまったくないサービス。部屋のなかのスマホを起点にする新しいトラベルエコシステムを作る。handyで旅行業界に革命を起こす」との意気込みでスタートした事業が急成長を遂げていることをアピールする。

 そのhandy普及がもたらす旅行業界への変革について、「ホテルIoT」「トラベルエージェント」「メディア」の3つの視点で説明。

 ホテルIoTについては、従業員の人手不足や効率化できないといった課題を指摘し、handyの導入で効率的な運用が可能になり、人をかけるべきところにリソースを投入できるようになるとした。

 トラベルエージェントについては、着地型旅行商品の実現への貢献について言及。宿泊先のホテルに置かれたhandyから発信、購入できる着地型旅行商品を開発し、販売できるようなモデルを想定している。

 メディアについては、24万室に1名ずつが年間で8600万人にリーチポイントを持つメディアで、100%旅行者であるというターゲティングされたメディアでもあるとし、旅行者に日本の魅力を知ってもらうメディアとしての魅力を語った。また、ソフトバンク出資の背景の一つとしても挙げている。

 このほか、6月に発生した大阪府北部地震の際には、大阪府、京都府、兵庫県の宿泊施設にあるhandyに災害情報を送信。そのうち約半分の端末で災害情報が開かれ、公的な災害ページへと誘導したことを紹介。「災害(対応)の点でもhandyが観光立国のお手伝いをできる、メディアとしてのパワーがある」と語った。

 加えて、国内でインバウンドを迎える課題として、無料Wi-Fiホットスポットが不足し、特に地方で大きな課題になっていることにも言及。この業務提携発表に併せて、24万端末のhandyでテザリングを無料開放することを発表した。ちなみに、テザリング無料開放については、handy側が自動で行なうわけではなく、ホテル側が無料提供すると判断した場合に行なわれるものとなる。この点について勝瀬氏は「(ホテルが提供したいことをできるよう)選択肢を提供したい」としている。

 このテザリング開放について勝瀬氏は、ソフトバンクという高速なバックボーンを持つ通信事業者と提携した理由の一つであるとし、「回線だけで利益を上げるのではなく、複数のビジネスで利益をあげることで、バックボーンにかかるコストを分散し、お客さまには無料で提供する」というビジネスモデルを維持する目的を話した。

 なお、現在導入済みのhandyは、ソフトバンクではない回線を利用したものとなっているが、ホテルのリクエスト次第で順次ソフトバンク回線へと切り替えるほか、今後出荷する端末についてはソフトバンク回線のものになると説明している。

勝瀬氏が示したスライド
会見にはhandyを世界展開するMango International CEOのTerence Kwok氏も来場した
会場ではスマホを使ったルームロックのデモも実施。こちらはアッサブロイジャパンのシステムを、handyが開発中のアプリに組み込んだもの。鍵自体もスマホに持たないセキュアなシステムだという。アプリにはルームコントロールの機能も実装されていた
こちらは美和ロックのシステムで、鍵をスマホ側に持っており、Bluetoothを用いて解錠する仕組み。アプリは美和ロックのものを使用していたが、これもhandyのアプリに組み込む予定だという
ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙氏

 一方、出資する側であるソフトバンクからは代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏が会見に出席。「単に通信機器や資本を入れるだけでなく、我々の技術を提供すること、セールスパワー(営業力)を提供すること」と目的を説明。1年間、handy Japanが急成長を遂げたことに対し、「1社でこれだけ伸ばしたので、ソフトバンクと一緒になると一気に10倍ぐらいになるのでは」と冗談交じりに語った。

 出資額などは明らかにしていないが、売り上げや利益などについては次の段階であるとし、両社がまず狙うのは「シェア拡大」であるとしている。勝瀬氏は「日本には簡易宿所や旅館などを含めて200万室ぐらい。そのほとんどをhandyで取っていきたい」としたほか、宮内氏は「このビジネスについては、売り上げや利益よりも、圧倒的なシェアを上げるのが第1弾。たくさんのお客さんが使う、たくさんのホテルチェーンが使う、そしてご満足いただければ、結果として利益も売り上げも上がるだろう。どれだけ顧客満足を与えられるシェアを上げられるか。ホテル業界のなかの仕事の仕組みを変える」と意気込みを話した。

 宮内氏は、handyをスマートフォンではなく、「IoTプラットフォーム」であるし、勝瀬氏と同じく「ホテルIoT」「トラベルエージェント」「メディア」の視点で、ソフトバンクが持つ技術やサービスを組み合わせて価値を高めていく方針を示す。

 特にホテルのビジネスについて、「ホテル業界は詳しくないが、(利用者として)こういうことができたら便利なもの」と前置きをしたうえで、客室のhandyを使った無人チェックアウトや、handyを鍵として利用するセキュアなスマートキー、handyを多言語なリモコンとして利用し客室内のエアコンや照明を操作、グループのYahoo!トラベルや一休.comと連携した情報やクーポンの配布、VRやタクシー配車、宅配サービスなどの新たな宿泊体験といった相乗効果を紹介。タクシー配車については「今日は話せないが、近々発表したい」とも述べた。

 そしてソフトバンクグループのフォートレス・インベストメントが運営するビジネスホテルチェーン「マイステイズ」において、ホテル事業者や宿泊客のニーズや導入効果の検証を行なうことで、新サービスの開発と事業を展開していく方針を示した。

 宮内氏は「スマホが出て、これからIoTの時代が来て、その膨大のデータを処理するAIが出て、これからはどんなビジネスも再定義していく。(handyは)ホテルを再定義した素晴らしい人たちだと思う。それが、私たちが出資して、しかもジョイントで事業をしたいと思った大きな理由。宿泊体験を大きく変化できるし、ビジネスモデルを再定義できる」との将来を語った。

宮内氏が示したスライド