ニュース

JTB、スマートフォン専用電子チケットサービス「PassMe!」を開始

PayPalとパートナーシップを結び、将来的には訪日観光客も利用できるように

2015年7月23日 開始

JTBとPayPalがタッグを組んで開発した電子チケットサービス「PassMe!」

 JTB(ジェイティービー)は、PayPalとパートナーシップを締結し、2015年7月23日から、スマートフォン専用電子チケットサービス「PassMe!」の正式サービスを開始した。PassMe!正式サービスの開始に合わせて記者発表会が開催されたので、その様子をリポートする。

 PassMe!は、日帰りレジャーや週末のお出かけの際の、情報収集からチケット購入、施設でのチケット提示と入場までを、すべてスマートフォン上で完結させられる、電子チケットサービスである。JTBが運営するサービスだが、PayPalやLINEも活用し、スマートフォンに特化した「モバイルファースト」なサービスが特徴だ。

JTBが遅れていたレジャー市場への取り組みの解となる

 発表会ではまず、JTBグループ本社執行役員 事業創造部長の鈴木雅己氏が、代表挨拶を行なった。その中で鈴木氏は、PassMe!サービスの意義について、「これまでJTBは、非日常である旅行、特にその旅行の前での交通の切符や宿泊の手配を中心にお客さまとの接点を築いて参りました。また、最近では旅行中の体験や観光でのお客さまとの接点拡大をスマホアプリの提供や他社様との提携によって実現しております。一方、極めて日常に近い週末や休日のおでかけを中心とするレジャー市場への取り組みが遅れていました。2013年度市場規模3130億円に対し、89億円の販売額で、シェアは2.8%と小さく、特にオンライン販売への移行が課題となっています。この主な要因としましては、紙チケットを中心としたオペレーションでは、オンライン販売への移行に限界があること、また新たな仕組みの導入はサプライヤさんにとって複雑でコスト負担が必要なことが挙げられます。JTBは、これらの課題をコト社様およびエム・フィールド社様が開発した電子スタンプシステムをスマートフォンに特化したレジャーチケットオンライン販売システムに活用することにより解決しました。」と語った。

 また、鈴木氏は、2019年度までには加盟施設5000施設、商品数1万5000点、売上げ80億円を目指したいと語り、その計画の実現に必須のパートナーがPayPalであるとした。「スマートフォンに特化したオンラインサービスをお客様が、より簡単に、より安全にご利用いただくためには、より簡単でより安全なログインと決済を提供しているパートナーとの連携が必須となります。そのサービスを15年以上、世界2300の国と地域で提供し、すでに1億6900万人のお客様が利用されている、まさにグローバルスタンダードであるPayPal様とのパートナーシップの実現が、本計画の達成に不可欠と考え、提携をお願いいたしました。PayPal様を利用して、会員登録から決済までを一度のログインで済ませることのできる仕組みは、旅行業界においては国内初の事例となります。これらの取り組みによって、レジャーを通した地域活性に貢献するとともに、訪日観光に対しても両社で取り組んでいきたいと考えております」と、今後の展望を語った。

 次に、PayPal日本支社社長 エレナ・ワイズ氏が挨拶を行ない、PayPalのデジタルウォレット決済サービスの利点について次のように語った。「PayPalの最大の特徴は、安心と安全です。PayPalを利用することで、クレジットカード決済をより安全により便利に行なえます。クレジットカード情報を店と共有せずに決済ができるため、情報漏えいがあっても安心です。また、万一不正使用にあっても、PayPalが被害額を補償します」

 さらに、エレナ氏は、JTBのような日本を代表する企業とパートナーシップを結べたことは大変光栄であり、今後もPassMe!をきっかけとして、訪日観光などのさまざまなサービスやビジネスをJTBと一緒に推進していきたいと語った。

株式会社ジェイティービー グループ本社執行役員 事業創造部長 鈴木雅己氏
PayPal Pte.Ltd.日本支社社長 エレナ・ワイズ氏

家族や友人とチケットをシェアすることもできる

 次に、JTB 事業創造部 企画開発担当部長 花園聡一郎氏が、PassMe!サービスのコンセプトや特徴について解説を行なった。PassMe!のサービスコンセプトは、スマートフォンだけで完結できることであり、簡単にチケットを探して利用できることはもちろん、家族や友人とチケットをシェアすることも可能である。また、加盟店のメリットとしては、サービス導入のコストが一切不要だということ、施設内イベントなどの情報を発信できること、利用者を知ることができることの3点が挙げられるという。

 利用者にとっては、通常よりもお得な割引きチケットを購入できること、チケット購入の列に並ばずにスムースに入場できることもメリットである。また、1人がまとめてチケットを購入して、ほかの人にLINEやメールを使って配布できるため、ゲートにみんなが集まるのを待ってチケットを配るといった手間がなくなる。チケットの割引率は平均10%程度だが、商品によっては最大70%割引のものもあるという。

 7月23日時点での加盟施設は230施設、取り扱いチケットは500種類ほどだが、2015年末には加盟施設3000施設、取り扱いチケット6000種類、利用者数10万人を目標とする。また、サービス開始記念キャンペーンとして、2015年7月23日~8月31日までの期間、全国100カ所のおでかけスポットで使える180種類のチケットについて、大人チケットを2名分以上買うと、子どもチケットが2枚まで無料になる「夏休み!子供無料チケットキャンペーン」と、PayPalによる決済を8月25日までに終えた方先着2000名に、次回のPayPal決済に使える500円割引クーポンを配布するキャンペーンが実施される。

 さらに、花園氏は、PayPalとのパートナーシップの利点について、「PassMe!サービスの最大のウリは、チケットを“お得に”買えることですが、今回のPayPalとのパートナーシップによって、チケットを“お得に”“簡単に”“安全に”買えるサービスへと進化しました。PayPalの会員登録済みのお客様は、ログインおよび購入時にPayPalのIDとパスワードを入力するだけで、通常必要なさまざまな個人情報を入力することなく、電子チケットの購入が可能となります。さらに、PayPalには不正検知システム、年中無休のカスタマーサポート、買い手保護制度といった安心、安全が標準装備されています」と語った。

 また、PayPalとのパートナーシップは、日本を訪れる海外からのお客様への簡単、安全なサービスの提供の実現も見据えたものであるとし、現状のPassMe!は日本人を対象としたサービスであるが、将来的には、海外からの訪日観光客も利用できるサービスにしたいとの展望を語った。また、シルバーウィークを目標にセット型や回数券型、いくつかの施設の中から選択が可能なチョイス型といった新しいタイプの商品の提供も開始したいとのことだ。

株式会社ジェイティービー 事業創造部 企画開発担当部長 花園聡一郎氏
PassMe!開発の背景。スマートフォンの出荷台数は携帯電話全体の72.4%、利用者もガラケーを上回るようになり、スマートフォンをメインデバイスと想定したサービス開発が求められるようになった
PassMe!の事業概要。スマートフォンを活用した入場施設などの前売りチケットのオンライン販売を通じて、お客さまの休日のおでかけをより楽しく、便利にする事業である
PassMe!のサービスコンセプト。スマートフォンだけで完結でき、簡単に探して利用できるだけでなく、家族や友人とチケットをシェアすることも可能だ
加盟店のメリットは、導入コストが一切かからないこと、施設内イベントなどの情報を発信できること、利用者を知ることができるという3点である
基本機能として、施設情報やチケット情報の閲覧・検索、チケットの購入、最新情報の収集、チケットの管理、レビュー投稿などのほか、LINEを利用した最新情報の配信などがある
チケットをお得な価格で購入できることや、チケット購入の列に並ばずにスムースに入場できることもメリットだ
スマートフォンに事前購入したチケットを表示させて、施設の係員に見せ、係員は電子スタンプを押すことで、チケットのもぎりができる
また、チケットを複数人でシェアできることも特徴であり、1人がまとめてチケットを購入して、ほかの人にLINEやメールを使って配布できる
JTBとPayPalのロゴが改めて大きくアピールされた
PayPalとの提携によって、チケットをお得に買えるだけでなく、チケットをお得に、簡単に、安全に買えるようになる
PayPal IDとパスワードを入力するだけで、決済が完了する
PayPalには不正検知システムや年中無休のカスタマーサポート、買い手保護制度が用意されているので、安心してチケットを購入できる
実際にPassMe!を利用してチケットを購入する流れが動画で紹介された。まず、PayPalを利用して会員登録を行なう
PassMe!のLINEアカウントと友達になることで、LINEお友達限定のチケットプレゼントキャンペーンや旬のトピックスのニュース配信などが利用できる
スポットを検索し、チケットを購入する
まとめて複数枚の購入や大人と子どものチケットを同時購入することも可能
購入したチケットを画面に表示させ、入場時に係員に提示する
世界で広く使われているPayPalとの提携は、将来的に日本を訪れる海外からのお客さまへの簡単、安全なサービスの提供の実現に向けたものでもある
PayPalとの提携によって、将来的にはPassMe!を海外から日本を訪れた方も利用できるようになる
PassMe!の公式キャラクターであるリスのファミリーは、イラストレーターのカナヘイさんが描いたものだ

マルチタッチ機能を利用した電池不要の電子スタンプを採用

 最後に、JTB 事業創造部 企画開発担当マネージャー 岩楯隆志氏が、実際にスマートフォンを使って、PassMe!で購入したチケットを友人にシェアする手順と、チケットを表示させて係員が電子スタンプを押す手順をデモした。

 PassMe!で購入したチケットは、簡単な操作で家族や友人などに送ることができる。PassMe!では、遊園地などのチケットだけでなく、ビアガーデンのチケットなども購入できるので、お世話になった方へのプレゼントにも使えそうだ。

 PassMe!の利点の1つに、加盟店の導入コストがゼロであることが挙げられるが、その秘密は施設でのチケット認証の仕組みにある。電子チケットサービスというと、NFCやモバイルFelicaなどのRFIDの利用を思い浮かべる方もいるだろうが、そうしたRFIDを使うサービスでは、加盟店側にRFIDリーダなどの設備が必要になり、導入コストがかかってしまう。また、利用できるスマートフォンの機種も限られてしまう。PassMe!は、基本的にWebブラウザ上で完結するサービスであり、専用アプリを必要としない。推奨環境はiOS 6.0以上、Android 4.0.3以上とされており、現行のiPhoneやAndroid搭載スマートフォンのほとんどで利用可能だ。

 PassMe!では、エム・フィールドが開発した「HiTAP」と呼ばれる電子スタンプ技術を採用している。HiTAPは、「Ocelly」と名付けられた電子スタンプをスマートフォンの画面に押しつけることで認証を行なう技術である。Ocellyは、黒い導電性樹脂とカバー部分から構成されており、導電性樹脂に手を触れた状態でスマートフォンの画面に押しつけることで、複数の指で同時に画面の複数箇所をタッチしたのと同じ状態を実現する。このタッチパターンの組み合わせは天文学的数字になり、そのパターンを利用して正しい電子スタンプが押されたかどうかを判定する仕組みである。電子スタンプ側には、電池も電子回路も入っていないので、非常に低コストで半永久的に使える。通常のスタンプと同じ感覚で画面に押しつけるだけで、チケットのもぎりが可能なので、加盟店側でも特別なトレーニングなどは不要だ。

 なお、電子スタンプには電池は不要だが、認証自体はインターネットを通じて行なうため、スマートフォンがインターネットに接続されていなければならない。また、電子スタンプが押されたチケットは、画面上でもスタンプの印影が表示されるので、使用済みであることが一目で分かる。

 会場では、PassMe!のタッチ&トライコーナーが用意されていたほか、発表会場ホテル内のカフェでPassMe!を使った電子チケット認証体験も実施されていた。

株式会社ジェイティービー 事業創造部 企画開発担当マネージャー 岩楯隆志氏
岩楯氏は、実際にスマートフォンを使って、PassMe!でチケットを友人に送る操作を実演した
まず、マイチケットで、送りたいチケットを確認する
チケットを確認したら、「このチケットを渡す」をタップする
宛先と枚数を指定する
チケット招待用のURLが生成される
LINEを利用してチケット招待用URLを送りたい相手に送信する
LINEで送られたチケット招待用URLにアクセスしたところ。「受け取る」をタップすると、チケットを受け取ることができる
受け取ったチケットを表示したところ。このように簡単に友人にチケットを送れることも、PassMe!の魅力だ
チケットのもぎりに使う電子スタンプを手に持った岩楯氏
このように、スマートフォンの画面に電子スタンプを押し当てることで、チケットのもぎりが可能になる
使用済みのチケットには、このように電子スタンプが押される
鈴木雅己氏とエレナ・ワイズ氏のフォトセッションも行なわれた
PassMe!のスマートフォン画面を見せる鈴木雅己氏とエレナ・ワイズ氏
これが、電子スタンプである。黒い部分は導電性樹脂になっており、そこを指で持って、スマートフォンの画面に押しつける
電子スタンプの底面。4つの突起の配置パターンによって、正しい電子スタンプが押されたと認識する仕組みだ
会場ではPassMe!の体験会が行なわれていた
施設に入場する際には、このようにチケット画面を係員に提示する
係員がこのように、電子スタンプをスマートフォンのチケット画面の上に押す
チケットのもぎりが行なわれ、チケットの上に電子スタンプが表示される
(石井英男)