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アドビ、JCBやDeNAトラベルのデジタルマーケティング活用事例を紹介

デジタルマーケティング訴求イベント「Adobe Data Driven Forum」開催

2017年4月25日 開催

 アドビ(アドビシステムズ)は4月25日、東京都内でAdobe Data Driven Forumを開催した。Adobe Data Driven Forumは、Adobeのデジタルマーケティングを実現するクラウドツール「Adobe Experience Cloud」についてのソリューションを紹介するイベントで、そのなかでアドビのデジタルマーケティングツールを利用しているJCB(ジェイシービー)やDeNAトラベルの事例が説明された。

 また、アドビは広告代理店最大手の電通の100%子会社である電通デジタルとデジタルマーケティング領域における統合解析ソリューション「Adobe Analytics | Dentsu Digital Data Integrate」を共同開発したことを発表した。

アドビシステムズ株式会社 代表取締役社長 佐分利ユージン氏

デジタルの普及により、消費者が求める顧客体験の質は上がっている

 デジタルマーケティングは、多くの読者にはあまり耳慣れない言葉かもしれないが、ビジネス界では大きな注目を集めている。簡単に言ってしまえば、インターネットを利用して一般消費者に情報を提供するなどの手段を講じ、ブランドロイヤリティ(ブランドへの認知度や信用度)を高めるというマーケティング手法のことだ。

 昔はインターネットといえば、家に固定されていたPCでしかアクセスできなかったが、現在はスマートフォンが普及したことで、いつでもどこでもアクセスできる環境が整っており、企業のブランド力の向上や、ユーザーへの情報の到達の手段としてデジタルマーケティングが大きな注目を集めている。

 Adobe Experience Cloudは、アドビが提供しているデジタルマーケティングのクラウドツールで、「Analystics Cloud」「Advertising Cloud」「Marketing Cloud」などの各種ツールが用意されており、ユーザーとなる企業は自社の持つデータを解析してマーケティングに役立てたり、それを元に各種のWebサービスを提供したりということが可能になる。

 Adobe Data Driven Forumの基調講演に登壇した、アドビシステムズ 代表取締役社長 佐分利ユージン氏は「デジタルの破壊的要因は加速しており、一般消費者の企業に対する要求は上がっている。重要な事は優れた顧客体験で、顧客は素晴らしく、そして時には自分だけの顧客体験を求めている」と述べ、デジタルを利用した各種サービスなどを提供していかなければ、ユーザーに優れた顧客体験を提供することは難しくなっており、かつ一般消費者の要求レベルは上がっていると指摘した。

顧客体験のビジネスへの移行が必須に

 佐分利氏はその具体例として「20年前にはピザチェーンが提供する優れたユーザー体験は30分以内に届けて、届けられなければ無料にするというものだった。しかし、現代は注文はWebからすることがほとんどで、かつ配送もGPSで担当者がどこにいるか見ることができるなど進化している」と例を挙げ、顧客体験中心のビジネスへの移行を実現するツールとして「Adobe Experience Cloud」を紹介し、その採用をアピールした。佐分利氏によればAdobe Experience Cloudには、アドビが2016年に発表したクラウドベースのAIエンジン「Adobe Sensei」が採用されており、例えば数字の異常値を指定して解析をかけると、AIを利用してデータを解析してその要因がなんであるかなどが分かったりするという。

アドビが提供するAdobe Experience Cloud
「Adobe Analytics | Dentsu Digital Data Integrate」はSUBARUでの導入が予定されている

 また、今回アドビは、電通の子会社となる電通デジタルと提携し、Adobe Experience Cloudに含まれるAdobe Analysticsと連携して動作するデジタルマーケティング領域における統合解析ソリューション「Adobe Analytics | Dentsu Digital Data Integrate」を開発したことを発表した。

 佐分利氏によれば「このソリューションを利用すると、Adobe AnalysticsにテレビCMなどの出稿データが連携される。それにより、マス広告がサイト誘因に影響したかなどが分かるようになる。マス広告とデジタルを重視する企業に対するソリューションとなる」と述べ、これまでは統合したデータとして扱うのが難しかったCMなどのマス広告とWebサイトのデータを一体的に扱って、デジタルマーケティングに活用できるとアピールした。佐分利氏によれば、すでに自動車メーカーのSUBARUが採用を決定しているとのことだ。

Nordstrom マーケティングアナリティクス&テクノロジー担当 副社長 ジェイソン・ゴウワンズ氏
Adobe Systems デジタルマーケティング事業本部 Analytics Cloud事業部 製品部長 ジョン・ベイツ氏

 その後、米国のデパートチェーンNordstrom(ノードストローム)のマーケティングアナリティクス&テクノロジー担当 副社長 ジェイソン・ゴウワンズ氏、さらには米Adobe Systems デジタルマーケティング事業本部 Analytics Cloud事業部 製品部長 ジョン・ベイツ氏が登壇し、それぞれNordstromの事例と、Adobe Analytics Cloudに関する詳細を説明した。

佐分利氏のスライド
ゴウワンズ氏のスライド
ベイツ氏のスライド

顧客にマッチしたキャンペーンを告知するなど顧客体験を向上

 基調講演後のセッションでは、JCBとDeNAトラベルの事例紹介などのセッションが行なわれた。JCBの事例紹介では、ジェーシービー WEB統括部 部長 岡田良太氏による、JCBがアドビのデジタルマーケティング製品をどのように利用して、デジタルマーケティングの活用に成功してきたかなどが紹介された。

 JCBは説明する必要はないと思うが、念のために説明しておくと、VISAやMastercardなどと並ぶ日本発の国際ペイメントブランドで、日本ではクレジットカードの発行会社としても知られているだろう。

株式会社ジェーシービー WEB統括部 部長 岡田良太氏
JCBの会員数や取扱高は増えている
国内のデジタルチャネル

 岡田氏は「ここ3年間でJCBのビジネスは台湾や中国などのアジア地域、LINEPAYやデビットカードなどの発行が増えていることにより拡大している。しかし、そうした数字だけでなく、それに伴いお客さまの体験が向上しているかが重要で、その視点を常に持ち、現在進展しているデジタル化に対応していくことが重要だ」と指摘。

 JCBは国内外でWebサイトやアプリなどを提供しているとのことだが、特に2016年の8月にリリースしたMyJCB(JCBカードの利用状況などを確認できるサービス、従来はWebで提供されていた)のアプリへの移行が進んでいると説明した。

デジタルへに対応するプロセス

 そうした新しいデジタル戦略に対処するために、JCBはWeb統括部と呼ばれる部署を作成し、全社横断的にデジタルコミュニケーション戦略を採った際に起こるさまざまな摩擦を避けながら推進していくようになったのだという。岡田氏は「成功するためには自分たちに主張をただ語るのではなく、データを見せながら共通の認識を得ていくことが重要だ」と述べ、デジタルの考え方を各部署に理解してもらうためには、データを共有しながら理解してもらうプロセスが必要だと強調した。

施策例とその効果

 そのうえで、アドビのツールを利用してどのようにシステムを組んでいくのかなどを検討していき、アドビのコンサルティングなどを受けながらシステムを導入していったのだという。その結果として公共料金の支払いのキャンペーンを紹介することで1.4倍にしたり、利用金額を確認した顧客にリボ払いを勧めて1.5倍にしたりするなど、顧客のニーズにあうようなキャンペーンやソリューションを紹介する仕組みを導入した結果効果があったという。

 岡田氏は「成功するには組織に横串を指すようにして実行し、データ分析の自動化と高度化、それと同時にIT部門との相互理解と協力が重要になる」と述べ、デジタルマーケティングを実現するには、組織そのものの変革とIT部門の協力が不可欠だと指摘した。

岡田氏のスライド

アドビの分析ツールを利用して、WebサービスのUIを改善の効果を正しく分析

 DeNAトラベル マーケティング・コミュニケーション本部長 兼 マーケティング部長 梶原崇史氏は、DeNAトラベルのAdobe Targetと呼ばれるツールの活用法について説明した。

株式会社DeNAトラベル マーケティング・コミュニケーション本部長 兼 マーケティング部長 梶原崇史氏

 DeNAトラベルは2006年にDeNAの子会社となったOTA(Online Travel Agent、ネット専業の旅行代理店)で、同じようにOTAだったスカイゲートと2008年に合併し、現在はDeNAトラベルのブランド名でOTAビジネスを行なっている。現在は日本だけでなく、オーストラリア、ニュージーランド、香港、タイ、シンガポール、台湾などでもビジネスを行なっているとのこと。

2014年に導入をした「Adobe Target」

 梶原氏によればDeNAトラベルではAdobe Targetを2014年から導入しているという。「2014年当時には柔軟性の高さを評価して導入した。当初の目的はA/Bテスト(データ比較)。旅行は季節性に大きく左右される商材で、UI/UXの改善の効果がピークシーズンのためなのか、改善が理由なのかを分かるようにするためだった」と述べ、その後さまざまなデータ分析などに利用するようになった経緯などを説明した。

3年間の成果

 そして、2014年はA/Bテストに活用し、2015年にはターゲティング分析を主軸にしてさまざまな実装を行なったという。2015年に関しては利益を伸ばすことができたが、2016年はやや下がっており、「成長につなげるにはどうしても通らないといけない道で、これを成長につなげていかないといけない」と説明した。

将来にはLINEアカウントを利用した旅行商品の提案なども考えていきたいという

 なお、今後想定される事例としては、Amazon.co.jpのAIを活用した家庭用機器「Alexa」の活用例や、LINEアカウントとAI、Adobe Targetを組み合わせてユーザーがLINEアカウントに語りかけると最適な商品を提案するなどの可能性があるのではないかと説明した。

梶原氏のスライド