ニュース

JAL、福岡空港警察署の巡回連絡競技会に協力

空港での警察官の対話能力や応接態度の向上を目的とした競技会

2017年4月19日 実施

JALは福岡空港警察署が主催する「巡回連絡競技会」に参加した

 JAL(日本航空)は、福岡空港警察署が主催する「巡回連絡競技会」に参加した。警察官の日常業務である「巡回連絡」をロールプレイングしていく競技会は、福岡空港警察署としては初開催とのことで、JALはチェックインカウンターの巡回を想定した場面設定を協力・提供した。競技会全体としては、JALカウンターを含むさまざまな空港施設の場面が用意され、4人の警察官が日頃の成果を発表した。

 ちなみに巡回連絡とは、警察官が家庭や事業所を訪問し、犯罪の予防、災害事故の防止などに関する事項について連絡を行ない、困りごとや意見、要望といったさまざまな声を把握し、警察活動に反映させること。福岡空港警察署の管轄は基本的に空港内となるため、一般の家庭に訪問するというよりも、空港ビルに入居する企業を巡回するかたちとなる。

福岡空港警察署の4人の警察官が競技に参加

競技会参加者たち。右から石松幸真巡査長、紺田将基巡査長、桑原史尚巡査長、餅越光巡査部長の4人
福岡空港警察署署長 警視 國武浩幸氏

 今回の巡回連絡競技会は、4人の警察官が参加。福岡空港警察署に勤務する地域・警ら係や交通係の26~30歳までの男性警察官が出場。まず競技会の冒頭、福岡空港警察署署長 警視の國武浩幸氏が挨拶をした。

「ここは一般の警察署と違い空港を守る場所でもあり、若い警察官たちに一般家庭などを訪問する巡回連絡の機会を与えることができません。それを克服するために、このような競技会を開いて経験を積ませたいと思いました。どうやってリアリティを出そうかと考えた末に、日本航空さまをはじめ、各所さまに快くお受けくださいましたことを、心より感謝申し上げます。

 巡回連絡は“地域のおまわりさん”が家庭を訪問し、問題や要望を聞きながら地域と共に解決を図る。地区で発生している事件や事故について説明し、被害に遭うことを未然に防ぐ。さらに緊急時の連絡先を聴取して、その発生に備える。非常に地味で時間のかかる活動ですが、長い目で見ると確実に成果の出る大事な仕事です。東日本大震災では、津波で市役所機能が失われたエリアでも、唯一残った巡回カードによって被災者の状況や行方不明者の把握に役立ちました。

 また、この福岡空港で緊急事態が発生することも予想されます。参加者の皆さんは各事業所さんを廻り、日々必要なアドバイスを行ない、より安心できる空港づくりに邁進していっていただきたいと思います。

 福岡空港は九州の玄関口です。飛行機を降りられて、まず目にする警察官が皆さんです。福岡だけでなく日本を代表する警察官であるといっても過言ではありません。そして、日々手口が変わっていくさまざまな犯罪に対し、広いアンテナを張って知識を収集することが必要となります。それを分かりやすく相手に伝える話術も必要です。

 日々の業務でコツコツと培っていくことになりますので、本日の競技でも存分に発揮していただきたいと思います」と述べた。

銀行やドラッグストアなどバリエーションに富んだロールプレイング形式で競技が進む

最初の石松巡査長は、空港内にある西福銀行という架空の銀行に巡回連絡を行なった
2組目の紺田巡査長は、空港内に新規オープンしたばかりのドラッグストアに巡回連絡するという設定

 競技は、4つのシチュエーションが用意され、1人10分の競技時間で巡回連絡業務を遂行していく。架空の銀行、オープンしたばかりのドラッグストア、空港を管轄している警備会社、そして最後にJALカウンターという順序。

 それぞれの事業所によって声掛け内容が少しずつ違い、銀行とドラッグストアの店員役を務めた警察官もアドリブを入れ込み、競技者の力量を確かめていく。空港警察署長をはじめとした審査員も真剣な眼差しで競技を見守っていた。

 3人目の警備会社への競技が終了し、4例目はJALのグランドスタッフである本多沙帆氏が対応役を務め、女性の比率が多く、帰宅時間が遅くなるなどの傾向をつかんだ競技者が、ストーカー対策や性犯罪の予防啓発など、分かりやすい言葉で説明した。

競技を評価する警察関係者席
空港の保安検査業務を委託されている警備会社を巡回する桑原巡査長
最後は餅越巡査部長。JALカウンターに巡回連絡で訪れるという設定
スクリーンにはチェックインカウンターの風景が投影されていたが、場面はオフィスの応接室という設定
なんでも気軽に相談しやすい雰囲気づくりで、JALの本多さんも納得の表情
夜遅く帰宅するグランドスタッフも多いという職場の特徴を聞き出した餅越巡査部長が、ストーカー対策をアドバイスする

最優秀賞はJALカウンターで競技をした餅越巡査部長

 すべての競技を終えたところで、JALグランドスタッフである本多沙帆氏が競技の印象についてコメントを求められ、「日本航空として、このような場に参加させていただきましたことを大変光栄に思います。実際に巡回の競技を見て、親身になって相談していただけることに安心感を覚えました。

 巡回連絡というものを私たちは初めて経験しましたが、今日の競技で理解できました。こうして警察の方に守っていただいていることで、安心感を持ってより一層業務に専念できると思いました。今後ともよろしくお願いいたします」と挨拶した。

JAL福岡空港勤務の本多沙帆氏から、競技の印象が語られた
すべての競技が終わり審査結果が発表される
講評を述べる福岡県警察 地域部地域課 課長補佐の芳尾章氏

 最後に、福岡県警察 地域部地域課 課長補佐の芳尾章氏から講評があった。「今回はさまざまなシチュエーションでの競技を見せていただき、ありがとうございました。巡回連絡は初対面であることが多いですので、端正な服装である必要があります。そして表情。自然体で話しかけなければいけません。皆さん明るく爽やかでユーモアもある。よく勉強されていて漏れがなかった。素晴らしかったです。

 巡回連絡で重要なことは“聞き出す”こと。話の腰を折らないなど、相手の話をよく聞く。そしてアドバイス。例えば、万引きの恐れがある店舗には、目配りの方法など対策を教えてあげるなどが大切です」とコメントした。

 いよいよ審査発表となったが、優秀賞と最優秀賞の2名に選出されたのは、2番目の競技を行なった紺田将基巡査長が優秀賞、最後のJALカウンターで巡回連絡を行なった餅越光巡査部長が最優秀賞を飾った。

優秀賞となった紺田将基巡査長
最優秀賞に輝いた餅越光巡査部長

 福岡空港警察署は、通常の警察署とは担当する範囲が異なる。しかし、人と人のやり取りで巡回連絡が成立していることに変わりはなく、管轄エリア内の企業や店舗の状況を知っておく、「把握」することの大切さは、ほかの警察署同様。この取材を通じて、アジアに向けた日本の玄関を守る警察として、航空会社や警備会社との連携が重要であることを実感できた。