ニュース

“CLMVT”の5カ国がツーリズム振興で協力する「CLMVT Link」発足

「THAILAND TRAVEL MART 2016 PLUS」で各国代表が集い会見

2016年6月8日~10日(現地時間) 開催

 タイ国政府観光庁が6月8日~10日にタイ・チェンマイで開催した同国最大のツーリズム商談会「THAILAND TRAVEL MART PLUS 2016(TTM+ 2016)」において、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイが共同で観光プローモーションなどを推し進める「CLMVT Link: Prosper Together(共存共栄)」を発足。各国代表者が出席した記者会見を実施した。

 TTM+ 2016には、タイに直接関連する旅行業界の企業などに加え、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムも出展者として参加している。ASEAN(東南アジア諸国連合)のなかでも、1990年代に加盟したこれらの4カ国、いわゆる「CLMV」諸国とタイとが観光プロモーションなどで協力していくというものだ。

 ASEANではこれまでも、「ASEANシングルディスティネーション」のプロモーションや「Two Country One Destination.(2つの国を1つの目的地に)」キャンペーンを行なっているほか、2016年1月にはメディアや旅行関係者を招いてタイを含む複数国を巡る「Mega Caravan」といった活動を行なってきた。今回のCLMVT Linkは、いわゆるメコン圏が一体となって、イベント、地域コミュニティ・ベースの観光、クルーズや河川をベースにした観光、ライス(米)、バザーといった各国共通の観光資源活用や、国間の接続を強化していくものとなる。

記者会見での各国代表。初めて1つのテーブルに着いたという
タイ政府観光庁 総裁のYuthasak Supasorn(ユッタサック・スパソーン)氏

 記者会見でタイ政府観光庁 総裁のYuthasak Supasorn(ユッタサック・スパソーン)氏は、「ASEANは2015年に前年比7.3%増となる9800万人の国外旅行客を迎え入れた。CLMVTの5カ国でもこの数字は伸び続けており、2010年には2680万人で、2014年には4440万人、ASEAN内の42%をこの5カ国で占めている。CLMVTの5カ国がこうしたポテンシャルを持っていることは、ASEANコミュニティ全体にとっても重要なことで、最終的にASEANの利益になる」とCLMVT 5カ国の存在感を説明。

 この連携を強めるためには「ブランディングキャンペーン、交通アクセスや接続性を無視することはできない」とし、タイではタイ国際航空のほか、タイ・スマイル、バンコク・エアウェイズ、ノックエア、エア・アジアらといったエアラインに、CLMVT各国の首都はもちろん、第2、第3の都市を含めて、新たな路線開設に向けた協議を続けているという。具体例として、チェンマイ~ビエンチャン/ルアンパバーン(ともにラオス)間、バンコク・ドンムアン~マンダレー(ミャンマー)といった路線について協議しているとした。

 アクセシビリティとコネクティビティの観点では地上アクセスについても言及。各国間を往来できる高速道路のルートを紹介。同地域では長年にわたり国境を超える高速道路の開発が進められ、エコノミックコリドー(経済的回廊)ルートとして知られている。このルートを利用して、各国の観光を一体化した旅行パッケージの検討なども進める。

CLMVTの5カ国は、旅行者数がASEAN全体の40%以上を占める重要なポジションにあるという
タイは自国に拠点を置く航空会社と協議し、CLMVT間を結ぶ新たな航空路線の開設を目指す
高速道路を介したCLMVT各国のアクセス。エコノミックコリドールートとして整備が進められている
今年50周年を迎えるASEAN。AEC(ASEAN経済共同体)が発足するなど連携を強めているが、観光においてもASEAN全体を一つの観光先としてプロモーションを行なっている
CLMVT Linkでは、イベント/フェスティバル、地域コミュニティ・ベースの観光、クルーズや河川をベースにした観光、ライス(米)旅、地上交通を使った往来、バザーという、6つの共通テーマを掲げている

 このCLMVT Linkによる連携について、各国代表も一言ずつコメント。

 カンボジア代表のTry Chhiv氏(Deputy Director General, Ministry of Tourism)はCLMVT Linkというプラットフォームでアクションを起こすとし、各国が共通したアクティビティなどを有していることから、これらを利用したツアーパッケージを造成し、ブランディングやプロモーションを一緒に行なっていきたいとした。

 ラオス代表のManisakhone Thammavongxay氏(Director of Public Relations Division, Ministry of Information, Culture and Tourism)は、連携強化にあたって接続性、特に航空路線に課題があるとした。ラオスではタイからの旅行客が50%以上を占め、次いでベトナムが多いがこちらは地上の国境を超えての入国が主流だという。

 ミャンマー代表のDaw Khin Than Win氏(Deputy Director General, Ministry of Hotels and Tourism, Myanmar)は、LCCの運航数を増やして選択肢を拡げること、国境での入出国を簡素化すること、税関のルールを変更することを提案。税関については、CLMVT間と他外国とで異なるルールを適用するなどの案を披露した。

 ベトナム代表のVu Nam氏(Deputy Director General, Tourism Marketing Department, Vietnam National Administration of Tourism)も航空路線について言及。ベトナムとタイの間の航空路線は充実しているが、例えばミャンマーとの路線は非常に限られているなど、この拡張が非常に重要だとした。加えて、それぞれの国の旅行代理店向けに複数の国をまたいだ視察ツアーの実施も提案。CLMVTのなかではタイがリーダーであり、中心となって商品開発等を主導することに期待した。

 質疑応答ではビザに関する話が中心となった。ASEANでは現在、ヨーロッパにおけるシェンゲン協定のように1つの査証でASEAN加盟国内を自由に往来できるようにすることを目指して協議を進めているという。タイ代表のSupasorn氏は個人的な意見として「1~2年で(いくつかの国で)シングルビザ化が実現するのではないか」と予想を述べた。一方で、国境の施設についての課題も話題にあがり、ラオス代表のThammavongxay氏は「国境によって差があるのは事実で、もっと充実させなければならない国もある。我々もすべての国境で着実に施設を充実していきたい」とした。

「CLMVT Link: Prosper Together」のスタートを記念して、代表がそれぞれの国の花に水をあげるセレモニーを行なった

CLMVの観光情報をプレゼン

 この記者会見では、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの各国代表者が、CLMVTの各国と連携した取り組みや、それぞれの国の観光スポット、交通アクセスなども紹介した。

カンボジア Deputy Director General, Ministry of TourismのTry Chhiv氏

 カンボジアは、CLMVTの中心にあり地理的な利点を強調。東南アジア各国へ1~1.5時間で移動できるゲートウェイとしての高いポテンシャルを持つことをアピールした。観光資源としては、北西部のシェムリアップ、アンコールワットといった世界遺産、西南部のリゾート地、北東部の自然豊かな自然環境などを挙げ、文化と自然をベースとした観光振興を進めており、今後はアンコールワットなどに続く第2、第3の観光資源開発も強化する意向を示した。

 国外からの訪問客は2015年に478万人で、前年比6.1%増。多くはアジア太平洋地域からの訪問で76.2%を占める。さらにそのうち、LMVT 4カ国からの訪問は175万人で、前年比36.7%増。ベトナムとタイ、ラオスが国別の訪問客数順位でトップ10に入る。

 雇用創出などにも観光業が貢献しており、政府として観光産業に43%に投資。今後、2020年には750~800万人の訪問客、100万人の雇用創出を目指す。

ラオス Director of Public Relations Division, Ministry of Information, Culture and TourismのManisakhone Thammavongxay氏

 ラオスは、CMVTの4カ国すべてと国境を有しており、国境のチェックポイントは10カ所を有する、地上交通のメリットを紹介。航空路線はタイ、ベトナム、カンボジアの3カ国と直行便が運航されている。

 観光地としては、コーンパペンの滝、バンビエンの川下り、首都ビエンチャンの文化などを紹介。民間企業へ投資やCLMV内の企業と官民パートナーシップ(PPP)の締結による観光開発を進め、9月~10月にはそのワークショップも開催。その成果を2018年には具現化したいとした。

ミャンマー Deputy Director General, Ministry of Hotels and Tourism, MyanmarのDaw Khin Than Win氏

 ミャンマーは各国が連携するうえで交通アクセスの接続性の重要性を強調。航空路線はタイと6路線、ベトナムと2路線を持つほか、地上交通では、タイと間で5カ所の国境のチェックポイントを持っている。他国との連携では、CLMVのほかに、ACMECS(タイとカンボジアのビザ相互免除プログラム)と観光全般について協力。マレーシアを除くASEAN各国からの訪問客へは、ビザ免除も実施しているという。

 国外からの訪問客は2015年に前年比52%増となる468万人。国外からの観光客受け入れを開始した2011年の81万人から、2012年から2013年に前年比93%の成長を見せるなど急成長した。

 観光地としては、ヤンゴン、マンダレーといった主要地のほか、インド国境に近いチン州、中南部のモン州、カレン州、ピューといった地域、都市を新たに観光地として開発。CLMVTの国にある都市とマンダレーと姉妹都市を締結してのプロモーションや、各国の世界遺産を巡るプランの提案などを行なっている。

ベトナム Deputy Director General, Tourism Marketing Department, Vietnam National Administration of TourismのVu Nam氏

 ベトナムは、2015年の訪問客数が794万人を超えた。しかし訪問客の中心は日本を含む北東のアジアで、東南アジア(ASEAN加盟国)からの訪問客は16%に留まることを指摘。

 観光資源としてもリゾート、自然、食が充実。5月にはオバマ米大統領がベトナムを訪れ、ハノイ市内のレストランで春巻を食したことなども紹介があった。ホテルは3~5つ星のホテルも充実しており、2015年には19軒の5つ星ホテル、28の4つ星ホテルなどがオープンしたという。

 交通アクセスについてもCLMT 4カ国と航空路線が開設されており、2016年6月8日(現地時間)からは北部のヴィン~バンコク間でチャーター便の運航を予定している。CLMVTとの観光開発についても2018年までに実施するアクションプランを策定。メコン川流域を中心としたツアー、エコノミックコリドーを使ったツアーや世界遺産巡りを例に挙げ、複数カ国にまたがったツアー商品の開発などを進める意向を示した。