旅レポ
統合型リゾートから世界遺産までいろいろな見どころがひしめく街「マカオ」を紹介(その4)
ポルトガル建築からバンジージャンプ、エッグタルトまで、楽しさが尽きないマカオ旅
(2015/8/20 00:00)
マカオ観光局が実施した視察ツアーのレポートも今回で4回目となる。これまで、コタイの統合型リゾート(IR)やマカオ半島の世界遺産などをお伝えしてきたが、まだまだ伝えられていない風景がある。
今回は、これまでに触れることができていないマカオの観光スポットをまとめて紹介する。前回までの記事以上に、“マカオにはいろいろな方向性のビジター産業があるんだな”と感じていただけるのではないかと思う。
洋風建築が立ち並ぶ「ラザロ地区」
マカオ半島内にある「聖ラザロ教会」付近の街並みは、石畳と西洋風建築が並ぶ、まるでヨーロッパのような一角となっている。これまでの洋風建築は、白や緑、ピンクなどを使ったポップな色合いの建物も混在していたが、ラザロ地区は黄色というか、クリーム色に近い建物が並んでいる。今回のツアーでは夜に訪れたが、街灯に照らされて、そのクリーム色の洋風建築の味わいが増しているように思えた。
さらに、これまでに紹介してきた洋風建築物は、中国風の建物も入り交じった空間に建っているところが多かったのだが、この地区はわりと広いエリアの街並み全体が洋風に統一されている点で、今回の視察ツアーのなかでも異彩を放っており、印象に残っている。
233mからのバンジージャンプやスカイウォークXが名物の「マカオタワー」
マカオのアトラクションでもっとも有名なのは「マカオタワー」の各種アクティビティメニューではないだろうか。
マカオタワーは338mと、東京タワーよりやや高く、233mのところに展望台を設けている。この展望台周囲の柵のない床面を1周できる「スカイウォークX」や、世界最高を謳う「バンジージャンプ」をできるのだ。さらに、ここから塔最上部の338m地点まで登るアトラクションも用意され、怖いもの見たさにチャレンジする人も多いようだ。バンジージャンプはチャレンジした著名人の写真が飾られており、日本人もジャニーズタレントやAKB48のメンバー、有名俳優などがチャレンジした写真が飾られていた。
ちなみに料金だが、ツアーに参加した4月時点ではスカイウォークXが848パタカ(約1万3000円、1パタカは15~16円ほど)、バンジージャンプが3148パタカ(約5万円)となっていたが、原稿を執筆している8月の時点におけるマカオタワーのWebサイトの料金表では、スカイウォークXが788パタカ(約1万2000円)、バンジージャンプが3088パタカ(約4万9000円)と、若干値下がりしている。ただ、ここ数年で急激に値上がりしたそうで(よくいえば)料金改定は柔軟に行なわれている様子。チャレンジしようと思っている人は、訪問前にWebサイトで料金チェックをしておいた方がよさそうだ。
もっとも、こうしたアトラクションに挑戦する気がないとしても、展望台からの眺めはよく、マカオを360度展望できる最高の場所といえるだろう。展望台への入場料金は大人135パタカ(約2100円)。
夜の散歩も楽しめる、昔ながらのマカオを味わえる街「タイパ・ビレッジ」
マカオを構成する地区の1つ「タイパ」は、元々は島だった地域。今回の視察ツアーでは、夜にタイパ南部の「タイパ・ビレッジ」を訪れた。文字どおり“ぶらぶら”した散歩のような視察だったのだが、目に映るものは“洋”の雰囲気でありながら、あまり華やかではなく、日常の空気に包まれていたのが印象に残っている。
今回は、夕食後に住宅街を抜けるようにして歩き、丘の上に立つ教会などを見て回った。日本を含めてどの国であっても暗い夜道の一人歩きを勧める気はないが、この地域は街灯も明るく、22時過ぎの訪問にも関わらず営業中のお店も多かった。街灯もこの地区の情景に一花添えており、のんびりと夜歩きを楽しむのにも魅力的な場所だ。
ザビエルの名を冠した教会が建つ静かな漁村「コロアン」
同じく、マカオを構成するもう1つの地区が「コロアン」だ。タイパと同じく、もともとは島だった地域で、マカオ半島からもっとも離れた場所にある。
コロアンの西南端部にあるコロアン村は漁村で、日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルの名前を冠した、その名も「聖フランシスコ・ザビエル教会」が建てられているほか、古廟もあり、住宅街ありと、タイパ以上に“日常のマカオ”を感じられる。
そして目の前を流れる水路の先は中国本土。見た目はただの対岸だが、そこに“見えない壁”がある感覚は、隣国までの距離がある島国の日本では味わいにくい感覚だ。
ところで、一連のマカオ視察ツアーの記事では、これまで食事の写真をほとんど掲載していない。前々回にも少し触れたが、最終回に“グルメ編”としてまとめてお伝えするつもりで、あえて掲載していなかったのだが、コロアンを語るうえで、触れないわけにはいかないお店がある。それが「ロード・ストウズ・ベーカリー」だ。
マカオスイーツの定番といえば「エッグタルト」。ケーキやパンを扱っているお店には、かなりの割合でエッグタルトも並んでいる。このエッグタルトを生み出したといわれているのがイギリス人のアンドリュー・W・ストウさん。日本でも「アンドリューのエッグタルト」としてチェーン展開しており、その名前は(おそらく)日本でも知れ渡っている(と思う)。そのアンドリューさんがマカオで開いていたのがロード・ストウズ・ベーカリーで、そのお店が今もコロアンにあるのだ。
見た目は焼き色がハッキリと付いているが、食べてみると中はふわふわで卵の風味が口の中に広がる。そして土台になっているパイはさくさくの食感。マカオ滞在中にいくつかのエッグタルトを食してみたが、ロード・ストウズ・ベーカリーのエッグタルトは特に卵の風味が強く、甘さが抑えられており、甘いものが苦手な人にもぜひチャレンジしてほしい味だ。
このロード・ストウズ・ベーカリーは、「アントニオ・ラマルホ・エアネス大統領広場」というラウンドアバウトに面した場所にある。この広場前にバス停があるので、公共交通機関を利用する場合は、ここがコロアン散策の起点になる。
そこから歩みを進めると、すぐに八百屋さんなどが並ぶ小路があり、そこを抜けると住宅街。普通の場所と言ってしまえば普通の場所だが、カラフルな洋館風の建物から古びたアパートまで、さまざまな住宅が建ち並んでおり、生活感のあるその土地の空気を存分に味わうことができる。
そして、ぶらぶらと南へ向かって住宅地を歩いていると、古廟が見えてくる。1つ目が「観音古廟」、もう1つが「天后古廟」だ。そして、コロアン南西端近くまで歩くと「譚公廟」が見えてくる。いずれも中国風の装飾が施された古廟で、建物自体はさすがに古いが、綺麗に維持されており、コロアンの人々が長きにわたって崇拝してきた文化を感じることができる場所だ。
続いては、譚公廟で折り返して水路沿いの道を歩いた。対岸は中国本土ということで、違う制度の土地が向かいあっていることになるが、そうした緊張感はまったくない。ベンチもあってくつろげるほか、地元の人が水路沿いの塀に座って談笑している姿を見ることもできた。
歩道は石畳となっており、ところどころに星や太陽といった天体をモチーフにしたデザインも施されている。この水路沿いには洋風建築の図書館もあり、おだやかな空気が流れる散歩道といった風情の場所だ。
この道を歩いていると、(特に日本人には)コロアン随一の観光スポットといえる「聖フランシスコ・ザビエル教会」にたどり着く。前回お伝えした「マカオ歴史市街地区」のカトリック教会と同じバロック建築ではあるが、20世紀と比較的最近建てられたこともあってか、外装、内装ともに、ちょっとファンシーな色使いが印象的だ。マカオ半島内のカトリック教会と、この聖フランシスコ・ザビエル教会のどちらか一方を見ただけでは違いは分からず、両方を見ることでマカオ文化を味わう旅の楽しさは増すと思う。
ちなみに、聖フランシスコ・ザビエル教会と名付けられている以上、当然、日本にキリスト教を伝えたザビエルに縁のある教会であるわけだが、建立直後にはこの教会にザビエルの腕の遺骨が納められていたという。ただし前回もお伝えしたように、現在はマカオ半島にある「聖ヨセフ修道院」に移管されている。
島国・ニッポンでは味わえない徒歩での国境通過
さて、このほかにマカオでぜひ実行してみたかったのが、中国本土との国境通過だ。レポートの1回目でも触れたが、制度が違うだけで中華人民共和国と同じ国なので、国境という表現が適切かどうかは判断が難しいが、入出境管理が行なわれていることから便宜上、国境と表現する。ちなみにマカオでは、この入出境ゲートは「關閘」(クワンツァ)と表現されているほか、英語ではボーダーゲート(直訳すれば国境)と言う。
そうした表現はともかく、島国である日本では、国境を越えるためには船や飛行機に乗る必要があり、歩いて国境を通過することができない。歩いて国境を越えるというのは、それだけで気持ちが高まる。
日本に馴染みの深い国では、アメリカはカナダやメキシコへの国境通過が可能で、記者も以前にメキシコのティファナまでは渡ったことがあるのだが、特にアメリカからの出国はほぼスルーで国を越えた感動がいまいち沸き上がってこなかったし、ヨーロッパはEUのおかげで主要国間の往来が自由にできて面白くない(注:個人の感想です)。あとは東南アジアが本格的な国境越えを体験できそうな身近な土地として挙げられるが、あいにく記者は東南アジアで地上移動による国境越えの経験がないため、詳しくは分からない。
ということで、徒歩移動による国境越えを体験すべく、マカオ半島北端の「關閘」へと向かったわけだ。この日は、視察ツアーの団体行動がセナド広場付近で解散となったので、路線バスに乗って移動。關閘には地下にバスターミナルがあり、複数の路線が乗り入れているほか、カジノホテルのシャトルバスもあるので、いずれかのバスを利用するのがよいだろう。便利かつ安上がりなだけでなく、目的地(=バス停の名前)も分かりやすいので、マカオのバスを体験する最初の路線にもお勧めだ。
当然、国防上の最重要拠点である国境施設内は撮影禁止だ。マカオ側から進むと、出国、免税店エリア、入国の順にエリアを通過する。免税店エリアがしっかり設けられているのが面白いところで、往復の際にここで買い物をするのもよいだろう。
そして、中国側へ抜けると、そこは珠海市。目の前の広場や隣接する珠海駅が、マカオとはまったく異なる規模感で、違う国に来た感覚に襲われた。この中国本土側の規模感には圧倒される。逆に、マカオ、とりわけマカオ半島には居心地のよさを感じていたのだが、道や建物が込み入っているところなどには、異国情緒とともに、どこか親しみも感じていたのかも知れない。一時的とはいえ国境をまたいだことで、マカオという街を見つめ直すきっかけにもなった素晴らしい体験だった。
ところで、ほんの数時間とはいえ中国本土へ渡ったことで、パスポートには中国の入出境スタンプが押された。日本へ帰国する際、羽田空港の税関職員にこの点を追求され、「ただ行ってみたかっただけなんですぅ」と説明はしたものの、この軽いノリが逆に怪しまれたのか、結局、その場ですべて荷解きする羽目になった……ということも、後日談として記しておきたい。
マカオ半島の4つ星ホテル「ハーバービュー・ホテル・マカオ」に宿泊
さて、今回のツアーでは、旅程の前半はコタイ地区の「フォーシーズンズ・ホテル・マカオ・コタイストリップ」、後半はマカオ半島の「ハーバービュー・ホテル・マカオ」に宿泊した。本稿の締めとして、このホテルを紹介しておきたい。
ハーバービュー・ホテル・マカオは、2015年2月にオープンしたばかりの新しいホテルだ。マカオ半島南東のフィッシャーマンズワーフの敷地内に建っているのだが、この立地が素晴らしい。
フィッシャーマンズワーフを地図で見ると、マカオの中心街から外れているように見えると思うが、マカオへのアクセスとして主流のフェリーターミナルからすぐの距離というのは1つの利点だし、何より目の前に「サンズ・マカオ」があることが素晴らしいことなのだ。サンズ・マカオはマカオの主要地点へ無料のシャトルバスを運行しており、これを活用して中心部へ容易に移動できる。サンズ・マカオという主要ホテルの目の前には当然、路線バスのバス停もある。
また、周囲は学校やオフィスビルが多く、海沿いということもあって、朝晩は落ち着いた雰囲気の地域であることも、ホテルという施設の立地としてはメリットに挙げてよいだろう。海側の部屋であれば、上る朝日とともに目覚めることもできる。
さらに、ハーバービュー・ホテル・マカオは4つ星ホテルということもあって利用しやすい料金に設定されているのも魅力だ。2015年8月に調べたところ1ベッドのスタンダードルームが1230パタカ(1万9000円~2万円)から。ちなみに、記者が今回泊まったのはスーペリアルームで、これは海側の部屋。スタンダートルームは陸向きの部屋という違いがあり、料金はスーペリアルームが100パタカ(1500~1600円)ほど高く設定されている。このほか、同ホテルの最上級となる2ベッドルームのスイートが4000パタカ(6万20000~6万3000円)前後となっている。
新しいホテルということもあって室内設備は十分で、全室に無線LAN(Wi-Fi)を完備するほか、有線LANによるインターネットにも対応。さらにデスク脇の各コンセントにUSBポート(5V/2A)を併設しているほか、備え付けのTVに映像を映し出すためのHDMI端子もコンセントの近くに用意されている。
バスルームは昨今流行っているベッドルームから屋外までを展望できるシースルーになっているほか、シャワーの水量なども問題なし。華やかさを求める人はカジノホテルなどを選んだ方が満足できるだろうが、宿泊施設としてのクオリティの高さとコストパフォーマンスを重視してホテルを選びたい人にはお勧めしたいホテルだ。