旅レポ
統合型リゾートから世界遺産までいろいろな見どころがひしめく街「マカオ」を紹介(その2)
コタイ地区で見た、進化し続ける統合型リゾート(IR)
(2015/7/31 00:00)
中華人民共和国 マカオ特別行政区は30km2足らずの地域で、中国本土と隣接した「マカオ半島」、離島である「タイパ」と「コロアン」、そしてタイパとコロアンの間を埋め立てた「コタイ」地区に大別される。タイパとコロアンは埋め立て地によって陸続きとなっており、マカオ半島とは3つの橋で接続されている。記者はこれまでマカオを訪問したことはなかったが、今回、マカオ観光局が実施した視察ツアーに同行し、そんなマカオのさまざまな場所を見る機会を得た。マカオへの行き方などは前回紹介したとおり。今回は、実際にマカオへ行ったときの訪問先候補となる場所の1つ、「コタイ」地区を紹介する。
埋立地であるコタイ地区には、統合型リゾート(IR)施設が続々と建設されている。この建設は2000年代後半に始まったそうだが、その象徴的存在の1つで、3番目のリゾート型ホテルとして「ギャラクシー・マカオ」(Galaxy Macau)が誕生したのが2011年とのことなので、2000年代までにマカオを訪れた人と、その後に訪れた人では、このコタイ地区に対する印象が大きく違うのかも知れない。
ところで、IRという言葉は日本ではあまり馴染みがないが、カジノやホテル、ショッピングモールなどの商業施設、コンベンションセンターなどのMICE施設、レストラン、映画館などを含む劇場などが一体となった観光施設を指す。日本でこの言葉が出るときは、主に“カジノ合法化”に関わる議論に際した場合で、カジノを含まない場合には積極的にIRという言葉を使わない傾向もあって、日本では“ここはIR”とはっきりと呼ばれているところはない。
そうした言葉の定義はともかく、IRの開発を推進している国や地域は少なくない。2000年代以降でもシンガポールやスイス、オーストリア、イギリスといった、“ほかにビジター産業があるだろう”と思うような国もIRを新たな資源として主にインバウンドの獲得に力を入れている。
そして、こうした国以上にIR開発の代表として知られるのはアメリカのラスベガスだ。実は、マカオのIRはこのラスベガスに似た傾向がある。それは、独自のテーマ性を持った巨大なリゾートホテル、リゾートエリアが林立している、という点だ。実際、コタイ地区のIR型ホテルの走りとなったのは「ヴェネチアン・マカオ」で、この運営はラスベガスに本社があるラスベガス・サンズである。香港のメルコ・クラウンが運営する「シティ・オブ・ドリームズ」、ギャラクシー・エンターテインメントが運営する「ギャラクシー・マカオ」といった、大規模なリゾートエリアに複数のホテルが入るスタイルはあるものの、テーマ性を持たせるという点ではラスベガスのような雰囲気がある。
さらに、取材時点から本稿執筆時点までの間にも、ギャラクシー・マカオ内に「JWマリオット・ホテル・マカオ」ならびに「ザ・リッツ・カールトン・マカオ」が5月27日にオープン。両ホテル合わせて1250室を超える客室を持つ大型ホテルだ。さらに、2015年から2016年にかけては3000室級の「パリジャン・マカオ」、1600室級の「MGMコタイ」、2000室級の「ウィン・パレス」といったラスベガス資本の大型ホテルのオープンが予定されており、2017年にはマカオにおけるホテルの供給部屋数は5万室に達するというほどで、まだまだ規模の拡大が続く見込みだ。
カジノ以外に楽しめるポイントが盛りだくさんのIR
IRといえば、なんとなく“ホテル+カジノ”のイメージがつきまとうが、“統合型リゾート”の名のとおり、必ずしもカジノは要件に入っていないし、アミューズメント施設なども含まれる。実際、コタイ地区のIRを見て回ったが、ブラブラしているだけでも楽しい気分になってくる。
ちなみに、以下に掲載する写真にカジノの写真が含まれてないのは意図的に省いているわけではなくて、カジノ内は撮影禁止のためだ。このあたりは賭け事を行なう場であるゆえの配慮が求められる。また、21歳未満はカジノに入場できないため、入り口に係員がいてチェックしている。残念なことに記者はすんなり入れてしまったのだが、日本人は年齢よりも若く見られる傾向が海外ではあるので、(普通は携行しているとは思うが)パスポートの提示が求められる可能性があることは気に留めておいた方がいいだろう。なにより、ホテルのなかでカジノが占めるスペースが大きい場合、そこを迂回するのが面倒なこともある。カジノを素通りしようと思っても、このチェックを通過しなければならないので、IRの施設内を歩く場合にはパスポートは必ず携行することをお勧めする。
そんなわけで、図らずもカジノ以外の写真のみの紹介となるのだが、それを除いても楽しい気分になってくるというのが伝わるのではないかと思う。
最初に紹介するのは「ギャラクシー・マカオ」。ここには「ギャラクシー・ホテル」「ホテル・オークラ・マカオ」「バンヤンツリー・マカオ」という3つのホテルが入居していたが、先述のとおり“第2期オープン”として「JWマリオット・ホテル・マカオ」「ザ・リッツ・カールトン・マカオ」が5月27日にオープンしている。
ここの一番の見所は、エントランスホール「ダイヤモンド・ロビー」にある「フォーチュン・ダイヤモンド」だろう。周囲に孔雀のオブジェ、天井にも孔雀の羽根をイメージしような装飾が施された噴水のような場所だが、30分ごとのショータイム時に中から大きなダイヤモンドが浮かび上がってくるのだ。屋内とは思えないというか、むしろ屋内だからこそ迫力が増しているのかも知れない。正味5分ほどではあるのだが、ほんの短時間にも関わらず強烈に記憶に残る演出だった。
「ヴェネチアン・マカオ」はコタイ地区でももっとも早くからIRを開発し始めたホテルで、先述のとおり、ラスベガス・サンズが運営母体。ラスベガス・サンズはヴェネチアンのほかに、コタイ地区に後述の「サンズ・コタイ・セントラル」や、マカオ半島に「サンズ・マカオ・ホテル」を運営しており、同地への注力ぶりが伺える。
ラスベガスなどのヴェネチアンを知る人ならおなじみだと思うが、水の都とも呼ばれるイタリアのヴェネチアをイメージした水路がショッピングモール内に巡らしてあり、「ゴンドラ」と呼ばれる船に立つ、船頭の歌声が館内に響き渡る。
同じく、ラスベガス・サンズが運営する「サンズ・コタイ・セントラル」は、「シェラトン・マカオ・ホテル・コタイセントラル」「コンラッド・マカオ・コタイセントラル」「ホリデイイン・マカオ・コタイセントラル」という3つのホテルとアミューズメント施設、ショッピングモール、カジノなどを組み合わせたIRとなる。
ショッピングモールは岩と緑を張り巡らせた熱帯雨林のような雰囲気が特徴。ところで、“ホリデイイン”と聞くとリーズナブルなホテルのイメージがあると思うが、「ホリデイイン・マカオ・コタイセントラル」もコタイ地区のなかでは比較的リーズナブルな価格帯で提供されている。ここは、元々は世界的に有名な高級ホテルチェーンが建設を進めていたが、開業前にその高級ホテルチェーンが撤退。その跡地にホリデイインが入居した経緯があるという。いわば、新品同様の高級ホテルの居抜き物件を買ってリーズナブルに提供しているようなもので、価格と満足度の比では、良好なパフォーマンスを期待できそうだ。
続いて紹介する「シティ・オブ・ドリームズ」は、「クラウン・タワーズ・マカオ」「グランド・ハイアット・マカオ」「ハード・ロックホテル・マカオ」を擁するIR。入り口から館内まで至るところに遊び心があり、記者の印象としては、アミューズメント施設しての色合いはここがもっとも濃いように感じられた。目立ったのは、深度センサー付きカメラを用いたアミューズメント設備で、子供達も楽しそうに遊んでいた。
また、シティ・オブ・ドリームズの館内で公演されている「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」も見学させてもらったのだが、水による演出の面白さもさることながら、演じる役者のアクションのダイナミックさに目を引きつけられた。聞くところによれば、飛び込みや体操など、演じる役柄の動きごとに、実績がある元アスリートが集まっているそう。
さらに舞台装置も面白く、序盤だけでも、深いプールかと思えば一気に水が引いたり、噴水が現われたり、かと思えば東屋が登場したり、と目まぐるしく移り変わって、一気にショーに引き込まれる。中盤以降は触れないが、思いもかけない演出が登場する。一見の価値がある、お勧めのショーだ。
フォーシーズンズホテル・マカオに宿泊
さて、今回のプレスツアーでは、コタイ地区の高級ホテルの1つである「フォーシーズンズ・ホテル・マカオ・コタイストリップ」に2泊滞在した。国際的に知られる高級ホテルチェーンだけあって、一歩入った瞬間から、(先入観があることも否めないが)威厳のようなものを持ったデザインに息をのむ。また、日本語を話すスタッフも勤務しているので、日本人にも利用しやすいホテルといえるだろう。
今回は同ホテルが提供するデラックスルームに宿泊。キングサイズベッドのシングルルームで、224部屋を備える。広さは部屋により46~55m2となる。部屋の様子については写真でお伝えするが、このホテルで最も驚かされたのは、ディナーに向かう途中のことだ。
部屋を出て、エレベータホールに向かう途中でルームメイクを行なうスタッフとすれ違ったのだが、ここで「Good evening, sir. Mr.Tawada」と声をかけられたのだ。どこのホテルでも、すれ違うときに挨拶ぐらいはするが、名前まで呼ばれたのは初めての経験だった。マネージャーによるウェルカムカードが置いてあったので、名前はそれを見たのかも知れない。だが、その部屋にどんな人が泊まっているかに興味がなければ覚えようとはしないだろうし、1日に何部屋も作業するのであろうスタッフの1人が自分の名前を覚えていてくれたことは素直にうれしかった。
もちろん、たった2泊の滞在なので、このスタッフの個性である可能性は否定できないが、このような心を持ったスタッフの存在こそが、高級ホテルとしてのステータスを維持するのにもっとも大切なことなのではないだろうか、などと考えさせられる出来事だった。