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京都宇治の世界遺産「平等院」と桜を撮ってみた

平等院鳳凰堂は、中央の中堂、左右の翼廊、さらに中堂の背後にある尾廊の4棟で構成されている

 平安時代の文化を今に伝え、「古都京都の文化財」の1つとして世界遺産にも登録されている平等院は、桜の名所でもある。この記事が掲載される4月6日前後には見ごろを迎えていると予想されるが、ひと足早く訪れてきたので、見どころをレポートする。

鳳凰堂(東側)

正面から見た鳳凰堂。別途観覧料金(300円)を払えば、中堂の中に入って観覧することができる(内部での写真撮影やスケッチは許可されていない)

 平等院は、平安時代に藤原道長とともに藤原氏の全盛期を築いた藤原頼通が、父・道長の別荘を寺院に改め、1052年に創建された。その中心的な建造物である鳳凰堂(1053年建立)は、10円硬貨にもデザインされていることで知られる。東向きに建てられ、周囲の浅い池(阿字池)とともに美しい浄土庭園を形成するその姿は、極楽の宝池に浮かぶ宮殿を模したとされている(極楽浄土は、人間界から西方に十万億の仏土を隔てた所にあるとされている)。

 この鳳凰堂の周囲に広がる阿字池の外周、左の翼廊側に桜の木が並んでおり、水面にかかるしだれ桜を楽しむことができる。

中堂には、高さ約2.5mの金色の阿弥陀如来像が安置されている。仏像の顔を外から望めるよう格子の中央部には窓が設けられている
北岸と北翼廊をつなぐ平橋、反橋。阿字池の水面に映る北翼廊の姿も美しい
鳳凰堂は2012年から大規模な改修工事が行なわれ、2014年秋に完了したばかり。礫を敷き詰めて表現された州浜も美しい
鳳凰堂の左右の建物は翼廊と呼ばれる。ここから見えているのは南翼廊
このあたりは定番ポイントだろう。鳳凰堂としだれ桜、そしてそれらを映す阿字池の水面、全て収めることができる
しだれ桜を対岸から撮ったカット
しつこく狙ってみても、やはりつぼみが多い
筆者が訪れたのは3月30日で、残念ながらつぼみの状態の桜も多かった

鳳凰堂(西側)

鳳凰堂の尾廊を背景に

 鳳凰堂の西側の外周にも桜の木が並ぶ。こちらからは東の遠方に見える山の緑もまた美しい。また、鳳凰堂の背後(西側)には浄土院や羅漢堂といった寺院が建立されており、そこでも桜が楽しめる。

鳳凰堂の北岸には、平橋、反橋と2つの橋が架けられている
西側の阿字池では、錦鯉が泳ぐ姿も多く見られた
北翼廊を背景に
羅漢堂前では見事な桜が咲いていた
羅漢堂前の桜
浄土院では、桜とともにこの赤い花も印象的だった
西側からみた北の翼廊。中堂内部の見学の際は、ここを通り、靴を脱いで中堂に上がる

平等院ミュージアム鳳翔館など

 平等院内には、「平等院ミュージアム鳳翔館」という総合博物館があり、国宝に指定されている雲中供養菩薩像(26躯)や同じく国宝の鳳凰(1対)、重要文化財に指定されている十一面観音立像など、貴重な展示を間近で見ることができる。
 雲中供養菩薩像とは、阿弥陀如来が安置されている中堂の内部の壁に架けられている木彫りの仏像。いずれも雲に乗っており、印を結ぶもの、舞うもの、楽器を奏でるものなど、さまざまな姿がある。オリジナルの52体のうち、半分の26体が取り外されてミュージアムに展示されている(現在の中堂には、オリジナル26体、レプリカ26体が架けられている)。
 内部の撮影は許可されていないが、11世紀に作られたオリジナルのまま展示されている鳳凰や、同じくオリジナルの雲中供養菩薩像の優雅で躍動感ある伸びやかな造形は見事のひと言であり、一見の価値は間違いなくある。

中堂に飾られている鳳凰型棟飾り(北方像)。これは2代目であり、オリジナルは平等院ミュージアム鳳翔館に展示されている
こちらは鳳凰(南方像、2代目)。羽根の伸びやかな造形には思わず目を奪われる
鳳翔館近くにある鐘楼に吊されている梵鐘。「日本三名鐘」の1つに数えられる
梵鐘には華麗な文様が施されており、日本三名鐘の中でも「姿、形の平等院」と謳われたという
鳳翔館近くにある宇治茶カフェ「茶房 藤花」では本格的な宇治茶が楽しめる。メニューは抹茶、煎茶、玉露のみとシンプル。写真は抹茶(税込540円)。鳳凰がデザインされた和菓子が添えられていた

宇治駅など

 平等院は、JR奈良線宇治駅から徒歩10分ほどの場所にある。特産品の宇治茶にちなみ、市内は抹茶色の建物や看板が目立つ。周辺には宇治源氏物語ミュージアムなど、平等院以外にも観光名所がある。周辺の散策マップなども宇治駅で配布されていたので、時間に余裕があれば、それを参考にするなどして見て回ると楽しいだろう。

JR宇治駅。いかにも京都らしい、個性的な外観だ
JR奈良線の各駅停車(103系)も見事な抹茶色
路線バスもやはり抹茶系統の色である
平等院へ向かう途中、宇治川のほとりには紫式部像がある
宇治では、蕎麦も抹茶色の茶そばが標準のようだ
表参道の平等院近くにある蓮華茶屋の天とじ丼セット(税込1480円)
平等院表参道にある寺島屋彌兵衛商店で購入したお土産

(番外編)FoveonセンサーのDP2Mで撮る平等院鳳凰堂

 最後に鳳凰堂の正面カットを4K解像度で掲載する。桜でなくて恐縮だが、こちらはシグマの「DP2M」で撮影したもので、Foveonセンサーならではの解像力は鳳凰堂のような歴史的な建造物の描写で特に威力を発揮する。

 等倍で見ていただければ、州浜を表現している礫(石)1つ1つはもちろん、全景では屋根の下に並ぶ黄色い四角の点としか見えない母屋断面の文様まで精緻に描写していることが分かるだろう。

DP2Mで撮影した鳳凰堂(クリック後、拡大ボタンを押すと3840×2160ドットの写真が開きます)

鈴木雅暢