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ソラシドエア、新役員体制の発表会見。新社長は地元宮崎出身の髙橋宏輔氏

業績回復の立役者・髙橋洋氏は勇退

2017年6月22日 実施

株式会社ソラシドエアの代表取締役社長に就任した髙橋宏輔氏

 宮崎空港を拠点空港とするソラシドエアは6月22日、宮崎観光ホテルにおいて第20回株主総会を実施。余剰金の配当や新しい役員体制などが決議された。

 株主総会閉会後には会見が開かれ、新しく代表取締役社長に就任した髙橋宏輔氏らが出席し、思いを語った。髙橋洋元社長、髙橋宏輔新社長ともに日本政策投資銀行出身となる。

宮崎観光ホテルで第20回株主総会と就任会見を開いた

株式会社ソラシドエアの新しい役員体制

代表取締役社長:髙橋宏輔氏
取締役副社長:峯尾隆史氏
常務取締役:増田秀隆氏
取締役:西尾敏氏
取締役:添田重行氏
取締役:大野和男氏
取締役:菊池克賴氏
取締役:玉川惠氏
取締役:柿花祥太氏
常勤監査役:日髙雄一郎氏
監査役:鳥原浩二氏
監査役:原口哲二氏

就任会見には新しく代表取締役社長に就任した髙橋宏輔氏らが出席した

ソラシドエアの社長として宮崎に恩返しをしたい

就任会見で挨拶する株式会社ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏

 記者会見には6名の新役員が出席し紹介されたのち、代表取締役社長に就任した髙橋宏輔氏が挨拶をした。

「本日の株主総会で選任していただきました。前任の髙橋洋社長が6年にわたって携わり、ここまで成長したソラシドエアを引き継ぎまして、身の引き締まる思いです。前職では日本政策投資銀行というところにおりまして、公共交通機関などに関わることが多かったのですが、エアラインは初めてということでこれから勉強していきたいと思います。

 やはり公共交通機関はなんといっても安全な運航が一番です。当社は2002年に就航してこの8月には15周年を迎えます。前身のスカイネットアジア時代からさまざまな課題や、皆さまのご支援、また社員の頑張りがあってここまで成長してきたのだと思います。

 前任の髙橋洋社長の時代に進めてきた、新機材の導入やサービスの向上、機体プロジェクト『空恋~空で街と恋をする~』などの地域密着型の活動を、私も近くで見ておりました。直近の決算におきましては、10期連続黒字と大変立派な基盤を築いてこられたと。それを引き継ぐわけでございますが、中期経営計画で『地域と世界をつなぐ』進化をするという目標がありますので、全力で推進していきたいと思います。

 また、私は宮崎で生まれ、幼少のころは九州各地を転々としておりました。33年間の銀行員生活では1度も九州で働く機会はありませんでしたが、ようやく帰ってこれたという感じです。髙橋洋社長は日本政策投資銀行で一緒に働いていたこともあり、6年前にソラシドエアの社長に就任してからの奮闘ぶりも見てきております。身の引き締まる緊張感をもって、安全運航とさらなるサービスの向上を目指して、社員一同頑張っていきたいと思います」と述べた。

 故郷への思いを問われると、「幼少のころは転勤族でしたので、宮崎の学校に通いこそできませんでしたが、ことあるごとに宮崎を訪れて遊んだ記憶が強烈に残っています。人間形成に色濃く影響しているのを実感しています。

 年を重ねると故郷に恩返しをしたい気持ちも強くなってきました。そういうところにソラシドエア社長就任の話がきました。県民の足として貢献したいと思います」と答えた。

株式会社ソラシドエア 取締役副社長 峯尾隆史氏

 同じく新任となる取締役副社長の峯尾隆史氏は、「4月からソラシドエアのオペレーションを見てきていますが、非常に高いレベルにあると思います。

 このレベルを保ち続ける、さらに宮崎や九州、地元地域との関連を深めていく、そこにほかのエリアからお客さまを呼び込んでアピールしていきたいと思います」と会社や地域への思いを述べた。

LCCの徹底的な安さと対抗するのではなく、快適な機材や高いサービス品質を

 ソラシドエアのグローバル展開や、LCCへの意識について髙橋宏輔氏は、「グローバル展開は、まだまだこれからです。これまでも国際線のチャーター便を飛ばしてきましたが、どの都市がよいのか。向こうの都合もありますので時流も見ながらとなります。LCCの徹底的な安さとは、対抗するのではなく、快適な機材の導入や高いサービス品質が我々らしさだと思います。

 一方で矛盾するようですが、コスト競争力はないとダメです。安いだけの競争はしたくないという意味。当社はユニットコストも低く、いい線をいっていると思います。そこを磨きながらサービスをさらに向上させて、魅力を増していくのが大事だと。クオリティは絶対落とさない。安全と快適性がいちばん大事です。

 エアラインの経験がそれほどあるわけではないのであくまで印象ですが、お客さまが出張などの際にとにかく一番安い航空券を探すかといえば、必ずしも全員がそうではないと思います。

 皆さますべてが価格を最優先させるわけではなく、ソラシドエアのようなエアラインで早期予約すれば、納得できる価格の場合もあります。同じ価格であれば、よい印象が残っている方を選ぶと思います」とスタンスを述べた。

株式会社ソラシドエア 取締役 西尾敏氏

 その発言を受けて、取締役に就任した西尾敏氏は「私も4月からソラシドエアを見ていますが、航空業界内での『立ち位置』を意識しています。

 フルサービスキャリアですが、ネットワークキャリアではない。ローコストではあるが格安航空会社ではありません。そうした特徴を持って、地域の人たちやお客さまとつながっていくのがソラシドエアだと思っています」と考えを述べた。

 髙橋洋前社長の退任会見で発表された中期経営計画の実行について問われ、髙橋宏輔氏は「計画はグローバルなつながりを増やしていこうという内容のものですが、着実に実現していくために、どこから始めようかという段階です。

 過去、会社は財務的に厳しい時代もありましたが、髙橋洋前社長が頑張ってこられて黒字体質となり、経営基盤を固められてきて、かつ地域の方々とのつながりも密にやってこられました。

 そしてできていなかった『海外に目を向けること』が、中期経営計画に詰まっていると思います。時間はかかりますが、それをやっていくことになるかと」と答えた。

前社長の髙橋洋氏が3期6年の任期を振り返る

2011年から2017年までの6年間、株式会社ソラシドエア 代表取締役社長を務めた髙橋洋氏

 株主総会終了から新体制発表会見が始まるまでの間に、代表取締役社長を務めてきた髙橋洋氏に話を聞く時間を得られた。

 就任当時について髙橋洋氏は、「私は前職の日本政策投資銀行が、ANAと(ともに)、ソラシドエアの前身であるスカイネットアジア航空の経営再建に関わるようになったころから(数えて)3代目の社長として(2011年に)やってきました。

 銀行員時代、私は財政状況がおかしくなってしまっている会社をいかに立て直すか、という業務に就いてました。きちんとした価値のある会社を壊してしまうと、作り直すのはかなり大変なんですね。当時、まだ珍しかった『企業再生融資』といったサポート手法を行なっていました。スポンサーを探したり人を送り込んだりと。アメリカではDIP(Debtor in Possession)ファイナンスというものがありましたが、そうした再建ビジネスを14~15年担当していました。

 私が就任したときは、技術面などでANAさんが入りサポートしていました。機材は古いけど、それなりに飛ばせていたという印象があります。『いつ遅れても不思議じゃない』状況からは脱しつつありました。ただ、飛行機は古いし資金繰りも厳しいと。

 しかし社内はそれほど暗い雰囲気はなかったです。これから新しい飛行機を導入して、ソラシドエアというブランドも社員が考えてイメージカラーもグリーンにして、さあいよいよ、というタイミングで社長に就任させていただきました。

 先代の時代に、ある程度シナリオができていました。それを計画どおりにできるのか? という課題を受けた状態から始まりました。累積損失を解消して、株主への配当までできるようになれれば、という感じでした。

 日本政策投資銀行から20億円分の優先株が入っていて、それを普通株に切り替えていく。そのためには8年分の未払いの配当が9億円ほど残っている状況でした。それを解消していくのが私のミッションでした」と、振り返った。

14億~15億円あった累損を2年で解消

「私の就任当初、保有機材は10機体制(現在は12機)で全機中古でした。2011年~2012年までの2年間で6機をボーイング 737-800型機に更新しました。想定以上の性能のよさ、コストの低さ、そしてお客さまからの評判もよいことが分かりましたので、ANAと相談してすべて更新したいと。羽田発着の新規路線が決定したタイミングでもあったので、10機から12機に増やす計画も立てました。

 737-800型機に統一することで、パイロットのライセンスや整備コスト、部品調達なども統一でき、大幅なコスト削減ができました。ドル箱路線はないが、どの路線の搭乗率も非常にバランスがよい状態になりました。

 さらに、ブランドイメージや若いスタッフといったプラスのイメージが重なりました。2年目から収入も増え始めました。結果的に14億~15億円あった累損は2年で解消でき、3年目から配当を出すことができました」と会社の復調を説明した。

九州エリアに馴染んだソラシドエアに

「新たなブランド構築や、新機材導入といった先代のプランをいかに前倒しできるか。さらに地元に馴染むために各地域の自治体や企業との関係を強化していくことも意識しました。

 宮崎だけじゃなくて九州各県や沖縄県。緊密な関係を築けたことは自分なりにできたと感じるところですね。宮崎以外の人もソラシドに乗ってくれるようになって、企画部もそれに合わせて『空恋プロジェクト』などを考えてくれました。そういう意味では本当に地域に密着することができたと思います。空恋は根強いファンを育ててくれました。ソラシドエアが開催している航空教室は、大人だけじゃなく子供たちもで喜んでくれます」と、地元エリアと良好な状態にあることを語った。

宮崎生まれの髙橋宏輔新社長には自由にやってほしい

「私は元銀行員なので、よくなる会社とダメなままの会社が分かります。ソラシドエアの特徴として、社員の若さと、ほかの会社で経験がありエアラインに対して前向きな人材が集まっているところが挙げられます。就任当初、財務的には厳しかったですが社の雰囲気はよかったので、経営状態がよくなればもっとよい会社になる確信がありました。成功体験さえあれば、ということですね。

 当時は中古機材でいっぱいいっぱいでやってましたから。そこから新しい機材とチームカラーによって、さらに自信をつけました。サービスも大手とまったく遜色ない。今は歯車が回転してきた実感があります。

 就任当初は、株主さんに会うと3人に2人は便の遅れについて指摘され、社員も同じ思いをしていました。『だけど地元だから応援するよ』と皆さんに言っていただいてもいました。機材を一気に更新したのも大きかったですし、『バーゲン28』といった新たな特別運賃プランを打ち出したのもよかったと思います。機材のリース料金も倍くらいになりましたが、増収し始めていたので大丈夫でした。そしてさらに新機材を増やす勢いがつきました。税務対策として機材の自社保有を増やしていく検討をしています」と手応えを語り、今後、統一機材であるボーイング 737-800型機を2機追加し、14機体制とする予定があることも付け加えた。

「九州は、いろんな魅力を秘めていますがそれを打ち出す術や人材が少ないです。各県の知事や近郊の町に知り合いができましたので、これまでの経験を活かして引き続き応援していきたいですね。髙橋宏輔新社長は宮崎生まれで僕よりも土地のことが分かっていますから、自由にやってほしいですね」と、新役員体制と今後のソラシドエアに期待を示した。