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関西国際空港 第2ターミナルビル(国際線)が完成し、竣工式を開催
スマートセキュリティとウォークスルー型免税店舗を国内初導入
2017年1月20日 17:40
- 2017年1月28日 使用開始
関西国際空港を運営する関西エアポートは1月18日、関西国際空港に建設中だった第2ターミナルビル(国際線)の竣工式、安全祈願式、開業披露パーティを開催した。すでに開業している「第2ターミナルビル」の国際線を新たに開業したターミナルビルに移転するもの。ウォークスルー型の免税店舗を導入するほか、「スマートセキュリティ」システムを導入し、手荷物検査の待ち時間を3分の1としてスピードアップを図る。使用開始は1月28日。
第2ターミナルビル(国際線)の開業により、ターミナル2の延床面積が約3万m2から約6万6000m2へと倍以上になり、年間計画旅客数は約400万人から835万人へと拡大する。拡張した部分はこれまでの「第2ターミナルビル」の北東側で、拡張後は「第2ターミナルビル(国内線)」と合わせて駐車場を囲むようにコの字状になる。なお、第2ターミナルビル(国際線)の詳細は「関西国際空港 第2ターミナルビル(国際線)を報道公開」も併せてご覧いただきたい。
ゲート数は21へと倍増するほか、国内線が9、国際線が6、さらに共用が6となる。共用と国際線部分については最大5機の中・大型機の駐機にも対応する。
関西エアポートが強調する特徴の一つ、ウォークスルー型の免税店舗は、保安検査と出国審査を終えた乗客が、免税店舗内を巡回して出発ゲートへと進む方式。メインの通路は直線ではなく曲線を描くようになっており、自然と商品に目がいくように配置されている。
「スマートセキュリティ」は、手荷物検査時のトレイの移動を自動化したスマートレーンの設置、ボディスキャナの設置などをし、手荷物検査のスピードアップを図る。乗客と一緒に荷物が移動するとともに、荷物が何らかの理由によりNGとなった場合に、隣のレーンに移動させ、乗客からは見えるが、荷物に手が届かないようにする。
既存レーンでは、NGとなった荷物がそのままレーンに流れてしまい、乗客が何かを抜き取るなどし、不正を重ねる恐れがある。そういった事態が発生しないよう監視することも検査員の役目だったが、今回設置されたレーンでは、NGの荷物に触れさせないようにすることで、検査員がより手荷物検査に集中できるようにする。
また、ボディスキャナは新しい世代のもので、乗客の体のラインを表示することなく、要チェックのものがある場所を表示する。これにより、再チェックが必要となった場合でも、全体を調べる必要がなく、ピンポイントで調べることができ、乗客、検査員ともにストレスを軽減する。さらに、検査が終わったトレイを元に戻す動作も自動化されるため、検査員はより検査に集中できるという。
なお、スマートセキュリティの詳細は保安上の理由により撮影は一切許可されず、関西エアポートによる提供写真のみの紹介となる。
竣工式・安全祈願式
竣工式・安全祈願式はチェックインロビーに特設した会場で実施、関西エアポートの代表、工事関係者のほか、関西国際空港長をはじめ、空港関係施設の代表者が集まり、厳粛に執り行われた。神職による一連の儀式が行なわれたあと、関西エアポートと工事を担当した熊谷組の代表者から挨拶があった。
関西エアポート 代表取締役社長の山谷佳之氏は、工事関係者に感謝を示すとともに、第2ターミナルビルがより多くの乗客に利用されることに期待を寄せた。また、代表取締役副社長のエマヌエル・ムノント氏は、特徴としてスマートセキュリティとウォークスルー型免税店の採用を挙げた。
工事を担当した熊谷組 代表取締役社長 樋口靖氏は、工事のお礼を述べたあと、「たくさんの人に喜んで使っていただきたい」と述べて、竣工を祝った。
政財界など約500名が出席した開業披露パーティ
続いて、午後には、搭乗待ちスペースに特設した会場で開業披露パーティが行なわれた。国会議員や地元自治体の長をはじめ、経済団体、在阪公館、航空会社、貨物事業者など関係する500名が出席した。
関西エアポートの代表取締役社長 山谷佳之氏は、2016年4月に運営を引き継いでからの計画変更に対し、工事や関係の人たちが理解と協力をしてくれたことに感謝を述べた。インバウンドの数値として、観光庁が発表した2016年の2403万人という数値を挙げ「関西国際空港の外国人入国者数は、私たちの集計で609万人に達し、全体で概ね25%がここから入国されたことになる。ストレスなく空港を利用することが、日本の旅行のよい思い出につながる。観光リピーターを増やすためにも、ボトルネックを空港で感じさせないことが肝要」とスマートセキュリティなどを導入する意義を説明した。
代表取締役副社長のエマヌエル・ムノント氏は、スマートセキュリティについて「劇的に異なる保安システムを導入した。より早く、より便利なシステムであり、利用者のストレスが軽減され、時間にゆとりが生まれる」「技術の導入を任せてくれた航空局および政府官僚の方々に心から感謝する」と述べた。さらに、「これはまだ序盤にすぎず、第1ターミナルの改修計画がある」と、さらにスマートセキュリティの導入を進めることを明らかにした。
続いて来賓から祝辞を受けた。国土交通副大臣 末松信介氏は、関空の事業化開始の1982年(昭和57年)は自身がANA(全日本空輸)大阪支店に勤めていたときだと振り返った。当時の上司の言葉として、「エアラインは夢を売る商売でなければならない」を紹介、「そうだとすると、空港は、夢を提供する素敵な空間。ともに頑張って築いていきたい」と述べた。
元国土交通大臣の北側一雄氏は関西国際空港推進議員連盟会長代理を務めている。関西国際空港の外国人入国者が600万人を超えたことについて「関西国際空港を作ってよかった。2本目の滑走路も作ってよかった」と振り返り、過去に関空が「日本三大ばか事業」「税金の無駄のシンボル」と言われていたことにも触れながらも、「多くの方々の尽力で整備され、600万人もお迎えする日本を代表する空港になり、本当にうれしい限り」と喜びを表現した。
大阪府知事の松井一郎氏は大阪府の現在の取り組みを紹介、「現在、万国博覧会や、IR(統合型リゾート施設)の誘致に向けて総力をあげて取り組んでいる。万博やIRはインバウンドを関西に呼び込むためのもの。そして、それ支える基幹のインフラが関西国際空港であり、関空が航空ネットワークを広げられるよう、できる限り、協力を行なっていく」と述べた。
関西経済連合会 会長の森詳介氏はスマートセキュリティなどを備えた第2ターミナルビル(国際線)のオープンは「これこそまさに民の力。昨年4月から関西エアポートに空港の運営を委ねた効果が早速現われたと思っている」と評価。「関西は2020年にインバウンド1800万人が目標。国際線における旅客の受け入れが拡大したと伺っている。増加分を埋めることを当面の目標に頑張りたい」とした。
また、関西経済連合会の取り組みとして「優待特典付きICカード型乗車券 KANSAI ONE PASS.」を発行を紹介した。これは関西の主要交通機関のフリーきっぷだが、優待特典と合わせ、外国人の行動情報というビッグデータを集めるプロジェクトでもある。森氏は「外国人の嗜好や人気が浮き彫りにでき、宝の山。現在、分析しているが、我々も気づいていないニーズが発掘できれば」と話した。さらに、神戸空港のコンセッション(運営権売却)も開始されるとし、関西国際空港と伊丹空港を運営する関西エアポートによる3空港の一体運営についても期待を寄せた。