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首都高速道路、2016年冬季シーズンの安全祈願祭、積雪・凍結対策出陣式
冬季の安全、安心、快適を祈願して毎年実施
2016年11月29日 22:02
- 2016年11月29日 実施
首都高(首都高速道路)は毎年、積雪・凍結対策期間である12月1日から翌年3月31日を前に、作業の安全を願って安全祈願祭・出陣式を実施している。2016年は11月29日に首都高速中央環状線 大井北換気所敷地内で、「平成28年度積雪・凍結対策出陣式」を行なった。
会場には積雪、凍結対策の作業に関わる企業関係者ならびに作業員が参列。神職を招いて神前での安全祈願祭から始まった。約30分の神事が終わると、続いて出陣式が執り行なわれた。出陣式ではまず、首都高 代表取締役社長の宮田年耕氏が挨拶した。
「これまで皆さま方がいろいろな準備をしてこられました。そしてさまざまな車両も揃い、活用するためのマニュアルも揃っていると思います。ただ、これらを動かすのは人であります。いろんなマニュアルの読み合わせや説明会などを行なってきたかと思いますが、人がやるからにはマニュアルにあることだけでなく創造力も働かせて、色んな事象に対応できるよう準備をしていただきたいと思います。危機管理の最前線では“大きく構える”ということが大事で、意味するところは“雨かな、みぞれかな”という天候のときに、最悪を考えて先に大きな体制を整えておくことです。我々は首都圏の枢要なネットワークの管理を担っております。雪のときも安全で円滑な交通を確保することは我々の責務であります。そのことを肝に銘じてやっていきたいと思います」とコメントした。
続いては積雪・凍結対策関係車両のパレードが行なわれた。参加したのは交通パトロールカー、塩水車、湿塩車、塩ナト(塩化ナトリウム)車、スイーパー、ウニモグ、ショベル・ダンプ・作業員、標識車と、実際の作業で使用される全種類となった。
交通パトロールカー
交通パトロールカーは首都高上の事故、故障車、落下物などの異常を発見して処理するために日々首都高を巡回している。首都高では50台配備している。
車種はトヨタランドクルーザー、エンジンはガソリンV型8気筒、排気量は4.6リッター。最高出力は318PSあるので故障車の牽引も可能。警察や消防と協力して、現場で安全な交通規制ができるよう、起立式標識板やLED表示装置などを装備している。タイヤはグッドイヤー アイスナビSUV 275/65 R17。
塩水車
塩水車は、路面の雪を溶かしたり、路面凍結を防止したりするために塩水を路面に散布する。塩水車は塩水プラントで作成した濃度20%の塩水を1m2あたり約0.1L散布する。散布の目安は路面温度2℃程度だ。この車両には塩水を約10トン積載することが可能。首都高には48台配備されている。デモでは真水を散布した。
湿塩車
湿塩とは、文字のイメージとは違い、固形の塩化ナトリウムと塩水を配合したゲル状の塩化ナトリウムのこと。融雪や凍結防止を目的として散布をする。
湿塩車は1m2あたり約20gの湿塩を散布。湿塩は塩水よりも路面への付着に優れているので、勾配のきついところで使用するという。この車両には約7トンの塩化ナトリウムと約0.8トンの塩水を積載することが可能。首都高では13台配備している。
塩ナト(塩化ナトリウム)車
塩化ナトリウムは塩水や湿塩を散布したあとでも雪が降り続いたときに、積もった雪を融かすため散布する。塩ナト車は1m2あたり約30gの固形塩化ナトリウムを散布していく。積載量は約1トン。首都高には16台配備されている。
スイーパー
この車両は車体の下に付いている回転ブラシで積雪を攪拌して融雪の促進や凍結防止を行なう。単独でも作業を行なうが、塩水車と連なって作業を実施することもある。積雪時だけでなく、通常は道路清掃に使用されている。首都高には19台配備されている。
ショベル・ダンプ・作業員
除雪、排雪作業を行なうダンプやショベル、そして作業員。管理局のみならず、プロジェクト部門とも協力して、首都高全現場を総動員して積雪・凍結対応をしている。今回は雪をダンプにかき入れるパフォーマンスも見せた。
標識車
標識車は、積雪・凍結対策作業車の最後尾に配置して、作業員の安全確保とともに作業車後方から来るクルマに低速走行作業が行なわれていることを知らせる役目を持っている。積雪・凍結対策の作業中は表示板に「雪氷対策実施中」という表示が出る。表示内容は事前に登録することで50種類以上の表示が可能だ。リアに積んでいる樽状の衝突時の保護材には水が入っている。標識車は137台配備されている。
実際のパレード登場順では塩ナト車のあとに登場したが、興味がある人が多いだろうということでスペースを取って紹介するのは、多目的作業車のウニモグだ。
この車両はメルセデス・ベンツの6.0リッターインタークーラーターボ付きディーゼルエンジンを搭載。強力なトラクションを発生する4WDシステムとトランスミッションを持っていて、その走破性の高さから世界中のあらゆる現場で多用途に使われている。
ウニモグには約3000種類にもおよぶ作業用アタッチメントがあるが、積雪・凍結対策仕様には「プラウ」と呼ぶ雪かき用アタッチメントが車体前面に取り付けられていて、車内にあるスイッチの操作によって上下左右の広い可動域で動かすことが可能。
その特徴を活かして、操縦者(ドライバー)は雪を押すだけでなく、例えば壁に対して直角に進入し、路肩に溜まった雪をプラウの裏面を使って掻き出すという操作をすることもあるという。
かなり目立つ車両なのにあまり見かけた記憶がないのが不思議だったが、その理由は車幅が広いのと、プラウを装着すると車線より広くなってしまうため、ウニモグが登場するのは通行止めになったときが多いとのことだった。
ただ、道幅が広い入り口、出口では本線が通行しているときも作業することもあるというので、タイミングが合えば作業中の姿を見ることができるだろう。プラウのほかに、車体には塩化ナトリウムを積載するタンクも装備。散布ノズルはリアバンパーの裏にある。配管は2系統あり、電気式バルブを切り替えることで右のみ、左のみ、左右同時散布と切り替えることができる。
荷台の装備もいろいろ積み替えでき、トンネル清掃用の装備なども積むことがあるという。サイドに固定具があり、幅の広い装備の場合はリアホイールセンターにあるアタッチメント(ホイールの回転とは別でフリーに動く。ここの穴に装備を支えるダンパーを差し込む)も使用する。
特別に運転席も見せてもらった。ウニモグは状況に合わせて運転しやすくするため左右にスライドできるものもあるが、このクルマは右固定。ただ、首都高が配備するウニモグは6台あり、そのなかには運転席が動くモデルもある。作業員のコメントでは運転席が動く方が乗りやすいとのこと。
また、路面の段差なども一緒に引きはがせるほど、駆動力もプラウの掻く力も非常に強いという。そのため運転する作業員は路面の継ぎ目に段差があるところなどを記憶しているとのこと。プラウの使い方は作業員ごとに“得意技”のようなものがあり、裏面を使って掻き出すということも行なう。また、プラウの上部に巻き返しのようなものがあるが、掻く力が強く、除雪しながらでも60km/hほど出せるので、掻いた雪が上に飛ばないようにするための装置だという。
さらに、フロントの車高を上げてプラウを路面に押しつけると掻く力が非常に強くなる。このようにウニモグの作業員は、ウニモグの機能を使いこなしている。このことは作業スピードを上げて、少しでも早く規制解除できるようにするためと、人力で作業している作業員の負担を減らすためだという。
首都高 執行役員 東京西局長の桜井順氏によると、積雪時には首都高内に走行不能になった車両が放置されることもあるが、これが緊急車両の通行の妨げになるため、レッカー車を24時間待機させているとのこと。
また、2016年度の取り組みとして弾丸低気圧の監視の強化を行なう。予報が雨であっても、天候が急変する場合があるので、降雪の48時間前をモットーに、除排雪の人員と車両を確保して初動体制を速やかに行なうことにしているという。