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首都高、横浜北線 横浜北トンネルを公開。2017年3月開通に向けて工事状況を説明

トンネル内のLED照明を点灯、すべり台式非常口を公開

2016年9月15日 実施

 首都高速道路は、9月9日に生麦JCT(ジャンクション)~横浜港北JCT間を接続する延長8.2kmの横浜北線(高速神奈川7号横浜北線)を2017年3月に開通すると発表した。そして9月15日に、現在工事が進められている横浜北線の一部である横浜北トンネル現場を公開した。

横浜北線の7割を占めるトンネル

 現場ではまず、首都高速道路 神奈川建設局 局長の寺山徹氏が、横浜北線の概要を説明。横浜北線は2001年12月より工事を着手、2010年秋から2台のシールドマシンを利用し、5.9kmの2本のトンネルを2014年3月に掘り終えた。

横浜北線の概要を説明する、首都高速道路株式会社 神奈川建設局 局長の寺山徹氏

 出入り口は横羽線側から「岸谷生麦出入口」「馬場出入口」「新横浜出入口」の3カ所。ただし、馬場出入口については、2017年3月の横浜北線開通に合わせて開通はできず、現在開通時期を精査しているという。JCTは、横羽線と接続する生麦JCTと、第三京浜と接続する横浜港北JCTが用意される。なお、横浜港北JCTでは横浜北線から一般道路へ出入りできないため、横浜北線を使って横浜港北JCT周辺の一般道へアクセスしたい場合には、新横浜出入口を利用してほしいとのこと。

 続いて、主要箇所の工事進捗状況が報告された。横浜港北JCTは、現在舗装工事がほぼ終わり、標識や照明柱など付属施設の設置工事を進めているという。新横浜出入口周辺は、地上とトンネル、高架橋を結ぶ半地下厚壁などの工事を進めている。新横浜出入口から横浜港北JCT側に用意される「大熊川トラス橋」は、全長158mのトラス形式の橋で、上下二層のトラス形式の橋として日本最長である点や、高架からトンネルへ勾配が付いた特徴的な構造である点などが評価されて、土木学会の「田中賞」を受賞したという。

横浜北線は、2000年7月の都市計画決定後、2001年12月に工事に着手、シールドマシンを利用し、2014年3月にトンネルを掘り終えた
横浜北線には、3カ所の出入口と、横羽線、第三京浜それぞれとつながるJCTが用意される

 家屋の移転を少なくし、周辺の環境を保全するため、横浜北線は全線延長の約7割がトンネルとなっている。そのトンネルが、全長5.9kmの横浜北トンネルだ。トンネルが通過する部分だけの土地の権利を取得する「区分地上権」という制度を利用したことで、トンネル上部の地表面の住宅が移転することなく工事を進められたという。

 岸谷生麦出入口は、子安台換気所の部分をトンネルの出入口とし、JR線、京浜急行線などをまたぐ高架橋へと続く構造。鉄道上の工事は終電から始発までの短時間の作業となるが、現在はすべての高架橋の設置を終え、遮音壁や照明柱を設置し、舗装工事が進められている。

 生麦JCTは、横浜北線と横羽線の東京・横浜方向、大黒線の4方向にアクセスできるJCTとして整備されている。

横浜港北JCTは、舗装工事がほぼ終わり、標識や照明柱など付属施設の設置工事を進めている
新横浜出入口周辺は、地上とトンネル、高架橋を結ぶ半地下厚壁などの工事を進めている
大熊川トラス橋は、土木学会の田中賞を受賞
横浜北トンネルは、「区分地上権」という制度を利用して建設された
横浜北トンネルによって横浜北線は全線延長の約7割がトンネル区間となり、家屋の移転を最小限に抑え、周辺環境も保全したという
岸谷生麦出入口は、高架橋の設置を終え、遮音壁や照明柱の設置、舗装工事が進められている
生麦JCTによって4方向へのアクセスが実現される

 横浜北線開通による整備効果については、新横浜と横浜港の間の所要時間が現在の25分から15分と10分短縮、新横浜駅と羽田空港間の所要時間が現在の40分から30分と10分短縮されることで、利便性が高まるという。

 また、横羽線と第三京浜道路が接続されることで、高速道路ネットワーク強化にもつながり、突発的な事故や災害で通行止めになった場合でも、極端な遠回りをせず多様な経路選択が可能となり、所要時間のロスを減らせるとした。さらに、日産スタジアムや横浜アリーナなど、新横浜周辺のイベント会場へのアクセス性が高まり地域活性化につながるとともに、新横浜エリアから東京・千葉エリアへも身近になると説明された。

横浜北線開通により、新横浜と横浜港の間が10分短縮
新横浜と羽田空港間も10分短縮されるという
横羽線と第三京浜が接続されることで、高速道路ネットワークの強化にもなる
新横浜エリアのイベント会場や、港北エリアからの東京・千葉エリアへのアクセス性も高まる

馬場出入口は横浜北線開通に間に合わず、できるだけ早く

 寺山氏はトンネル内のLED照明を点灯させ、今後の予定にも触れた。「横浜北線は来年3月に開通できるという工事の目途がたったための発表だったが、安全に、確実に工事を進め、確実に開通させていきたいと考えている」と語るとともに、同じく整備が進められている横浜環状北西線についても「共同事業者の横浜市とともに事業を進めているが、こちらも連携して進めていきたい」と説明した。

 また、馬場出入口の完成の見通しについては、「関係機関との協議のなかで完成が遅れている」とのことで、「馬場出入口の工事工程や、横浜市が整備を進めている馬場出入口とつながる大田神奈川線の工事工程を精査しつつ、できるだけ早い段階で使えるようにしたい」と述べた。

寺山氏により、横浜北トンネルのLED照明が点灯
横浜北トンネル内に設置されているLED照明
LED照明で明るく照らされた横浜北トンネル
横浜北トンネルのLED照明が点灯される様子

横浜北トンネルには首都高初となるすべり台式非常口を設置

 続いて、横浜北線のトンネル防災設備について、首都高速道路 神奈川建設局 建設部長の大塚敬三氏が説明した。

横浜北線のトンネル防災設備について説明する、首都高速道路株式会社 神奈川建設局 建設部長の大塚敬三氏

 横浜北線のトンネル区間の大部分は、車両が走行する「車道部」と、緊急時に避難する「道路下安全空間」の二層構造となっている。そして、この車道部と道路下安全空間をつなぐ施設として、首都高として初めて「すべり台式非常口」を設置している(出入口付近など一部は除く)。

 横浜北線のトンネル区間は、国の基準で定められた安全基準では、最上級レベルとなる「AA等級」に区分されるが、学識経験者からの意見を参考に、火災時などに緊急車両がいち早く現場に到着できるように、トンネル内に上下線をつなぐUターン路を用意したり、災害発生時にトンネル内への進入を抑制する遮断機を設置したりするなど、AA等級以上の防災設備を設置しているという。

トンネル区間の大部分は、車両が走行する「車道部」と、緊急時に避難する「道路下安全空間」の二層構造
横浜北トンネルでは、Uターン路や遮断機など、国の安全基準「AA等級」を上回る防災設備を設置

 火災発生時の防災設備としては、災害状況を伝えるための拡声放送スピーカーやラジオ再放送設備、約25m間隔で設置される自動火災検知器、交通管制室から遠隔操作で動作させ、約50mの範囲に霧状の水を散布し火災の延焼や拡大を防ぐ水噴霧設備、火災発生時に煙が避難の妨げにならないよう空気の流れを調整するジェットファンなどを用意。トンネル用信号機やトンネル用警報板など、事故の情報を知らせる設備も用意。そして、約50m間隔で初期消火用の消化器や泡消火栓、押ボタン式通報装置、100m間隔で非常電話、そして約250m間隔で非常口が用意されるという。

火災発生時の防災設備としては、拡声放送スピーカーやラジオ再放送設備、自動火災検知器、水噴霧装置、ジェットファンなどを設置
消化器や泡消火栓、押ボタン式通報装置、非常電話、非常口も密に設置
消化器や泡消火栓、押ボタン式通報装置は約50m間隔で設置
非常口は約250m間隔で設置

 この非常口の大部分に利用されるのが、首都高として初の採用となる「すべり台式非常口」。非常口表示灯や、3個の黄色回転灯で構成される非常口強調灯により、一目で場所が分かるように工夫されている。

 また、非常口にはすべり台の使用方法が表示されており、非常口左右に用意されているボタンを押すことで跳ね上げ扉が開き、すべり台が使用可能となる。そして、このすべり台を滑り降りることで、道路下安全空間へと移動。道路下安全空間に用意されている避難通路を通り、地上出口へと避難できるようになっている。

 なお、地上出口は新横浜出入口付近の「新横浜縦坑」と「新横浜換気所」、馬場出入口付近の「馬場換気所」、岸谷生麦出入口付近の「子安台換気所」の4カ所に用意される。

非常口には、首都高として初となる「すべり台式非常口」を採用
非常口を示す非常口表示灯
非常口の看板には3個の黄色回転灯を設置し場所を強調
非常口看板には非常口の使い方を記載
すべり台式非常口は、ボタンを押すと跳ね上げ扉が開いてすべり台が現われ、道路下安全空間へと避難できる
すべり台式非常口の左右にある緑のボタンを押すと、跳ね上げ扉が開く
ボタンの横にも操作方法を記載
これが跳ね上げ扉
緊急時には、跳ね上げ扉を開けてすべり台を滑り道路下安全空間へと移動し避難する
跳ね上げ扉が開いた状態
すべり台は金属製
このようにすべり台を滑る要領で道路下安全空間へと避難
すべり台は、勢いよく滑り落ちないように工夫されている
すべり台式非常口で避難する様子(提供:首都高速道路株式会社)
こちらが、走行路下部に用意されている道路下安全空間
すべり台式非常口を降りた場所には、避難経路を示す矢印が記されている
ベンチや非常電話も設置
壁にも避難経路を示す案内図が用意されている
道路下安全空間から地上へと避難する出口は4カ所用意されている
道路下安全空間を移動して地上出口へと移動
4カ所の地上出口には地上につながる階段を用意
階段を上って地上へと避難できる

 開通後の監視体制としては、交通管制室で交通状況を監視するとともに、パトロールカーで定期的に巡回し、24時間365日安全確保のために務めるという。また、トンネル内には死角がないようにカメラを設置するとともに、火災発生や走行状態の異常を自動的に交通管制室に通報する機能も用意されているとのこと。

開通後の監視は、定期的なパトロールや死角のないカメラなどを利用し24時間365日体制で行なわれる