トピック
ポルシェのEVタイカンで東京~北海道・十勝をロングドライブ! 充電なしでどこまで行ける?
- 提供:
- ポルシェジャパン株式会社
2021年10月13日 00:00
待ち合わせ場所の虎ノ門ヒルズ地下駐車場。そこで見たのは、未来を先取りしたかのような光景だった。コンクリートを打ちっぱなした都会的なガレージスペース。その一角をホワイト&グレーで塗り分けたブースには、スリムな急速充電器「ポルシェ ターボチャージャー」が備え付けられていた。そしてそのケーブルの先には、ポルシェ初のEVであるタイカンがコネクトされている。
今回の私の任務は、このタイカンを北海道まで走らせることだった。
ポルシェジャパンがCSR活動の一環としてサポートする「LEARN with Porsche」。その最終ステージである「十勝スピードウェイ」までこのタイカンと911ターボを走らせて、現地で出会う子供たちにポルシェをさまざまな側面から体験してもらうのが目的だ。
街中に溶け込むように走り出すタイカン
今回乗った車両は、タイカンの4つあるグレードのなかで、最も新しいベースモデルだった。
タイカン ターボSやターボ、4Sたちとは違う後輪駆動。モーターをエンジンに見立てるならば、911と同じRR(リアモーター/リアドライブ)だ。搭載する「パフォーマンスバッテリー」は、79.2kwhのシングルデッキが標準だが、今回の車両は2デッキ方式の「パフォーマンスバッテリー プラス」(93.4kwh)にアップグレードされていた。
その最高出力はローンチコントロールとオーバーブーストモードを使うことで300kW(408PS)を発揮し、パフォーマンスバッテリー プラスになるとこの数値が350kW(476PS)まで跳ね上がる。ちなみに通常時の最高出力は240kW(326PS)/280kW(380PS)だというから、ローンチコントロールを使わなければ強大なトルクを制御仕切れないということだ。そして、航続距離は前者が431km、後者が484kmとなっている(WLTP)。
一通りのレクチャーを受けて、さっそく走り出す。
エレクトリック・スタンバイ・シンボルがあしらわれた起動ボタンを押すと、タイカンは音もなく目覚めた。911ターボの高圧縮な“初爆”がもたらすエモーショナルさとは対照的な、EVならではのサイレントスタートだった。
ストレスフリーな走り出しのはずなのに、タイカンビギナーである筆者の心は幾ばくか緊張していた。ポルシェが持つある種の威厳と、貴重な最新モデルを運転するというプレッシャーが、軽くのしかかっていたのである。
しかし右足に少し力を込めると、その緊張感はふわりと解き放たれた。そしてこれこそが、タイカンの大きな魅力だと感じた。
タイカンはそのモータートルクを、実に上質な制御で解放するのだ。345Nmという最大トルクは、ポルシェとして考えれば決して高い数値ではない。しかしEVは、内燃機関とは違ってトルクをラグなく直線的に立ち上げることができる。
タイカンは、必要以上にそのレスポンスを絞り込んだりせず、きわめてリニアな出足を示した。アクセルオンによる駆動モーターのバックラッシュも感じさせず、急にアクセルを閉じても極端な回生ブレーキが掛からない。まことに紳士的な制御をもって、街中へと軽やかに繰り出したのである。
首都高、東北道で仙台港を目指す。ノイズの少なさが快適なクルーズを生む
まだまだ活気を取り戻し切れていないとはいえ、それなりに混み合った都心の道路。このなかにタイカンはスマートに溶け込んでいた。目立たないというのではない。むしろそのフォルムは人目を引くし、視線がこちらに注がれているのはよく分かる。
しかし、ある種の驚きを表わしながらも柔らかいまなざしが注がれる理由は、ひとえにタイカンが洗練された佇まいを持っているからだろう。ゴテゴテとした装飾のない、美しいボディ。停車中はきわめて静かであり、走り出してもやはり静かである。そんなスマートさが好感を抱かせるのだ。だから実に心地よく、街中を走らせることができた。
狭く曲がりくねった首都高速道路では、機動性のよさが目立った。
ステアリングは筋の通った、ポルシェらしい取り付け剛性感があるものの、電動アシストの制御がさらに絶妙で、しっとり感までも演出されている。どっしり、がっしりとした911ターボとはこれまた対照的なテイストだが、タイカンができたからこそ911ターボが“剛の味付け”になったのかもしれない。
操舵に対する反応は適度にシャープだが、長いホイールベースと安定感のある足まわりが、その動きをマイルドに中和してくれている。それでいてアクセルレスポンスは前述のとおりリニアだから、せわしない首都高の流れのなかでも、必要に応じた加速力を瞬時に得ることができる。結果として、たっぷり余裕をもって流れに乗ることができたのである。
東北自動車道に入り、一路仙台港を目指す。苫小牧までの航路をつなぐフェリー「きたかみ」に乗り込むためだ。
震災からの復興で路面はかなり整備されていたとはいえ、栃木を過ぎた辺りからの道程は相変わらず曲がりくねっていて、アップダウンも起伏もある。
こうした路面でタイカンは、実にポルシェらしい、実直な乗り味を示した。可変ダンパーは「ノーマル」モードを選択すると、しなやかな追従性を持って路面のうねりを巧みにいなす。「スポーツモード」へ転じればダンパーが引き締まり、車体の上下動を抑えながら突き上げをも一発で減衰する。
アクセルを踏み込めば、ルウゥゥ……ヒューン!と、言葉で説明するのが難しいエレクトリック・スポーツサウンドが高まり(スター・ウォーズの音響効果を製作したスタッフが作り上げたのだそうだ!)、加速感とシャシーのポテンシャルが調和していく。このまま踏みきってライトスピードにジャンプしたいところだったが、それは十勝までのお預けとした。
そんな道中でもまったくフラストレーションがたまらなかったのは、機械的なノイズ・バイブレーションが極端に低いEVならではの静粛性と、アダプティブクルーズコントロールを組み合わせた巡航がきわめて快適だったからである。
フェリーで北海道へ。東京から約400kmを充電なしで走り続けたタイカン
仙台港からフェリーに乗り込み、苫小牧へと到着。このときタイカンのトリップメーターは382.6kmを刻み、残りの走行可能距離は128kmとなっていた。数字だけを捉えれば、WLTP総合モードよりも優秀な電費で走ってきたことになる。
とはいえ帯広までの道中には山道もあり、雨のなか余裕を持って移動を行なうために、市内の道の駅で昼食を取りがてらひとまず充電を試みた。
しかしここでは、充電器がまだポルシェの規格に対応しきれていなかった。93.4kwhというバッテリー容量が大き過ぎて認識できず、80%まで充電することができなかったのだ。一旦接続を解除してからつなぎ直しても、過充電と見なされてしまった。
ということで、道東自動車道のサービスエリアに立ち寄り、再び充電。ここでは2回に分け急速充電を行なうことができ、十分な電池量を確保することができた。わずか22.5分で8割をチャージできるポルシェ ターボチャージャーの便利さを享受できなかったのは残念だが、思った以上に快適なEVトラベルとなった。
好天の3日目、国鉄時代の鉄道遺産を楽しみつつ目的地・十勝スピードウェイへ
前日の雨が嘘のように晴れ渡った3日目は、「愛国交通記念館」と「幸福駅」を経由して十勝スピードウェイへ到着。総走行距離633kmの旅路を終えて、ガレージにタイカンを納めた。
本来ならここで筆者のタイカン紀行は終わるのだが、最後にもう1つだけ、サーキットインプレッションを付け加えて締めくくろう。
クローズドサーキットで走らせたタイカンからは、当然のことながら公道より心地よいハンドリングを味わえた。フロントにも、ミッドにも、リアにもエンジンを搭載しないシャシーは慣性の影響を受けにくく、なおかつホイールベース内の一番低い所にバッテリーを収めたことで、重心は非常に低い。
こうした素性のよさから、サスペンションセッティングは既存のガソリンモデルよりもニュートラルな印象で、ターンインではどこまでも素直にノーズをコーナーへ切れ込ませていく。そしてこの旋回モーメントを、長いホイールベースが穏やかにまとめあげるのだ。
圧倒的な加速力を楽しむなら4S以上のモデルに軍配が上がるかもしれないが、このベーシックなタイカンにはポルシェ本来の楽しさが凝縮されていた。380PSのパワーは完全にシャシーの支配下に収められ、キビキビと向きを変えていく。パワードリフトを楽しむというより、大きなカートをドライブしているような感覚だった。
総じてタイカンは、ポルシェの名を語るにふさわしい電動スポーツカーであった。そしてこの素晴らしさを、次世代を担う若者たちに伝えることができるのかと思うと、心が躍った。