ゆるキャン△の聖地、なでしこの住む南部町にできたRVパーク
今回紹介する「RVパーク CampingCar Trip L(キャンピングカートリップL)」(山梨県南巨摩郡南部町南部9426-1)は、中部横断自動車道の南部ICから近く交通の便がいい。また、山あいの立地であり目の前には富士川の支流、戸栗川が流れると環境もいいのだ。さらに、RVパークとしてはめずらしい「屋根付き」の区画になっているのが特徴だ。
キャンピングカートリップLは南部町で古くから自動車販売、整備などを営んでいる稲葉工業が運営していて、施設の代表である稲葉 剛氏によると「中部横断道ができたことで交通の便はよくなったけど、町内を通る古くからの主要道路、国道52号線の利用が減ったぶん、南部町に人(クルマ)が寄ることも減ってしまった。
そこで、泊まってもらうことで南部町のよさを感じてもらえる効果を期待できるRVパークの開設を決めた。また、我々は自動車整備業でもあるので、クルマ利用が前提のRVパークであれば、安心安全な旅ができるよう整備や修理でお手伝いすることもできる」と開設の理由を語ってくれた。
RVパーク CampingCar Trip L代表の稲葉 剛氏。家業は地元で3代続く自動販売・整備業。クルマ旅をきっかけに南部町に人が訪れることで地域に活気が出れば、という気持ちからRVパークを作った 市の中心部にある自動車店の株式会社稲葉工業(ロータスイナバ)。RVパーク利用ついでにオゾンによる車内消臭や除菌作業からオイル交換なども依頼できるが、定休日もあるので作業を頼みたいときは事前に確認を 中部横断道は2021年8月に中央道 双葉JCT~新東名 新清水JCT間が開通。ルートとしては多くの区間が日本三大急流の1つである富士川の側を通っているので、どこのインターチェンジで降りても見どころが多いという観光には具合のいい路線。しかも地理的に東京や名古屋、長野あたりからも来やすいのである。
そんな中部横断道のちょうど中間にあるのが南部町。街の中心を富士川が流れる景色がよくのどかな街である。山梨県ではあるが交通の便などから文化的には静岡寄りで気候も静岡に近いという。
また、南部町はアニメ化もされている人気コミック「ゆるキャン△」にて、主要キャラクターが住む街として設定されているので、作品ファンを中心に知名度が高まっている地域でもある。
南部町は人気コミック「ゆるキャン△」の舞台にもなったことで全国的に有名になった。ここは作中にも登場するJR東海の身延線 内船駅(うつぶな駅) 内船駅は無人駅となっている。駅には身延線利用者用の無料駐車場があるのでRVパークに泊まって、翌日に内船駅にクルマを駐め身延線に乗り、作品のもう1つの舞台である身延駅へ向かうのもいい。身延線は車窓からの景色がいいことでも有名 なでしこが自宅から駅へ向かうときに渡る南部橋。富士川が広いので橋もかなり長い。写真は南部橋を下流側に見た構図。右側は中部横断道がある方で、左が身延線の内船駅がある側 南部橋は駅から歩いて10分~15分くらい掛かるが聖地巡礼にくる作品ファンは多いという すべての区画が電源・屋根付き! 星空もきれいな富士川沿い
さて、本題のRVパークだ。こちらキャンピングカートリップLの特徴はなんといってもすべての区画が屋根付きになっているところ。1台あたりの区間サイズは幅が約4m、長さが約5m、高さが約4mと大型な車両でも利用可能。そして各区画に100Vの電源があり無料のWi-Fiも整備されている。
区画は建物の骨組によって区分けされているので境界線が明確でもあり、この骨組を利用してタープなど張ることも可能。また、RVパークとしてはめずらしく区画内であればテントを張って寝ることもOKだ。
それだけにクルマでの利用だけではなく、オートバイのツーリングや自転車のサイクリングの途中に泊まるという利用も歓迎だという。
利用料金は5500円。電源利用やゴミ処理費などは無料なので、RVパークとしては一般的な価格設定となっている。
次に設備について。事務所もある建屋に洗い場とトイレがある。洗い場にはシンクが3つ、トイレは個室が3つ。さらに建屋外にも水道が1つあって、洗い場、外水道とも水栓からでる水は井戸水(飲料可能)だ。
なお、シャワーや風呂はないので、入浴は付近の温泉を利用する。内船駅近くに温泉施設があってこちらを利用するのもいいが、キャンピングカートリップLでは提携している温泉宿(日帰り入浴も可)もあり、これがかなりいいところ。その温泉宿についてはあとで紹介する。
以上がキャンピングカートリップLの概要。設備などの細かい部分は写真で紹介するので行ってみたいという人は参考にしてほしい。
5台分の区画がある。区画のサイズは幅が約4m、長さが約5m、高さが約4m。見てのとおりかなり大きい建物だ 南部町は杉や檜などの林業が盛んなところなので、地元の建材を使って建築。足元は砂利びきでこれも富士川から採る地元のもの。建築も地元業者に依頼するなど、施設自体も地域に貢献するものとしている N-VANを入れてみた。区画のセンター付近に駐めると両ドアが全開できるほどの余裕がある 前後にも余裕がある。区画は長方形ではなく菱形になっているのでそのカタチをうまく利用すると、より広い感じで使用できる クルマを端に寄せてサイドタープを張ることもできる。足元が砂利引きなのはペグを打つことを想定してのこと いろいろな駐め方ができるが、今回は川沿いの区画だったことを活かして車外スペースから景色が見やすい配置とした 各区画には15A100V電源がある。電源利用は無料だ なんと100台ほど接続できるキャパを持ったWi-Fi設備を導入している。5区画がすべて埋まっていて、それぞれ5名ずつ、計25名でいっせいに動画視聴やオンラインゲームにつないでもまだまだ余裕 キャンピングカートリップLは基本的に無人での営業。チェックインやチェックアウトはこのあと紹介する手順で行なう 薪は針葉樹、広葉樹ともに販売している。スウェーデントーチ用の木もある。さらにBBQ用に国産の溶岩プレートのレンタルもある。必要な場合は電話にて連絡すると対応してくれる キャンピングカートリップLでは予約時にレンタカーの予約システムを流用している。予約には会員登録(無料)が必要で、レンタカーの予約システムだけに運転免許証番号も登録 ダイヤルキーは施設管理者用。利用者はその下にある窓の部分に運転免許証をかざすと予約した区画のロープ取り外し&電源ボックスのキーを取り出せる キーはこのように収めてある。青いフダを引き抜くとシステムは「チェックイン」と判断する チェックアウト時は青いフダを穴に挿し込むとシステムは「チェックアウト」と判断する。キーにはキーホルダーとして木札が付いていて、間違ってこれを挿す人もいるが、それではチェックアウトと認識されない。すると延長料金が掛かってしまうこともあるので注意を 区画の入口には南京錠でロックしたロープが張ってあるので、キーでロックを解除してロープを外す こちらが電源ボックス。電源は15Aと容量を多くしてくれているので利用者側には便利だが、その分、施設側が負担する電気代も多くなる。必要以上に使いすぎないよう心掛けたい 洗い場。シンクは3つある。現状、給湯設備がないので温水は出ない 水道は井戸水で飲料も可能。水質検査表も掲示されている。その横には自動車整備部門が請ける車内のオゾン消臭・除菌メニューがあった。車内で調理や食事をすると匂いが付くが、それを消せる作業なので、車内調理が多い人は利用するといいかも。ペットの匂い消しにも有効 トイレは個室が3つ。男女分けはされていない。すべて写真のようきれいで、小さい子供のトイレに付き添えるよう部屋は広めにしてある 炊事場の壁には近隣のガソリンスタンドの案内も貼ってある。クルマで利用する施設だけにこういう情報はありがたい。なお、BEVやPHEVの場合、稲葉工業(ロータスイナバ)に200V充電器がある。詳細は問い合わせてほしい 管理棟の外にも水道があるが、冷え込むが厳しくなると凍結防止のため使用不可になる予定。その際は炊事場内の水道を利用する ゴミ箱もある。ゴミ処理は無料だが、受け容れるのは施設で利用した分で、たき火あとの灰、可燃ゴミ、空き缶、ペットボトルのみ。灰皿もあるのでこの場での喫煙は可能 管理人の常駐がない施設だが監視カメラはある。また、稲葉工業は施設からクルマで数分のところなのでなにかあってもすぐに来てくれる 最近は野生動物との遭遇がニュースになっている。施設のまわりは自然環境が豊富なので鹿など近くまで来ることはあるが、熊が出たことはないという。ただ、山には獣のほかにヘビやヤマビルもいるので暖かい季節は不用心に山へ入らないようにしたい 施設は富士川の支流、戸栗川の横にある。前の道はほとんどクルマが通らないので昼間も静か。奥に見える橋は国道52号線 山側へ行くと戸栗川の上流にある人工滝など見ることができる。戸栗川ではヤマメや鮎釣りもシーズンになるとできるそうだ(入漁券が必要) 南部町は星空がよく見える地域でもあるので、今回は晴れの日であり月があまり明るくない時期を選んで行ってみた。付近には街灯もあって真っ暗ではないが星空はよく見えた。画角は前の写真とほぼ同じ向き。なお、写真では目で見えるより多くの星が写っている 建物を入れて東の空を撮る。多くの星のなかによく知られているオリオン座が写っている(中央上寄り) キャンピングカートリップLはたき火台使用でのたき火が可能。屋根が高いので屋根の下でもOKだが、柱や壁の側でのたき火は建物を焦がしたり、最悪の場合、火災になるので絶対に避けること 東側に壁を設けているので朝日が昇って明るさで目が覚めることもない。特に夏場は朝から「暑い~」とならないだろう。ゆっくり寝られる施設だ 屋根があるので夜露が降りることがあまりない。この時期は外に置いているイスなどは朝は濡れていて座れないことが多いが、この日はまったく濡れていなかった 施設への道順。南部ICから来ると戸栗川の橋の手前の「柳島」交差点を左へ曲がり小さい橋を渡る。渡りきったところを右へ曲がるのだが、ここが私有地に入る道に見える。そのため曲がり損ねる人が多いそう。筆者もそう思い込んで何度も通過した しかし、曲がってみると橋から見えないところに国道をくぐるトンネルがある。大抵のカーナビでは案内ができないが、Googleマップであればナビができる 内船駅に寄ってからくると、この風景。国道の橋と並ぶ小さい橋、そして石積みの壁(白い建物がある)が目印。壁と橋の間を左へ曲がる。なお、内船駅方面から来る途中に稲葉工業があり、稲葉工業の隣にはオギヤというスーパーがある 富士宮やきそば「竹王」と老舗温泉「佐野川温泉」にも立ち寄りたい
以上がキャンピングカートリップLの紹介だが、本施設は地域の食事処や温泉などと連携して、RVパーク利用者に南部町の立ち寄りどころの案内もしている。今回は2件ほど提携先を紹介してもらったので、最後にそちらの情報も掲載する。
まずは富士宮やきそばのお店「竹王」(山梨県南巨摩郡南部町大和2099-1)。「山梨県で富士宮やきそば?」と思うところだが、前述したように南部町は静岡との行き来が多かった土地なので、山梨県の街ながら文化的なものは静岡県寄りの傾向があるそうだ。そんなことから南部町では焼きそばと言えば富士宮やきそばが定番。南部町で育った稲葉氏も幼い頃から食べていたという。
この富士宮やきそばは麺が専用なこと、削り粉を使うこと、そして豚の背脂からラードを取ったあとに残る「肉かす」と呼ばれる旨みやコクを凝縮した脂分を使う特徴があるが、稲葉氏いわく、この「肉かす」を使うところがほかのやきそばと大きく違うところであり、美味しさの決め手とのこと。
また、富士宮やきそばは地域の家庭料理なのでお店によって味が違うのも魅力。富士宮やきそばはファンが多く、いろいろな店を食べ歩いている人も多いと思うが、南部町の富士宮やきそばはまだ食べたことがないかもしれない。興味ある人は竹王さんの富士宮やきそばも食べてみてほしい。
南部ICから国道52号線を静岡方面にいくと左手にこのような看板が並ぶところがある。もとは地元野菜の直売所や自販機コーナーがあった敷地。三角屋根のログハウスが竹王さん 竹王さんは地元の人が通う店。建物は小さいログハウスで窓に控えめに「やきそば」と書いてあるだけ。控えめなお店なので国道沿いにあるが見つけにくいかも 女性店主がひとりで切り盛りしている規模のお店なので、訪れる方もお店に協力するような気持ちを持っていった方が楽しい食事ができるだろう もう一件はキャンピングカートリップLからクルマで15分~20分ほど走ったところにある「佐野川温泉」(山梨県南巨摩郡南部町井出3482-1)。
南部町周辺には温泉地が点在しているが、この佐野川温泉は地区にたった一軒のみの歴史ある温泉宿だ。といっても敷居の高い印象はなく地元の人も利用する素朴なところ。
宿泊のほか、日帰り入浴もやっているのでキャンピングカートリップLのチェックイン前やチェックアウト後に利用するのもいいだろう。
温泉は源泉掛け流しの露天風呂(内湯もある)で、露天風呂は源泉そのままの温度と、源泉を沸かした熱めのお風呂の2つを用意。泉質もよく効能もいろいろ。聞いたところでは大相撲の横綱だった朝青龍が現役時代にケガの治療目的で滞在していたという。
佐野川温泉は山のなかにあって秘湯という雰囲気もする。佐野川温泉へ向かう国道52号線は富士川の側を通るが、そこで見る風景は富士川のダイナミックさが分かるものだった 正面入口。宿泊のほか、日帰り入浴もやっていて、日帰りでも温泉宿でのんびりしたい人向けに休憩の利用もあるし、食事の利用もできる 佐野川温泉に向かう山道。クルマ同士、すれ違いができない区間も多いので通行時は速度を控えて十分な安全運転を。佐野川温泉の入浴券はキャンピングカートリップLでも購入できる(回数券のばら売り)。現地で買うより少し安い値段としているという 温泉のデータ。露天風呂は源泉そのままの「ぬる湯」と源泉を沸かした「熱湯」がある 佐野川温泉もゆるキャン△のコミックに登場している(作中、名称は変えてある)。2024年に始まるアニメの新シーズンに佐野川温泉が登場するかもしれない 山梨県というと甲府や河口湖周辺などが有名で、富士川沿いは行ったことがないという人も多いと思うが、南部町を含めてこのエリアはそれこそ室町の時代から林業や川を使った産業で栄えた歴史ある地区。観光地とはまた違った趣のある風景が見られるので行く価値は十分にある。また、観光地として開発されていない素朴さも魅力だ。
そんな南部町を含むこの地区を巡るときのベースキャンプに適しているのがキャンピングカートリップL。母体がクルマ屋さんなのでレンタカー(軽やコンパクトカーなど道が細めの地域に適した取り回しのいいクルマ)の用意もあって、それを借りれば乗って来たクルマは宿泊モードで展開して駐めておき、周辺の観光はレンタカーということもできるので、施設の特徴を上手に利用して南部町という観光の穴場でのクルマ旅を楽しんでほしい。