大城和歌子の沖縄グルメ&スポット

もっと知りたい沖縄! そうだ、ミュージアムに行こう

 沖縄もようやく風がひんやりしてきて短い秋を迎えている。こんな季節には、心身ともに落ち着けるスポットがオススメだ。

 ということで、那覇新都心・おもろまちにある「沖縄県立博物館・美術館」を訪れた。

普通車140台分の広い駐車場を完備。ゆいレール「おもろまち駅」から徒歩10分とアクセスもよい

 私は博物館や美術館、資料館などがとても好きなのだが、実はここに入るのは初めて。もともと那覇市首里にあった県立博物館が、2007年11月に現在の場所に新装開館した。

 ピラミッドを思わせるどっしりとした建物は、シンプルながら存在感がある。入口のゲートをくぐると、すぐ左側に沖縄の昔ながらの家屋が。瓦葺きの木造家屋は中に入ることもできる。沖縄の歴史へのタイムトリップの入口だ。

沖縄ならではの赤瓦屋根の民家、高床式の倉庫、焼き物を造る窯が展示されている

 本館に入ると、吹き抜けの解放館あふれるロビーが印象的。向かって左が博物館、右が美術館になっている。まずは博物館に入ってみることにした。

天井が高く広々としたロビー
券売機は本館入口の右側にある
沖縄関連書籍が並ぶ情報センター。収蔵品のデータベース検索もできる

 博物館入口のアプローチには、沖縄の海をイメージした模型が床下に広がる。館内は古代から近代までの沖縄を知ることができる総合展示ゾーンと、自然史、考古、美術工芸、歴史、民俗などがテーマごとに展示されている部門展示から成っている。

沖縄の海を再現した博物館入口のアプローチ

 私が興味をひかれたのは、琉球王朝時代の展示。

 1つの独立国として、小さい島国ながら海外の国と交流していた琉球。当時の船の模型や港近辺の地図を見ながら、数百年前へ思いを馳せる。

現物資料はもちろん、模型も充実していて分かりやすく楽しい

 民俗部門の展示では、今でも行なわれている祭りに関するものや、農業・漁業などに関するものが。小型の漁船「サバニ」から素潜りで漁をするスタイルはいまでも引き継がれている。

テーマごとに区切られた部門展示室。より深く沖縄の歴史に触れることができる

 そしてぜひ知ってもらいたいのは、太平洋戦争時の沖縄地上戦と戦後のアメリカ統治下の時代だ。そういう時代を乗り越えて今の沖縄がある。つらい時代を生き抜いた先人たちのおかげで今があるということを。

戦中、戦後のアメリカ統治下時代は、沖縄を知るうえでとても重要な部分だ

 さて、博物館だけでもかなりお腹いっぱいになったが、さらに美術館で心を満たそう。

 メインとなるコレクションギャラリーでは、2016年3月13日まで「ニシムイ 太陽のキャンバス」展が行なわれている。「ニシムイ」とは、戦後間もない頃に沖縄出身の画家たちが集まって作った美術村。彼らの作品が一堂に集められた見応えある内容になっている。

美術館の入口では、首里儀保にあったニシムイのアトリエとメンバーのパネルが出迎えてくれる

 風景画や肖像画、ポップアート的な抽象画など、キャンバスに情熱をぶつけていたようすが感じ取れる。戦後画からは、怒りや悲しみ、恐怖など一言では表せない気持ちが湧いてきた。

展示作品の中に、あるアメリカ兵の肖像画があった。モデルとなった方は今もアメリカにご存命で、今回この展示会のために作品を貸し出してくれたのだそう。当時はこのような肖像画の注文も多かったようだ。

昔の沖縄や、戦後間もない頃の沖縄など、芸術作品としてはもちろん歴史も語ってくれる
展示室はニシムイのアトリエをイメージした内装に。作品だけでなく、アトリエの様子を写した写真や、実際に使われていた絵具なども飾られている

生活のために描いていたというポストカードや切手、新聞の挿し絵なども展示されている。ポスターなどもある。それらの作品からも戦後の苦しい時代を、「絵」によって生き抜いてきた彼らの気概が感じられる。これも沖縄の歴史の1つなのだ。

 青い海・青い空の沖縄ももちろんよいが、歴史や美術を通してちょっと違う目線で見てみてはどうだろう。もっと沖縄が好きになるかも知れない。

施設情報
施設名沖縄県立博物館・美術館
所在地沖縄県那覇市おもろまち3-1-1
TEL098-941-8200
営業時間9時00分~18時00分(金曜・土曜は20時まで。入館は閉館30分前まで)
定休日月曜日(月曜日が祝日または慰霊の日の場合は翌日以降の平日が休館)、年末(12月29日~12月31日)、その他
入館料●博物館常設展
大人:410円
高校・大学生:260円
小・中学生:150円(沖縄県内の小・中学生は無料)
●美術館コレクション展
大人:310円
高校・大学生:210円
小・中学生:100円(沖縄県内の小・中学生は無料)
※企画展、特別展は別途料金

大城和歌子

横浜生まれのウチナーンチュ二世。東京での出版社勤務を経て1998年11月に沖縄移住、フリーのライターとなり「和歌之介」のペンネームで活動。主に音楽系記事を得意とし、沖縄インディーズの隆盛を間近で体感した。自らも音楽活動をゆる~く展開。現在、那覇市内でレコードバー「リンドウ」を営んでいる。