ボーカリスト琴音の音楽旅
4回目のブエノスアイレスで初ライブ! トラブルがありつつも、新しい発見や出会いがありました
2023年9月30日 08:00
私は2020年のパンデミック時に南米アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスにスペイン語留学をしていました。当初、半年ほどの滞在を予定していましたが外出禁止令、アルゼンチン政府許可便以外の航空便運航停止などすったもんだで日本に帰国しました。
そこから、有事に外国に滞在することの難しさを実感し毎年どこかしら海外に行っていたものの、しばらく様子を見ていましたが……。タンゴ音楽が盛んなブエノスアイレスで、タンゴ世界選手権開催時期に行ってみたい!というきっかけで9月のブエノスアイレスにやって来ました。
波瀾万丈なフライトから、長時間の飛行機移動で中耳炎発症
今回はチリのLATAM航空で、成田~メキシコシティ~リマ(ペルー)~ブエノスアイレスというフライト予定でした。搭乗する前に少し風邪の治りかけという状態で、鼻水が少しだけ出るという程度。発熱もなく、特に体調不良という実感もなく成田空港からメキシコシティ空港へ飛び立ちました。これがのちの悲劇を生むとは知らずに……。
無事にメキシコシティ空港に到着し乗り換え便の搭乗を待っていると、なんと私の名前がアナウンスされているではありませんか。すぐに搭乗口で問い合わせると、私の預け荷物のスーツケースが税関で止められているとのこと。今から税関で荷物チェックを受けて戻ってきても、搭乗には少し時間が足りなさそうでした。荷物を捨てて搭乗するか、荷物を取って航空券を取り直すか。
その場でメキシコシティからブエノスアイレス行きの翌日のフライトを調べたら、約10万円……。うーん、スーツケースのなかのものすべて合わせても10万円も価値はないので、思い切って荷物を捨てて搭乗することにしました。しかし、搭乗して離陸時間になっても離陸せずに1時間が経過。とうとうこの便はキャンセルになり、乗客全員が降ろされて振替便のチケット発行のためLATAM航空のカウンターへ行くように指示されました。
しかし、やはりカウンターは長蛇の列。ん? これだけカウンターに並んでいたら、税関に行く時間あるのでは?と思い付き、スーツケースを求めて税関へ。が、ここでも指示されたところにスーツケースはなく、見つけられらず。諦めてカウンターでブエノスアイレス行きの振替便チケットを手に入れ、当初予定していたペルーのリマではなく、チリのサンティアゴで乗り換えてブエノスアイレス入りになりました。
トラブルはありましたが、LATAM航空の迅速な手配でなんとか目的地には着けそう……とチリのサンティアゴで最後の乗り換えをしようとしたときに若干右耳に痛みが……。ここまで来るのに、成田~メキシコシティで13時間、メキシコシティ~サンティアゴで8時間、長時間のフライトと鼻水が出ていたのがたたり、中耳炎を発症してしまいました。最後、サンティアゴ~ブエノスアイレスは3時間のフライトでしたが、この3時間が気圧変化で激痛に耐えながらの地獄のフライトを経験。皆さん、鼻炎や風邪などで鼻水が出ての飛行機移動はまめに耳抜きする、鼻をかんでおく、鼻うがいなど対策をした方がよさそうです。
すったもんだでブエノスアイレスに到着、最初に行ったところはなんと病院
暴れそうになる激痛に耐えながら、なんとかブエノスアイレスに到着しました。空港のWi-Fiを使い、Uberタクシーを呼びブエノスアイレス中心部に向かいました。
今回の滞在先はAirbnbで予約した女性専用のゲストハウス。なんとダンススタジオも付いているということで、踊らない私でもちょっとしたストレッチや運動はできそう。家に到着したはよいものの、とにかく耳が痛いので以前からスペイン語の個人レッスンを受けている先生のナタリアに病院に付き添ってもらえないか連絡してみました。
すぐに病院に行こう!とHospital Aleman(オスピタル・アレマーン)という私立病院に連れて行ってもらい、受付後にそこまで待たずに受診できました。耳鼻咽喉科を受診しましたが、右耳の中耳炎が悪化して右目にまでいき結膜炎も発症。というわけで眼科にも回されて、右目は腫れて半分しか開かない状態に。抗生物質と抗生物質入りの目薬を処方され、薬局でお尻に注射を打ってもらい帰宅。
費用は検査代、処方箋合わせて約3.5万円ほどでした。発熱していたのと長旅の疲れもあり、この日は帰宅後すぐに倒れるように眠ってしまいました。
念願のタンゴ世界選手権決勝を観戦、音楽ライブで感涙
8月31日にブエノスアイレスに到着し中耳炎からの発熱で少し休みつつ、動けるようになりタンゴ世界選手権の決勝を観戦しに行きました。
9月2日、16時からということで少し早めに屋外の特設会場へ。なんと入場無料という太っ腹。チラホラとアジア人の姿も見かけて、世界中からタンゴファンが集まっていました。
ダンス目的、というよりは音楽ライブコーナー目当ての私でしたが目の前を通る選手達の美しさにときめきまくり。南米アルゼンチンは日本と季節が逆で、この日はまだ冬で12℃ほどの気温しかなく、夕方から夜にかけてはどんどん寒くなっていきましたがなぜか心は温かいまま。
とはいえ風邪からの中耳炎で、防寒対策はバッチリして行きましたがやはり寒かったです。念願の音楽ライブコーナーでは、私の大好きな歌手、アメリータ・バルタールが登場し大感激。そこで、私の大好きなアルゼンチン出身の作曲家アストル・ピアソラの「ロコへのバラード」を歌ってくれて、ロストバゲージしそうになったり飛行機が振替になったり、挙げ句の果てに中耳炎&結膜炎で海外で初の病院行き。ちょっとめげそうなスタートでしたが、アメリータの歌を聴いてすべてが吹っ飛びました。この歌を聴くためにここまで来たんだ、と思いつい涙が。
ブエノスアイレスの色んな通りの名前が歌詞に出てくる「ロコへのバラード」をブエノスアイレスの象徴である「オベリスコ」を見ながら聴けて、屋外の会場は観戦には寒かったり天候に左右されたりデメリットもありますが、なんとも感慨深いものがありました。
体調に気を付けつつ、タンゴの街ブエノスアイレスを満喫
右耳の中耳炎を患いつつも、それ以外は元気なので少しずつタンゴの街ブエノスアイレスを満喫しようといろいろなところに出かけてみました。
まずは同じゲストハウスに住む女の子にタンゴフルーティストがいて、私もタンゴが好きと伝えると新しいスタイルのタンゴやフォルクローレ(アルゼンチン・フォークソング)のバンドが多く出演するイベント「FACAFF」に誘ってくれました。
毎年9月に1か月かけて開催されるイベントだそうで、アルマグロ地区の「CAFF」というライブスペースが会場です。会場ではパスタやお米など、腐らない食べ物の寄付を募っていてブエノスアイレスの高校に寄付されます。
今まで古典タンゴを聴くことの多かった私ですが、新たなスタイルのタンゴやフォルクローレを聴いてものすごく刺激を受けました。日本にいるとなかなか聴けない&入ってこない情報だったと思います。
アルゼンチンアーティスト、Duo Doのライブにゲスト出演しました
そして、今回はDuo Do(デュオ・ドー)というブエノスアイレスの男女音楽ユニットのライブにゲスト出演しました。
日本が大好きなお2人で、ブエノスアイレス在住ですが日本でもライブをしたり積極的に活動しています。ボーカルのクレちゃん、ギターのサンちゃんとひょんなご縁でつないでいただき、今回のライブ出演となりました。
デュオ・ドーのドーは「道」の「ドー」で、芸術を学ぶ無限の「道」を指しているそうです。言語の壁を越える音楽の力を信じて、アルゼンチン以外でも活動している2人に私も強く共感し、今回のコラボになりました。
会場はなんと図書館! 「Musica entre libros(本のなかの音楽)」というイベントで、入場無料で南米の具入りパイ、エンパナーダやワイン、ビールの販売も。3バンド出演ということで、事前リハーサルをしてサウンドチェック。
会場にはたくさんのお客さんが入り、まずはDuo Doの2人だけでのステージ。途中から私も登場し、私のオリジナル曲「Dulce de leche(ドゥルセ・デ・レチェ)」を披露しました。
ドゥルセ・デ・レチェはアルゼンチンのキャラメルジャムで、国民的な人気を誇るお菓子です。日本でいうと「あんこ」のような存在といえるでしょう。そんなドゥルセ・デ・レチェを恋人に見立てて「あなたがいないと生きていけない、愛してるけどいいことばかりじゃないの。食べ過ぎると太っちゃう、でもそんなことどうでもいいわ。おかわりちょうだい!」といった内容です。
このスペイン語歌詞がウケたのか、会場では歌声とともに笑い声が響いていました。デュオ・ドーの2人との楽しいステージのあとは、皆んなでビールやワインを楽しみ、最後は出演者とスタッフで記念撮影。
コロナ禍で日本に帰国が決まったときは、留学のためにいろいろと準備していたことがすべて頓挫し落ち込んでいましたが。
そのときに作った曲で、ブエノスアイレスの人たちに喜んでもらえる日が来るとは思いませんでした。今回の旅は、ブエノスアイレスからヨーロッパ周遊と、約2か月のものになります。
これから先、またどんな出会いや景色に出会えるか今から楽しみです。