井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

旅程表を持ち歩く方法と記録する情報

 本連載が始まって間もないころ、「Microsoft Excelを駆使して旅程を立案する」という話を書いた。さまざまな接続・乗り換えの組み合わせを比較検討できるだけでなく、乗り換えに際しての時間あるいは移動に要する時間の計算までできるので、なかなか便利である。

 しかし、実際にお出かけしたときに、その旅程表をどうやって持ち歩くか。もちろん、紙に印刷して持ち歩く方法でもいいが、いささか嵩張る。それに、車中で荷物のなかから紙の旅程表を引っ張り出すのはめんどうくさくもある。その旅程表の話と、実際に出掛けた際の「旅の記録」の話をまとめてみた。

日本国内での例はあとで出すとして、これは2025年1月にイギリスを訪れたときのもの。どこからどこまで、何時発何時着のどんな列車に乗ったのか、といったデータをまとめてある

スマートフォンで旅程表を持ち歩きたい

 近年の鉄道旅行ではスマホを利用する場面が増えている。どのみちスマホを持ち歩かなければならないということなら、旅程表もそこに入れて持ち歩けるようにしてはどうか。そうすれば、いつでも手元で旅程の確認ができる。

四国訪問の作戦計画を立てたときの検討例。さまざまな経路・接続を比較検討するには、この方法はなかなかよいと思っている

 旅程に限った話ではないが、記憶だけに頼るのは間違いのもと。それで発車時刻や乗るべき列車を間違えて旅程を崩壊させてしまったのでは、シャレにならない。いつでも手元で旅程を確認できることは重要である。すると、パッと取り出せるうえに必須アイテムになってきているスマホは利便性が高い。

 しかし、筆者が推奨しているようにExcelで旅程表を作成した場合、それをどうやってスマホに持っていくかという課題がある。いちいち手作業で入力し直すのはスマートではないし、間違いのもとでもある。スマホでExcelのファイルを直接、開いて参照あるいは変更できる手段があれば、それでもいいのだが。

 しかし筆者はそうしないで、別の方法を用いている。

Microsoft OneNoteで旅程表を持ち歩く

 それがMicrosoft OneNote。よくしたもので、Windows版もAndroid版もiOS版もあるし、(筆者は使ったことがないが)Mac版もあるようだ。そして、同じMicrosoftアカウントでサインインしていれば、異なるプラットフォーム間でも同期を実現できる。

 まず、Windows上で動作するExcelで旅程を立案する。次に、OneNoteで新しいページを1つ作成して、Excelからコピー&貼り付けする。Excelで表の形になっているものをOneNoteにコピペすれば、そちらでも表形式でデータを持つことができる。

 そして出発後にデータを書き足すとか、予定が変わった(変わらざるを得なくなった)ときに、計画旅程とは別に実際の旅程を書き込むようなこともできる。もちろん、計画旅程を残さずに、実際の旅程を上書きしてもよい。どのみち、大元のデータはExcelブックとして手元にあるわけだから。

先に検討した結果として確定させた、最終版の旅程。これはExcel上にある。それをコピーして……
Windows上で動作するOneNoteで、新しいページを1つ用意して貼り付ける
それを実際の乗車結果に合わせて書き直したり、乗車した車両の番号を書き足したりした結果

 なお、ときには詳細なスケジュールを事前に決めない「行き当たりばったり」になることもある。その場合、OneNoteで空白のセルをたくさん用意しておいて、列車に乗るその都度、情報を記入するようにしている。

 逆方向で、OneNoteの表をコピーしてExcelに貼り付けることもできる。だから、全行程を終えて帰宅したあとに、OneNoteに記録しておいた実際の行程をExcelにコピペで転記すれば、それが保存用のデータになる。

では、どんな情報を記録しているのか

 ここから先は個人の好み、人それぞれという種類の話になるのだが、1つの参考として、筆者がどんなデータを「旅の記録」として残すようにしているのかを書いてみる。

 まず、発地となる駅と着地となる駅、その途上で乗り換えを行った駅、これらが縦に並び、その横に着発時刻の情報が入る。ただしそれだけだと「どんな列車に乗ったのか」が分からないので、筆者は列車番号も記録している。

同じ駅で乗り換えた場合、1行目は1列目が駅名・2列目が着時刻、2行目の1列目は空白・2列目は乗り換えた列車の発時刻、としている
同じ場所だが駅名が異なる場合には、駅名はそれぞれ個別に入力する(ここでは「大阪梅田」と「大阪」がそれで、前者は阪急、後者はJR)。なお、3列目は列車番号と、車両番号や編成番号を記入している。飛行機だと、これが便名や機体の登録番号になる
路線バスや高速バス、あるいは徒歩やタクシーでつないだ場合にも、その旨を書き込んでおく。ただし徒歩やタクシーの場合、時刻は省略する

 紙の時刻表なら、やたらと本数が多い大都市圏の鉄道は別として、大抵列車番号は分かる。また、ネット上で利用できる時刻表のなかには、列車番号の情報を併記しているものがある。こちらはありがたいことに、地下鉄をはじめとする大都市圏の鉄道でも、列車番号がちゃんと分かる。

 同じ時刻に着発する列車でも、ダイヤ改正に際して列車番号が変わることがある。しかし列車番号を記録しておけば、そんな事態になっても慌てずに済む(そこでなぜ慌てるのか、という問いについては考えないことにする)。

 もう1つ、個人的こだわりとして、列車ごとに車両の番号を記録するようにしている。ただし、編成番号で済ませてしまうことも多い。新幹線みたいに、1つの編成を構成する車両の陣容がいつも同じであれば、編成番号が分かれば用は足りる。

 乗った車両に関する記録は、その時代、その列車に関する1つのスナップショットだから記録を残したい、という考えがある。ちなみにこれは空の上でも同じで、飛行機に乗ったときには機材の登録番号(登録記号)を記録している。

阿波池田駅に到着する特急「南風」。このように、車両の前面に車両番号や編成番号が書かれていると、手間が省ける
乗務員室扉に書かれた編成番号を撮っておいた例(JR四国8000系)
新幹線では、列車名を側面の行先表示器に表示する車両が多くなった。それと車両の番号を一緒に撮っておけば、1枚で情報が揃う
飛行機でも同様に、登録記号が分かるような写真を確保しておくのが通例。首脚収納室扉に「876」と書かれているから、これはJALのボーイング 787-9(登録記号:JA876J)だと分かる
これは、おおさか東線を利用したときに、発車標を撮っておいた例。同じホームからエキスポライナーが出るとの表示があり、万博開催期間中だという記録にもなっている

 車両の番号は、実際に乗車するまで分からない。そこで、スマホで動作するOneNoteを用いて、乗車後に表に書き込んでいくわけである。それとは別に、写真も残すようにしているが。

 ときには、遅延に見舞われることもあるが、そのときにも分かる範囲で、どんな理由でどれぐらい遅れたかという記録を残すようにしている。

 筆者の場合、最終的には計画立案に使ったExcelブックにOneNoteから転記して最終保存用データとしている。その際に、遅延に関する情報は、セルごとの「メモ」として記入している。発車が遅れたときには、当該列車の発時刻のセルに、到着が遅れたときには当該列車の着時刻のセルに、メモとして「こういう理由でこれだけ遅れた」と書いておく。

発車標に遅延の情報が出る場合があるが、それを撮っておくのも記録の1つ
予定と実際の間に差異が生じたときには、このように併記している。駅名と隣接しているのが実際の行程で、当初の予定よりも繰り上がったのだと分かる。右側にあるのは、反故になった計画行程。ただ、実際の行程が計画よりも遅れた場合には、実際の行程を右側に持ってくる手もあろう
遅延に関するメモを、発着時刻のセルに追加した例。発車が遅れた場合には発時刻、到着が遅れた場合には着時刻のセルにメモするのが分かりやすい
発車標を撮っておくのは海外でも同じ。これはイギリスのポッターズ・バーで撮ったもので、架線トラブルのせいで遅延や途中打ち切りが発生していた。左端の「1st 16:49」は「先発 16:49」の意。しかし遅延があり、「Expt 16:55」と見込み発車時刻も表示している

 OneNoteでありがたいのは、同期をかけるとノートブックのデータがOneDriveにアップロードされて、それによって冗長化できるところ。最新のデータをOneDriveにアップロードしてあれば、それをほかのデバイスから同期操作によって取り出せるから、回収不可能にはならない。

おわりに

 ここで書いたことはあくまで筆者個人の流儀だから、誰もが同じようにしなければならないというものではない。記録しておきたい情報は人それぞれだ。

 それに、メモする情報をむやみに増やすと、それが案外と負担になってしまうことがある。ムリのない範囲で、しかし、あとで振り返ったときに旅のディテールを思い出す役に立つ。そんな情報を残すようにしたいものだ。