井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
乗り放題や定期券、普通乗車券もスマホで完結。JR四国の「スマえき」使ってみた
2023年10月4日 06:00
筆者は2019年と2023年の二度、スウェーデンを訪れている。あちらでは、路線バスや都市間列車・近郊列車を利用する際に、スマートフォンとクレジットカードがあれば、乗車便を検索してキャッシュレス乗車が可能な仕掛けが整っていて、かなり楽ができた。裏を返せば、不慣れな外国人はスマートフォンとクレジットカードがないと詰むということでもあるのだが。
「スマえき」とは
一方、日本の鉄道におけるチケットレスサービスというと、交通系ICカードを利用するものが多い。JRグループのみならず、多くの民鉄でも導入されており、カードを所持している人も増えているから、筋の通った選択といえる。といっても、これも場所による。
JR四国では、香川県の一部エリアでJR西日本と同じ「ICOCA」を導入しているが、これは瀬戸大橋線を通じた岡山方面との往来があるから、という理由だろう。そのほかのエリアでは交通系ICは未導入、それどころか自動改札機が設置されている駅すら限られるのが実情である。
それを逆手にとった、ということだろうか。JR四国は2022年11月に、スマートフォンで動作するチケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」(略称:スマえき)を公開した。当初は特別企画乗車券(いわゆる「おトクなきっぷ」)しか購入できなかったが、2023年4月から、片道乗車券、通勤・通学定期券、自由席特急券も購入できるようになった。
購入できるきっぷは、JR四国のWebサイトで確認できる。対象はJR四国エリアで、JR四国のエリア外に出るきっぷは扱わない。JR西日本とJR四国の境界駅である瀬戸大橋線の児島駅が対象から外れるのは、この駅がJR西日本の管轄下にあるからだろう。
「スマえき」を使ってみた
前述したように、JR四国では自動改札機が設置されている駅すら限られる状況なので、「スマえき」は自動改札機に頼らない。駅係員や乗務員が画面を目視確認する方法が基本となっている。
まず、「スマえき」を手元のスマートフォンにインストールして、会員登録を行なう。会員情報設定画面で、クレジットカードの情報も登録できる。
手始めに、週末限定・有効期間1日で特急自由席が乗り放題となる「週末乗り放題きっぷ」を購入してみた。駅の指定席券売機で紙のきっぷを購入する方法もあるが、「スマえき」なら駅にいる必要はない。空港から駅に向かうバスの車中で購入しておき、駅に着いたら直ちに改札に向かうことができた。
使用中のきっぷでは、地紋(?)がアニメーション表示される。スクリーンショットではなくアプリの画面を提示していますよ、と一目で分かるようにするための工夫だろう。
また、普通乗車券も購入してみた。特に難しいことはなく、発駅・着駅と日付と人数を指示するだけだ。駅の自動券売機で紙のきっぷを買っても同じことはできるが、キャッシュレス化できるのは「スマえき」の利点だろう。
なお、有効期限が過ぎたきっぷは、自動的にトップ画面の一覧から消える。
使用開始日の変更や使用開始前の払い戻しも「スマえき」で行なえる。このうち使用開始日の変更は、未使用、かつ有効期間開始日より前、という条件が付く。購入日から最大3か月先まで変更が可能で、回数制限はない。「とりあえず購入だけしておいて、使用開始日はあとで決める」という使い方ができるわけだ。
「スマえき」利用時の留意事項
「スマえき」は係員に画面を提示するのが基本的な使い方。ただし、自動改札機が設置されている高松駅と高知駅には「スマえき専用改札機」が設置されており、ここに「スマえき」の画面に表示される二次元バーコードを読み取らせると通過できる。
この「スマえき」を利用する場合、紙のきっぷとは条件が異なるところがいくつかある。
まず、乗車券の距離に関係なく有効期間が1日間になる点と、途中下車ができない点が相違点となる。
また、アプリの画面を提示する必要があるため、アプリが起動できない、あるいは電池切れや端末の故障・破損といった事態になると、「スマえき」による乗車は不可能になる。長大トンネルを通過中で「圏外」になっているときに、ちょうど検札が来てしまった、なんていうことになると慌てる。いつでも提示できるように、乗車中はアプリを起動したままにしておく方が無難かもしれない。
こうした制約や注意点を承知したうえで利用する分には、「駅にいなくてもきっぷの購入が可能」「紙のきっぷを発券してから乗る必要がない」というメリットは大きいと感じた。
おもしろいところでは、ほかの「スマえき」会員のために「代理購入」ができる。利用する人と支払をする人が別になる場面、例えば親が子供のために通学定期券を用意するような場面を想定した機能だが、それ以外でも応用が効きそうではある。