井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
後乗り前降り? 前乗り前降り? ワンマン運転をめぐるあれこれ
2023年9月27日 06:00
基本的な利用の仕方
ワンマン運転列車では、車掌は乗務しておらず、運転士のみ。運転だけでなく、乗降用の扉の開閉や運賃収受も運転士が担当する。この辺は乗合バスと変わらない。
ただし「都市型ワンマン」という例外があり、運転士は運転に専念して、運賃収受は駅任せとなる。自動券売機や自動改札機が整備されている都市部なら実現可能な手法で、特に地下鉄で増えている形態。もっとも最近は、郊外路線でも交通系ICカードの普及に伴い、駅にICカードの読み取り装置を置いてワンマン化する事例がある。
一方、ローカル線におけるワンマン運転は、いわば「レールの上を走る乗合バス」。乗車時に、どこから乗車したかを証明するために整理券をとって乗り込む。降車の際には料金表を見て、整理券に書かれている番号(または駅名)に対応する駅からの運賃を現金払いする。小銭がなければ、運賃箱に組み込まれている両替機能を使うところも乗合バスと同じ。
ところが交通系ICカードの普及により、車内で交通系ICカードを利用できる事例も出てきた。これは乗合バスで交通系ICカードを利用する場合と同じで、乗車時に「入場用」、降車時に「出場用」の読み取り装置にタッチするだけである。駅にある「入場用」「出場用」の簡易改札機が車内に引っ越してきたようなものだ。
鉄道のワンマン運転に特有の事情
鉄道でも乗合バスと同様に、一般的に「乗車口」と「降車口」は分ける。運転士が運賃収受を行なわなければならないから、必然的に降車口は先頭車の最前部・運転台の直後となる。では乗車口は?
乗合バスだと「中乗り前降り」「後乗り前降り」「前乗り前降り」「前乗り後降り」と多種多様、しかもこれが地域・路線・会社によって異なるので、よそ者には優しくない。
一方、鉄道のワンマン運転では「後乗り前降り」が大半を占める。側扉が前後に1か所ずつあれば、それを使い分ける。進行方向が逆になれば、乗降の使い分けも逆になる。中間に扉がある場合、それは使わない。
ところが何事にも例外があるもので、JR北海道みたいに「前乗り前降り」のこともある。駅到着時に観察していると降車優先で、まず降りる人がみんな降りると、ホームで待っている人が乗り込んでくる。
ともあれ、ワンマン運転区間では乗車口が1か所に限定されるので、駅のホームには大抵「○○方面ワンマン列車乗車口」という看板が立っている。進行方向によって乗車用の扉の位置が変わるから、同じホームに上下双方の列車が発着するときは要注意。
また、鉄道には複数の車両を連結して走るという特徴がある。宇都宮ライトレールでは、ICカードなら、どの車両のどの扉からでも乗降できる方式だが、これはICカードに期待して乗降迅速化を図ったもの。
しかしJR各社のローカル線におけるワンマン運転では、乗降は先頭車に限定される。つまり、先頭車の運転台直後にある側扉が降車用、後側にある側扉が乗車用。そして2両目以降の車両では側扉は開かない。
どうしても先頭車が混むことになりがち
すると、先頭車に乗客が集中しやすくなる。降車する駅に着いたら、先頭の車両・運転台の直後まで行かないと降りられないからだ。それなら降車口に近いところにいる方が楽なのは間違いない。
裏を返せば、2両目以降なら空いていて空席を確保しやすくなるかもしれない。もちろん「かもしれない」であり、「絶対に空いている」と断言はできないが。それに、実際に乗車して観察していると、わざわざ2両目までやってくる地元利用者を見かけることもある。
なお、鉄道のワンマン運転では、無人駅では運転士が運賃収受を行なうが、有人駅では駅係員が運賃収受を行なうのが一般的。ワンマン運転の列車でも、駅によって「○○駅ではすべての扉が開きます」と放送されることがあるのは、そういう理由。だから、すべての扉が開く有人駅で降車するのであれば、わざわざ先頭車にいる必然性は薄い。2両目以降にいても降車に支障はないからだ。