井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

繁忙期の新幹線で指定席を確保するコツ

2023年1月3日に新大阪駅で。盆暮れ正月にゴールデンウイークといった「超繁忙期」には、指定席券の争奪戦が激化する

 筆者も御多分に漏れず、年末年始には帰省して「家族全員集合」となっていた。最近では、鉄道や飛行機の客足もかなり戻ってきているように見受けられるが、そうすると問題になるのが、指定席券の確保。今回は新幹線に的を絞って、指定席の確保に役立ちそうな話を取り上げてみる。

 指定席券の発売開始は乗車1か月前の午前10時。しかし以前は、盆暮れ正月・ゴールデンウイークのような繁忙期について、駅の「みどりの窓口」で「事前受付」を行なう事例が結構あった。今はこれがネット予約サービスに移ってきている。

 ただし、事前申込をかけても、指定席の情報を管理している「マルス」システムに対してリクエストを出すタイミングは変わっていない。だから、争奪戦が緩和されるわけではない。そうしたなかで、より確実に指定席を確保するにはどうすればよいか。

区間列車を狙う

 たいていの人は「なるべく早く移動したい」と考えるものだから、速達列車に人気が集まる。そこで人気が集まりやすいのが、東海道・山陽新幹線なら「のぞみ」、東北新幹線なら「はやぶさ」となる。そのなかでも、基幹となる長距離列車に人気が集まる傾向があるようだ。

 すると何が起きるか。利用する区間が東京~新大阪間なのに、博多行き「のぞみ」の指定席を狙うようなことが起きる。東北新幹線でも、東京~仙台間の利用で新函館北斗行きの「はやぶさ」を利用する人が多いから、仙台で乗客がゴッソリ入れ替わる光景が日常的だ。

 特に以前は、東海道・山陽新幹線では博多行きがジャスト0分発だったので、その傾向に拍車をかけていた。「○時台の列車」といって検索をかけると先頭に出てくるのだからムリもない。しかし、平素はまだしも、利用が急増する繁忙期には、人気が集まりやすい列車の指定席は争奪戦が激化する。そこでダイヤが見直されて、今は新大阪行きが0分発だ。

 東海道・山陽新幹線では区間列車、つまり全区間を走り通さない列車の設定もある。時刻表を見ると分かるが、「のぞみ」は東京~博多間だけではない。東京~新大阪間、あるいは東京~広島間の設定も多いのだ。このほか、早朝・深夜には名古屋~広島・博多間の設定もある。

同じ1月3日に新大阪駅で。「新大阪始発の列車がこんなにありますから、そちらを利用してください」というアピールだ。1時間に最大12本の「のぞみ」を設定できるが、そのうち半分は新大阪~東京間なのだ

 特に利用が多い東京~名古屋~新大阪間の往来なら、「博多行き」にこだわる理由は皆無だ。しかし、時間帯と区間を指定して検索をかける方法では、それぞれの列車がどこ行きかをいちいち教えてはくれない。ところが実は、おおまかに運転区間を知る術はある。それが列車の号数。

 2023年1月現在、「のぞみ」の定期列車(毎日運行する列車)で見ると、東京~博多間の列車は1~79号。東京~広島間の列車は81号から始まって100台まで、東京~新大阪間の列車は200台という割り振りが基本となっている。ただし、細かく見ていくと例外もあるのだが。

 東京~名古屋~新大阪間の行き来で「東京~博多」の列車にこだわる必然性はないから、新大阪行きの「のぞみ2xx号」を狙う。新大阪以遠まで行く人は選ばない列車だから、指定席を取れる確率が上がるかもしれない。ただし近年、この話が知られてきたせいで新大阪行きの利用が増えている、との話も仄聞するが。

 号数の割り振りは一定ではないので、今後にいろいろ変化はあると思われる。しかし東海道・山陽新幹線の場合、「号数の数字が大きい『のぞみ』は区間列車」と覚えておけば外れはないだろう。

指定席券売機で検索をかけた結果の一例。運転区間は同一ではなくて、207号は新大阪行き、15号は博多行き、129号は臨時の博多行き、295号は臨時の新大阪行き、131号は臨時の広島行きだ

臨時列車を狙う

 もう1つ、「分かりやすい列車に人が集中する」を逆手にとるのが、特定の日だけ運行する臨時列車を狙う方法。特定の日だけ走る列車は、毎日走る定期列車と比べると存在が認知されにくいから、その分だけ人気が下がると考えられる。しかし、運行する日が自分の利用日と一致しているなら、活用しない手はない。

 特に東海道・山陽新幹線の場合、弾力的に臨時列車を設定するケースが多い。JRでは指定席券の販売状況を毎日チェックしており、「この日は需要が足りない」とみると急遽、予定になかった臨時列車の運行を追加することすらある。すると、紙の時刻表では走らないことになっている列車が出現する。

 東海道・山陽新幹線の時刻表を見ると、「◆」表記が付いた「特定の日だけ走る列車」の多さに驚く方もいるのではないか。その典型が、東京~新大阪間を走る、300~400台の号数(2023年1月現在)を持つ「のぞみ」の一群。

 全区間が臨時という列車だけではない。平素は東京~広島間を走っている定期列車が、繁忙期だけ博多まで臨時延長する形もある。これも、広島以西と広島以東の間を行き来する場合には狙い目となる。

 東北・北海道・秋田・山形・上越・北陸新幹線は、需要動向や線路容量の関係から、東海道・山陽新幹線みたいに区間列車を多数設定する形にはなっていない。東北新幹線の場合、利用が多いのは東京~仙台間だが、仙台止まりの大半は途中駅にこまめに止まる「やまびこ」なので、結果として速達型の「はやぶさ」に利用が集中してしまう。

 そうした事情を勘案すると、これらの新幹線では臨時列車を狙う方が現実的となる。九州新幹線や西九州新幹線も、事情は同じだ。また、東北新幹線に設定がある併結列車では、「こまち」より「はやぶさ」、「つばさ」より「やまびこ」の方が定員が多い点にも留意したい。

秋田新幹線の「こまち」は、東京~盛岡間は東北新幹線の「はやぶさ」(写真では手前側の10両)と併結している。もちろん、「はやぶさ」の方が定員が大きいから指定席をとりやすい。東京~盛岡間の相互利用なら「はやぶさ」を狙うのが正解

区間を分割する

 これは「最後の手段」だが、全区間を通しにするのではなく、分割すると指定席を取れることがある。例えば同じ列車で東京~博多間を利用するのに「東京~新大阪」と「新大阪~博多」で席を変える形だ。あるいは、新大阪駅で後続の別の列車に乗り換える。

 前述したように、一部区間の利用が少なからずあるため、虫食い状に指定席が売れる場面は多い。それがうまくつながれば、分割が成立するわけだ。

 ただし繁忙期では駅も車内も人が多くて混み合っているから、そうしたなかで移動して席や列車を替えるのは、あまり使いたい方法ではない。帰省・行楽では大きな荷物を抱えていることも多いだろうから、なおさらだ。それが「最後の手段」と位置付ける理由である。