井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
乗り遅れを防ぐには? ローカル線や地方幹線では駅の発着番線に注意
2023年1月18日 06:00
都市部の電車を利用していると、駅の発着番線は方面ごと、あるいは種別ごとに固定されているのが一般的だ。ところが、ローカル線や地方幹線になると例外が発生する。しかも、状況に応じて発着番線が変動することすらある。そこで発着番線を間違えると、列車に乗りそこなうかもしれない。
日本の鉄道は左側通行
日本の鉄道は道路と同じで、左側通行が基本。上下列車が同じ線路を共用する単線なら関係ない話だが、複線の場合には進行方向に向かって左側の線路を走る。
単線の場合には途中の駅で列車の交換(行き違い)ができるように、複数の線路を設けた駅を置く。そこでも、進行方向に向かって左側の線路に発着することが多い。停車する列車だけでなく、通過列車にもこの原則が適用される。ところが実際には、進行方向に向かって右側の線路に発着するケースも存在する。
その結果として、「同じ方面なのに、列車によって発着番線が異なる」「進行方向に向かって右側の番線から列車が出る」といった事態が発生することがある。
だから、駅に掲示されている発車時刻表、改札口付近の標示、あるいは発車標を見て、列車ごとに示されている発着番線の情報を確認してからホームに向かうようにしたい。そうしないと、自分がいるのとは異なるホームに列車が到着して慌てることがある(恥ずかしながら、筆者も一度、これをやらかして階段をダッシュしたことがある)。
どうして、そんなややこしい話が起きるのか。代表的なパターンを2つ紹介する。
駅舎に面したホームを優先する
駅舎に面したホームが1つあり、それとは別に跨線橋や地下道を通じて行き来するホームがあると、ホームによって利便性に差がつく。駅舎に面したホームなら上下移動は不要だが、それ以外のホームは上下移動が発生するからだ。すると、利便性を重視して「列車の進行方向に関係なく、駅舎に面したホームに列車を着ける」という運用が出てくる。
しかし、列車の交換(行き違い)が発生するとか、あとから発車する列車を早めにホームに着けて待機させているとかいう具合に、複数の列車を在線させる場合には事情が異なる。そういう場面では、優先度が高い列車を駅舎に面した番線に着けたり、方面に合わせて番線を使い分けたりする。
1線スルーの場合
地方幹線の高速化に際して登場したのが、「1線スルー」。駅の構内配線に詳しい方なら説明は不要だろうが、そうでない方のために簡単に解説する。
普通、単線区間の交換可能駅では、駅の前後にY字形の分岐器(ポイント)を設けて線路を分岐させる。ところがこれは、比較的きつい「曲がり」が発生するので、速度制限がかかる。停車列車ならよいが、通過列車でも減速を余儀なくされるから、スピードアップの妨げになる。
そこで、分岐器をY字形の「両開き」ではなく、直線から別の線路が分岐する「片開き」にする。そして、通過列車は進行方向に関係なく直線側を通す。交換の際、少なくとも片方の列車は必ず停車するから、そちらは速度制限がかかる分岐側に着けても支障はない。すると列車の方面ではなく、交換の有無によって発着番線が違ってくる。
まず、駅舎に面している番線が分岐器の直線側なら、以下のような運用になる。
・交換がない場合には利便性を考慮して、進行方向に関係なく駅舎に面した番線に着ける。
・交換がある場合には、片方の列車を駅舎に面していない番線に着ける。片方が通過列車なら、そちらを直線側に通す必要があるので、他方を必然的に分岐側の番線に着ける。
逆のケースもある。駅舎に面している番線が分岐側、他方が直線側ならどうなるか。
・交換がなければ、停車する列車は進行方向に関係なく、駅舎に面したホームに着ける。
・停車列車同士の交換がある場合には、左側通行の原則を適用する。
・停車列車と通過列車の交換がある場合には、停車列車は進行方向に関係なく、駅舎に面したホームに着ける。通過列車は他方の、分岐器直線側のホームを走り去る。
とにかく発着番線の確認は忘れずに
ややこしいのは、どこの駅でも必ずこうした運用が行なわれているとは限らないこと。駅によっては、律儀に方面別、あるいは路線別に番線を使い分けるケースもある。だからますます、乗車前に番線を確認することが重要になる。
なお、線路脇にホームを沿わせただけで分岐が一切ない、いわゆる「棒線駅」なら、上下に関係なく同じホームに発着するから番線間違いは起こらない。ただし列車の行先に注意しないと、逆方向に向かう列車に乗ってしまうリスクはある。所定ダイヤなら「何時の列車だから○○行きだな」と判断できるが、ダイヤが乱れると、そうとも言い切れない。