荒木麻美のパリ生活

パリオリンピック・パラリンピック開幕! 直前のパリ市内の様子は?

 東京オリンピック・パラリンピックはついこの間だったような気がするのですが、パリオリンピック・パラリンピックも7月26日から始まります。パリに住んでいる一人としての個人的な感想は、5月くらいから「もうすぐだなぁ」と感じるようになりました。そんなパリの5月から7月頭にかけての様子を少しお伝えできればと思います。

 メトロ内では停車駅を知らせる表示に「ここに〇〇競技場がありますよ」といったシールと、通路などにも案内が張られるようになりました。

 町のあちらこちらでオリンピック・パラリンピックの旗が掲げられるようになり、会場となる場所がどうなっているのかを見に行ってみると、どこも着々と準備が進んでいるようでした。交通止めとなっているところも多かったです。

町のいたるところに旗が
6月半ばのシャンゼリゼ、チュイルリー公園、グラン・プチパレ、トロカデロ、アンバリッドあたりの様子
スーパーにできたグッズコーナー

 7月14日の革命記念日と翌日の15日は、パリ中を聖火ランナーたちが走り回りましたが、私は14日のバスティーユ広場を見に行きました。バスティーユ広場にはオペラ座があるので、広場では聖火イベントとしてバレエのレッスンが行なわれていたのですが、時間になるとその横をランナーがあっという間に走り去っていきました。

バスティーユ広場からの帰りに通ったレピュブリック広場では、15日夜の聖火台への点火とコンサートに向けた準備が進んでいました

 7月18日から開会式のある26日までは、セーヌ川を中心に交通規制やメトロの駅の閉鎖が始まります。フランス内務省の出した地図を見ると、グレーとなっている部分に入るためにはすべての人に許可証が必要となり、赤の部分には、許可証がないと自動車は入れません。開会式後、大会期間中については、エリアと日時ごとに交通規制と公共交通機関の状況が変わっていくので、外出前にはフランス運輸省の提供するインタラクティブマップ(仏語のみ)で確認するとよさそうです。

フランス内務省の出した開会式まで(上)と開会式当日(下)の交通規制に関する地図

 私の住むアパート内では、オリンピック・パラリンピックを見据えてというのもあったと思うのですが、1年前くらいから続々と民泊用の部屋ができました。特に1階の部屋は日当たりとセキュリティの関係だと思いますが、管理人の住む部屋以外は倉庫しかなかったのですが、一気に3部屋も民泊に変身。建物内のルールを理解していない旅行者が出入りするようになってしまい、住人達からの評判はすこぶるわるいです。

 7月頭に民泊となったうちの1部屋をサイトで見てみると、ゲスト2人用の小さな部屋が1泊200ユーロでしたが、オリンピック・パラリンピック期間中はまったく埋まっていませんでした。これに限らず、一般の宿泊・飲食業界にとっても期待外れになりそう、というニュースも見かけました。

鍵を入れておくボックスが部屋の前に付くと、ここも民泊部屋になったのだと分かります。1階の3部屋以外にも、建物内のいくつかの部屋が民泊用になりました

 公共交通機関は、在住者向けのチケットを除くチケットは大会期間中ほぼ倍額になるというから驚きです。大会チケットを持っている人は無料になるという話もあったのですが、期間中の増便に複数路線の工事費用、職員たちのスト予告の結果、職員たちには臨時ボーナスを支給することにもなり、無料どころか倍となってしまいました。臨時ボーナスといえば、公立の病院の職員、警察官・憲兵、ゴミ収集業者なども臨時ボーナスを受け取るようです。

 ここで5月末に発表された、フランス世論研究所(IFOP)による18歳以上のフランス人1000人を対象としたアンケート結果を見てみましょう。これによると「無関心」が39%であり、このパーセンテージは貧困層だけに絞ると51%となります。また、フランス国民の3分の1近くが「心配」「怒り」といった否定的な答えを選んでいます。

 それでも半数は、フランスはオリンピックとパラリンピックをちゃんと開催するであろうと答えており、また、なんらかの形で観戦するとも答えているので、始まってみたらそれなりに盛り上がるのではないでしょうか。

 フランスのニュース専門局BFMTVのためにElabeが5月頭に発表した、18歳以上のフランス人1000人を対象としたアンケート結果でも、IFOPと似たような結果となっていますが、加えて、開催コストとチケットが高過ぎると答えた人が7割、開会式の安全性を疑問視する人が4割となっていました。

 このアンケート結果で笑ってしまったのは、セーヌ川は泳げないと考えている人が7割いること。開催側は巨額を投じてセーヌ川を浄化し、清潔さと安全性をアピールしていますが、私もセーヌ川ではまったく泳ぎたくありません! 夏の間に期間限定で作られるパリ・プラージュでも無料のプールができますが、ここで泳ぐ人はすごいと毎年感心しています。

「この夏の混雑を避けるために、セーヌ川で泳ごう」と書かれたスポーツ専門店の広告

 6月末から7月頭にかけて、国民議会選挙の結果を受けたデモの一部が暴徒化したばかりです。登録している在フランス日本大使館からは「2024オリンピック・パラリンピック安全リーフレット」の案内がメールで届き、注意を呼び掛けています。それでなくても軽犯罪は日常茶飯事なパリですから、いつも以上の注意が必要となるでしょう。

 私はパリに限らずオリンピック・パラリンピックにあまり興味がなく、移動や治安の面で不安があるので、オリンピック期間中はパリを出るつもりでいます。私のまわりではそういう人は多いです。何はともかく平和の祭典ということですし、大事が起こらず、無事に終わることを願っています。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/