荒木麻美のパリ生活
パリから1時間半、初秋のベルギー・ブリュッセルに週末プチトリップ
ロックダウン直前、コロナ禍で静まり返った町を歩く
2020年11月21日 07:00
10月半ば、夫が関わっている映画の撮影がベルギーのブリュッセルで行なわれていたため、私は週末の2日間だけですが、夫に会いにブリュッセルに行ってきました。
パリの北駅からは高速国際鉄道タリスで約1時間半なので、あっという間にブリュッセルに到着です。新型コロナウイルス感染症の影響は当然あるでしょう。週末にもかかわらず、乗車率は半分くらいでした。
ブリュッセルで滞在したのは映画スタッフが宿泊していたシュタイゲンベルガー・ウィルチャーズホテルです。滞在した部屋はどこも大きめの作りでのびのび。中庭に面したテラスもあったので、お天気がよければ外でお茶を飲むのも気持ちがよさそうですね。
新型コロナウイルス第2波に襲われている欧州ですが、私がブリュッセルを訪ねたとき、私の住むパリではマスク着用が義務化され、レストランやカフェの営業は21時まで、21時以降の外出は朝6時まで禁止されていました。
これがブリュッセルではもっと厳しく、飲食店はテイクアウトを除いてすべて営業停止だったため、食事はともかく困ったのがトイレ! なるべく水分を取らないようにしつつ、2日間ほぼ休みなく歩き回っていました。
ブリュッセル最大の観光名所はグラン=プラスです。フランスの詩人、ジャン・コクトーが「豊穣なる劇場」、文豪ヴィクトル・ユゴーが「世界で最も豪華な広場」と称賛したことでも有名です。ブリュッセル市庁舎、その正面に王の家(ブリュッセル市立博物館)があり、王の家には小便小僧の衣装コレクションも展示されているそうです。
グラン=プラスには、なでると幸せになれるという英雄の像「セルクラースの像」があるので行ったのですが、暗殺されたときの様子なのか、苦悶の顔がちょっと、いやかなり怖い! そーっとかつささーっとなでておきました。
グラン=プラスを出てアールヌーヴォー建築の美しいアーケードギャラリー・サンチュベールにあるお店を眺めながらサン・ミッシェル大聖堂へ。この大聖堂ではベルギー王室の結婚式や葬儀が行なわれるので、そのときの写真が入り口に飾られています。
サン・ミッシェル大聖堂から秋の気配の漂い始めたブリュッセル公園を抜けると、ブリュッセル王宮前に到着です。といっても公式行事に使用される場所なので、王宮周辺には人の気配がありません。
ブリュッセルといえば小便小僧。もちろん見てきましたが、噂にたがわない小ささ! 2回見に行ったのですが、2回目は着替え前だったのか裸でした。小便小僧の近くには小便小僧の人気にあやかって作られたという小便少女があるというので見に行きましたが、こちらは防犯のためか、しっかりと柵で覆われて見づらかったです。
今回、私がブリュッセルで一番行きたかったのがマグリット美術館です。2016年にパリのポンピドゥ・センターでルネ・マグリットの大規模な回顧展があり大変すばらしかったからです。新型コロナウイルス対策のために入場制限があったので、私はWebサイトで事前に予約をして行きましたが、予約なしで来ていた人は恐らく入れなかったのでしょう。入り口で警備員ともめる人の姿も。
マグリット美術館ではポンピドゥ・センターで見られなかった作品が多く、しかも入場制限のために信じられないほど人が少なかったので、ゆっくりと鑑賞することができて大満足でした。
ベルギーは漫画大国なのですが、ブリュッセル市内にも漫画のシーンが描かれた壁画があちらこちらに。タンタンもいました! タンタンシリーズはベルギーの漫画家エルジェの漫画です。ベルギーの漫画家のピエール・クリフォールの漫画「スマーフ」(仏語圏では「シュトロンフ」)のキャラクターグッズもよく売られていました。道にもベルギーの漫画家ロジェ・ルルーによる漫画の主人公の名前を発見。今回は閉館していたので行けませんでしたが、立派な漫画センターもあります。
中心部から少し離れ、欧州連合(EU)本部ビルも見てきました。最近だとブレグジット関連の交渉の場としてニュースによく出ている建物がここ。建物周辺にはベルリンの壁の一部もありました。平日ならビル内の見学もできるようです。
今回の滞在中、飲食店が全滅だったので、2日間黙々と歩いていたのですが、道で人々がよく食べていたのが、ポテトフライ(仏語でフリッツ)とワッフル(仏語でゴーフル)です。私はポテトフライを食べないので、ワッフルを2種類食べ比べました。
なぜ2種類かというと、ベルギーワッフルには「リエージュワッフル」と「ブリュッセルワッフル」というのがあるからですね。ベルギー第五の都市リエージュ発祥のリエージュワッフルは、丸型や楕円形で甘めの生地はもっちり、材料にパールシュガーが使われているため、シャリシャリとした食感も楽しめます。ブリュッセルワッフルは長方形で甘さ控えめで軽めの食感。トッピングが豊富です。
パリでもワッフルはよく売られていますが、まず食べません。でも飲食店がことごとく閉まっている中で食べた熱々のワッフルはどちらも絶品でした!
ギャルリー・サンチュベールもショコラトリーばかりでしたが、ブリュッセルはとにかくショコラトリーが多いです。あまたあるショコラトリーの中で私が買ったのは大好きなピエール・マルコリーニのブラックチョコシリーズ。日本を含め、世界中に支店があるのでパリでもときどき食べますが、やっぱり美味しい!
今回滞在したホテルは267室あるのですが、閑散とした雰囲気が漂っていました。ホテルの人に聞いてみると、新型コロナウイルスの影響で稼働率が20~25%くらいとなっているそうです。映画スタッフは50人くらいいたので、つまりこのとき滞在していた客は、ほぼ全員が映画スタッフということです。「春には完全に閉館していて、その後再開、夏はまぁまぁよかったんですけど、またダメですね。それでもうちはまだよくて、再度閉館しているホテルも多いですよ」とちょっと悲しそうでした。
ブリュッセルから戻ってすぐ、パリも10月30日から最低1か月のロックダウン(都市封鎖)に入っています。ベルギーも11月2日からロックダウンに入りました。このコラムを書いている現在、春よりは緩いと感じる外出制限ですが、基本的には必要最低限の外出しかしていません。12月頭に本当に外出制限が解除されるのかわかりませんが、また遠出をできる日を楽しみに、毎日を静かに過ごしています。