荒木麻美のパリ生活

パリから1時間半、初秋のベルギー・ブリュッセルに週末プチトリップ

ロックダウン直前、コロナ禍で静まり返った町を歩く

ベルギー・ブリュッセルを旅してきました

 10月半ば、夫が関わっている映画の撮影がベルギーのブリュッセルで行なわれていたため、私は週末の2日間だけですが、夫に会いにブリュッセルに行ってきました。

 パリの北駅からは高速国際鉄道タリスで約1時間半なので、あっという間にブリュッセルに到着です。新型コロナウイルス感染症の影響は当然あるでしょう。週末にもかかわらず、乗車率は半分くらいでした。

北駅はマスク着用義務である以外はほぼいつもどおり
高速鉄道タリス
車内は乗車率半分くらい。平日に乗った夫は貸し切り状態だったと言っていました
ブリュッセル南駅に到着です

 ブリュッセルで滞在したのは映画スタッフが宿泊していたシュタイゲンベルガー・ウィルチャーズホテルです。滞在した部屋はどこも大きめの作りでのびのび。中庭に面したテラスもあったので、お天気がよければ外でお茶を飲むのも気持ちがよさそうですね。

シュタイゲンベルガー・ウィルチャーズホテル
室内は新型コロナウイルス対策に気を配っている様子があちらこちらに

 新型コロナウイルス第2波に襲われている欧州ですが、私がブリュッセルを訪ねたとき、私の住むパリではマスク着用が義務化され、レストランやカフェの営業は21時まで、21時以降の外出は朝6時まで禁止されていました。

 これがブリュッセルではもっと厳しく、飲食店はテイクアウトを除いてすべて営業停止だったため、食事はともかく困ったのがトイレ! なるべく水分を取らないようにしつつ、2日間ほぼ休みなく歩き回っていました。

飲食店の多い道はほぼ無人
ベルギーといえばムール貝。ベルギー発祥のLeon de Bruxelles (レオン・ド・ブリュッセル)は美味しいムール貝を出すチェーン店(パリにも多くの支店があります)ですが、もちろん閉店中
ブティック街だけはそこそこ人が歩いています。「マスク着用は義務」という横断幕が
フランス語とフラマン語(ベルギーのオランダ語)でマスク着用義務と書かれた看板があちこちにあります

 ブリュッセル最大の観光名所はグラン=プラスです。フランスの詩人、ジャン・コクトーが「豊穣なる劇場」、文豪ヴィクトル・ユゴーが「世界で最も豪華な広場」と称賛したことでも有名です。ブリュッセル市庁舎、その正面に王の家(ブリュッセル市立博物館)があり、王の家には小便小僧の衣装コレクションも展示されているそうです。

ブリュッセル最大の観光名所、グラン=プラス
王の家(ブリュッセル市立博物館)
ブリュッセル市庁舎と中庭

 グラン=プラスには、なでると幸せになれるという英雄の像「セルクラースの像」があるので行ったのですが、暗殺されたときの様子なのか、苦悶の顔がちょっと、いやかなり怖い! そーっとかつささーっとなでておきました。

セルクラースの像

 グラン=プラスを出てアールヌーヴォー建築の美しいアーケードギャラリー・サンチュベールにあるお店を眺めながらサン・ミッシェル大聖堂へ。この大聖堂ではベルギー王室の結婚式や葬儀が行なわれるので、そのときの写真が入り口に飾られています。

ギャラリー・サンチュベール。ショコラトリーの多いこと!
ベルギーで有名なものの一つがレース。繊細で可憐ですね
サン・ミッシェル大聖堂

サン・ミッシェル大聖堂から秋の気配の漂い始めたブリュッセル公園を抜けると、ブリュッセル王宮前に到着です。といっても公式行事に使用される場所なので、王宮周辺には人の気配がありません。

ブリュッセル公園
王宮の屋根にベルギー国旗が掲揚されているときは、国王がベルギー国内にいらっしゃるという印だそう

 ブリュッセルといえば小便小僧。もちろん見てきましたが、噂にたがわない小ささ! 2回見に行ったのですが、2回目は着替え前だったのか裸でした。小便小僧の近くには小便小僧の人気にあやかって作られたという小便少女があるというので見に行きましたが、こちらは防犯のためか、しっかりと柵で覆われて見づらかったです。

小便小僧
小便少女

 今回、私がブリュッセルで一番行きたかったのがマグリット美術館です。2016年にパリのポンピドゥ・センターでルネ・マグリットの大規模な回顧展があり大変すばらしかったからです。新型コロナウイルス対策のために入場制限があったので、私はWebサイトで事前に予約をして行きましたが、予約なしで来ていた人は恐らく入れなかったのでしょう。入り口で警備員ともめる人の姿も。

 マグリット美術館ではポンピドゥ・センターで見られなかった作品が多く、しかも入場制限のために信じられないほど人が少なかったので、ゆっくりと鑑賞することができて大満足でした。

マグリット美術館
1971年に日本であった展示会のポスター
このときに知ったのですが、ベルギーの美術館は翌日からマグリット美術館も含めて全館閉館に。館内にテレビクルーがいるなぁと思ったら、そのニュースに関するインタビューを撮っているとのことでした
マグリット美術館前にあるかわいい楽器博物館の建物。こちらはすでに閉館中でした

 ベルギーは漫画大国なのですが、ブリュッセル市内にも漫画のシーンが描かれた壁画があちらこちらに。タンタンもいました! タンタンシリーズはベルギーの漫画家エルジェの漫画です。ベルギーの漫画家のピエール・クリフォールの漫画「スマーフ」(仏語圏では「シュトロンフ」)のキャラクターグッズもよく売られていました。道にもベルギーの漫画家ロジェ・ルルーによる漫画の主人公の名前を発見。今回は閉館していたので行けませんでしたが、立派な漫画センターもあります。

タンタンの壁画
「スマーフ」のキャラクターグッズ
ベルギーの漫画家ロジェ・ルルーによる漫画の主人公の名前を冠した道

 中心部から少し離れ、欧州連合(EU)本部ビルも見てきました。最近だとブレグジット関連の交渉の場としてニュースによく出ている建物がここ。建物周辺にはベルリンの壁の一部もありました。平日ならビル内の見学もできるようです。

欧州連合(EU)本部ビル
EU加盟国の言語で欧州議会と書かれています
ベルリンの壁の一部

 今回の滞在中、飲食店が全滅だったので、2日間黙々と歩いていたのですが、道で人々がよく食べていたのが、ポテトフライ(仏語でフリッツ)とワッフル(仏語でゴーフル)です。私はポテトフライを食べないので、ワッフルを2種類食べ比べました。

ポテトフライのお店はどこも人気

 なぜ2種類かというと、ベルギーワッフルには「リエージュワッフル」と「ブリュッセルワッフル」というのがあるからですね。ベルギー第五の都市リエージュ発祥のリエージュワッフルは、丸型や楕円形で甘めの生地はもっちり、材料にパールシュガーが使われているため、シャリシャリとした食感も楽しめます。ブリュッセルワッフルは長方形で甘さ控えめで軽めの食感。トッピングが豊富です。

ワッフルのお店がたくさんあります
こちらがリエージュワッフル。シンプルにチョコレートをかけて
これがブリュッセルワッフル。私はベルギーの伝統菓子であるスペキュロス(の粉末)をトッピング

 パリでもワッフルはよく売られていますが、まず食べません。でも飲食店がことごとく閉まっている中で食べた熱々のワッフルはどちらも絶品でした!

 ギャルリー・サンチュベールもショコラトリーばかりでしたが、ブリュッセルはとにかくショコラトリーが多いです。あまたあるショコラトリーの中で私が買ったのは大好きなピエール・マルコリーニのブラックチョコシリーズ。日本を含め、世界中に支店があるのでパリでもときどき食べますが、やっぱり美味しい!

ショコラトリーがいっぱい
ピエール・マルコリーニはワールド・ペストリー・スターズから2020年の世界最優秀パティシエ選ばれたばかり
あとから帰ってきた夫が買って来てくれたスイーツのセレクトショップ、エリザベスのチョコレート詰め合わせ。このチョコレートはフレデリック・ブロンデールのもの
「大麻ショップがたくさんある!」と思ったのですが、大麻すべてが合法ということではなくて、大麻の成分の一つであるCBDを扱っているお店でした。大麻の別の成分THCには向精神作用があるのですが、CBDは主にリラックス効果を期待できるそうです
美術品ではないアンティークを扱うブティックが並ぶ通り
町中には旧城壁らしきものもありました
週末の市場は開催

 今回滞在したホテルは267室あるのですが、閑散とした雰囲気が漂っていました。ホテルの人に聞いてみると、新型コロナウイルスの影響で稼働率が20~25%くらいとなっているそうです。映画スタッフは50人くらいいたので、つまりこのとき滞在していた客は、ほぼ全員が映画スタッフということです。「春には完全に閉館していて、その後再開、夏はまぁまぁよかったんですけど、またダメですね。それでもうちはまだよくて、再度閉館しているホテルも多いですよ」とちょっと悲しそうでした。

ロビーや朝食ルームはこんな感じで人気がなくちょっと寂しい
朝食はほぼすべて個別包装されています

 ブリュッセルから戻ってすぐ、パリも10月30日から最低1か月のロックダウン(都市封鎖)に入っています。ベルギーも11月2日からロックダウンに入りました。このコラムを書いている現在、春よりは緩いと感じる外出制限ですが、基本的には必要最低限の外出しかしていません。12月頭に本当に外出制限が解除されるのかわかりませんが、また遠出をできる日を楽しみに、毎日を静かに過ごしています。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/