荒木麻美のパリ生活
ブルターニュ地方の海辺の町サン=ブリューへ(後編)
周辺にあるムール貝養殖場やリネンで栄えた町を訪問
2020年10月17日 07:00
以前パリで開かれていた「貝殻祭り」に行きましたが(関連記事「『貝殻祭り』でブルターニュ地方のグルメを堪能」)、ブルターニュといえば貝です! せっかくなので、貝のなかでも私の大好きなムール貝の養殖場を訪ねるツアーに参加しました。所要時間は2時間で15ユーロです。
集合はイリオン(Hillion)にある、ムール貝の養殖業者が数軒集まるところでした。イリオンは、湾を挟んでサン=ブリューの向かいになります。ツアーはここの業者の一つが開催しており、会社の元社長が観光トラクターの運転手兼ガイドさんです。家族経営の会社だそうで、今は引退して息子さんが社長となっていますが、おじいさんと呼ぶにはまだまだ現役感いっぱいの元気な人でした。
ガイドさんによると、サン=ブリュー湾で一族がムール貝の養殖を始めたのは1964年のこと。その前はシャラント=マリティーム県にいたものの、病気でムール貝がほぼ全滅したのをきっかけにここに移ってきました。
この湾は大きな潮の満ち引きがあり、その干満差は約12.5mもあります。ムール貝の赤ちゃんは2月ごろに縄に移植され、3か月後に杭につなぎます。サン=ブリュー湾には現在90kmに渡って杭が並んでいます。杭の根元にプラスチックを付けているのは、ムール貝の天敵であるヤドカリから守るため。肉食性の巻貝の被害もありますが、こちらは最近減っているそうです。
収穫は18か月後、4cm以上になったものです。フランス国内では年間8万トンのムール貝が養殖されていますが、ここでは6000トンを担っているとか。
ガイドさんによるユーモアたっぷりのツアー後は、会社が経営する簡易レストランでお待ちかねのムール貝を! メニューはムール貝と自家製のポテトフライのみ。セットで8ユーロです。
サービスしていたのはガイドさんのお孫さんにあたるお嬢さん。学校が夏休みの間、友達とここでアルバイトをしているそう。「将来はここを継ぐの?」という私の問いに「ないです、ないです! ムール貝の養殖って夏休みもなくて大変な仕事なんです。お姉さんも今は別のところで働いています。私の下にはまだ弟がいるけれど、どうなるか分かりません」ということでした。でもまだまだ若いですから、これからまた考えを変えることもありますよね。
アパートでも食べようとさらにムール貝を1kg買いました。簡単な下処理はしてあったのですが、何度か水を変えて再度洗い、毛のような「足糸」が残っていたらそれを取ります。ムール貝は砂抜きをしなくてすむのでよいですね。その後、みじん切りにしたニンニクとタマネギをオリーブオイルで炒め、貝を入れたら白ワインをかけて数分蒸すだけ。とっても簡単! ハーブや生クリームを足したり、ゆで汁ごとパスタとあえたりしても美味しいです。
サン=ブリューから北に15kmくらいのところにあるビニック(Binic)は小さな漁港で、ここに美味しいレストランがあるというので行ってみました。肉料理も美味しそうでしたが、注文したのはやっぱり地元でとれた魚! 身がしまっていて大満足でした。
La Table de Jules
所在地: 4 Quai Surcouf, 22520 Binic
Webサイト: La Table de Jules(仏語)
食後は周辺を少し散策して、近くにあるサン=ケ=ポルトリユー(Saint-Quay-Portrieux)に移動です。
浜辺にはコンクリートで固めたプールもあります。この日は20℃行かないくらいの気温で、私は薄いダウンを着ていたのですが、泳いでいる人が結構いたのでびっくり。浜辺から始まる遊歩道は散歩にぴったりです。
観光案内所で勧められたカンタン(Quintin)にも行ってみました。サン=ブリューからは20kmくらい南西に下ります。小さな町なので、観光には3時間もあれば十分です。
19世紀末に工業化によって衰退するまで、手織りのリネンはカンタンの重要な産業でした。「機織り職人の家」ではかつてどうやってリネンを作っていたかを見せてくれます。
機織り職人の家(Maison du tisserand)
所在地: 1 Rue des Degrés, 22800 Quintin
入場料: 5ユーロ
Webサイト: Maison du tisserand(英語)
亜麻からどうやって繊維を作り、布に織り上げていくのかを、ステップごとに説明しながら実演してくれます。
質のよいリネンはきちんと扱えば一生ものと言っても過言ではなく、嫁入り道具の1つであった時代もありました。手織りのリネンのすべすべとした肌触りはなんともいえないものがありますよね。フランス産の高品質なリネンは高価なのですが、私もいつかリネンのシーツが欲しいなぁと思いながら機織り職人の家をあとにしました。
機織り職人の家を出て、カンタン城を見学します。城内には城の所有者である一家が住んでおり、一般に解放しているのは庭と城の1階部分。庭以外は一定数が集まったところでガイドさんと一緒に見学します。ガイドさんは所有者一家の1人でした。
Château de Quintin
入場料: 6ユーロ
Webサイト: Château de Quintin(英語)
最後に城の後ろにあるカンタンのノートル=ダム・ド・デリヴランス大聖堂(Basilique Notre-Dame de Délivrance de Quintin)へ。この大聖堂は1887年にネオゴシック様式で再建されたもので、町のシンボルとなっています。
3週間はあっという間に過ぎ、パリに帰る前にお土産を買いに行ったお店は3軒です。1軒目はJohann DUBOISというショコラトリー。モダンな店内ではマリニエール(ブルターニュ地方のマリンシャツ)をかたどったチョコレートなども売っています。
Johann DUBOIS
所在地: 9 Rue du Général Leclerc, 22000 Saint-Brieuc
Webサイト: Johann DUBOIS(仏語)
もう1軒はMaison Georges Larnicol。ブルターニュ地方発祥のパティスリーですが、パリにも支店があります。
Maison Georges Larnicol
所在地: 6 Rue Jouallan, 22000 Saint-Brieuc
Webサイト: Maison Georges Larnicol(仏語)
最後はBrieucという、主にビスケットを販売しているお店です。工場が近くにあり、ここは直売所となります。
Brieuc
所在地: 8 Rue Saint-Guillaume, 22000 Saint-Brieuc
Webサイト: Brieuc(英語)
一口にブルターニュ地方といっても広いのですが、これでまた知らないブルターニュ地方のエリアを発見そして満喫した3週間でした。ブルターニュの特に北部は雨が多くて有名なのですが、私が滞在中終日雨ということはなく、晴れ、雨、曇り、強風、と一日の間に天気がコロコロと変わることが多かったです。もしブルターニュに行くことがあれば、傘と重ね着できる服を携帯して、天気予報をあまり気にせずに過ごすとよいと思います!