旅レポ

ボルネオ島コタキナバルの旅、最終日。民族村や注目のつり橋、川下りでサンセット&ホタル観賞と盛りだくさんでマレーシアのよさを知る

ボルネオ島に住む先住民族の暮らしや文化を展示したマリマリ文化村はコタキナバル市内からも近く、各国から訪れる観光客に大人気

 コタキナバルを視察するプレスツアーの最終日は、サバ州の先住民の文化を学べるマリマリ文化村、撮影スポットとして人気が出始めたタンパルリ村のつり橋、サンセットやホタル観賞を楽しめるテンバラ川のリバークルーズを体験してきたので、その模様をお伝えする。それぞれ市内からクルマで30分~1時間ほどで到着可能な観光スポットだ。

ジャングルでサバ州に住む代表的な先住民族の文化を知る

 サバ州には古来から住んでいる先住民がおり、その民族数は30を超える。そのなかでも代表的な5つの先住民族の伝統的な生活様式を再現しているのがマリマリ文化村だ。コタキナバル市内からクルマで30分ほど山の方に向かった奥深いジャングルのなかにある。

 クルマから外に出ると、カメラのレンズが曇るほどの湿気はさすがに雨季といったところ。それでも曇り空で日差しも弱く、しかも木々に覆われていることから、暑さはそれほど気にならなかった。しかし、蚊は襲ってくるので虫よけスプレーは必携といったところだ。

 それと雨季は雨が時折降るので、濡れるのが気になる人はレインコートなどもあるとよいかもしれない。見学者は10~20人くらいのグループに分けられ、それぞれにガイドが付いて英語で案内してくれる。

ジャングルのなかにあるマリマリ文化村
マリマリ文化村の展示エリアを示したマップ
一行を含めたグループを案内してくれたのはドゥスン族のガイドさん
小川にかかるつり橋を渡って入場
植生が豊かと言うか、まさにジャングル!

 この日は展示住居に入るまで待ちが出るなど、かなりの盛況で賑わいを見せていた。最初に案内されたのは床上式の長屋を住居にしているルングス族で、サバ州の先住民族のなかでは4番目に多いそうだ。外ではハチミツの試食、住居のなかでは竹を使った火起こしを実演していた。

 先住民族のなかでもっとも多いのはドゥスン族で、稲作などの農業を生業としており、伝統的に飲まれていたライスワインの製造工程と試飲をさせてくれた。狩りや釣りで生計を立てていたルンダイ族は木の皮を加工し、衣装などに仕立てている様子を見せてくれた。バジャウ族は2番目に大きいグループで、海岸沿いに住み、漁業と農業を営んでいたそうで、住居のなかがとてもカラフルに彩られていたのが印象的だった。

 そして、興味を引かれるというか現代でよかったと思ったのがムルッ族で、最後まで首狩りをしていた民族だ。戦いが始まれば性別関係なくヘッドハンティングの対象とし(子供は除く)、戦果として敵の首級を持ち帰っていたそうだ。さらに結婚する際も勇敢さを認めてもらうために首が必要だったそうで、聞くだけでも身震いする慣習があったと説明してくれた。

 そういった民族の特徴からか、同施設でも住居の周囲などでは奇声で驚かされ、なかでは村長の入村の許可(雨が降っていたからか、いつもは外らしい)が必要。許可をもらうとフレンドリーになり、室内にあるグァバの木で作られた木製トランポリンを使ったハイジャンプのデモンストレーションを見せてくれた。これは誰が優れているのか競うもので、村長選びにも活用されたそうだ。

ルングス族の長屋
竹を使った道具で火種を起こし、同じく竹をほぐした素材に火を付けている様子
オシャレなバジャウ族の住居
寝床までカラフル!
ムルッ族は村長に許可をもらうまでは男性にも女性にも威嚇される

 村のなかでは随所に当時の食生活を再現した試食コーナーがあり、養蜂で採取したハチミツ、お米を使ったライスワイン、タマネギやジャガイモを刻んで竹筒に入れて焼いた料理、米粉とココナッツで作ったお菓子など、昔ながらの素朴な味も楽しめた。

ハチミツはマドラースプーンに少量のせて渡してくれる。甘味はあるが酸味のまじったスッキリ系
ライスワインの材料を展示。外には蒸留工程も展示している
タマネギ、ジャガイモ、トウガラシをみじん切りにして竹筒で加熱したもの。サッパリしていて美味しい
米粉、ココナッツ、砂糖を混ぜて、糸状に揚げたサクサク食感の甘いお菓子

 村の見学が終わるとステージに移動し、民族舞踊を鑑賞した。それぞれの民族衣装をまとって音楽に合わせて踊り、最後はリズムに合わせて長い竹を打ち付けるなかで踊るバンブーダンスで妙技を披露。駆け足だったがいろいろと盛りだくさんの内容だった。

民族衣装をまとった演者が音楽に合わせて伝統舞踊やバンブーダンスを披露。最後は観客もステージに上がってバンブーダンスを体験できる。また、お気に入りの演者と記念撮影できる時間もあった

最近人気上昇中のタンパルリ村のつり橋

 次に訪れたのはマリマリ文化村より北にあるタンパルリ村だ。キウル川沿いにあるコンパクトな村だが、こちらにあるつり橋が最近は人気を呼んでいる(Jalan Bontoi, Tamparuli, 89250 Tamparuli, Sabah)。

 というのも主塔部分に鮮やかな装飾が施されており、景色とともに写真映えするというのが理由としてある。そして、2つの物語もつり橋を有名にしている。

 昔、氾濫を繰り返して橋がすぐに壊れてしまうのは精霊が怒っているせいだとして、美しい少女が人身御供になってその後の橋の倒壊を防いだという話と、身重の女性を助けるために英国人兵士2名が犠牲になってしまったという話だ。それらはつり橋の下にアートウォールとしても描かれている。ちなみにこちらの通行料は無料で、しかも入口ではボランティアのお姉さんが民族衣装で伝統的な楽曲の演奏も披露してくれる。

装飾が鮮やかなつり橋。青空が出ていれば絵になる
民族衣装を身に着けたボランティアが演奏を披露
足元には演奏中も微動だにしないワンコが(笑)
つり橋の長さは100mほど。かなりしっかり作られているので苦手な人でも渡れそう
ジャングルのなかを流れるキウル川。上流ではリバーラフティングも楽しめる
降雨時には流量が大きく変化するからか、脇には自動車が通れる欄干のない沈下橋が整備されている
つり橋にまつわる物語を描いたウォールアート

ローカルフードのタンパルリ麺もオススメ

 昼時というのもあったので、ランチはタンパルリ村の中華料理店「Restoran Wun Chiap」(雲集酒家)でいただいた。地元でも人気があるようで、10卓ほどあるテーブルは満席だった。こちらの名物はタンパルリ麺と呼ばれる焼きそばだ。もう少し北にあるトゥアランという町が発祥のトゥアランミーと麺は同じで、具材に違いがあるようだ。

 お皿に盛られて出てきたタンパルリ麺は、卵が入っている縮れ麺に、卵焼きやチャーシューのスライスが混ぜてあった。ほどよい塩加減で味付けされており、モチモチの食感と合わせて自分好みであったことから、あっという間に平らげてしまった。ローカルフード侮りがたし。

モチモチ食感のタンパルリ麺。具材や味付けはシンプルながらも絶妙で美味しかった
ほとんどのメニューが10リンギット以下というコスパのよさ!
マレーシアの食堂あるあるで、提供された食器は熱湯の入ったボウルで消毒する

テンバラ川のリバークルーズでテングザルを探す

 ランチ後に向かったのはテンバラ川のリバークルーズ(89150 Tuaran, Sabah)で、南シナ海に沈むサンセットを鑑賞し、その後は川沿いに生息しているホタルを観察できるアクティビティだ。

 船は河口に近い川幅の広い地点から出発し、マングローブ林を見ながら海に向かう。道中では、昔から漁業を生業としている人たちが住んでいる水上村を遠目に見たり、実際に漁をしている漁師さんに船上から話しかけたりと、熱帯雨林の大自然とそこに住む人々の様子を知ることができる。

ヤシの葉を屋根に葺いた情緒ある船でリバークルーズを楽しむ
古くから人が住んでいる水上集落。昔は垂れ流しトイレだったが、現在は水洗でエアコンも完備しているそうだ
漁をしている様子。日本から来たと伝えると、こちらで有名な日本人セクシー女優の名前を連呼していた(笑)

 一帯には3種類のマングローブがあり、それぞれが種となる実の大きさが違ったり、咲く花がまったく異なるなど、興味深い話もいろいろと聞くことができた。そして、独特な顔立ちが特徴のテングザルも生息しているということで、船頭さん含めて全員が樹上を血眼になって探してはみたが、残念ながらこの日は会うことはできなかった。

河口に近づくとマングローブの林が広がる。残念ながらテングザルには会えなかった
とても大きなマングローブの種子が成長した散布体。これが落ちて地面に突き刺さり、芽や根が出て増えていくそうだ
こちらは小さな種子を持つマングローブ。可憐な赤い花がカワイイ

 ゆっくりと河口に移動し、南シナ海に沈むサンセットを堪能したあとは日が暮れるのを待ってから、ホタルが生息しているスポットに移動。暗くなって間もないからか、まだホタルの動きは活発ではないが、スタッフが緑色っぽい光を放つライトを木々に照らすと、つられてポワポワと光り出すホタルたち。

 日本のホタルと違うのは、明滅の速度が早いことだ。1秒ほどの間隔で光る姿はにぎやかで、その様相はこちらでは“クリスマスツリー”とも呼ばれている。時期も特に関係なく一年中見ることができるが、気を付けたいのは蚊の襲撃。虫よけスプレーや羽織るものなどで対策をしていないと、あっという間に取り囲まれてうれしくない歓迎を受けることになる。

先端の砂浜に上陸させてもらえたので、そこからサンセットを鑑賞
汽水域と海との境目がよく分かっておもしろい
着陸直前の上空からも見えていたテンバラ川の河口付近
かなり暗くなっていたのに鮮やかな手つきで船頭さんがカニを捕獲
数分後には真っ暗になってホタルを観賞した。三脚は立てられないので超高感度カメラがあれば撮れるかも

コタキナバル市内でスープバクテーとドライバクテーを味わう

 最後にこの日の夕食にいただいたバクテーを紹介しよう。バクテー(肉骨茶)はマレーシアの古都であるクラン発祥の肉料理。イギリスの植民地時代に中国から渡ってきた港湾労働者のために、安く手に入る骨付き豚肉や内臓肉を漢方で使われる生薬をスープに加えて煮込んだものを提供したのが始まりと言われている。

 今回訪れたのはコタキナバル市内に2020年8月にオープンした「Kee Hiong Kota Kinabalu」(奇香肉骨茶)で、他店ではあまりお目にかかれない、煮詰めたようなドライバクテーもあるお店だ。筆者はバクテーを初めて食べたのだが、スープの方は意外にもそれほどクセもなく、生薬とスパイスの配合が絶妙なのかお肉もスープもなかなかの美味。ご飯と一緒に出された揚げパンをスープに浸して食べるといい感じだった。店や地域によっては、もっとコショウが効いたパンチのあるテイストもあるそうだ。

 もう一方のドライバクテーは、ピリ辛仕立てのお醤油を感じられるテイスト。見た目よりは味もそれほど濃くなく、ご飯と一緒に食べると幸福感で満たされた。どちらかというとこちらが好みで、日本でも食べられないか、帰国してからいろいろと検索してしまった。マレーシアフード、クセになりそうでおそるべし。

ドライバクテーはピリ辛で、とても好みのテイストでした。このように鉄鍋でアツアツをいただく
こちらはスタンダードなスープタイプ。こちらもグラグラと煮立った状態で提供される
シャキシャキ食感のレタス炒めも美味。スープに浸して食べる揚げパンもよかった
調理方法を指定し、豚肉の部位をチョイスして注文する
豚の尻尾やエノキタケ、ミートボールなどサイドメニューもいろいろある

短時間だがコタキナバルを楽しめた3日間

 帰りはコタキナバルを0時50分に出発するマレーシア航空のMH80便で、成田に7時20分に到着するスケジュール。深夜便なので、帰国最終日も夜まで存分に観光を楽しめるのがメリットだ。機内では離陸して約1時間後に食事が提供されるので、5時間30分のフライトのうちその日の状況によるが4時間程度は眠ることが可能だ(筆者は2時間ほど眠ることができた)。体力に自信があれば、そのまま仕事に出向けるかもしれない。

 マレーシアは今回初めての訪問だったが、自然が多く、東南アジアのなかでも特に文化が上手に融合した国であると感じた。街中ではムスリムの人も多く見かけるし、モスクもある。その一方で、中華系のお店ではお酒が飲めるし、イギリス統治の名残で車線は左側通行であるなど、日本人にとっても過ごしやすい国であることは間違いない。

 そして何と言っても、お財布に優しいのは特筆できる点だ。ホテルを検索しても高級ホテルが驚くような料金だし、街中の食堂もとてもリーズナブル。ジャングルの街と勝手に想像していたコタキナバル市内は都会で便利で過ごしやすかったので、気軽にブラブラと市内観光も楽しめそうだ。機会があればキナバル山周辺も訪れてみたい。

あっという間の3日間。名残惜しさを感じつつ、コタキナバル空港で復路のチェックイン
野村シンヤ

IT系出版社で雑誌や書籍編集に携わった後、現在はフリーのライター・エディターとして活動中。PCやスマートフォン、デジタルカメラを中心に雑誌やWeb媒体での執筆や編集を行なっている。気ままにバイク旅をしたいなと思う今日この頃。