旅レポ

自然や歴史が残るやんばるの村。今帰仁村の魅力に出会う旅

 沖縄本島北部、本部半島に位置する今帰仁村(なきじんそん)。美ら海水族館で知られる本部町と、北部の中心街である名護市に隣接する人口約9000人の村だ。

 自然が多く残りのんびりとした時間が流れ、どこか懐かしさを感じる。そんな今帰仁村を巡るプレスツアーに参加する機会を得て、その魅力を体感してきた(今帰仁城跡の桜まつりを訪れた前回はこちら)。

きれいなビーチも多く点在する今帰仁村

今帰仁城と今泊集落の歴史散歩

 琉球王国の誕生前の14世紀ごろ、琉球が南山・中山・北山の三大勢力が争っていた時代の北山王の居城となっていた今帰仁城。今帰仁村のシンボル的存在だ。

 1416年(1422年の説もある)に中山により滅ぼされ琉球王国が統一されたあとは、都が置かれていた首里から監守が派遣され、その居城となっていたが、1609年の薩摩侵攻により完全に廃城となった。

 正殿などの建築物は残っておらず石垣が残るのみだが、曲線を描く石垣は荘厳でかつての繁栄を感じることができる。城郭内では現在でも発掘や修復が行なわれている。

 ツアー日程中はちょうど今帰仁村の桜まつりが開催されていて、ライトアップした様子を見ることができた。

 後日、日中の城跡をガイドさんの案内付きで見学。歴史はもちろんちょっとしたプチ情報なども交えながら案内してくれたので興味が深まった。ガイドさんは入場券購入時に無料でお願いできるが、出払っている場合もあるので、時間指定ができる有料予約ガイドを利用すると確実。

 城跡のあとは、発掘されて遺跡や地域の生活などを展示・紹介している歴史文化センターを見学。北山王が用いていたという国宝の「金装宝剣拵(千代金丸)」のレプリカも展示されている。

今帰仁城跡の城郭をバックに説明するガイドさん
城跡の上方の郭跡より下方を望む。雨天のため写真がぼやけているのはご容赦を
国宝「金装宝剣拵(千代金丸)」のレプリカ。ちなみに本物は、那覇市歴史博物館に所蔵されている

 今帰仁城跡から海方面にくだっていくと今泊集落がある。

 フクギ屋敷林が美しい景観を作り、小さな集落ながら遺跡や拝所が多く存在する。

 こちらも今帰仁村跡のガイドさんに案内してもらえる。入ってよい場所、入ってはいけない場所もアドバイスしてもらえるので安心だ。

今泊集落のフクギ屋敷林
琉球王国統一後の監守時代の監守のお墓
昔ながらの家屋も多く残る

今帰仁城跡

開場時間: 8時~18時(5月~8月8時~19時)、年中無休
観覧料: 大人400円、小中高生300円、小学生未満無料(今帰仁城跡、歴史文化センター共通券)※4月1日から大人600円、小中高生450円に改定
所在地: 沖縄県国頭郡今帰仁村今泊5101
Webサイト: 有料予約ガイド

人気急上昇の古宇利島

 今帰仁村に属する離島、古宇利島。2005年の古宇利大橋開通、2010年のワルミ大橋開通により本島からクルマで直接渡れるようになった。近年、島内にはカフェやホテルが続々オープンし、写真映えするビューポイントが旅番組やテレビCMで知られるようになったことも相まって人気が急上昇している。

 本島からは、今帰仁村字天底からワルミ大橋を渡って名護市に属する屋我地島に入り、そこを経由して古宇利大橋を渡って古宇利島に入る。島までまっすぐ伸びる古宇利大橋は全長1960mあり、ドライブにお勧め。ここから見える海は絶景だ。

 古宇利島でもっともホットなビューポイントは、ハート形をした岩、通称ハートロックだ。恋人たちの聖地にもなっている。実際に古宇利島にはアダムとイブに似た人類発祥伝説があり、「神の島」「恋島(クイジマ)」と呼ばれている。

屋我地島からまっすぐ伸びる古宇利大橋。写真奥が古宇利島
ハート形をした「ハートロック」。写真映えスポットとして有名

 古宇利島に入ってすぐ、地元や近隣の産品を販売している「古宇利島ふれあい広場」がある。めずらしい南国の果物、紅芋を使ったお菓子などが並び試食もさせてくれる。沖縄料理が味わえる飲食店もある。

地元産の農産物や加工品などいろいろ揃う、ふれあい広場
パイナップルをはじめ、南国フルーツが揃う。県外発送も可能

 ランチタイムは、地産地消にこだわったイタリアンベースの料理が人気のカフェレストラン「L LOTA」へ。

 野菜は今帰仁村ほかやんばる(沖縄本島北部)の無農薬や自然栽培のものを使い、やんばる若鶏、アグー豚など肉にもこだわる。

 コロナ禍のため始めたテイクアウトも好評で、定番のランチボックスのほか、オードブルのオーダーも受けている。

 屋上席も準備中で、今後は店内イベントなども充実させていきたいとのこと。

L LOTAの外観。平屋で、屋上席も準備中
ガラス張りの店内からは、古宇利大橋と海を一望。テラス席もある
今日のランチパスタは、やんばる若鶏とカブ・キャベツのクリームパスタ(ミニサラダ・バケット付き)

透明カヤックで、サンゴ礁を堪能

 海のアクティビティは、クリアカヤックを体験。透明なカヤックで海のなかの生物たちをグラスボートのごとく観察できるのだ。

 ガイドさんからパドルの使い方のレクチャーを受け、2人乗りのカヤックに乗り込む。2人でパドルの動きを合わせて漕いでいく。観察ポイントをガイドさんが教えてくれ、きれいな魚や大きなサンゴなどをボート越しに見ることができた。

 この日は時折雨の降る曇天だったが、波がおだやかでカヤック体験にはとても適したコンディションだったとのこと。ウエットスーツも貸してもらえたので寒さも問題なかった。

クリアカヤックほかいろいろなマリンアクティビティを提供するNice Time Okinawa。ビーチまでは徒歩3分、宿泊施設もある
ガイドのマツさんからパドルの使い方のレクチャーを受ける
カヤック体験中にマツさんが撮影した水中の様子。サンゴや鮮やかな魚がすぐそこに

琉装、三線、うちなー料理を堪能

 海を離れ、次は琉装と三線の体験。今回お世話になったのは「美ら産プランニング」が提供するメニュー。

 琉装体験では、色とりどりの紅型のなかから好きな1着を選び着せてもらう。上下に分かれているツーピースタイプで、着付けはとても簡単。髪飾りもつけてもらい、海辺で写真撮影。

着付け部屋には色とりどりの紅型衣装が並ぶ
海辺での撮影。小道具として花笠を持たせてくれた

 続いて併設のカフェ「Chura Cafe」に移動して三線体験。

 構え方や三線独特の楽譜「工工四(くんくんしー)」の読み方を教わり、すぐに実演に。こんなにすぐに?と驚いたが、誰でも知っている「きらきら星」は三線で簡単に弾ける曲とのことで、参加者みんながそこそこにマスターできた。

着付けの先生は三線の先生もこなす

 夕食はそのままChura Cafeにて、お母さん手作りの沖縄料理。

 前菜からお刺身、チャンプルー、てんぷら、てびち(豚足)の煮つけ、黒米のごはんに中身汁など沖縄の家庭料理がふるまわれた。食事をしながらお父さんと娘さん(琉装・三線体験の先生)による歌のおもてなし、最後にはみんなでカチャーシーを踊った。

 お父さんやお母さんとのゆんたく(おしゃべり)も楽しく、お酒もすすむ。

 デザートに出たのが、お母さん自慢のサーターアンダギー。なんとなかがミントのような青色をしている。素材は紅芋とのこと。とても不思議だ。甘さ控えめでお酒にも合い、味変としてバニラアイスを乗せて食べるのも新鮮だった。

手作りの沖縄料理に舌鼓
お父さんと娘さん(先生)の歌で雰囲気もいっそう盛り上がる
紅芋を使ったサーターアンダギーは、なぜかミント色をしている。不思議!

 楽しい時間はあっという間に過ぎた。今回いただいた沖縄の家庭料理コースは要予約。なお美ら産プランニングでは、民泊施設「ゲストハウス吉(Kichi)」も運営している。

Chura Cafe外観。店舗の隣にあるコンテナでは琉装関係の一切を行なっている

人にも町にもやさしいグルメポイント

 手作りケーキが地元客に人気の「Cafe Kanasa」には、季節のフルーツを使ったケーキや、たんかん、黒糖といった地元の食材を使った焼き菓子、またシークヮーサーのジュースなどが揃う。

 今帰仁村にはケーキ店がほとんどなかったが、2019年のカフェ・カナサのオープンは地元の子育て世代のお母さんを中心に喜ばれ、口コミで広まった。最近は誕生日など記念日のケーキのオーダーも入るようになったという。

古民家を改装したかわいらしい店舗
フルーツをふんだんに使ったタルトやショコラケーキなどが揃う
この時期(冬)には熟したシークヮーサー「黄金(くがに)」のジュースが味わえる。夏には青摘みシークヮーサージュースを

 料理人歴は長いが、初めて自分の店を持つときに「まだまだ未熟」という意味を込めて「味熟者」と名付けたというビストロ・カフェ。といいながらもオープン8年目。すっかり地元客や観光客に愛される店になった。

 昼は日替わりランチプレートのほか、グリーンカレーやパスタをラインアップ。県産の素材にこだわり、特に野菜はやんばる産のものを使用している。「今帰仁は食材が豊富」とオーナーシェフの島さん。地元農家さんとのつながりも深い。

 夜はコース料理を提供。前日までの予約が必要だ。

「味熟者」の店内。落ち着いた雰囲気で、個室やテラス席もある
本日のランチプレートは、ミラノ風カツレツのミラネーゼ、サーモンのカダイフ焼き、チキントマト煮込み、野菜の盛り合わせ。スープ、デザート、ドリンク付き
オリジナルのグリーンカレーも人気の一品。隠し味に大根を使っているのだとか

 天然酵母を使ったパンが老若男女に人気の「ノワノワ」。パン工房として開店7年半、昨年5月にはカフェもオープンした。

 カフェではサンドイッチやスープセットなどが味わえる。

 同店の大きな特徴は、地域への取り組みとして子供チケットを実施していること。500円を寄付することにより、地元の子供たちが500円の食事ができる取り組み。子供たちからはお礼のメッセージが寄せられ、寄付者と子供たちのつながりが生まれている。

 また近所の診療所のお医者さんが栽培している無農薬の野菜を使っているのも特徴の1つ。体にも人にもやさしいショップだ。

Cafe ノワノワの店頭。女性客はもちろん男性客のファンも多い
断面が鮮やかなサンドイッチ。スープは4種類から選べる
小ぶりなパンは、一度に何種類も食べられてうれしい
子供チケットの掲示板。500円寄付で子供たちに食事をプレゼント。子供たちからのお礼のメッセージも貼られている

今帰仁村特産品

 今帰仁村唯一の酒造所が今帰仁酒造だ。主力銘柄「美しき古里」や長期熟成古酒「千年の響」などの泡盛のほか、女性に人気のヨーグルト酒、近年注目の紅芋を使った酒「今帰仁IMUGE」などを製造・販売している。

 酒造見学もできるが、新型コロナの感染状況により変更もあるので要確認。

1948年創業の今帰仁酒造
本社の直売所には主力銘柄の泡盛のほか、関連商品、新商品が並ぶ

 また、沖縄の人なら「今帰仁といったらスイカ」と誰でも知っているほどのスイカの名産地。ハウス栽培がメインで、三期作~四期作を行なって1年中出荷している。

 スイカといえば夏のイメージだが、冬のスイカは味がシャキシャキし、しかも糖度が高く美味しいという。

スイカのビニールハウス
2月でもこんなに立派なスイカが生育している

 今帰仁村の特産品が一堂に揃うのが「今帰仁の駅そ~れ」。

 地元の農家さんが持ち寄る野菜や果物、花卉などのほか、お菓子などの加工品、手芸品など生活必需品から土産物までさまざまなものを販売している。

 調理場も備えており、手作り弁当も販売。レストランも併設している。

今帰仁の駅そ~れ。スイカデザインの屋根がかわいい
農産物をはじめ、お菓子など加工食品や植物由来の化粧品、民芸品まで多くの商品が揃う。野菜はとても安い!

 今回のツアーはクルマでの移動だったが、那覇からは急行バスも出ており運転免許のない人やバスの旅が好きな人にもオススメだ。

 リゾートとは一味違った、沖縄の原風景も残る今帰仁村の旅をぜひ一度体験してほしい。

大城和歌子

横浜生まれのウチナーンチュ二世。東京での出版社勤務を経て1998年11月に沖縄移住、フリーのライターとなり「和歌之介」のペンネームで活動。主に音楽系記事を得意とし、沖縄インディーズの隆盛を間近で体感した。自らも音楽活動をゆる~く展開。現在、那覇市内でレコードバー「リンドウ」を営んでいる。