旅レポ

フィンランド・ヘルシンキ~エストニア・タリンを2時間で結ぶ大型客船「Megastar」の旅

優雅に過ごしてお土産もお得に購入できる、安価な贅沢路線

TALLINK Shuttleの新造船「Megastar」のビジネスラウンジを利用してエストニアに向かった

 フィンランドの首都ヘルシンキは、ヨーロッパ圏を旅行する際の乗り継ぎ拠点としてもよく知られている。一方で、エストニアと聞いて具体的なイメージを思い浮かべられる人はそれほど多くないかもしれない。

 エストニアはフィンランドの南方、フィンランド湾を隔てたところに位置し、東はロシア、南はラトビアと隣り合っている小国。エストニア、ラトビア、さらに南にあるリトアニアを合わせてバルト三国とも呼ばれている。日本の九州の面積より少し広い約4万5000km2の国土に、沖縄県の総人口に近い132万人(2017年1月時点。外務省ホームページより)が居住するという。首都はタリン。日本からの直行便はないため、ルートとしてはヘルシンキなどで飛行機を乗り継ぎ、タリン空港で降りるのが最も早い。けれど、もう1つ、フィンランド湾を渡るヘルシンキ〜タリン間の定期航路を利用する方法もある。少し時間はかかってしまうものの、贅沢な大型客船の旅を比較的安価に楽しめるのが魅力だ。

 今回、エストニア政府観光局が主催、フィンエアーが機材協力を行なったプレスツアーに参加して、エストニアを旅してきた。その第一歩は、ヘルシンキ〜タリンの定期航路を結ぶTALLINK Shuttleの新造船「Megastar」のビジネスラウンジから始まった。

片道100ユーロ前後で食事付きの優雅な船旅

 ヘルシンキからタリン行きの定期航路便に乗船するには、空港から列車やバスでいったんヘルシンキ市街へ入り、そこで乗り換えてヘルシンキ西港に向かう。空港からヘルシンキ西港まではだいたい1時間前後。朝日本を発てば、16時30分発のTALLINK Shuttleに乗って、だいたい19時ごろにはタリンに到着できることになる。ツアーなら貸切バスで30〜40分というところ。

タリン行きの定期航路が就航しているヘルシンキ西港のターミナル
ターミナルの前。市街地につながるトラムが見える

 ヘルシンキ〜タリン間は毎日6便運航しており、片道をおよそ2時間程度で結ぶ。TALLINK Shuttleの運航会社であるTALLINK SILJA LINE(タリンク&シリヤライン)は、ほかにも同じ区間を一晩かけて渡るオーバーナイトクルーズのプランや、スウェーデンやラトビアと結ぶ航路があり、いずれも大型の客船を運航している。

ターミナルの中
チケットの購入窓口
券売機もあるが、片道35ユーロ~とインターネット予約より1ユーロ高いようだ
チケット。カードの裏にQRコードと船内で使えるWi-FiのID、パスワードが記載されている
ターミナルのゲートでQRコードをかざすことで入場、乗船できる
入場ゲートを通過して2階に進むと、圧倒的開放感のある展望ラウンジ

 ヘルシンキ〜タリン間の定期航路は以前からあるが、現在この航路で利用されているTALLINK Shuttleの客船は2種類あり、どちらも比較的新しい。古い「Star」でも2007年に建造されており、今回乗船した「Megastar」は2017年に新造されたばかり。全長212.2m、全幅30.6m、収容可能な乗客数は2800人、総トン数4万9000という大型客船で、巡航速度は27ノットとなっている。

テラスは停泊している船を眺められるオーシャンビュー
出港1時間ほど前にタリンからやってきたMegastarが入港
出港準備が整い、ゲートオープン。大勢の乗客が乗船ゲートに殺到した
近づくと船の大きさをより実感できる

 船内には、滞在可能なエリアだけでも4フロアあり、ビジネスラウンジをはじめとする複数のラウンジとレストラン、特急列車のような客室座席、2フロアにまたがるショッピングエリア、エンタテイメント施設などを備える。これら設備の充実度をアピールする一方で、液化天然ガスを燃料に用いた動力により、二酸化炭素の排出を低減するなど環境負荷を考慮した設計になっているのも特徴だ。

船内は7つの階層に分かれている。このうち4階層分が滞在可能エリア
乗船してすぐのところにあるビジネスラウンジの入口
ラウンジ内部
空港の航空会社のラウンジのような雰囲気
ビジネスラウンジは船首側にあるため、窓ガラス越しに進行方向を眺められる。出港時の最初こそエンジン音が聞こえたが、巡航速度に達するとまったく聞こえなくなった。揺れもほとんどない
食事、軽食、ドリンクなどが用意されたビュッフェコーナー
種類豊富なアルコール類も飲み放題
ビールやソフトドリンクも
ビールサーバーから自分で好きなように注ぐ
魚介、肉、サラダなど。温かい料理ももちろんある
スナック、デザートも多彩
飲料の販売コーナーもある
葉巻も購入可能

 料金は、インターネット予約なら、通常の乗船チケット「STAR CLASS」が片道35ユーロ~(時間帯や混雑状況によって値段に幅がある)。ビジネスラウンジ利用はそれにプラスして1人65ユーロ。つまり合計100ユーロほどで、食事付きの静かなビジネスラウンジに入り、タリンまでの優雅なひとときを過ごせるわけだ。もちろん船内を散策してショッピングを楽しんだり、レストランやデッキで過ごしたりするのもいいが、広いだけに、片道の2時間で全て見て回ろうとすると慌ただしくなってしまうだろう。

1人片道20ユーロ~のコンフォートラウンジ
コンフォートラウンジでは軽食が無料
アルコール類や食事は有料で販売されている
全乗客が利用できるレストランエリア
この日のMegastarは平日夕方ということもあってか乗客が少なかったようで、席にも余裕があった
団体客が集まるにぎやかな一角
目の前で生演奏を披露してくれる
バーガーキングもテナントとして入居していた
広いキッズスペースがレストランエリアに隣接している
外には、食事をとりながら中で遊ぶ子供の様子が見られるモニター
一般乗船券となるSTAR CLASSで利用可能な座席。特急列車のような雰囲気

 個人的なおすすめは、往路はビジネスラウンジでゆっくり身体を休め、復路はショッピングを楽しむというもの。なぜなら、船内のショッピングエリアには免税店が多数あり、それらの商品が空港のスーベニアショップより軒並み安価な印象なのだ。さらにはJALマイレージカードを所有しているTALLINK Shuttle利用者には船内でのショッピングが一律8%オフになる「VIPカード」がプレゼントされるのも大きい。

2フロアにまたがるショッピングストリート
ブランド品、郷土品、菓子類、おもちゃなど、お土産選びに最適
ゲーム機が並ぶエンタメスペース

 帰国前の船内でゆっくりお土産探しをしておけば、空港で時間を気にしながらショッピングすることもない。少しのんびりした移動になることと、列車などの乗り換えの手間が増えることを気にしないのであれば、エストニア旅行に大型客船Megastarを利用することを検討してみてはいかがだろうか。

デッキの開放感を味わいながら暖かく過ごせるテラス席
階段かエレベータで各階層を行き来する
広大な駐車場フロア
船尾から屋上のデッキに出た
船尾の方は少し揺れを感じやすい
途中、遠くにくっきりとした虹が見えた
水平線の向こうにタリンの街並みが見えてきた
旧市街の風景も遠くから分かる
18時30分ごろにタリンに到着
ホテルにチェックインし、中心部の旧市街にたどり着いたのは20時。すっかり日が暮れてしまった
旧市街の古い街並み。城壁なども残っている
旧市街の外側では多くの花屋が並んでいた

日沼諭史

1977年北海道生まれ。Web媒体記者、モバイルサイト・アプリ運営、IT系広告代理店などを経て、執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、二輪・四輪分野などさまざまなジャンルで活動中。どちらかというと癒やしではなく体力を消耗する旅行(仕事)が好み。Footprint Technologies株式会社代表。著書に「できるGoPro スタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)などがある。