旅レポ

散歩が楽しい! デザインの街ヘルシンキを散策する

秋のヘルシンキは気候的にも過ごしやすく、市内の散策はとても楽しいものでした

 9月初旬に行なわれたフィンエアー主催のプレスツアーに参加し北欧フィンランドを堪能してきました。まだまだ東京では夏の暑さが残る時期でしたが、一足先に秋の気配を感じてきましたので、そんな模様をお届けします。今回はフィンランドの玄関口、ヘルシンキです。

 ヘルシンキはフィンランドの首都であり最大の街ですが、実際に訪ねてみるとその中心街はとてもコンパクトにまとまっていて短期滞在でも十分に楽しめる魅力を備えています。市内にはトラムや地下鉄などの公共交通網も整備されていますが、散歩しながら街の雰囲気を感じるだけでも十分に楽しめるほど美しく清潔感にあふれた街です。

 街のシンボルとも言えるヘルシンキ大聖堂から海沿いの市場、マリメッコやイッタラなど、この国を代表するブランドのショップが立ち並ぶ目抜き通り、今世紀に入ってから建てられたモダンな木造建築の礼拝堂 カンピ礼拝堂など見所も徒歩圏内に集中していますので、1日で一気に楽しむのもよし、ゆったりとした日程で一つ一つを堪能しながら過ごすのもよし、旅のプランに合わせた楽しみ方ができるのもこの街の特徴かもしれません。

 また、有名な観光地はもちろん、街を歩いていると地元の作家の作品を多く扱ったこじんまりとしたショップも多くあり、そこかしこにヘルシンキがデザインの街であることを感じられるのもこの街の魅力だと思います。

ヘルシンキ大聖堂

ヘルシンキ大聖堂。手前にある像はかつてフィンランドを統治していたロシア皇帝アレクサンダー2世

 1917年のフィンランドの独立以前からこの地にあったという教会が、現在の姿になったのは1852年とのことです。広々とした石畳の元老院広場から見上げる真っ白な教会と青空のコントラスト(ちょっと雲が多かったのですが……)がとても綺麗で、とても気持ちのよいこの街のランドマークです。

 広場に建っているのは、かつてフィンランドを統治していたロシア皇帝アレクサンダー2世の像だそうです。今回はヘルシンキ中央駅からも徒歩10分弱に位置するこの大聖堂を起点にヘルシンキの街を紹介します。

港の青空マーケットとオールドマーケット

ベリーが豊富な港の青空マーケット

 大聖堂から500mほど南下すればすぐに港に到着します。港にあるオレンジのテントが立ち並ぶマーケット広場はすぐに目に入るので迷うことはありません。生鮮品や観光客向けのお土産物などいろいろと並んでいますが、なかでもベリーは主役のようで多くの店がいろいろなベリーを並べています。ブルーベリーやストロベリー、そのほか日本ではあまり馴染みのないクラウドベリーなど、とても豊富で見ているだけで楽しくなります。

 また、こちらではスープによく使われるというアンズダケや生でも美味しいエンドウ豆などマーケットはとても色鮮やかです。今回は日本の朝市みたいなものをイメージして早朝にも訪ねてみたのですが、開店時間は店ごとにマチマチで10時ごろにはすべての店が出揃うようです。あまり頑張って早起きする必要はなかったかもしれません。

離島や外国に向かう船の行き交う港の青空マーケット。オレンジのテントが並んでいるのが見えます
さまざまなベリーが並ぶお店が多い青空マーケット
フィンランドではスープによく使われるというアンズダケ
生でも美味しいエンドウ豆。マーケットでは試食もさせてくれました

 青空市場を150mくらいさらに南下すると今度は趣のある倉庫のような建物のオールドマーケットがあります。こちらも野菜や鮮魚、お惣菜やカフェなど所狭しと並んでいてとても楽しい空間です。青空マーケットとセットで楽しんでしまうのがオススメです。

こちらはオールドマーケット。たくさんのお店が整然と並んでいます
生の食材から加工済みのお惣菜的なものまでなんでも揃います。港沿いのマーケットらしく特に魚は充実しています
いろいろなサンドイッチもありますし、建物内のカフェで飲食もできます

ヘルシンキで最も新しいアートミュージアム「Amos Rex」

地下のアートミュージアム「Amos Rex」へ光を取り入れる不思議なオブジェ

 ヘルシンキ大聖堂から西へ1kmほどのところに位置するエリアに、ヘルシンキで最も新しいアートミュージアム「Amos Rex」があります。1936年に建てられたシパラッツィという建築物の地下に展示スペースを持つこのミュージアムは、地上部にある広場からニョキニョキと突き出した不思議な物体から地下に光を取り入れる構造が特徴で、取材時には日本のチームラボによる「Massless」という展覧会が開催されていました。映像に包まれた不思議な空間で楽しむこの展示は2019年の1月6日まで開催されています。

外のオブジェは登れるので上で写真を撮る人もチラホラ
地上と地下にまたがるミュージアムは不思議な雰囲気
常設展示スペースには地元フィンランドの作家の作品
ミュージアムショップの商品
ショップにはなぜかオリジナルのハチミツやジャムも多数
日本のチームラボによる展覧会「Massless」
「Massless」は2019年の1月6日まで開催

 このシパラッツィ、1940年にヘルシンキで開催が予定されていたものの、中止になってしまったオリンピックに合わせ建設されたものだそうです。実は1940年の大会は元々東京での開催が予定されていました。その東京大会が戦争のため開催を返上し、代替地として選ばれたのがヘルシンキだったのだそうです。皮肉にもそのヘルシンキ大会も戦争のため、こちらも返上。東京とヘルシンキ、時代に翻弄された2つの都市の共通した歴史に何か奇妙な縁を感じます。

 なかには「Bio Rex」という映画館もあり、当時としてはフィンランド最大級のものだったそうです。現在も特別な試写会などが行なわれる重要な会場として位置付けられ、フィンランドでは珍しいボックス席のある映画館としても知られているそうです。

フィンランドでは珍しいボックス席のある映画館「Bio Rex」
映画館の入っているシパラッツィという建築物は1936年竣工

カンピ礼拝堂

2012年に作られた新しい礼拝堂、カンピ礼拝堂

「Amos Rex」のあるシパラッツィのすぐ北側にはカンピ礼拝堂があります。オフィスやショッピングセンターも多いこの地区にたたずむ木造の礼拝堂は2012年に完成したもので、柔らかな曲線を描いた外観ともみの木の風合いは、シンプルながらとても存在感があります。

小さなショップが立ち並び散歩が楽しいヘルシンキの街

 ヘルシンキ大聖堂や港でのマーケット、シパラッツィやカンピ礼拝堂はヘルシンキ観光においても人気のスポットでとても魅力的ですが、ヘルシンキの魅力はそれだけではありません。実は街に立ち並ぶ小さなショップが充実していて、こちらもとても楽しいのです。130年以上前から国を挙げてフィンランド・デザインの促進活動を続けてきたこの国の魅力は街のそこここに見ることができます。

 今回訪ねた「Lokal」という小さなデザインショップもそんなお店の一つ。店内はギャラリーとショップが併設されていて、ギャラリーの作品はもとより、店内の多くの商品もフィンランド人やフィンランドの学校に通う学生などの作品で占められていて、お店のスタッフのフィンランドに対する想いも感じられるとても素敵な空間です。

「Lokal」の2人が手にしているのはDESIGN DISTRICT HELSINKIのトレードマーク。DESIGN DISTRICT HELSINKIはフィンランドデザインの発信地として認定されたお店で小さな雑貨店からホテルやカフェまでさまざまな分野の名前が名を連ねる。多くの店にはトレードマークが提示されているので見つけるのは簡単だ
ギャラリーとショップが併設されているデザインショップ「Lokal」にて
日本人作家の作品もありました
「ウチはカフェではないのよ」と笑いながらコーヒーを淹れてくれました
北欧らしくシンプルで素材感に富んだ作品は見るだけでもとても楽しいものです

 街には趣のある教会、斬新な地元の作家によるモニュメント、街を歩くと目にするショーウィンドウ、いずれもヘルシンキの魅力を醸し出すためのパーツとなりデザインの街を作り上げているような感じがします。

広場のモニュメント、教会からショーウィンドウ越しに見る家電製品、清掃車のフォントや色使いまで、すべてがデザインされているようで楽しいヘルシンキの街
電気屋さんに並んだオブジェ。日本から来た観光客(筆者)が写真を撮っていたら中から店の方がニッコリ出て来て後ろのライトをすべて点灯させてくれました。この街ではこういう優しさに触れる機会が多いような気がします

 ちなみに、2019年2月には、フィンランドを舞台とした「雪の華」という映画の公開が予定されています。冬のラブソングとして名高い中島美嘉さんの同名の曲の世界観を登坂広臣さんと中条あやみさんが演じるというこの作品で、ヘルシンキの街がどう描かれるのかもとても楽しみです。

2019年2月公開の映画「雪の華」ではヘルシンキの街でも多くのシーンが撮影されているとのことです。大聖堂が見えるこんな路地で2人はどんなシーンを見せてくれるのでしょう

フィンランドと言えば……

ヘルシンキ市内のサウナ、ロウリュ(LÖYLY)の外観

 フィンランドと言えば……サンタクロース、ムーミン、オーロラ、デザインの街、といろいろと思い浮かびますが、外せないのがサウナです。発祥の地ならではの充実ぶりはもちろんヘルシンキでも例外ではなく、今回は公衆サウナ「ロウリュ(LÖYLY)」に行ってきました。ちなみにロウリュとは、熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させるサウナの入浴方法でもあります。

 レストランが併設されたオシャレな外観は一見サウナっぽくは見えませんが、オーソドックスなサウナはもちろん、スモークサウナも備えていて、クールダウンするために海に直接入ることもできるという充実ぶり。ちなみにロウリュは市内の西南側の海沿いにあり、今回起点としたヘルシンキ大聖堂からが3km弱、徒歩なら30分以上かかりますので街の中心部からであればバスを利用した方がよさそうです。

建材はもちろんフィンランドの木材を使用
海沿いのテラスでサウナで火照った体を冷やす利用者。このまま海に入ることも可能です
レストランではフィンランドの食材を中心に構成されたメニュー。サウナとともに、ここでもフィンランドを満喫できます
お酒はフィンエアーの機内でも提供されているフィンランドのジン、ナプエ(NAPUE)も用意されています。もちろんお酒を楽しむのはサウナのあとで

 街の中心部だけでも見どころ満載のヘルシンキ。今回紹介した場所以外に楽しそうなところは山ほどあるのでもう少し街に留まりたいところですが、後ろ髪引かれながらフィンランドの中央部、ラップランドと呼ばれる地域へ飛びます。次回は大自然のなかで楽しむフィンランドをお届けします。

高橋 学

1966年 北海道生まれ。仕事柄、国内外へ出かける機会が多く、滞在先では空いた時間に街を散歩するのが楽しみ。国内の温泉地から東南アジアの山岳地帯やジャングルまで様々なフィールドで目にした感動をお届けしたいと思っています。