旅レポ
初夏のもみじ狩りを堪能しつつ、4社寺の限定御朱印がもらえる「京都 青もみじ・御朱印めぐり」ツアーで、京都の新しい魅力に気付く
24年目を迎えたJR東海「そうだ 京都、行こう。」2017年初夏のキャンペーン
2017年6月6日 00:00
- 2017年5月8日~7月25日 開催
桜や紅葉の季節が来るたび、おなじみの曲(映画「サウンド・オブ・ミュージック」の「My Favorite Things」)とともに、「そうだ 京都、行こう。」のテレビCMを目にする機会は多い。1993年から始まったJR東海(東海旅客鉄道)のPRキャンペーンで、2017年で24年目を迎えた。
春と秋の京都が美しいのは誰もが認めるところだが、こうしたいわゆるハイシーズンは昨今のインバウンド需要もあり、京都中が大変混雑する。例えば紅葉の名所としても知られる東福寺では、境内に至る前の臥雲橋(がうんきょう)から身動きが取れないほどという。
そんな混雑に嫌気が差して、最近は足が遠くなっているという京都ファンもいるのではないだろうか。
しかし、JR東海 営業本部 観光開発グループ 堀江隆行氏によると「京都に住む人たちに言わせれば、桜の季節を終えてから梅雨を迎えるまでの4月~6月ごろは穏やかな気候で過ごしやすく、新緑の楓(カエデ)は瑞々しく、しかも混雑していないからお勧め」だという。盆地の京都は、夏は暑く冬は寒いので、ローシーズンでも特に初夏(4月~6月)に注目が集まりつつある。また、新緑の楓を「青もみじ」と呼んで、新しい観光商材に育てる試みも行なわれている。
そこで2017年初夏の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンではJR東海と京阪ホールディングスが連携して、初夏のもみじ狩りを楽しみつつ、京阪電鉄(京阪電気鉄道)と叡電(叡山電鉄)沿線の4社寺を巡り、限定御朱印がもらえるというツアーを用意した。
「京都 青もみじ 御朱印めぐり」ツアー
出発日:2017年5月8日~7月25日
種別:日帰り、宿泊
販売旅行会社:JR東海ツアーズ、JTB、近畿日本ツーリスト、東武トップツアーズ、日本旅行、名鉄観光
ツアー特典:
・往復新幹線チケット
・バス&えいでん 鞍馬・貴船 日帰りきっぷ
・「そうだ 京都、行こう。」オリジナル御朱印帳袋
・東福寺、賀茂御祖神社、河合神社、貴船神社の限定御朱印(各1000枚、初穂料/御朱印料は別)
Webサイト:京都 青もみじ 御朱印めぐり
また、本ツアーの見どころを体験するプレスツアーが開催されたため、その模様をお伝えする。
青もみじ・紅葉の名所「東福寺」は重要文化財の宝庫
最初に訪れたのは聖一国師(円爾弁円)が開いた東福寺。鎌倉時代に創建された臨済宗の大本山で、国宝に指定される三門をはじめ、敷地内のほとんどが重要文化財に指定されている。東福寺は前述したように紅葉の名所であり、秋には大変な賑わいになるが、プレスツアーを開催した5月上旬は参拝客もまばら。
まずは禅堂で坐禅体験を行なう。この禅堂は1347年に建てられた日本最古・最大の禅堂で、やはり重文に指定されている。人工光源のない禅堂内部は薄暗い代わりに外より一段ひんやりしており、自然と気持ちが落ち着いてくる。
住職の爾英晃氏から作法について説明があり、敷かれた2つの座布団の上で足を組んで座り、それぞれの足の甲を反対の太ももに乗せる「結跏趺坐(けっかふざ)」となり、右手のひらを上に向けて左手を重ね、親指の先を合わせる「法界定印(ほっかいじょういん)」を結ぶ。背を伸ばし、視線は前方に向け、半眼となる。
坐禅の最中は1から10までゆっくり数えながら息を吐き、1から10までゆっくり数えながら息を吸う。これを繰り返すという。その間を警索(けいさく)を持った僧侶が見て回り、姿勢の崩れた者がいると、背中を左右2回ずつ打つ。東福寺は臨済宗なので背中を打つが、曹洞宗では肩を打つ。テレビなどでよく目にするのは肩を打つ様子かも知れない。
せっかくなので記者も警索を頂いた。かなり手加減してもらえているせいか、痛みはほぼ感じられず、すがすがしさだけが残った。こればかりは体験するほかないので、もし坐禅を組む機会があれば、ぜひ合掌して警索を受けてみてほしい。
なお、今回の坐禅体験はプレスツアーのため特別に日中行なわれたが、普段は毎週日曜の朝6時30分~7時30分に通年で催されている(開始10分前に集合)。
続いて、特別に三門に上がることができた。現在の三門は1425年に4代将軍・足利義持の寄進によって再建されたもので、日本最古最大の三門であり、国宝に指定されている。東福寺は約7万坪(南北2km、東西1km)の敷地面積があるが、三門の上からでもその全容が掴めないほど広い。
三門から南を見て、東司(とうす)の反対にはやはり重文の浴室がある。薬草を入れた蒸し風呂の上に割った竹を敷いて、さらにその上に布地を敷いて入ったという。その布に着物などをまとめたことから「風呂敷」という呼び名が付いたとのこと。
三門を降りて通天橋へ。左右をカエデに囲まれたフォトジェニックな空間でもある。東福寺のカエデは、秋に赤く染まるヤマモミジやイロハモミジなどのほか、黄金色になる三ツ葉カエデ(唐カエデ)が特徴で、ひときわ背が高いので見分けることができる。三ツ葉カエデは聖一国師が中国から持ち帰ったものだという。
余談だが、東福寺にはフリーWi-Fiスポットがある。爾氏いわく、「お寺というのは昔から最先端」で、2年ほど前から用意しているそうだ。
世界文化遺産の糺の森を擁する「賀茂御祖神社」、日本第一美麗神を祭る「河合神社」
続いて訪れたのは下鴨神社。同じく鴨川沿いの上賀茂神社とは縁があり、下鴨神社の祭神は賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と、その娘である玉依媛命(たまよりひめのみこと)の2柱。上賀茂神社は玉依媛命が鴨川(賀茂川)で授かった賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)を祭っている。
この“下鴨神社”というのは通称で、正しくは賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)という。賀茂(鴨)とは「神」、御祖は「親」を意味しており、親神を祭っていることを表わしている。
なお、賀茂建角身命はヤタガラスに姿を変えて神武天皇を導いたとする神話が残っており、玉依媛命は賀茂川で身体を清めていたところに丹塗矢(にぬりのや)が流れ着き、それを持ち帰ると翌朝懐妊していたとする神話があり、それぞれ国宝の西御本宮と東御本宮に祭られている。
賀茂御祖神社は世界文化遺産に登録されているが、神社建築物ではなく、その周囲に広がる糺の森(ただすのもり)を対象としている。かつて山城原野を拓いて平安京を作った際、残されたのが糺の森といわれており、古くからの植生を現在に伝える貴重な存在である。足を踏み入れると背の高い木に覆われてあたりが薄暗くなり、喧噪からも遠ざかったように感じられる。
賀茂御祖神社から糺の森を抜けてやや南へ向かうと、河合神社が姿を現わす。入り口には「女性守護 日本第一美麗神」と記されており、神武天皇を産んだ玉依姫命(たまよりひめのみこと ※先ほどの玉依媛命とは異なる)を女性の守護神・美麗の神として祭っている。
象徴的なのが手鏡のような形をした鏡絵馬で、自分の顔に見立てて化粧をして、裏側に願いごとを書いて奉納すると、外見と内面の両方がキレイになれるということで、特に女性の参拝者が多いとのこと。また、境内で飲めるかりん美人水は、のど飴などでおなじみのカリンの果実エキスを抽出したもので、肌によいという。
叡電の展望列車きららから「青もみじ新緑ライトアップ」を減速運行で楽しむ
日が傾いてからは叡電の貴船口駅へ移動して、青もみじがライトアップされているなかを走る展望列車に乗車した。二ノ瀬駅~市原駅の1区間を「もみじのトンネル」減速運行区間として、昼間の瑞々しいカエデとは対照的に、暗闇に浮かび上がる幻想的な雰囲気をじっくりと楽しめる。
減速運行は5月中のみの実施だが、叡電の展望列車きららは2両編成29+29席のうち、各車両中央の8席(計16席)が窓側を向いており、開口部の大きな窓のおかげで大変眺めがよい。日中の青もみじは10月ごろまで楽しめるので、ツアーに含まれるフリー切符を使って、途中下車して沿線の名所を楽しみつつ、青もみじを観賞する電車旅も楽しそうだ。もちろん、秋になれば紅葉を眺めながら乗車できる。
貴船川の源泉、龍穴の上に奥宮本殿が建つ「貴船神社」
翌日、プレスツアー最後の目的地である貴船神社へ向かった。貴船神社がいつ創建されたのかは記録がないそうで、伝承では、神武天皇の母である玉依姫命が貴船川を遡り、その源泉に水神 高龍神(たかおかみのかみ ※龍の字は、正しくはあめかんむりに口を3つ、その下に龍)を祭ったのが貴船神社の始まりとされており、船舶関係者や漁業関係者が多く参拝するという。
その源泉は貴船龍穴と呼ばれており、現在は龍穴の上に奥宮(おくみや)が建っている。龍穴の上では建て替えなどの作業を行なってはいけないとされており、奥宮の隣にある権地(ごんち)に曳家のような形で奥宮を移し、修復作業などを行なったのちに元の場所へ戻すという。2012年には150年ぶりにその習わしに則った大修復が行なわれている。
その奥宮の近くに、小石で囲まれた船の形をした石組みがある。貴船川を遡上する際に玉依姫命が乗ってきた黄色い船が収められているとされており、こちらも信仰の対象だ。
水にまつわる話としては、宮司の高井和大氏の説明のなかで、「奥さんや旅館の女主人を“おかみさん”といいますが、これは高龍神(※)が語源なんですね。家庭やお店で水を司る人のことを水神になぞらえて、かみさんとか女将と呼ぶようになったのです」として語源が披露された。
ところで、この辺りの地名(貴船)は「きぶね」と読むが、神社の名前は「きふね」と読み、濁らない。これは、水の神様を祭っていることから、「水が濁らないように」という願いが込められているという。