旅レポ

S-TRAINの40000系に乗って秩父三峯神社の雲海と星空鑑賞を目指す「元町・中華街駅発の夜行列車で行く秩父絶景ツアー」

2017年5月26~27日 開催

「元町・中華街駅発の夜行列車で行く秩父絶景ツアー」の目的地三峯神社境内にある下界を一望できる「遥拝殿」。残念ながら雲海にはめぐり会えなかったが、神気を感じるパワースポットからの眺望は迫力がある

 西武鉄道と西武トラベルは、東京メトロ(東京地下鉄)、東急電鉄(東京急行電鉄)、横浜高速鉄道と協力して、西武鉄道の新型通勤車両「40000系」を使った秩父ツアーを開催した。

 3月25日から土曜・休日に「S-TRAIN」として西武秩父駅~元町・中華街駅間を有料座席指定で直通運転を開始している列車を、プレミアムフライデーの深夜に団体列車の夜行として運行。西武秩父駅到着後は、バスで奥秩父三峰山山頂の標高1102mにある三峯神社を目指し、夜が明けるまではスターパーティ(星空鑑賞)を楽しみ、日の出と雲海を体験しようという企画。星空鑑賞は天体望遠鏡で知られる総合光学機器メーカーのビクセン、飲料提供でサッポロビールも開催に加わっている。

元町・中華街駅の改札外付近が当日の受付場所。ある程度の人数ごとに注意事項の解説をしている
乗車までの注意事項。ホームドアが開くのは一部のみ
列になって駅構内へ

 ツアーは全席指定で、4月27日から申し込みを受け付けていた。当日の参加人数は220名。乗車は、元町・中華街駅(1万2500円)、多摩川駅(1万2300円)、練馬駅(1万円)、ひばりヶ丘駅(1万円)という設定。22時21分にみなとみらい線の元町・中華街駅を発車し、横浜駅から東急東横線、渋谷駅から東京メトロ副都心線を経て、東京メトロから西武有楽町線へと切り替わる小竹向原駅を23時53分ごろに通過した。練馬駅での発車は0時を過ぎ、そこからは車内の照明が暗くなり、夜行列車の雰囲気を楽しめた。

 40000系のシートは、ロングシートとクロスシートを切り替えられるのが特徴だが、当日はもちろんクロスシートでの使用。終点の西武秩父駅着は1時25分。列車の乗車だけで約3時間あり、この間を十分楽しめるルートとなっている。

入線前にホームで列になって固まって待機する
2番線の案内表示では「臨時」と表示された
22時16分ごろ、2番線に新型通勤車両40000系が入線
行き先表示は「臨時」
40000系の車内。シートはクロスシートで使用
待機していた人が順番に乗車
1号車と10号車のみドアが開くので車両内を歩いて指定席へ移動
行先は「西武秩父」で上に「臨時」の表示
Smileビジョンでは広告が流れている
4号車と9号車は女性専用車両の設定
優先席シートは未使用
車内ではパンフレットと「星座早見盤」が配られた
途中、天体望遠鏡で知られるビクセンの「星のソムリエ」による星座早見盤の使い方解説の放送があった
4号車にはトイレがあるので長時間の行程でも安心
トイレは車いす対応で広い
出入り口横の車内広告は「S-TRAIN」
AC100Vコンセントが用意されているので、スマホの充電も可能
無料のWi-Fiも利用できる
シートを対面にして楽しむグループも
シートを対面にするにはペダルを踏む
運よく座席に余裕があった場所では、対面でくつろぐ光景も
普段よく見る駅も深夜に通過すると違って見える
停車駅では乗務員が非常用ドアハンドルを使ってドアを開閉していた
ドアの開閉は手動で
練馬駅に停車中。すでに深夜0時を過ぎている
練馬駅から先は、車内の照明が暗くなった。真っ暗にはならないので、フードをかぶって仮眠している人も
夜の街を進む
飯能駅では進行方向が逆向きに変わる
1時25分に西武秩父駅に着く。残念ながら雨が降りだした
西武秩父駅の駅名標
保線橋上を進む。4月に西武秩父駅前にオープンした「祭の湯」とレストラン列車「52席の至福」の広告
改札口はそのまま素通り
深夜の西武秩父駅を出る

 西武秩父駅に到着後は、バスで1時間15分ほど乗車して奥秩父三峰山にある三峯神社を目指す。途中、道の駅「大滝温泉」にてトイレ休憩があった。この頃から雨が降ってきてしまった。

 三峯神社の駐車場では、スターパーティが予定されていたが、到着時には小雨の天候で星空は見えそうもない。天体望遠鏡を持参してきたビクセンのスタッフも、参加者もちょっと残念そう。少し前にビクセンのスタッフが機材を準備していたころは、天の川が見えるほど好天だったそうだ。それでも、スライドやPCを使った天体解説や、望遠鏡を覗くとスライドで土星が見えるようにしてデモを見せてくれるなど、しばし星空に思いをはせる時間を提供していた。

 温かいレモンティやお菓子の提供もあった。天候がよければ、ここで希望者にビールを配る予定だったが、これは最後にお持ち帰りとして配布された。

駅前に停まるバスに分乗する
西武秩父駅前に停まるバス。西武観光バス、秩父鉄道観光バス、秩父丸通タクシーが混在
バスに乗り込む
団体名は「秩父絶景ツアー」の表示
バス車内の様子。これは秩父鉄道観光バスだが、比較的新しい車両のようだ
走行中は車内を暗くする。けっこう険しい山道を登っていく
道の駅「大滝温泉」でトイレ休憩
三峯神社の駐車場に到着。残念ながら雨だ
ビクセンのスタッフによる、スライドを使った星空に関する解説
天候がよければ、この辺に夏の大三角があるはず……なんだけど
「七夕に織姫と彦星はLINEで会えるのか?」など、軽妙な語りで魅了。星空は平面でなく実際には奥行きがあるのが重要
PCを使ってブラックホールの解説も。星を見るための双眼鏡も用意
温かいレモンティの配布
お菓子も配布
望遠鏡のデモンストレーション。覗くと土星のスライドが見える

 この日の日の出時刻は4時45分。夜明け前に三峯神社の展望スポットを目指して徒歩で移動を開始。グループ別に3カ所ある展望スポットに分かれる。記者は遥拝殿という場所から見たが、残念ながら天候は回復せず、霧のような一面雲のなかで日の出時刻を迎えた。

 とはいえ、この濃霧もまたとても幻想的で、境内の木々や神殿がいっそう厳かに見え、気が引き締まる気分になった。参加者たちも拝んでいた。その後は、朝食が用意され、グループに別れ拝殿でご祈祷を受けた。

 三峯神社の神様は、「いざなぎのみこと」と「いざなみのみこと」で、日本の国、日本民族をお産みになられたと伝わる夫婦の神様。「やまとたけるのみこと」が山犬(オオカミ)に導かれ、わが国の平和を祈り国産みの神様をおまつりしたのが始まりとされている由緒ある神社。そのため、要所に山犬がまつられている。境内はとても広く、周辺の見どころを含めハイキングをして散策を楽しめる。ぐるっと回るなら2~3時間は確保したい。

 太陽は拝めなかったが、標高の高い清涼な早朝の空気感がとても気持ちがいい。三峯神社と西武鉄道の調査によると、2016年の雲海発生率が、5月に54.8%、6月と9月に40%、10月に61.2%、11月に53%と高くなっている。これによると春と秋にチャンスが多いということになる。このデータの最新情報は、西武鉄道のサイトで公開されている。

三峯神社の展望スポットに向けて、駐車場を出発
珍しい三連の鳥居前で神職による解説
境内を進む。大きな木々が連なる
遥拝殿という三峯神社奥宮を遠くから拝める展望台への階段
遥拝殿に到着
残念ながら雲で一面真っ白
それでも、皆それぞれに拝む
本殿と拝殿のある方に進む。奥に見えるのは随身門
「やまとたけるのみこと」を導いた山犬がまつられる
随身門は220年前の建造物。天井真上に描かれた龍は修復が難しく、いずれ消えてしまうかもしれないとのこと
山犬と古木に見守られる参道を進む
本殿と拝殿へと続く最後の階段はかなり急
階段を登りきった先に立派な拝殿がある。手前に樹齢800年のご神木
拝殿に近づき横から見たところ。祈願を申し込むと祈祷を受ける場所。写真右が奥になっていて神様がまつられた本殿がある
屋根には美しい装飾が施されている
春は時期的にちょうどツツジがきれいな時期。境内の各所で見られる
拝殿より徒歩10分程度の少し離れた場所の「縁結びの木」は、「恋みくじ」がありカップルに人気のスポット
実際の「縁結びの木」は上部にある
少し離れた場所にある三峯公園展望の丘方面に来てみたが、やはり晴れ間はなかった。晴れていれば秩父盆地を眺望できるスポット
近くで電子基準点を発見した
三峯山付近の案内図
境内にあったレトロな郵便ポスト
三峯神社境内にある興雲閣。今回休憩で食事をしたが、宿泊も可能
参加者には食事が用意された
秩父こいずみの「秩父わらじ豚味噌丼」と緑茶
ヒモを引いて暖めてから食べる。秩父の石灰を使っているもよう
秩父名物の「わらじかつ」の上に「みそポテト」
わらじかつは大きくボリューム満点。豚肉はもう一枚味噌焼きのバリエーションも
食事とご祈祷後、自由時間があり、バスで帰路に着いた
参加者に手渡されたカードサイズの日付入り参加証
スターパーティ悪天候のため乾杯はお預け。帰路配布された、小ぶりな缶ビール
帰りの山道でわずかに日の光が差す。もう少し早く晴れてくれれば……
西武秩父駅前で解散

 なお、周辺には日帰り入浴が可能な温泉施設が豊富。三峯神社境内には「温泉 三峯神の湯」があり、西武秩父駅前には「西武秩父駅前温泉 祭の湯」がある。ぜひ時間を多めにとりユックリと体を休めてみてほしい。三峯神社境内の興雲閣では宿泊も可能となっている。今回のツアーでは、雲海はお目にかかれなかったが、霊気、神気があふれるパワースポットで“気”をいただき、充実した気持ちで下山した。

 YouTubeで「雲海 秩父」のワードで検索してみたところ、秩父盆地で雲海が発生すると、なかなかの絶景が楽しめるようだ。都心からすぐ近くでこれほどの絶景が見れる場所は珍しい。この絶景ツアーは次回予定はまだ決まってないが、「S-TRAIN」は土曜休日に西武秩父駅と元町・中華街駅間で運行している。停車駅は今回のツアー内容とは異なるので注意が必要だが、雲海発生条件に合いそうな週末に思い立ったらすぐ利用できる。チケットレスサービス「Smooz」を使えば、座席の予約もネット上で完結する。

 西武秩父駅と三峯神社は西武バスが運行しているほか、となりの御花畑駅まで10分ほど歩き、秩父鉄道で三峯口駅まで行き、そこからバスに乗るルートもある。気軽に秩父の旅を楽しんでみてほしい。個人的にも再度チャレンジして雲海を見に来てみたいと思った。十分運気をいただいき願をかけてきたので、次回は確実のハズだ。

村上俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、Web媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。