旅レポ
故プリンスの自宅兼スタジオ「ペイズリー・パーク」に行ってきた
2016年10月11日 10:50
- 2016年10月6日 開催
世界的にカリスマ的な人気を誇り、さまざまなアーティストに多大な影響を与え続けてきた、ポップスターのプリンス。2016年4月、突然舞い込んできたプリンスの訃報は、世界中のファンに衝撃と深い悲しみを与えたことは、記憶に新しいところだろう。そのプリンスが1988年から自宅兼スタジオとして利用していたのが、米国・ミネソタ州のミネアポリス郊外にある「ペイズリー・パーク」だ。
プリンスの生前も、ペイズリー・パークではファンを招いたイベントが開催されるなど、限定的に公開されることはあった。しかし、彼の死から半年ほど経過した2016年10月6日から一般公開されることになったため、今回見学することになった。
まずはじめに、ペイズリー・パークの場所について確認しておこう。冒頭でも紹介したようにペイズリー・パークは、米国中西部北、五大湖のやや西寄りで、カナダに隣接した場所に位置するミネソタ州のミネアポリス郊外、チャンハッセン市にある。
日本からペイズリー・パークを訪問する場合には、最寄りの空港となるミネアポリス・セントポール国際空港へアクセスすることになる。ミネアポリス・セントポール空港はデルタ航空がハブ空港としており、デルタ航空は成田国際空港からミネアポリス・セントポール空港への直行便を運航している。しかも10月30日からは、デルタ航空が羽田空港からミネアポリス・セントポール空港への直行便を運航開始するため、より利便性が高まることになる。
ミネアポリス・セントポール空港からペイズリー・パークへは、電車やバスなどの公共交通機関を利用したアクセスは難しく、基本的にはタクシー、またはレンタカーの利用が必須となる。距離は30kmほど、クルマで30分弱といった距離なので、レンタカーを利用するのがベストと言える。
ペイズリー・パークの一般公開に参加するには、ペイズリー・パーク公式サイトで販売されているチケットを購入する必要がある。チケットは、46ドル(約4800円、1ドル=104円換算)の一般チケットと、111.75ドル(約1万1700円)のVIPチケットの2種類を用意。いずれもサービス料と施設使用料込みだ。
一般チケットでは、ペイズリー・パーク内の録音スタジオやミキシングスタジオ、ビデオ編集室、リハーサルルーム、コンサートホールなどを、所要時間70分ほどで見学できる。またVIPチケットでは、専門のツアーガイドが付き、一般チケットよりも30分長い約100分のツアーとなっており、より深くペイズリー・パークを体験できる。
ところで今回筆者は、ペイズリー・パーク一般公開の開始前日となる10月5日に行なわれる、プレス向け内覧会に参加できることになっていた。米国のプレスに混じって内覧会に参加できるとあって、出発前からかなり気持ちが高ぶっていた。なにせ、これまではプレスでも敷地内に足を踏み入れることが許されなかったペイズリー・パークに入れるだけでなく、内覧できるというのだから、高ぶらないはずがない。米国のプレス陣に負けず、しっかり中の様子を取材してこようと、かなり気合いも入っていた。
しかし、現地に到着した10月4日早朝に、耳を疑う情報が入ってきた。それは、ペイズリー・パークの一般公開が延期となり、プレス向け内覧会も中止になった、という一報だ。ペイズリー・パークがある地元チャンハッセン市の議会が、周辺の交通渋滞や治安悪化などを懸念し、公開を延期するようにとの決議を10月3日に行なったのだという。
しかし、すでに一般向けにチケットは販売されており、チケット購入者の間でも抗議の声が上がり始めていた。そういった声を受けチャンハッセン市議会は、特別に10月6日、8日、14日の3日間に限って、ペイズリー・パークの公開を許可したのだった。
そしてプレスも10月6日早朝、一般公開直前にペイズリー・パーク敷地内で行なわれる記者会見と、9時からの一般公開に第一陣約30名ほどがペイズリー・パーク建物内に入っていく様子を取材できることになった。残念ながらペイズリー・パーク建物内に入ることはできなかったが、記者会見や敷地内へ入ることは許された。
というわけで、10月6日の朝8時過ぎにペイズリー・パークに到着。入り口の警備員のチェックを経て敷地内に入れた。まずはペイズリー・パークの建物を撮影。8時40分過ぎからペイズリー・パークの建物入り口前で記者会見が始まった。
会見を行なったのは、ペイズリー・パーク一般公開の運営会社幹部、ジョエル・ウェインシャンカー氏。ウェインシャンカー氏は、「今日は、とても感動的な1日です。これまで2カ月間、ペイズリー・パークの一般公開に向けて働いてきましたが、ついにオープンの日を迎えました。この一般公開は、プリンス本人が望んでいたことです。そして、プリンスのファンにとってかけがえのない場所であるとともに、これから新たにプリンスのファンになる人のきっかけになる場所でもあります。私自身もプリンスの大ファンでしたが、プリンスはとても偉大なアーティストでした。そしてペイズリー・パークのような場所は、世界中にどこにもありません。まさに唯一無二の場所なのです」と、時折涙を浮かべながら、ペイズリー・パーク一般公開について述べた。
そして、ウェインシャンカー氏のスピーチが終了すると、敷地内に一般公開第一陣を乗せたバスが到着し、ファンが降りてきた。皆、プリンスのシンボルカラーである紫の衣装や化粧で着飾り、世界で初めてペイズリー・パークの一般公開に参加することに興奮した様子で歓声を上げる姿が印象的だった。そして、次々にペイズリー・パーク建物内へと入っていった。
できることなら、筆者もペイズリー・パーク建物内に入りたかったのは事実。ただ、まったく敷地内にも入れない可能性があったなか、敷地内で記者会見や一般公開第一陣が建物内に入っていく様子を取材できただけでも、非常にありがたかった。この場を借りて、ペイズリー・パーク取材の調整に尽力していただいた現地コーディネーターの方にお礼を申し上げたい。
ところで、ミネアポリスにはペイズリー・パーク以外にもプリンスゆかりの名所がある。例えば、チャンハッセン市にある映画館「チャンハッセンシネマ」の外壁には、プリンスの壁画が描かれている。この壁画は、2016年6月にニュージーランドのアーティスト、グラハム・ホーテ氏が描いたもの。
もともとオーストラリアでプリンスの壁画を描いていたホーテ氏に、ミネアポリスでもプリンスの壁画を描いてほしいとの声が届き、プリンス自身も新作映画の鑑賞に訪れていたチャンハッセンシネマの壁面に壁画を描くことになったという。すでにプリンスファンが訪れる名所になっているそうだ。
そしてもう1カ所外せないのが、ミネアポリスのダウンタウンにあるライブハウス「First Avenue」。ここは、プリンス主演映画「Purple Rain」のロケ地であり、またプリンス自身も実際にライブを行なった場所でもある。First Avenueの外壁には、ここでライブを行なったアーティストの名前に混ざってプリンスの名前も刻まれ、また会場内には「Purple Rain」のロゴも刻まれている。
ペイズリー・パークの一般公開がいつ再開されるのかは、取材時点では未定だ。今回特別に公開された3日間の様子を見つつ、現地チャンハッセン市議会は12月頃にペイズリー・パーク公開許可の審議を行なうとの情報があるため、おそらく一般公開は早くても2016年の年末以降になるものと思われる。ただ、プリンスのファンにとって、彼の出生地でもあるミネアポリスはぜひとも足を運んでおくべき場所なのは間違いない。そして、できるだけ早い段階でのペイズリー・パークの公開再開を願いたい。
【お詫びと訂正:2016年10月11日】 初出時、ペイズリー・パークの使用開始年などに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。