【イベントレポート】パリ航空ショー2015

パリ航空ショーの会場で見かけた気になるもの

2015年6月15日~6月21日(現地時間) 開催

 フランス パリ郊外のル・ブルジェ空港で開催された「パリ航空ショー2015」。航空機の実機の展示に目が留まりがちだが、会場に6カ所設けられたホール内では、旅客機の内装やタイヤ、エンジンの部品、そしてソリューションに至るまでさまざまなものが展示されている。

COMACは「ARJ21」「C919」の模型を展示

 中国の中国商飛(中国商用飛機、COMAC)が計画を進めている70~90席級のリージョナルジェット「ARJ21」、150~180席級の小型旅客機「C919」は、実機の展示はなく、ブースで模型の展示のみを行なっていた。

 ともに運航開始には至っていないが、ARJ21は2014年12月に中国内での型式証明を取得。飛行試験が進められている。会場ではエコノミークラスのみで90席、プレミアムエコノミーを配置して78席というシートレイアウトのほか、ビジネスジェットとしての利用を想定した客室イメージも展示していた。

 C919はエアバス A320シリーズやボーイング 737シリーズの市場に近い150~180席級のジェット旅客機で、2015年内の初飛行を目指して開発が進めているという。

COMAC「ARJ21」の模型
全席エコノミーのレイアウト
前方にプレミアムエコノミーを配置した例。これで78席仕様となる
ビジネスジェットとしての利用イメージ
COMAC「C919」の模型
展示された模型の客室は全席エコノミーで90席のもの

エコノミーでも大画面スクリーンを実現できる「AIR CINEMA」

 機内インターネットサービスやエンターテインメントサービスなどを提供するAircom Pacificは、パリ航空ショーの期間中に、香港航空が同社の機内インターネットサービスを導入する契約を締結。併せて、「AIR CINEMA」と呼ばれる、新しい機内設備のコンセプトを紹介した。

 このAIR CINEMAは、簡単にいえばシートごとに短焦点のプロジェクタを搭載するというもので、利点は液晶ディスプレイよりも軽い重量で大画面を実現できること。特にエコノミークラスで、全席に大画面を搭載できることをモックアップ展示で示した。

 プロジェクタと言われると明るいところではコントラストの低下が気になるものの、明るい会場内でも視認できる程度の投影ができていた。今回はあくまでコンセプト展示で、興味を示してくれるパートナーを探している段階とのことだ。

Aircom Pacificが展示した「AIR CINEMA」は、シートモニターをプロジェクタにすることで軽量に大画面化を実現するというコンセプトで開発されたもの

キャビンイメージをタブレットで作り上げて発注を自動化

 ダッソー・システムズは、設計ソフトや製品管理などの製造業向けアプリケーションプラットフォーム「3Dエクスペリエンス」で提供される新ソリューションとして「パッセンジャー・エクスペリエンス」を展示した。

 これは、3D表示されたイメージを見ながら客室を設計できるもので、パーツの交換などもリアルタイムに反映される。この3D表示は非常に高精細で、拡大するとシートの布の質感まで把握できるほど。シートの種類や表面素材、照明など、あらゆるパーツをカスタマイズ可能。ここで設計した内容で、そのまま発注プロセスへ移行することも可能だという。

iPadを使ってキャビンを設計
シートの布の分かるほど高精細な3D表示
キャビン内のあらゆるパーツを組み替えてシミュレートできる

 航空機の内装品などを販売するSTAGグループのブースでも、同様にiPad上でシートを設計し、そのまま発注できるアプリをデモンストレーションしていた。シートのみの設計で、ダッソー・システムズほどリアルな3D表示ではないが、色や素材、シートの装備などを柔軟にカスタマイズ可能できる。

STAGグループのFiltetecが提供するシート設計アプリ。色やシート装備の有無などをリアルタイムに設計し、そのまま発注もできる
余談だが、STAGグループのブースでは、航空機の内装に使われているドアノブや衣服を掛ける収納式フックのパーツをオブジェのように展示しており見応えがあった

Parrotは屋外パビリオンでドローンの編隊飛行展示

 個人向けの低価格なドローンを発売することで国内でも知られているParrotは、パリ航空ショーに屋外パビリオンを開設。ここでドローン6機を使った編隊飛行を披露し、観客の注目を集めていた。

 さらに、未発表の小型ドローン「Minidrone」シリーズを展示。従来の「Rolling Spider」をベースに、LEDによるライトを内蔵した「Airborne Night」(129ドル)、レゴブロックを積載することができる「Airborne Cargo」(99ドル)、さらに船とドローンを組み合わせて水上走行を可能にした「Hydrofoil」(179ドル)を発売する。

 いずれもカメラはVGA(640×480ドット)相当と本格的な撮影には向かないが、スマホからの操作にも対応し、おもちゃの1種として楽しめるドローンとして提供するものとなる。

Parrotは、音楽合わせてドローン6機が編隊飛行をするデモを実施
LEDを内蔵した「Airborne Night」
上部にレゴブロックを搭載可能な「Airborne Cargo」
船にドローンを取り付けた構造で水上走行できる「Hydrofoil」
Parrotではインマルサット(通信衛星)を使ってドローンで撮影した映像を配信するシステムも提案している

そのほか

 パリ航空ショーに限らず、こうした展示会は基本的には業界関係者向けのトレードショー(商談会)であるため、飛行機の旅を楽しみたい一乗客としては関係のない展示も多い。しかしながら興味深い展示もあり、そのなかから気になったものを写真でいくつか紹介しておく。

「WheelTug」が展示した模型を使った駆動輪による地上走行のデモ。飛行機のタイヤは駆動輪ではなく、地上走行時もジェットエンジンの推力を使って前進する。そのため、ジェットエンジンからの排気(ジェットブラスト)に一定のクリアランスを設ける必要があるが、タイヤそのものを駆動させることでジェットブラストによる制限を排除し、地上走行を短縮するというコンセプトのデモだ。写真のように機体を空港と平行に駐機にして2つのボーディングゲートを使って乗降するなどのアイデアを提案している
航空防衛産業にさまざまなハードウェア、ソフトウェアを提供しているEsterlineのブースでは、ほとんどの操作をタッチ操作化したコックピットのコンセプト展示を行なっていた。上部パネルにもタッチパネルを使っているのが特徴で、いわゆるグラスコックピットのディスプレイと同等、表示を切り替えながら各種制御を行なえる
パリ航空ショーでは航空産業を網羅的に紹介するホールが設けられ、その中にエアバス A320のカットモデルを展示。コックピットのシャーシや内部の配線、シートの骨組みなど、航空機製造の途中経過を知ることができるものとなっている
ミシュランブースに展示された「A350 XWB」(左)と戦闘機「ラファール」(右)のタイヤ。ミシュランは「AIR X」のブランドで航空機用タイヤを展開している
同じくミシュランブースで展示された「Falcon 8X」(左)と「ボーイング 737 NG/MAX」シリーズ(右)のタイヤ
ダンロップのブースで展示された「ATR72」(左)と「ボーイング 737 NG」シリーズ(右)のタイヤ
同じくダンロップの「エンブラエル E190/195」用タイヤ
ブリヂストンは1400×530/R23のタイヤを展示

編集部:多和田新也