イベントレポート

【ツーリズムEXPO 2018】日本の旅行業界のさらなる成長にはお家芸のテクノロジ活用が必要とWTTCのマンソ理事長

初日の基調講演より

2018年9月20日~23日 開催

国連世界観光機関 事務局長 ズラブ・ポロリカシュヴィリ氏

 日本最大の観光イベント「ツーリズムEXPOジャパン2018」が9月20日~9月23日の4日間にわたり、東京ビッグサイトで開催されている。初日となった9月20日の午前には、開会式、ジャパン・ツーリズム・アワード表彰式などの公式イベントが行なわれた。

 ジャパン・ツーリズム・アワード表彰式のあとには、UNWTO(国連世界観光機関)事務局長のズラブ・ポロリカシュヴィリ氏、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)理事長のグロリア・ゲバラ・マンソ氏の2人による「観光で地域創生を!」というテーマの基調講演が行なわれた。

 このなかでWTTCのマンソ氏は日本の観光業界がグローバルに見ても例がないぐらい急速に成長しており、今後も日本が得意とする技術などを応用した新しい旅行体験を発展させていくことで、世界で日本の観光業界が重要な役割を果たしていけると説明した。

旅行業界はもっとスマートにしていく必要があるとUNWTO 事務局長 ポロリカシュヴィリ氏

 UNWTOのポロリカシュヴィリ氏は「関西や北海道での災害についてお見舞い申し上げたい。日本は我々にとっても重要なパートナーで、JATA(日本旅行業協会)の田川博己会長を先頭に非常に強力なコミットメントをしてくれており、我々の組織もそのお返しとしてサポートしていきたい」と述べ、関西や北海道の災害から観光業が復興することに協力をしていきたいとした。

 そして、ポロリカシュヴィリ氏の講演前に行なわれたジャパン・ツーリズム・アワード表彰式に言及し「若い世代が新しいアイディアを観光業に持ち込むことは素晴らしいことだ。グローバルに見て観光客は増加傾向だが、もっと増やしていけると思う」と述べ、これまで掘り起こせていなかった潜在需要に応えることができるような新しい取り組みを行なっていくことが重要だと説明した。

 ポロリカシュヴィリ氏は「グローバルに見るとGDPの10%は観光業が占めている。今後もさらに需要を増やすには旅行をもっとスマートにしていく必要がある。デジタルの導入やイノベーションを起こしていくことが大事になる。我々も多数の取り組みを行なっており、日本に協力してもらっているプロジェクトも少なくない。今後も革新的な取り組みを一緒にやっていきたい」と述べ、UNWTOとしても日本の観光業界と協力して観光業界を変革していきたいという意向を表明した。

日本の観光業は急成長している、日本の得意な技術を活用した旅行の実現を

 WTTCのマンソ氏は「WTTCは25年前に設立された団体で、グローバルに旅行業の経済的な発展を目指している」と述べ、WTTCの存在意義について説明した。WTCCにはJATAも加盟しており、JATAの田川会長はWTTCの副会長を務めているといるとのこと。そのWTTCで理事長を務めるマンソ氏は世界経済における旅行業の貢献について説明した。

世界旅行ツーリズム協議会 理事長 グロリア・ゲバラ・マンソ氏
WTTCの幹部

 マンソ氏によれば「世界のGDPの成長は3%だが、それを旅行業界に限れば4.6%の成長と、旅行業の成長は世界経済の成長を上回っている。また、3億1300万人の人を雇用しており、世界の雇用の10分の1は旅行業となっている。次の10年で47%の仕事がなくなると考えられているが、その後に生み出される新しい雇用のうち1/5は観光業だと考えられる。これは非常に重要なことだ」と述べ、観光業が世界経済にとって重要な位置を占めており、現在も大きな雇用を確保しているほか、今後産業の転換などでなくなる雇用の多くの吸収できる潜在能力を持っていると強調した。

旅行業関連の数値

 そのうえでアジアが特に成長しており、グローバルを上回る9.8%の成長であり、なかでも日本の成長は著しいと説明した。「日本の観光業が日本のGDPに占める割合は6.8%で、日本の全雇用のうち旅行業は6.4%を占めている。日本の旅行業は200%、つまり2倍に急成長している」と説明した。

 そして今後の予想として、2028年にグローバルのGDPに対して旅行業の占める割合は10.4%から11.7%に増加、2030年の観光客は13億人から18億人に、そしてIATA(国際航空運送協会)が予想する2036年の飛行機の旅客数は40億人から78億人へと増加すると説明した。

旅行業界の課題

 そうしたなかで、今後の課題としてマンソ氏は旅行施設の充実、危機への対処、持続可能な成長という3つを挙げた。例えば、旅行施設の充実という観点では空港のキャパシティの増加などが課題になるとした。旅客が増えれば、セキュリティチェックに対する要員などを増やさなければ、セキュリティチェックを通過するだけで3時間といった事態になりかねない。また危機への対処ではテロ対策、感染症への対処などが必要になる。それらの問題に対処する意味でも、なんらかのテクノロジを活用するなどして対処しなければ3つ目の課題である持続可能な成長も実現できないとマンソ氏は指摘した。

対処方
スペインでイベントを開催所定

 また、そうした観光客の増加に伴い、観光地の混雑に関しても対処していく必要があるとした。マンソ氏は「そうした問題には長期戦略をもって対処していく必要がある。地元のコミュニティと協力するなどさまざまな取り組みが必要だ」と述べ、メキシコの例や日本の寺社などの観光地の対処方などがよい事例になると述べた。そのうえで「昨日、ロボットのASIMOを見たが、日本にはそうしたロボットなどの素晴らしいテクノロジがある。そうした技術が東京国際空港でも活用されており、そうしたテクノロジの活用も重要になる」と述べ、日本の事例がほかの国にとっても参考になると述べた。