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海保や警察消防、民間団体が連携した、海上航空機事故発生時の救難活動訓練を関空で実施
(2015/7/23 14:12)
- 2015年7月22日 実施
関西国際空港(関空)で7月22日、「航空機海上事故対策訓練」が実施された。この訓練は2年に1度行なわれ、空港管理者の新関西国際空港をはじめ、国土交通省、海上保安庁、警察消防機関、医療機関、航空会社、漁協など、官民の計22機関、のべ300名が参加。船艇13隻に加え、海上保安庁と大阪市消防局のヘリコプター2機も訓練に参加した。
訓練は淡路島上空を飛行中の航空機にエンジントラブルが発生し、関空に緊急着陸を試みるが、関空北東部の海面に落水。衝撃で後部貨物室から出火したという想定で始まり、消防艇による模擬事故機の消火、海面に投げ出された乗客の救助と搬送、泉佐野港に設けられた泉佐野救護所では救助された乗客のトリアージや医療活動、医療機関への搬送までの一連の流れで行なわれた。
訓練は13時30分に空港北東部海域に航空機が落水、衝撃により救命胴衣を着用した乗員乗客9名が海面に投げ出されたという想定で開始された。
まず関西空港海上保安航空基地所属のヘリコプター「みみずく」が現場海域に緊急出動。事故現場の海域の特定と同時に海上保安本部にヘリコプターから撮影したヘリテレ映像を伝送。事故状況や負傷者などの情報収集に当たった。
それにより9名の搭乗者が海面に漂流していることを確認し、海上保安庁の巡視船「みのお」、大阪水上警察署の警備艇「かわち」、大阪府水難救済会の「第八千代丸」、大阪府漁業協同組合連合会の「いずみ」の4隻が無線やスピーカーで連携し、救助海域を分担して漂流者の救助を行なった。
漂流者のうち1名は船艇での救助が難しい沿岸部を漂流しているという想定で、ヘリコプターによる吊り上げ救助を実施した。第5管区海上保安部所属の中型輸送ヘリコプター「みみずく」が現場海域上空から漂流者を捜索。漂流者を発見すると上空でホバリングし、ヘリコプターに装備されている吊り下げ装置を用いて隊員が降下し漂流者の救助を行なった。
漂流者の収容後、次は事故機の火災が勢いを増したという想定で、消防艇による消火活動が行なわれた。模擬事故機となった海上保安庁の巡視船「とさ」の船尾からの発煙に対して、海上保安庁の巡視艇「ふどう」、大阪市消防局の消防艇「まいしま」、堺市消防局の消防艇「ぼうかい」の3隻が放水を行ない消火活動を実施した。
泉佐野港では脱出用シューター(救命筏)の救助活動についての訓練が実施された。
大阪市消防局のヘリコプター「おおさか」が現場海域上空から状況を確認し、ヘリテレにより現地対策本部へ映像を転送、海上で待機していた、海上保安庁の巡視艇「そらかぜ」、大阪水上警察署の警備艇「こんごう」、大阪市消防局の消防艇「まいしま」、大阪府漁業協同組合連合会の「第五辰丸」の4隻が分担して、救命筏に乗った漂流者を救助し、その手順を確認した。
泉佐野港に設置された泉佐野救護所には、現地調整本部が設置された。救護所は医療、救急活動の拠点となり、搬送された乗客乗員のトリアージが本番さながらの状況で行なわれた。トリアージとは、大規模災害や事故などで多数の負傷者が発生する特殊な状況下において、負傷者の重傷度や緊急度に応じて治療や搬送の優先度を決定すること。
搬送されてきた負傷者を医師が確認し、トリアージタグを腕につけ、重傷者を赤いテント、軽傷者を黄色いテントに分けて収容し、内部では医療スタッフと救急隊が連携して負傷者の手当と搬送の手順を確認した。
新関西国際空港 運用部長の小笠原弦氏は「海上で航空機事故が起こってしまった場合は、人命救助が第一となる。陸上、海上そして空とが連携した対応が非常に重要。特に2年前の訓練では行なわれなかった、ヘリコプターによる空からの救助訓練は非常に今後の参考になった」と話し、「今後検討会を行ない、万が一航空機事故が発生した場合には、官民の関係機関がきっちりと連携取れるように今回の訓練を活かしたい」と今後の活動についてまとめた。
【お詫びと訂正】初出時、写真と説明が入れ替わっている箇所がありました。また、巡視艇「ふどう」の名前を誤って掲載しておりました。お詫びして訂正いたします。